こんにちは、YAMA-GO編集部のりょうです。関西を拠点に、北アルプスを中心にULスタイルで山を楽しんでいます。このブログ「YAMA-GO」では、実際に使ったギアのレビューや選び方、山のノウハウなんかを発信しています。
冬の低山や残雪期に向けて滑り止めを買おうとして、チェーンスパイクと軽アイゼンのどちらにするかで止まっていませんか。売り場では形も値段も違うのに、どっちがどの場面向けなのかまでは書かれていないことが多いですよね。
僕も最初は「軽くて安いほう」くらいの感覚で選んでいました。2021年の5月連休に残雪の涸沢へ入ったときはチェーンスパイクを選び、結果として前爪付きのアイゼンは使わずに済んでいます。その判断の中身も含めて、選び分けの基準を整理します。
- チェーンスパイクと軽アイゼンを分ける「爪の配置」と「爪の長さ」
- まず1つ買うならどちらか、両方いるのかレンタルで足りるのか
- 山の名前ではなく斜度と雪質で決める使い分けの基準
- 12本爪へ進む目安と、装備では止められない滑落の話
まず1つ買うならチェーンスパイク

行き先が低山や残雪期の緩い雪道中心なら、最初の1つはチェーンスパイクが無難だと思っています。凍った林道から霜の降りた木道、残雪期の緩い雪面まで出番の幅が広く、靴もあまり選ばないからです。
ただし万能ではありません。急な凍結斜面や、滑ったら止まらない地形は別の道具の領域です。その線引きは記事の後半で具体的に引きます。
ねえりょう、チェーンスパイクと軽アイゼンって見た目からして別物だよね。どっちが強いの?
食い込みの強さでいうと爪の長い軽アイゼンなんですよ。ただ、強い道具がいつも正解とは限らなくて。
へえ。じゃあ何で決めるの?
行く道の傾きと、雪の硬さですかね。僕も最初はそこが分かっていませんでした。一緒に見ていきましょう。
チェーンスパイクは「滑りにくくする道具」であって、滑り出した体を止める道具ではありません。
残雪期の涸沢で僕が選んだ装備
2021年の5月連休、上高地から涸沢へ1泊2日で入りました。河童橋を朝6時すぎに出発して、足元はチェーンスパイク。雪の上に乗る手前、本谷橋の少し前の平らな場所で装着しています。
この装着場所が地味に大事だなと思っています。凍った斜面に入ってから片足立ちになるのは危ないので、平坦で安全なところで先に着ける。あの日も雪渓の縁でかがんで着けている人が何組もいました。
涸沢の直下は夏道が完全に雪の下で、広い雪の谷に無数のトレースが伸びている状態でした。傾斜はありますが、前爪を蹴り込まないと登れないような場面はなく、僕が歩いた範囲では12本爪までは必要なかったというのが正直な実感です。
ただ、これは「涸沢まで」の話です。涸沢ヒュッテの公式案内では、ヒュッテより上部は雪山装備が必要でヘルメット着用が奨励される区域とされていて、僕もそこから上へは入っていません。同じ日・同じ山域でも、線はきちんと引かれています。
下山の朝には、谷を埋める雪崩のデブリと、土砂で剥き出しになった斜面を見ました。滑り止めを何にするか以前に、その日その場所がどんな状態かを見る話なんだなと思わされた光景です。
装着は雪に乗る前に
凍結区間に入ってから斜面の途中で着けるのは危険です。平坦で安全な場所に着いた時点で先に着けるのが基本で、僕は雪渓に乗る手前でいったん止まるようにしています。
両方買うか借りて済ませるか
行き先が低山と緩斜面で固まっているうちは、まず1つで足ります。チェーンスパイクと6本爪は使える場面が重なる帯があり、両方を毎回持つと重量も出費も二重になります。
行き先が急斜面や氷化した斜面へ広がったとき、次に買うのは6本爪ではなく前爪付きになることが多いです。6本爪は「12本爪までは要らないけれど、チェーンスパイクでは心もとない」中間帯を埋める道具、という位置づけですね。
年に1回雪に触れるかどうか、という人には借りる選択肢もあります。山小屋やレンタル業者で、軽アイゼンもチェーンスパイクも借りられます。
| 借りる先 | 品目 | 料金(税込) |
|---|---|---|
| 涸沢ヒュッテ(山小屋) | 軽アイゼン | 1,000円 |
| やまどうぐレンタル屋 | チェーンスパイク 1泊2日 | 3,000円 |
| やまどうぐレンタル屋 | チェーンスパイク 2泊3日 | 4,000円 |
| やまどうぐレンタル屋 | 軽アイゼン(6本爪)1泊2日 | 3,000円 |
山小屋の現地レンタルは、装備を持たずに来てしまった人向けの救済という色が濃いです。事前に必要と分かっているなら、レンタル業者か購入が前提になります。
損得の目安も出しておきます。購入価格が5,800円級のチェーンスパイクなら、1泊2日で3,000円のレンタルと比べた分岐は2回前後で来ます。年2回以上雪に行くなら買ったほうが早い、という感覚ですね。
料金や在庫は年によって変わるので、実際に借りる前には各社の公式サイトで確認してください。連休の山小屋はレンタル品が出払うこともあります。
チェーンスパイクと軽アイゼンの違い
違いは大きく2つで、爪をどこに配置するかと、爪がどれだけ長いかです。チェーンスパイクは靴底のほぼ全面に短い爪、軽アイゼンは土踏まず付近に長い爪を集めています。

ややこしいのは呼び名のほうです。モンベルは「軽アイゼン」というカテゴリの中にチェーン式もプレート式も並べていて、同じ言葉が別のものを指す場面があります。まず呼称を整理しておきます。
| 呼び名 | 実体 | 別の呼ばれ方 |
|---|---|---|
| チェーンスパイク | ゴム状樹脂のハーネスに、チェーンで小さな爪を多数つないだもの | チェーンアイゼン/スノースパイク(チェーン式) |
| 軽アイゼン | 土踏まず付近に4〜6本の爪を集めた金属プレート式 | 簡易アイゼン/スノースパイク(プレート式) |
| 前爪付きアイゼン | 10〜14本爪。つま先の前方に突き出す前爪を持つ | クランポン/多本爪アイゼン |
| ワイヤータイプ | チェーンの代わりにワイヤーで爪をつないだ軽量型 | トレイルランニング向けが多い |
爪の配置と長さが歩き方を分ける
チェーンスパイクは爪が全面に散っているので、どの位置で踏んでも爪が当たります。歩き方を変えずに済むのが最大の利点で、雪と土が交互に出てくる道でも歩きにくさが少ないです。
軽アイゼンは土踏まずにしか爪がありません。足裏を斜面に対して平らに置く「フラットフッティング」が前提で、つま先やかかとだけで踏むと爪のない部分に乗ってしまい滑ります。
裏を返せば、6本爪から入ると雪の歩き方が身につくという面もあります。急な斜面ほど足首を返して足裏を平らに保つ必要があるので、最初のうちは意識しないと難しいかなと思います。
装着の向きにも決まりがあります。モンベルは、爪の三角の突起が外側を向くように装着すると案内しています。慌てて着けると裏返しのまま歩き出しかねないので、最初の一回は確認しておくと安心です。
爪をスパッツやもう一方のズボンの裾に引っ掛けての転倒は、どちらの道具でも定番の失敗です。かかと同士を10cmほど離して歩くのが基本になります。
とくにチェーンスパイクは歩き心地が普段どおりなぶん、爪を履いている自覚が薄れがちです。僕も雪の切れた区間でつい普通の歩幅に戻ってしまうので、そこは意識して足を運ぶようにしています。
4本爪15mmと6本爪31mmは別物
カタログで見るべきなのは本数ではなく爪高(爪の長さ)です。同じ「軽アイゼン」でも、たとえばエキスパートオブジャパンの製品では、4本爪と5〜6本爪の間で爪の長さが倍に変わります。
| カテゴリ | 例 | 爪の長さ |
|---|---|---|
| チェーンスパイク | 一般的なモデル | 約5〜15mm |
| チェーンスパイク(小爪・軽量型) | エバニュー U.L.チェーンクリート など | 5〜8mm |
| チェーンスパイク(大爪・重量型) | カンプ アイスマスター エボ | 15mm |
| 軽アイゼン(4本爪) | エキスパートオブジャパン クロモリ4P set | 15mm |
| 軽アイゼン(5〜6本爪) | 同 Newクロモリ5P set/クロモリ6P卍set | 31mm |
| 前爪付き(12本爪) | 同 クロモリ12P卍set | 31mm+前爪 |
つまりチェーンスパイクの一番長い爪と、この4本爪の軽アイゼンの爪は同じ長さです。同じシリーズの6本爪は31mmでその倍以上あって、硬く締まった雪への刺さり方がまるで違います。
意味を言い換えると、短い爪は「凍った平らな道で滑らないための道具」、長い爪は「傾いた雪面で体を支えるための道具」ということですね。21本爪をうたっていても爪高が8mmなら、平らな氷や締まった雪では効きますが、傾斜のある硬い雪面に深く食い込ませることはできません。
同じチェーンスパイクの中でも性格は分かれます。本体が硬く爪高15mm・433gのモデルは急な斜面でずれにくく、柔らかい構造で爪高13mm・278gのモデルは緩斜面と軽い靴向き、という評価もあります。
そう考えると「4本爪と6本爪の違い」は本数が2本増えることではなく、道具の役割そのものが変わることだと分かります。買い替えではなく別ジャンルへの引っ越し、くらいの感覚が近いかなと思います。
低山と残雪期ではどちらを選ぶ
選び方はシンプルで、山の名前ではなく、その日の斜度と雪質で決めます。平坦から緩斜面の雪道と残雪期の圧雪ならチェーンスパイク、傾斜のある締まった雪面や下りの制動が要る場面は軽アイゼン、が基本線です。

| 想定される条件 | 適する装備 |
|---|---|
| 平坦な凍結路・圧雪された林道・霜の降りた木道 | チェーンスパイク |
| 雪と夏道(土・落ち葉)が交互に現れる道 | チェーンスパイク |
| 積雪のある低山の緩斜面 | チェーンスパイクまたは6本爪 |
| 傾斜のある雪面・締まった雪・下りで制動が要る場面 | 軽アイゼン(6本爪クラス) |
| 硬く凍結した急斜面・トラバース | 前爪付き(10〜12本爪) |
| 斜度30度前後の大雪渓・稜線・厳冬期の高山 | 12本爪+ピッケル |
山名ではなく斜度と雪質で決める
同じ山でも、朝は硬く締まっていた雪が昼にはぐずぐずに緩みます。だから「この山ならこれ」と決め打ちにできなくて、直近の山小屋情報や登山記録で当日の状態を確かめるほうが確実ですね。
分かりやすい線引きとして、登山ガイドが使う「転んでもすぐ止まるか」という軸があります。転倒してもその場で体が止まる地形ならチェーンスパイクで問題なく、数メートル滑る可能性がある斜面や、ルート脇が切れ落ちている場所は避けるべき、という考え方です。
この軸だと標高では切れません。低山でも凍った急な巻き道は該当しますし、標高が高くても広い雪原なら該当しない。僕が涸沢で不安を感じなかったのも、転んでも止まる範囲の谷だったからだと思います。
反対の立場も知っておいたほうがいいです。山岳ガイドの中には、連休のアルプス(標高2000m以上)へチェーンアイゼンは持って行かないと明言している人もいます。
理由は、早朝の硬いザラメ雪では短い爪が雪の層の上を滑ってしまい、鋭くない爪は硬い雪に刺さらないから。そして陽が高くなれば雪はあっという間に緩み、下山時の緩んだ急斜面では不利になる、という説明です。
同じ残雪期でも、涸沢のようになだらかな圏谷の底までと、その上部では求められる装備が変わります。山域名で一括りにせず、区間ごとに考えるのが安全側かなと思います。
チェーンスパイクは何月まで使えるか
この問いは月では答えが出なくて、標高と斜度で答えが変わります。同じ5月でも、低山の残雪ならチェーンスパイクで足りますが、標高2000mを超えるアルプスでは12本爪の領域に入ります。
| 時期 | 想定される路面 | 妥当な装備 |
|---|---|---|
| 11月下旬〜12月 | 低山の初期積雪、朝晩の凍結、凍った木道 | チェーンスパイク |
| 12月〜3月 | 凍った林道、踏み固められた平坦な登山道 | チェーンスパイク(最も出番が多い時期) |
| 1〜2月の高山・稜線 | 厳冬期の硬い雪面・氷化 | 12本爪+ピッケル |
| 3〜4月の低山 | 雪解けと再凍結、日陰や北面だけ凍結 | チェーンスパイク |
| 4月末〜5月の低〜中標高 | 緩んだザラメ雪、圧雪 | チェーンスパイク〜6本爪 |
| 4月末〜5月の標高2000m超 | 早朝は硬いザラメ、日中は緩む急斜面 | 12本爪+ピッケル |
| 6〜8月の雪渓 | 硬く締まった雪渓(斜度で大差) | 緩ければ軽アイゼン、大雪渓は12本爪 |
| 9月末〜10月の高山 | 初冠雪、薄い積雪 | チェーンスパイク |
「何月まで」を強いて言葉にするなら、低山では雪と凍結が消えるまで、高山では雪が出てきた時点でもう別の判断が要る、という二段構えになります。カレンダーより、行く場所の標高で切るほうが実際に合っています。
夏でも雪は残ります。2017年の8月に上高地から涸沢へ入ったときも、本谷橋から先には残雪帯があって慎重に歩きました。真夏なのに雪の上を歩く、というのは最初かなり意外でしたね。
そのとき涸沢からザイテングラートへ向かう分岐で、雪渓のトラバースがある直登ルートに知らずに入ってしまいました。滑り止めなしで通過はできましたが、時期によっては厳しい場所です。ルートの選び方ひとつで必要な装備が変わる、という失敗談です。
軽アイゼンでないと困る場面

斜度の話とは別に、軽アイゼンでないと困る場面があります。気温0度前後の湿った雪で靴底に雪が付く日、ベルトでがっちり固定したい日、そして道具が壊れたときに現地で立て直せるか、の3つです。
| 評価軸 | チェーンスパイク | 軽アイゼン |
|---|---|---|
| グリップ力 | 劣る | 優れる |
| 着脱の手軽さ | 優れる | 普通 |
| 雪団子の付着 | つきやすい | つきにくい |
| 外れやすさ | 外れやすい | 外れにくい |
| 耐久性 | チェーン切断・樹脂破損の事例あり | 壊れにくい |
固定力の差は、傾斜のきつい坂道で表に出ます。チェーンスパイクは伸びるハーネスで留めているだけなので、ふんばりが効かない場面では少しずつずれて脱げそうになることがあります。
対策としては、横ズレ防止バンドや脱落防止ベルトの付いたモデルを選ぶ手があります。オクトスの誤脱防止チェーンアイゼンのように、脱落しにくさを売りにした製品もありますよ。
壊れ方の違いも地味に効きます。チェーンスパイクはチェーンが切れたり樹脂パーツが割れたりする事例があり、山の中で直すのは簡単ではありません。プレート式は金属板とベルトの単純な構造なので、致命的な壊れ方をしにくいです。
だからこそ使う前の点検が要ります。チェーンのつなぎ目、樹脂ハーネスの裂け、爪の減り。この3点をザックに入れる前に見ておくだけで、当日の「あっ」がだいぶ減ります。(出典:モンベル『チェーンスパイク』取扱説明書)
軽アイゼンは必要ない?
「チェーンスパイクがあれば軽アイゼンは要らない」は、行き先が低山・緩斜面・凍結路に限られ、転んでも滑落しない地形しか歩かない人にとっては事実です。積雪が深い道、硬く氷化した斜面やトラバース、雪団子が出やすい気温まで行き先が広がると成立しなくなります。
雪団子に強いのは軽アイゼン
気温0度前後で湿った雪の日は、アンチスノープレート付きの軽アイゼンのほうが素直です。靴底とスパイクの間に雪が詰まって固まると、爪が雪面から浮いて効かなくなります。
やっかいなのは、滑り止めが効かなくなるだけでは済まないところです。靴底に雪の下駄を履いた状態になるので、かえって不安定になります。
なぜチェーンスパイクで起きやすいかというと、靴底とチェーンの間に雪が入り込む構造で、プレート式のようなアンチスノープレートを挟めないからです。チェーンとリンクが独立して動くことで付着を抑える設計をうたう製品もありますが、湿った雪ではやはり詰まります。
とくに気温が零度前後になる冬の低山は、雪が湿って付きやすい条件に入ります。道具が悪いというより、その日の雪質と相性が悪い、という話ですね。
プレート式の軽アイゼンには、雪の付着を防ぐアンチスノープレートが付く製品が多いです。モンベルのスノースパイク系は波形のプレートを採用しています。チェーンスパイクは構造上これを付けられないので、ここは設計の差です。
起きてしまったときの対処は、正直あまり選択肢がありません。歩きながらストックや木の枝で叩き落とすか、いったん外して雪を落とすか。こまめに落とすしかないので、それでも改善しないなら、安全な場所で使うのをやめて引き返す判断も持っておきたいところです。
雪団子は根本的な対処法が乏しいトラブルです。気温0度前後・湿った新雪が予想される日は、装備の選択そのもので避けるのが現実的です。
着脱の速さと250gと数千円の差
着脱の速さと携行のしやすさはチェーンスパイクの明確な強みです。靴の上から靴下を履くようにかぶせるだけなので、手袋をしたままでも扱えます。

250gって、山ではそんなに違うものなの?
一日ずっと背負うと効いてきますよ。ただ、軽さだけで選ぶと困る日があるのが難しいところで。
数字の受け取り方だけ、先に整理させてください。よく言われる「250g」はチェーンスパイクの実重量のほうで、価格の差ではありません。同じモンベルで比べると、チェーンスパイクとスノースパイク6の値段差は600円ほどです。
数千円の差が出るのは、チェーンスパイクどうしを比べたときや、前爪付きへ進むときの話になります。重さの差と値段の差を分けて見ておくと、選ぶときに迷いにくいですよ。
| 項目 | チェーンスパイク | 軽アイゼン(4〜6本爪) |
|---|---|---|
| 装着方法 | 靴の上からかぶせるだけ | バンド・バックル・ラチェットで締める |
| 装着の速さ | 速い。手袋のままでも扱いやすい | 締め込みが必要で手間がかかる |
| 靴との密着度 | 低い。伸縮ハーネス頼りでずれ得る | 高い。ベルトで固定される |
| 収納サイズの例 | 9×9.5×6cm(モンベル チェーンスパイク) | 12×19×9cm(モンベル スノースパイク6) |
| 製品 | 種別 | 重量(ペア) |
|---|---|---|
| モンベル チェーンスパイク | チェーン式 | S242g/M263g/L287g/XL316g |
| モンベル コンパクトスノースパイク | 簡易プレート式 | 210g |
| モンベル スノースパイク6 | 6本爪 | 517g |
| モンベル スノースパイク10 | 8本爪+前爪2本 | S/M 530g、M/L 550g |
| エキスパートオブジャパン クロモリ4P set | 4本爪 | 135g |
| エキスパートオブジャパン クロモリ6P卍set | 6本爪 | 380g |
重量帯でまとめると、チェーンスパイクが250〜350g前後、6本爪の軽アイゼンが380〜520g前後、12本爪は690g以上という並びになります。
ただ「軽アイゼン=重い」と決めつけるのは早いです。クロモリ4P setのようにチェーンスパイクより軽い4本爪もあるので、重さはカテゴリではなく製品ごとに見るのが正解ですね。
サイズ選びにも癖があります。チェーンスパイクはS・M・L・XLと大づかみで、伸縮で吸収する設計です。自分の靴サイズが2つのサイズにまたがるなら、大きいほうを選ぶのが定石になります。
小さいほうを買うと装着に強い力が要り、冬の風の中で手袋を外して格闘することになりがちです。寒い場所で素手になる時間を増やさないという意味でも、ここは大きめが安全側かなと思います。
モンベルで選ぶかワークマンで足りるか
入手しやすさで言えば、モンベルの軽アイゼンカテゴリから選ぶのが分かりやすいです。チェーン式もプレート式も同じ棚に並んでいるので、価格と重量を横並びで比べられます。
| 製品名 | 種別 | 重量(ペア) | 税込価格 |
|---|---|---|---|
| コンパクトスノースパイク | プレート式(簡易型) | 210g | 2,200円 |
| チェーンスパイク | チェーン式(全面スパイク) | M 263g | 5,800円 |
| スノースパイク6 | プレート式 6本爪 | 517g | 6,400円 |
| スノースパイク10 | プレート式 8本爪+前爪2本 | S/M 530g | 8,800円 |
想定用途も公式に書かれています。コンパクトスノースパイクは「使わないかもしれないけれど念のため」の保険、スノースパイク6は土と雪が交互に現れるコース向け、という整理ですね。(出典:モンベル公式「軽アイゼンの選び方」)
モンベル チェーンスパイク
靴底の全面に爪が散るチェーン式。低山の凍結路から残雪期の緩斜面まで、最初の1つとして使いやすい1台です。
価格目安:5,800円(税込)
モンベル スノースパイク6
爪高のある6本爪。傾斜のある雪面での安定や、雪団子が出やすい気温での使いやすさを重視するならこちら。アンチスノープレートを備え、雪の付着を抑えやすいモデルです。
価格目安:6,400円(税込)
チェーンスパイク全体の価格帯は、おおむね4,950〜13,200円です。爪長5mm・68gの超軽量型から、爪長15mm・462gの重量型まで、同じ呼び名のまま7倍近い重量差があります。
ではワークマンで足りるのか。ここは正直に書きます。冬に靴へ後付けする滑り止めが並ぶことはありますが、登山用として爪の長さ・本数・重量が公開された常設の商品は、公式サイト上では確認できませんでした。
仕様が確認できない以上、価格や性能を断定はできません。一般的な生活用のアイススパイクは、つま先とかかとに爪を配したタイプが多く、土踏まずの深い靴やヒールのある靴ではかかと側が浮いて機能しない、という指摘もあります。
ワークマンで確実に手に入るのは、滑りにくい靴底の防寒シューズのほうです。ガレラス防寒ミッドカット(2,900円・税込)のようなモデルがありますが、これは靴そのもので、後付けの滑り止め器具とは役割が違います。
通勤や雪かき用の滑り止めと登山用では、想定している荷重も斜度も行動時間も違います。登山で使うなら、爪長・爪数・重量・対応サイズが公開されている製品を選ぶほうが判断しやすいですよ。仕様と価格は変わるので、購入前に各メーカーの公式サイトで確認してください。
軽さを捨てて12本爪へ進む時
前爪を蹴り込まないと登れない斜面が出てきたら、そこが12本爪へ進むタイミングです。硬く氷化した急斜面の登下降、森林限界より上の稜線、斜度30度級の雪渓が該当します。

逆に言えば、標高1000m前後の低山で危険箇所が少なく、足裏を平らに置いて歩ける緩斜面が中心なら6本爪までで足ります。夏の雪渓歩きや、初冬と残雪期の緩斜面もこの範囲ですね。
見落としがちなのが出費の中身です。12本爪はおおむね17,490〜32,450円で、チェーンスパイクの2〜6倍。それに加えてコバ付きの冬靴が必要になることが多いのが、軽アイゼンとの決定的な違いです。
装着方式は3つあります。ワンタッチ式はつま先とかかとの両方にコバが要り、セミワンタッチ式はかかとのコバだけ。バンド式ならコバが無くても幅広い靴に対応します。
冬靴まで一気に揃えるのは重い、という段階には中間の受け皿もあります。モンベルのスノースパイク10は、8本爪に前爪2本を備えたモデルです。
想定用途は森林限界以下の雪山や残雪期のトレッキングで、柔らかいトレッキングシューズにも対応します。前爪も小振りでスパッツに引っ掛かりにくく、「6本爪では不安だけど、12本爪と冬靴はまだ早い」段階にちょうど収まります。
12本爪は靴との相性が最重要で、店頭で自分の登山靴に合わせるフィッティングが前提とされています。アイゼンとブーツに万能な互換性はないので、ここは通販だけで決めないほうが安全かなと思います。
滑落は装備では止められない
大事な前提として、チェーンスパイクも軽アイゼンも滑落を止める道具ではありません。長野県警の山岳安全対策課も、急斜度の雪渓で滑った場合はこれらで滑落を止めることはできない、と明記しています。(出典:長野県警察本部山岳安全対策課 島崎三歩の「山岳通信」第451号)
「滑らないための道具」と「滑ってから止める手段」は別物です。後者はピッケルによる滑落停止で、前爪付きアイゼンとセットで考える領域になります。
僕自身、装備を着けていても滑ったことがあります。2019年7月、ジャンダルムからの下山で天狗のコルから岳沢へ下るルートに入ったとき、7月でも残る雪渓の斜度がきつく、アイゼンを着けたまま5mほど滑りました。
あのときは「岩に当たって死ぬのかな」と本気で思いました。ロープの張られた場所でしたが、滑り出してから自分でできることはほとんど無かったです。道具は滑りにくくしてくれるだけだと痛感した一件でした。
数字で見ても、滑ることは最も重い結果につながっています。長野県警の統計を並べておきます。(出典:長野県警察本部山岳安全対策課『令和6年中 山岳遭難統計』)
| 項目 | 令和6年中の長野県内 |
|---|---|
| 山岳遭難の発生件数 | 321件(遭難者350人) |
| 態様別「転落・滑落、転倒」 | 163件・50.8% |
| 遭難死者の態様別「転・滑落」 | 62.0% |
| 冬山(1〜3月・12月)と春山(4〜6月)の合計 | 117件・年間の36.5% |
冬山と春山を合わせると、夏山の116件に並ぶ規模になります。春山の全件が雪上の遭難というわけではありませんが、雪の残る季節にも相当数が起きているのは確かです。装備を足すことと、行かない・引き返すという判断は、まったく別の話なんですよね。
ここに書いた基準は、あくまで一般的な目安です。当日のコンディションは現地の山小屋情報や公式サイトで確認して、判断に迷うルートでは山岳ガイドなどの専門家にご相談ください。最終的な判断は、ご自身の責任でお願いします。
チェーンスパイクと軽アイゼンの違いに関するよくある質問
チェーンスパイクは爪の本数が多いほうがいいですか?
本数より爪の長さを見てください。21本爪をうたっていても爪高が8mmなら傾斜のある硬い雪面には深く食い込みませんし、6本爪でも31mmあれば傾いた雪面で効きます。凍結した平坦路が中心なら5〜8mm、緩斜面まで見るなら13〜15mm、傾斜のある雪面なら31mmクラスが目安です。
スニーカーやトレッキングシューズでも使えますか?
チェーンスパイクは靴の屈曲に追従するので、ソールの柔らかい靴でも使いやすいです。プレート式の軽アイゼンは靴が曲がるとプレートが浮きやすいため、柔らかい靴に合わせるならフレックスジョイントのような追従機構のあるモデルを選ぶと安心です。対応サイズは製品ごとに違うので、公式サイトで手持ちの靴と照らして確認してください。
雪がない低山でもチェーンスパイクは役に立ちますか?
凍結している場所なら役に立ちます。日陰・北面・沢沿い・階段や岩の上は、雪が無くても先に凍るので、その区間だけ着けるという使い方ができますよ。ただしメーカーが想定しているのは氷雪上での使用です。凍っていない濡れた岩や木道では効果が期待できないうえ、爪やハーネスを傷めるので、凍結区間を抜けたら外すのが基本になります。
サイズがMとLで迷ったらどちらを選べばいいですか?
大きいほうを選ぶのが定石です。チェーンスパイクはS・M・L・XLと大づかみのサイズ区分で、伸縮する素材で吸収する設計になっています。小さいほうを買うと装着に強い力が必要になり、冬の風の中で手袋を外して格闘することになりがちです。
使ったあとの手入れはどうすればいいですか?
雪と泥を落として完全に乾かしてください。クロモリ鋼は硬く鋭く研げる反面で錆びやすいため、乾燥と防錆が要ります。チェーンスパイクは樹脂のハーネスが紫外線と経年で劣化するので、保管は直射日光を避けて。付属のスタッフバッグに入れて運ぶと、ザックの中の他の装備を爪で傷めずに済みます。
関連記事:10本爪と12本爪の違い
チェーンスパイクと軽アイゼンの選び分け
けっきょく、りょうはどっちを持っていくの?
低山と残雪期の緩い雪ならチェーンスパイクですね。傾きと雪の硬さが上がったら、そこから先は道具を変える、という感じです。
迷ったときは、行き先の斜度と雪質、そして転んだときに止まる地形かどうかで考えてみてください。要点をまとめておきます。

- 違いは爪の配置と長さ。全面に短い爪がチェーンスパイク、土踏まずに長い爪が軽アイゼン
- まず1つならチェーンスパイク。低山の凍結路から残雪期の緩斜面まで出番が広い
- 気温0度前後の湿った雪や、締まった雪面の下りは6本爪クラスの軽アイゼンが素直
- 前爪を蹴り込む斜面へ進むなら12本爪。アイゼン代に加えてコバ付きの冬靴が要ることが多い
- どちらも滑落は止められない。装備より先に、その日のコンディションと引き返す判断を
価格や仕様は時期によって変わるので、購入前には各メーカーの公式サイトで確認してくださいね。安全に関わる判断で迷ったら、無理をせず引き返す選択肢も持っておきましょう。
