こんにちは、YAMA-GO編集部のりょうです。関西を拠点に、北アルプスを中心にULスタイルで山を楽しんでいます。このブログ「YAMA-GO」では、実際に使ったギアのレビューや選び方、山のノウハウなんかを発信しています。
冬の低山で、日陰の道だけがうっすら白く光っていると、ドキッとしますよね。「この程度なら歩き方でなんとかなるかな」と迷ううちに、滑り止めを出すタイミングを逃しがちです。
僕は残雪期の北アルプスや夏の雪渓で、滑り止めを付けて歩いてきました。アイゼンを付けていても雪渓で滑り落ちた経験があり、凍った足元の怖さは身にしみています。
この記事では、警察や自治体の注意喚起とメーカーの取扱説明書をもとに、凍結した登山道の歩き方をまとめました。滑り止めを付ける判断から足運び、引き返す目安まで、出発前に読んでおくと安心できる内容にしています。
- 凍結が点で見えた時点でチェーンスパイクを付ける理由と付ける場所
- 日陰・北斜面・落ち葉の下・帰りの下りなど凍結しやすい条件
- 歩幅・足裏・重心・ポールの使い方で滑らない足運び
- 滑った時の初期動作と引き返す判断の目安
凍結した登山道は歩き方で粘らず滑り止めを付ける
結論から言うと、凍結した登山道は歩き方の工夫だけで粘らず、凍結が“点”で見え始めた時点で滑り止めを付けるのが安全です(低山のまだらな凍結ならチェーンスパイク、硬い氷や急な斜面なら軽アイゼン以上)。そのうえで歩幅を小さくし、足裏全体で置き、下りは膝を緩める。この順番で考えると、現場で迷いにくくなります。

早めに付ける考え方は、僕の思いつきではありません。公的機関の注意喚起を読み比べると、装着のタイミングについて同じ方向のことが書かれています。
| 出典 | 装着のタイミングについての記述 |
|---|---|
| 埼玉県警 | わずかな凍結場所でもアイゼンの装着を |
| 長野県警 | 装着するべきか悩む場所でも、スリップ防止のために早い段階で装着することが滑落や転倒防止になる |
| 国立登山研修所 | 硬い雪面では、斜面になる前にアイゼンを装着すべき |
3つとも「足運びで耐えてから付ける」とは書いていません。凍結を見た時点、斜面に入る前に付けるという点でそろっています。歩き方は滑り止めの代わりにはならず、付けたうえで転ばないための技術と考えるのがいいかなと思います。
UL派の僕でもチェーンスパイクは削らない
僕はULスタイルで、荷物はできるだけ軽くしたい派です。それでも、冬の山や雪の残る山ではチェーンスパイクを荷物から外しません。ULは、必要な安全性を残したうえで不要なものを見直す考え方だと思っているからです。
重さで比べても、削る理由はあまりありません。モンベルのチェーンスパイクはペアで242〜316g(サイズ別)です。6本爪のスノースパイク 6はペアで490gあります。(出典:モンベル公式『チェーンスパイク』製品ページ)
滑り止めの中では軽い部類で、ザックに入れても負担はそれほど大きくありません。この重さで転倒のリスクを下げられるなら、持って行かない選択は割に合わないと感じます。
2021年のGWに残雪期の涸沢へ登ったときも、登山靴にチェーンスパイクを付けて歩きました。大阪府も南河内の冬山では、軽アイゼン(チェーンスパイク可)を必須の持ち物に挙げています。
冬の低山へ行くなら、凍結の情報が無くてもチェーンスパイクは持って行く前提にしておくと安心です
付けるのは凍結が見え始めた手前の平らな所

付ける場所は、凍結が見え始めた手前の、平らで足場が安定した所が基本です。国立登山研修所のテキストは「安全な場所で確実に」としています。斜面で付けるなら、まず足場を整えてからです。
凍った斜面の途中で片足立ちになって付けると、それ自体が転倒のきっかけになりかねません。残雪期の涸沢へ向かった日も、本谷橋の手前では雪渓の縁でかがんで滑り止めを付ける人たちがいました。氷や雪に乗る前に準備する流れは、山の高さに関係なく同じだと思います。
付け方は、モンベルの取扱説明書に沿うと次の流れになります。
- 靴底の雪や土をよく落とす
- 表裏を確かめ、つま先側から被せてバンドをかかとまで沿わせる
- かかとに被せたら後ろのタブを引き、靴底のチェーンをたるみなく張る
- 歩き出す前に、チェーンのたるみやずれがないか目で確かめる
説明書がNG例に挙げているのは、表裏が逆の状態と、チェーンがたるんだ状態です。どちらも本来の制動力が出ず、木の根や枝に引っかけて転ぶ恐れがあります。
家で一度付けてみる
モンベルは、フィールドで使う前に手早く着脱できるよう練習することを求めています。寒い現場で、手袋をしたまま初めて付けるのは手間取りやすいもの。購入したら、実際に履く登山靴と手袋で一度試しておくと安心です。
サイズ選びにも注意が必要です。モンベルは、チェーンがたるむような合わないサイズだと破損や脱落の恐れがあるとしています。ボリュームのある冬靴はサイズ表の境目で一段上がる場合もあるので、実際に履く靴で確かめてください。
凍結しやすい場所と時間帯で付けるタイミングを読む
付けるタイミングは、日陰・北斜面・落ち葉の下、朝夕の時間帯のどれかに当てはまれば凍結ありと見るのが目安です。麓が暖かくても、山の上や日の当たらない場所は別物と考えておくと、装着が遅れにくくなります。

日が当たる斜面と当たらない斜面で、地面の様子が全然違うのは山に住んでいても感じるよ。
そうなんですよね。どんな場所が凍りやすいのか、公的な資料で確かめてみましょう。
朝と夕方で変わるのも気になるなあ。
時間帯の話も一緒に見ていきましょう。
冬の低山の気温は、平地の感覚だけでは想像しにくいものです。気象庁の平年値から換算した概算では、高尾山(標高599m)の山頂付近は12〜2月の日最低気温が氷点下になる計算です。日中は汗ばむような日でも、夜から朝にかけては凍る条件がそろうと考えておいてください。
日陰・北斜面・落ち葉の下は凍結ありと見る
公的機関の資料に出てくる凍結しやすい場所を整理すると、次のようになります。共通しているのは、日が当たらない、冷気がたまる、凍結が見えにくい、という条件です。
| 場所 | 公的資料での記述(要約) |
|---|---|
| 北側斜面・谷間・日陰 | 長野県:思った以上に積雪が多く、凍結している所もある |
| 日当たりの悪い場所・山の上 | 埼玉県警:街中が暖かくても残雪や凍結の可能性がある |
| 落ち葉が積もった道 | 埼玉県・長野県警:落ち葉などに隠れて、凍結した路面が見えない場合がある |
| テント場・階段などの平らな所 | 長野県警:赤岳のテント場の凍った地面や、南木曽岳の下山中の階段で転倒・負傷 |
| 緩やかな登山道 | 埼玉県:両神山で、緩傾斜な登山道であっても転倒・負傷する事故 |
見落としやすいのが落ち葉の道です。路面が見えないことは、凍っていない証拠になりません。北向きや日陰の落ち葉道は、凍結ありとして扱うのが安全かなと思います。
冬は太陽が低いことも関係しています。国立天文台の計算では、冬至付近の東京の南中高度は30.9°で、夏至付近の77.8°よりかなり低くなります。そのぶん北斜面や谷筋には日が届きにくく、凍った路面が残りやすい条件になります。
緩やかな道や平らな場所でも転倒事故が起きている点は、覚えておきたいところ。急な斜面だけを警戒していると、階段やテント場のような何気ない場所で足をすくわれます。
行きは平気でも帰りの下りは再凍結している
凍結は時間とともに変わります。長野県警は「寒暖差により、日中溶けた場所が朝晩の冷え込みで凍結している場合があります」と注意しています。朝は凍っていた道が昼に緩み、夕方の下山時にもう一度凍ることもあります。
登りで問題なく通れた区間が、帰りには別の道になっていることもあります。しかも帰りは下りで、疲れも出てくる時間帯。国立登山研修所のテキストも、バランスを崩して転ぶのは下りが多いとしています。
登りで付けずに通れた凍結箇所でも、下りでは滑り止めを付けて通る
夕方は暗くなるのも早いです。京都の日の入りは、12月上旬で16時45分ごろ(国立天文台の暦計算)。暦の時刻は周りの山を考慮していないので、谷筋や樹林帯ではもっと早く暗くなります。
大阪府は冬山登山の注意で、15時までに下山を完了する計画を勧めています。理由は「林内は16時には暗くなることがある」ため。再凍結と暗さが重なる前に下りきれるよう、早出早着で計画を組むのが基本です。
出発前の情報集めも役立ちます。気象庁の「今後の雪」や、自治体・ビジターセンターの情報、登山記録アプリの直近の記録で、雪や凍結の傾向はつかめます。記録アプリはいつの情報かを必ず確かめ、凍結なしと書かれていても滑り止めは持って行ってください。
低山の凍結はチェーンスパイクか軽アイゼンか
低山のまだらな凍結なら、基本はチェーンスパイク、硬い氷や急な斜面が出るなら軽アイゼン以上と考えるのが目安です。東京都は、山の雪の状態によって両者を使い分けるよう示しています。

チェーンスパイクと軽アイゼンって、どう違うの?どっちを持って行けばいいのかな。
僕も最初は迷いました。路面の状態で向き不向きがあるみたいなので、比べてみましょう。
| 種類 | 爪と装着 | 向く場所(東京都の使い分け) |
|---|---|---|
| チェーンスパイク | 足裏全体にチェーンと短めの爪。つま先からかかとに引っかけて被せる | 積雪が浅い・雪があったりなかったりする・斜度がきつい所がない |
| 軽アイゼン(4〜6本爪) | 長めの爪。ベルトで足の甲やかかとに固定する | 積雪が深い・カチカチに凍っている・斜度がある |
東京都は、合わない道具を選ぶと事故につながる可能性があるとしています。行き先の雪の状態をビジターセンターに問い合わせるなどして、事前に確かめてから選ぶのがおすすめです。
まだら凍結ならチェーンスパイクが合う理由
低山の凍結は、凍った区間と乾いた土の区間が入り混じりやすいもの。着脱が早く、凍結区間ごとに付け外しできるのがチェーンスパイクの強みです。アウトドア誌のBE-PALも、凍結区間を抜けたら外し、また凍結区間に入ったら付け直す使い方を紹介しています。
| 比べる点 | チェーンスパイク | 6本爪軽アイゼン |
|---|---|---|
| 着脱の速さ | 速い。凍結区間ごとに付け外ししやすい | ベルト固定で手間がかかる |
| 急斜面・硬い氷 | 不向き | チェーンスパイクより向く |
| 土や岩が混じる道 | 爪が短く、足裏が地面から離れにくい | 長い爪が岩や階段で不安定になりやすい |
| 外れやすさ | 激しく動くと外れ、気づかないことがある | ベルトで固定する |
| 重さ(モンベル品・ペア) | 242〜316g | 490g |
弱点もあります。固定力はそれほど高くないので、ときどき足元を見てずれていないか確かめてください。急な傾斜や凍結した岩場にも向きません。そうした場所が出てきたら、チェーンスパイクの守備範囲を超えたサインです。
乾いた区間が長く続くなら、外すのが基本です。モンベルは、氷雪以外で使うと爪の曲がりやバンドの傷みにつながるとしています。東京都も、登山道を傷めないよう雪面以外でのアイゼン使用を控えるよう求めています。
一方で、少し歩けばまた凍結が出てくるような道なら、付けたまま慎重に歩く判断もありです。付け外しの手間と路面の状態を見比べて決めると、無理がありません。
モンベル以外では、カフトゥーラのマイクロスパイクも定番の一つです。公式のサイズ表がハイキングシューズ・ブーツ用と、中綿入りの冬靴用に分かれています。僕自身が使い比べたわけではないので、ここでは公式情報からの紹介にとどめますね。
カフトゥーラ マイクロスパイク
つま先の金属ワイヤーや立ち上がったヒールタブなど、脱落対策と手袋での着脱を考えた作りのチェーンスパイク。靴のタイプ別にサイズ表が分かれているので、実際に履く靴に合わせて選ぶのがポイントです。
いきなり買うのが不安なら、レンタルで試す手もあります。やまどうぐレンタル屋では、チェーンスパイクも6本爪の軽アイゼンも1泊2日3,000円です(2026年10月時点)。6本爪には、かかとと土踏まずの段差が1cm以上ある靴という条件があるので、借りる前に確認してください。
登山靴のソールだけでは凍結路で滑る
結論として、登山靴のソールだけで凍結路を歩くのは避けたほうがいいです。低温でも硬くなりにくいゴムを使ったソールはありますが、それでも滑り止めの代わりにはなりません。
たとえばビブラムの「Arctic Grip」系は、濡れた氷の上を歩くために作られたソール技術です。それでも作業靴向けの「Arctic Grip Pro」の公式ページは、アイゼンやスパイクの代わりにはならないと明記しています。メーカー自身がそう書いている以上、靴底の性能を理由に滑り止めを省くのはやめておきたいところです。
僕は初めての富士山からジャンダルムまで、キャラバンのC1_02Sを履いてきました。槍ヶ岳の下山では終日の雨でも浸水しなかった靴ですが、凍った道を靴だけで歩けるとは考えていません。
ソールがすり減った靴は、雪の無い時期でも滑りやすくなります。冬の山へ行く前に、靴底の減り具合も見ておくと安心です。大阪府も冬山の持ち物にハイカットの登山靴を挙げていて、足首まで覆う靴と滑り止めの組み合わせが基本になります。
凍結した登山道で滑らない足運びと重心
滑り止めを付けたうえでの足運びは、歩幅を小さく、足裏全体で置き、一歩ずつ静かに体重を移すのが基本です。下りは膝を緩めて後ろ重心にせず、ポールは先ゴムを外して体の近くに突きます。

公的機関の資料から、凍結路で共通して勧められている動作を抜き出すと次の5つです。
| 動作 | 根拠になっている記述 | 凍結路での意味 |
|---|---|---|
| 歩幅を小さく | 研修所:一歩一歩は小さめに確実に/札幌市:歩幅が大きいと転倒しやすい | 片足に乗る時間と重心のぶれを減らす |
| 足裏全体で置く | 研修所:足裏の全パターンが接地している感覚/札幌市:靴裏全体をつける | かかとやつま先だけの接地を避け、爪も全部効かせる |
| 足は軽く浮かせる | 札幌市:地面を強くこするとつまずく原因になる | 木の根や石につまずかない |
| 重心をやや前・膝を緩める | 札幌市:膝をわずかに曲げて腰を落とす | 下りでへっぴり腰にならない |
| 静かに体重を移す | 研修所:静荷重・静移動 | 足が止まったのを確かめてから乗る |
歩幅を小さく足裏全体で静かに体重を移す
まずは歩幅を小さくします。札幌市消防局は、歩幅が大きいと足を高く上げる必要があり、重心移動が大きくなって転倒しやすいと説明しています。小股で刻むくらいが、凍結路ではちょうどいいかなと思います。
足は足裏全体で置きます。国立登山研修所は、特に下りで登山靴の足裏の全パターンが接地している感覚で歩くよう求めています。かかとから着いたり、つま先だけで踏んだりすると、接地面が小さくなって滑りやすくなります。
体重の移し方も大切です。踏み出した足に一気に乗らず、足が止まったのを確かめてから静かに体重を移します。研修所の言う「静荷重・静移動」で、体のバランスを崩さないことが基本になります。
すり足のやりすぎには注意してください。札幌市は、地面を強くこするとつまずく原因になるので、足は軽く浮かせるよう勧めています。チェーンスパイクを付けていると木の根や石に爪を引っかけやすいので、なおさらです。
滑り止めを付けたら足幅を広めに
研修所は、アイゼンを付けたときは付けないときより足と足の間隔を開けて歩くよう指導しています。長野県警によると、アイゼンをズボンの裾に引っかけて転ぶ事例は例年発生しているそうです。チェーンスパイクでも、反対の足や裾への引っかけには気をつけてください。
両手は空けておきます。郡山市消防本部は、ポケットに手を入れずに歩くよう呼びかけています。急ぐと歩き方を忘れやすいので、凍結路は雪の無い時期のコースタイムより遅くなる前提で計画しておくと、気持ちに余裕が出ます。
山腹を横切る道では、山側の足をまっすぐ、谷側の足を少し谷に向けると安定します。研修所のテキストにある歩き方で、雪のある時期も同じです。
下りは膝を緩めて後ろ重心にしない
下りでは、怖くて腰が引けた後ろ重心がいちばん危ない姿勢です。後ろに傾くと足が前に滑って尻もちをつきやすく、頭を打つ恐れもあります。前寄りの重心なら足は後ろに滑るので、傾斜地では止まりやすいとされています。
姿勢の目安は、膝を軽く曲げて腰を少し落とすこと。札幌市の資料にもある姿勢で、膝を突っ張らずに真上から体重を落とすイメージです。重心を一定の速さで落とし続けるように歩くと、一歩ごとの衝撃も小さくなります。
段差は飛び降りず、足首と膝を柔らかく使って下ります。歩幅を広げすぎると惰性で前のめりになるので、ここでも小さな歩幅が基本です。凍結した下りは、乾いた道の下りよりずっと時間がかかるもの、くらいに思っておくといいですよ。
トレッキングポールは先ゴムを外して突く
凍結路でもトレッキングポールは役立ちます。ただし滑らないようにバランスを補う道具として使うのが前提です。シナノは、ポールはバランス保持のための道具で、危険回避用には作られていないとしています。
シナノの目安では、転倒しかけたときなどの危険回避でポールにかかる荷重は約48kgfです。滑ったときに全体重を預けて支える使い方は想定されていない、と考えておいたほうがよさそうです。
凍った道では先ゴムを外し、金属の石突を使います。シナノは、積雪期など登山道が滑りやすい状況では先ゴムを外すよう勧めています。ブラックダイヤモンドも、カーバイドの先端を「固い地面や氷に有効」と説明しています。
乾いた区間や木道に出たら、先ゴムを付け直します。長野県のルールも先ゴムの装着を求めているのは雪のない登山道で、環境省は登山道の侵食を防ぐため保護キャップを付けるよう呼びかけています。路面に合わせて付け外しするのが、いちばん無理のない使い方かなと思います。
突く位置は体のすぐ近くです。UIAA(国際山岳連盟)医療委員会は、体の落下線のできるだけ近くに突くよう勧めています。体から離して突くと、かえってバランスを崩すおそれがあるそうです。荷物を背負っているなら、1本より2本のほうがバランスが高まるとされています。
僕は初めての富士山でポールを持たずに下り、砂利の坂でブレーキをかけ続けて、両足に水ぶくれを作りました。下りがとにかくしんどく、ポールを持って行かなかったことを後悔しています。ただし岩場や狭い稜線では、シナノやモンベルの指示どおりポールをザックにしまってください。
外した先ゴムは失くしやすいので注意が必要です。シナノは、山に落ちた先ゴムは自然に還らないとして、ストッパー付きの「落ちにくい先ゴム」PP-25などを勧めています。適合はポールによって違うため、自分のポールの品番と先端の形を確かめてから選んでください。
シナノ 落ちにくい先ゴム PP-25
ストッパー付きで抜けにくい先ゴム。1個単位の販売なので、2本で使うなら2個用意します。ポール先端の形で適合が変わるため、購入前にメーカーの案内で確認してください。
下りで滑った時の止め方と転び方
先に正直に書くと、凍結路で滑り出したら止めるのは難しく、滑り出さない歩き方が前提です。国立登山研修所のテキストは「本当に滑り出して加速がついてしまったら絶対に止まらない」としています。早めに滑り止めを付けて丁寧に歩くことが、いちばんの対策になります。(出典:国立登山研修所(日本スポーツ振興センター)の登山指導テキスト)

僕も2019年、ジャンダルムから岳沢小屋へ下る途中の急な雪渓で、アイゼンを付けていたのに5mほど滑り落ちました。「岩にあたって死ぬのかな」と本気で思ったのを覚えています。低山の凍結路とは条件が違いますが、道具を付けていても滑るときは滑るというのが実感です。
研修所の滑落停止の手順は、ピッケルを使う前提で書かれています。ピッケルを持たない低山のハイカーが、体だけで止める公的な手順は見当たりませんでした。そのため、次の3つは公的な停止手順ではなく、研修所や自治体が示す歩行姿勢から導いた心構えとして読んでください。
- 滑り出しの最初の一瞬で膝を曲げて腰を落とし、重心を低くする
- 後ろに反り返らない(足が前に流れて尻もちや頭の打撲につながる)
- 滑り止めの爪を斜面に引っかけない(爪が引っかかると体が反転する恐れがある)
3つ目は見落としがちです。研修所のテキストには、ピッケルで滑落を止める姿勢の説明として、アイゼンを付けた足を上げないと前爪が斜面に引っかかり、体が反転して頭から滑る事態になるとあります。チェーンスパイクの爪は短いですが、爪を斜面に引っかけない意識は持っておきたいところです。
滑り止めを付けたまま尻で滑り降りるのはやめる(長野県警はアイゼン装着時のシリセードを「絶対にやめる」としている)
転倒は、数字で見ても多い事故です。警察庁によると、令和7年の山岳遭難の態様別では転倒が19.2%、滑落が17.3%でした。道迷いに次ぐ多さで、決して珍しい事故ではありません。(出典:警察庁『令和7年における山岳遭難の概況等』)
低山や緩い道でも油断はできません。埼玉県は秩父地域について、わずかな幅であっても一瞬で足を取られ、100メートル以上も滑落する場合があると注意しています。転び方を覚えるより、転ばない準備に時間を使うほうが確実かなと思います。(出典:埼玉県『【注意】冬季における登山道の通行について』)
凍結した登山道で引き返す判断の目安
滑り止めが無いのに凍結が出てきたら、迷わず引き返すのが目安です。長野県も「アイゼン等の装備がない場合や技術的に不安を感じたら、迷わず引き返してください」と呼びかけています。滑り止めを付けても足が流れる場所や、下山が遅れて暗くなりそうなときも同じです。
現場で迷いやすい場面を、公的資料に沿って整理しました。
| 現場の状況 | 判断の目安 |
|---|---|
| 滑り止めを持っていないのに凍結が出てきた | 長野県の「迷わず引き返す」に当たる |
| チェーンスパイクを付けても足が流れる(急斜面・硬い氷・凍った岩) | 軽アイゼン以上の領域で、チェーンスパイクの守備範囲を超えている |
| 下山が遅れ、再凍結と暗さが重なりそう | 早出早着に反する。予定より早く切り上げる |
| 落ち葉で路面が見えない北向きの下り | 見えない凍結として扱い、付けて慎重に下るか戻る |
| 登りで付けずに通った凍結箇所を下りで通る | 下りは付けて通る |
埼玉県も、凍結箇所では十分な装備を持ち、技量に不安のある場合は通行を控えるよう求めています。警察庁は、計画の段階で危険箇所とエスケープルートを把握しておくよう呼びかけています。引き返す地点を出発前に決めておくと、現場で迷う時間が減りますよ。
せっかく来たのに引き返すのは、悔しいものですよね。それでも早めに切り上げるのは、安全を残したうえで軽さを追うULの考え方にも合っていると思います。山は逃げないので、また条件のいい日に出直せば大丈夫です。
凍結の状況や道路・登山道の規制は、年や日によって変わります。正確な情報は自治体やビジターセンターなどの公式サイトをご確認ください。不安がある場合は、山岳ガイドや登山用品店のスタッフなど、最終的な判断は専門家にご相談ください。
凍結した登山道の歩き方のよくある質問
チェーンスパイクは何月ごろから持って行けばいいですか?
月で決めるより、行き先の標高と日当たりで考えるのがおすすめです。気象庁の平年値から換算すると、高尾山クラスの低山でも12〜2月は山頂付近の日最低気温が氷点下になる計算です。大阪府は、金剛山を含む南河内の山で年によって12月中旬に積雪が見られるとしています。冬の低山へ行くなら、凍結の情報が無くても持って行く前提にしておくと安心です。
トレランシューズや軽いハイキングシューズにもチェーンスパイクは付けられますか?
モンベルのチェーンスパイクは、底の柔らかいランニングシューズから固い靴まで幅広く対応するとしています。ただし靴の形によっては、対応サイズの範囲内でも装着できない場合があるそうです。実際に履く靴で一度付けてみて、チェーンがたるまないか確かめてから山へ持って行ってください。
低山の凍結に12本爪アイゼンは必要ですか?
低山のまだらな凍結なら、12本爪は基本的に過剰かなと思います。10〜12本爪は本格的な雪山向けで、靴底の硬さや装着方式との適合も必要です。長野県警は、アイゼンをズボンの裾に引っかけて転ぶ事例が例年発生していると注意しています。低山ではチェーンスパイクを基本に、硬い氷や急な斜面が続く山なら軽アイゼンを検討し、それでも不安な道は引き返すのが現実的です。
歩いているうちに靴底に雪が団子のように付いたらどうすればいいですか?
こまめに落としてください。国立登山研修所は、湿った雪がアイゼンにくっついて雪団子のようになり、滑って転ぶ原因になるとしています。モンベルも、底に付いた雪の固まりは放置すると爪が効かなくなるので、常に取り除くよう求めています。立ち止まれる安全な場所で、ポールや手で落としてから歩き出しましょう。
使い終わったチェーンスパイクの手入れや保管はどうすればいいですか?
モンベルの説明書では、使用後に水洗いで泥を落として乾かし、バンドに傷や破損がないか確かめるよう案内しています。暖房器具の近くなど高温になる場所はバンドの変形につながるので避け、直射日光の当たらない風通しのいい所に保管します。次に使う前にも、チェーンや爪のひび・変形、バンドの破損がないか毎回点検してください。
凍結した登山道の歩き方まとめ:迷ったら早めに滑り止め
凍った道は、歩き方でがんばるより先に滑り止めなんだね。
そうなんです。付けたうえで足運びを丁寧にする、という順番で覚えておくと迷わないと思います。
凍結した登山道は、歩き方の工夫だけで粘らないのがいちばんの安全策です。最後に要点を振り返っておきます。

- 凍結が点で見え始めたら、手前の平らな所でチェーンスパイクを付ける
- 日陰・北斜面・落ち葉の下・朝夕は凍結ありと見て、帰りの下りは付けて通る
- 低山のまだら凍結はチェーンスパイク、硬い氷や急斜面は軽アイゼン以上の領域
- 歩幅を小さく、足裏全体で静かに体重を移し、下りは後ろ重心にしない
- ポールは先ゴムを外して体の近くに突き、乾いた道では付け直す
- 滑り止めが無い・付けても足が流れる・暗くなりそうなら引き返す
荷物を軽くしたい人ほど、チェーンスパイクは残しておく価値がある装備だと思います。冬の山を安全に楽しむために、この記事が判断の材料になればうれしいです。
