こんにちは、YAMA-GO編集部のりょうです。関西を拠点に、北アルプスを中心にULスタイルで山を楽しんでいます。このブログ「YAMA-GO」では、実際に使ったギアのレビューや選び方、山のノウハウなんかを発信しています。
登山を始めようと装備を調べ始めると、リストがどこまでも出てきて「これ全部いるの?」と手が止まりますよね。僕も最初はまったく同じで、正直けっこう迷いました。
結論から言うと、最初に買うのは登山靴・ザック・レインウェアの3つで足ります。ヘッドランプと防寒着も初回から必ず持っていきますが、こちらは手持ち品やレンタルでかまいません。残りは登ってみて、足りないと感じてから足せば間に合います。
この記事では、僕が富士山や奥穂高岳、槍ヶ岳を歩いてきて「本当に使ったもの」と「持って行ったのに一度も出さなかったもの」を分けながら、装備一式の全体像と費用を整理します。
- 無いと命に関わる装備と、後回しでいい装備の切り分け
- 買い直しを防ぐ登山靴・ザック・レインウェアの選び方
- 総額5万円で第1層をそろえる配分例と、レンタルとの分かれ目
- 富士登山で追加になる装備と、ゲートで確認される3点
装備一式は最初に全部買わなくていい
装備は「無いと命に関わるもの」「無いと行動が破綻するもの」「無くても帰れるもの」の3層に分かれます。最初の1回で買いそろえるべきなのは一番上の層だけで、2層目は手持ち品でも足りますし、3層目は登りながら足していけば大丈夫です。

山の道具は種類が多いぶん、まとめ買いすると「一度も使わないまま押し入れに入ったもの」が必ず出ます。僕自身がそうでした。順番を決めて買うほうが、同じ予算でも安全側に寄せられます。
登山靴・ザック・レインウェアの3点は、サイズや性能の合わない手持ち品で妥協すると安全性が直接落ちる装備です。
僕が最初にレインウェアを買ったとき、店員さんに「ザック・登山靴・レインウェアは命を守るために必須ですよ」と言われました。ずいぶん大げさだなと思ったのですが、山に通ううちに、あれは脅しではなかったなと感じています。
遭難の3割は道迷い、次が転倒・滑落
何を優先すべきかは、山で実際に起きていることから逆算できます。警察庁がまとめた令和7年の山岳遭難では、最も多い態様が道迷い、その次が転倒と滑落でした。(出典:警察庁生活安全局『令和7年における山岳遭難の概況等』)
| 遭難の態様 | 遭難者数 | 割合 |
|---|---|---|
| 道迷い | 1,119人 | 30.9% |
| 転倒 | 694人 | 19.2% |
| 滑落 | 626人 | 17.3% |
| 疲労 | 356人 | 9.8% |
| 病気 | 294人 | 8.1% |
この並びを装備に置き換えると、道迷いに効くのは地図とスマートフォンの電池、転倒・滑落に効くのは足元です。つまり地図まわりと登山靴が、いちばん多い事故に直接対応している装備ということになります。
同じ年の発生件数は3,122件、遭難者は3,623人で、前の年より増えています。数としては決して身近ではありませんが、原因は特別な事故ばかりではなく、天候の判断や装備の不足といった準備の段階に寄っているのが実情です。
日帰りでも外さないもの
初心者向けの計画は「日没の1時間前までに下山」が目安ですが、道に迷ったり渋滞に巻き込まれたりすれば簡単に崩れます。日帰りでもヘッドランプ・レインウェア・防寒着の3つは削らないでください。
装備をひととおり揃えても道迷いのリスクは残る。現在地確認や地図表示を助けてくれる登山アプリの比較もあわせて見ておくと安心だ。
関連記事:登山アプリ比較|YAMAPとヤマレコどっち?実使用歴から解説
関連記事:登山届の出し方
僕が3ヶ月で使わなかった装備
山を始めて最初の3ヶ月で登ったのは、富士山と、その1週間後の奥穂高岳でした。奥穂高は富士山のときと同じ装備のまま登っていて、買い足したものは1つもありません。
持って行ったのに使わなかった代表がカイロです。ご来光待ちの寒さが怖くて何枚も忍ばせたのに、結局ザックから出しませんでした。とはいえ軽くて安いので、保険として入れておくこと自体は今でも悪くないと思っています。
レインウェアも、富士山では雨に一度も降られませんでした。ただし山頂でご来光を待つあいだ、風を止めてくれたのはこの1枚だけ。雨具として使わなかったのに、あの日いちばん働いた装備でした。
逆に、持っていなくて後悔したのがトレッキングポールです。富士山の下山は8合目からずっと砂利の斜面で、3時間強ひたすら自分の足でブレーキをかけ続けました。結果は両足で5箇所の水ぶくれです。
ザックを買い替えたのは、翌年に槍ヶ岳へ行くと決めてからでした。使ってみて不便が分かってから買い直したので、納得して選べたと思います。使わなかった装備は失敗というより、順番の問題なんですよね。
登山初心者の装備一式チェックリスト
装備一式は、命に関わる5つ・行動を支える必携品・無くても帰れる快適装備の3層で考えると迷いません。最初の山行でそろえるのは上の2層で、3層目は後からで十分です。

ここでは春から秋の低山日帰り、整備された登山道を歩く前提でリストを並べます。雪のある時期や標高の高い山は前提が変わるので、そのまま流用しないでくださいね。
無いと命に関わる5つの装備
第1層は登山靴・ザック・レインウェア・ヘッドランプ・防寒着の5つです。前の3つが世間で言う三種の神器で、実際の現場ではここにヘッドランプと防寒着が加わります。
| 装備 | なぜ第1層なのか | 最低要件の目安 |
|---|---|---|
| 登山靴 | 不整地を長時間歩く。転倒・滑落は遭難態様の上位 | ミドルカット以上・防水・つま先に約1cmの余裕 |
| ザック | 腰と背中で荷重を分散しないと半日で疲労が跳ね上がる | 日帰り20〜30L・ヒップベルトで腰荷重できる |
| レインウェア | 濡れは夏でも低体温症の直接原因になる | 上下セパレート・耐水圧20,000mm以上 |
| ヘッドランプ | 下山遅れや天候悪化で日没を迎えると行動不能になる | 照射距離30m以上・防水IPX4以上 |
| 防寒着 | 標高が上がると夏でも冬の気温になる | フリースまたは化繊の中綿。常時携行する |
この5つが別格であることは行政の運用にも表れていて、富士山の吉田ルートでは五合目の装備確認で防寒具・上下セパレートの雨具・登山に適した靴の3点が入山の条件になっています。
5つの中でいちばん軽く見られがちなのが防寒着かなと思います。僕も槍ヶ岳へ行ったとき、2日目が終日雨で体が冷えきってしまい、フリースかインナーダウンを1枚入れておけばよかったと後悔しました。
結局その日は、友人のジャケットを借りてしのぎました。北アルプスの山頂は夏でも5度くらいまで下がることがあります。重さを惜しんで置いてきた1枚が、いちばん必要になることもあるんですよね。
関連記事:登山の熊対策|熊鈴・スプレーの要否と遭遇した時の行動
日帰り登山の持ち物リスト
日帰りの持ち物は「身につけるもの」「ザックに入れるもの」「家に置いていくもの」に分けると、当日の朝に迷わなくなります。置いていくものを決めるのも装備選びのうちですよ。
- 身につける: ベースレイヤー(化繊かウール。綿は不可)
- 身につける: 行動用パンツ(化繊のストレッチ素材。ジーンズは不可)
- 身につける: 登山用ソックス・登山靴・帽子・腕時計
- レインウェア上下
- 防寒着(フリースまたは化繊インサレーション)
- ヘッドランプと予備電池
- 地図アプリを入れたスマートフォン+紙の地図とコンパス(電池切れに備えて併用)
- モバイルバッテリーとケーブル
- 水(500mlペットボトル2〜3本相当)
- 行動食
- ファーストエイドキット(絆創膏・テーピング・常備薬・痛み止め)
- 健康保険証・身分証・現金
- ゴミ袋、ティッシュ、携帯トイレ、タオル、日焼け止め
- 置いていく: テント・寝袋・マット
- 置いていく: バーナー、クッカー、燃料
- 置いていく: アイゼン、ピッケル(無雪期の一般登山道では不要)
- 置いていく: 40Lを超える大型ザック
水の量は、体重60kgの人が8時間歩くとして補給の目安が1,800ml前後という計算式があります。行動食は総カロリーより「1時間あたり糖質30〜60g」で考えると持ち物を決めやすく、おにぎり1個でおよそ40gです。
とはいえ全部を背負う必要はありません。槍ヶ岳へ行ったときは途中で水を汲めたので、1.5リットルほどで足りました。2リットルを担ぎ上げると、その重さがそのまま疲れになって返ってきます。
持っているだけでは装備になりません。ヘッドランプは点灯確認、レインウェアは着方の確認、登山靴は事前の履き慣らしまでが準備です。
もうひとつ、ここ数年で扱いが変わってきたのがクマ対策です。環境省の集計では2025年度の人身被害が238人と過去最多になり、出没件数も前年度の約2.5倍に増えました。(出典:環境省『R07年度におけるクマの人身被害件数[速報値]』)
被害は10月に集中していて、東北6県だけで全体の6割を超えます。熊鈴やクマ撃退スプレーは、これまで「あると快適」の側に置かれてきた道具ですが、入る山によっては位置づけが変わってきたと感じます。
クマの生息域にある山へ、とくに9〜11月に入るなら、熊鈴とクマ撃退スプレーは快適装備ではなく携行する装備として考えてください。
関連記事:登山の地図とコンパスの使い方|覚えるのは3つの基本操作だけ
2回目までに買う装備と後回しでいい装備
買う順番は、代用が効かないものから先です。1回目までに靴・雨具・ザックと、靴の試着に使う登山用ソックス。2〜3回目までに防寒着とベースレイヤーまで来れば、しばらく買い足しは要りません。
| タイミング | 買うもの | 理由 |
|---|---|---|
| 1回目の山行前 | 登山靴/レインウェア上下/ザック20〜30L/登山用ソックス | 手持ち品で妥協すると安全性が直接落ちる。靴の試着は本番用ソックスで行う |
| 1回目の山行前 | ヘッドランプ | 必携だが2,000円台からあり負担が小さい |
| 2〜3回目まで | 防寒着/ベースレイヤー | 初回は手持ちのフリース等で代用できる |
| 後回しでよい | トレッキングポール/スパッツ/ザックカバー | 膝や砂利で困ってからで遅くない |
| 後回しでよい | 保温ボトル/バーナー/ダウン | 夏の日帰りでは出番が少ない |
後回し組の代表がトレッキングポールです。上りでは使わない人も多く、最初の1本を急ぐ道具ではありません。必要かどうかは、下りを何度か歩いてみると自分の膝が教えてくれます。
逆に、ヘッドランプだけは1回目から必携なのに後回しにされがちです。日帰りのつもりでも日没に追いつかれることはありますし、スマートフォンのライトでは地図と電池を共用してしまいます。
買い直しを防ぐ三種の神器の選び方

買い直しの原因は、ほぼ3つに集約されます。靴のサイズ、ザックの背面長、雨具が上下セットかどうか。ここを外さなければ、最初の1着でかなり長く使えます。

価格より先に「自分の体に合うか」を確認する。三種の神器はこれだけで失敗がぐっと減ります。
登山靴は計測と試着で9割決まる
登山靴は店で足長と足囲を測ってもらい、本番で履く登山用ソックスで試着する。この2つをやるかどうかで、その靴と何年つき合えるかが決まります。
- 足長・足囲を店舗で計測してもらう
- 本番用の登山用ソックスを履いて試着する
- つま先に約1cmの余裕があるか確認する
- かかとが浮かないか、くるぶしが当たらないか確認する
- 傾斜台で下りの姿勢を取り、つま先が当たらないか確認する
- ミドルカット以上で足首のホールドがあるか
- 防水透湿素材が使われているか
普段27cmの靴を履いている人の実測が25cmだった、という例もあります。自分の感覚は意外と当てにならないので、最初の1足だけは通販ではなく店頭で決めるのが安全です。
この手順に加えて、店頭でしか分からないこともあります。僕が最初の1足を買ったとき、店員さんに言われたのは「富士山に行くならハイカット」と「底が硬いものを選ぶ」の2つでした。
火山灰は先が尖っていて、靴に入るとちくちく痛むそうです。底の硬さのほうは、店頭なら手で曲げて比べられます。軽いハイキング向けのモデルは本当に余裕で曲がるので、違いは触ればすぐ分かりますよ。
そうして選んだのがキャラバンのC1_02Sで、当時1万5千円を切る値段でした。翌年の槍ヶ岳では下山が終日雨でしたが、浸水はまったくありません。「1つだけ買うなら登山靴」と今でも思っています。
キャラバン C1_02S
ミドルカットで防水、サイズ展開が22.5〜30.0cmと広い入門定番。僕が槍ヶ岳で実際に履いていたモデルです(試着は店頭で)
価格目安:20,900円(税込・2026年8月時点のメーカー公式価格)
注意したいのは中古と型落ちです。ソールの接着面は履かずに保管していても5年ほどで劣化し、ポリウレタン系のミッドソールは加水分解が進みます。見た目がきれいでも寿命は読めません。
買ったらすぐ本番、も避けたいところ。近所の散歩や低山で数回履き慣らしておくと、当たる場所が早めに分かります。
ザックは背面長と腰荷重で選ぶ
ザックは容量より先に、背面長が自分に合っているかとヒップベルトで腰荷重できるかを見ます。日帰りなら20〜30Lで足りるので、まず背負って選んでください。
サイズは身長ではなく背面長で決まります。僕が使っているミレーのサースフェー30+5にも背面長でMとLの展開があり、数センチの違いで背負い心地が変わります。店で荷物を入れて店内を歩かせてもらうのが確実です。
実際に山で効いたのは、細かい使い勝手のほうでした。サイドのボトルポケットが横からも出せる構造で、体の固い僕でもザックを下ろさずに水を飲めたのは槍ヶ岳でかなり助かりました。
もちろん不満もあります。付属のレインカバーは留め具の位置の関係で、付けたまま雨蓋を開けられません。風の強い日に外すのも怖くて、純正のカバーが使いにくいのは盲点でした。重さも1.5kgほどあります。
ミレー サースフェー NX 30+5
背面長M/Lのサイズ展開とレインカバー付属。日帰りから小屋泊まで使える容量で、僕は槍ヶ岳で使いました(背面長は店頭で確認を)
価格目安:28,050円(税込・2026年8月時点)
| 30Lクラスの例 | 税込価格 |
|---|---|
| モンベル バランスライト 30 | 12,100円 |
| モンベル トレッキングパック 30 | 19,500円 |
| モンベル キトラパック 30 | 28,100円 |
| ミレー サースフェー NX 30+5 | 28,050円 |
同じ30Lでも価格が2倍以上開くのは、軽量素材や背面構造、ポケットの数の差です。最初の1つは軽さより、腰で支えられることを優先したほうが後悔が少ないかなと思います。
関連記事:登山ザックのレインカバーは必要?純正が使いにくかった実体験
レインウェアは上下セットが必須
雨具は上下セパレートで、耐水圧20,000mm以上・透湿性10,000g/m²・24hrs以上が目安です。傘やポンチョ、防風ジャケットは代わりになりません。
透湿性を見落とすと、外の雨は防げても内側が汗でびしょ濡れになります。濡れは夏でも低体温症の入口なので、雨具は「濡らさない道具」ではなく「体温を守る道具」と考えたほうが選びやすいです。
僕が最初に買ったのはコロンビアのグラスバレーという上下セットで、セール時に1万5千円ほどでした。ゴアテックスではありませんが、防水20,000mm・透湿10,000という値で、初めての富士山には十分でした。
細かいところですが、作りで感心した点もありました。ベンチレーションが脇ではなく前面側の、雨が入りにくい位置に配置されていて、裏地のメッシュがそのまま小さなポケットとして使えます。
付属の収納袋はパンツ用のサイズで、上着はフード部分が広く作られていて、そこに丸めて収める方式でした。サイズは身長166cm・体重55kg前後の僕でSがちょうど。厚く着込む時期は少し窮屈かもしれません。
常にザックに入れておく装備なので、たたんだときの形や大きさまで見ておくと後で効きます。店頭で袖を通すだけでなく、収納袋にしまうところまで試させてもらうといいかなと思います。
| 製品 | 税込価格 | 耐水圧 | 透湿性 |
|---|---|---|---|
| モンベル ストームクルーザー ジャケット Men's | 22,000円 | 20,000mm以上 | 40,000g/m²・24hrs |
| ワークマン イナレム ストレッチレインスーツ(上下組) | 5,500円 | 20,000mm | 25,000g/m²・24h |
ひとつ注意すると、上の表はジャケット単体と上下組を並べたものです。モンベルは同素材のレインパンツ(14,000円)を足して上下36,000円前後になるので、価格差はもっと開きます。それでも差が残るのは、主に軽さと生地の薄さ、たたんだときの大きさ。常にザックに入れておく装備なので、続けるつもりがあるなら軽さにお金を払う価値はあります。
気をつけたいのは、ジャケット単体の価格で予算を組んでしまうこと。上下セットでないと横や下から吹き上げる雨に対応できないので、パンツ代を最初から見込んでおいてください。
ユニクロで代用できる装備・スニーカーではダメな装備
手持ちの化繊スポーツウェアは、低山・日帰り・好天という条件つきでかなりの範囲を代用できます。一方で登山靴と雨具、ヘッドランプ、ザックは代用が効きません。

山の服って、専用のを一式そろえないとダメなの? 見た目はふつうの服と変わらない気もするけど。
僕も最初はほとんど手持ちのスポーツウェアでしたよ。ただ、代えがきくものと、どうしても代えがきかないものがはっきり分かれるんです。
その境目、知りたいな。一緒に見ていこうよ。
| 品目 | 代用できるもの | 条件・限界 |
|---|---|---|
| ベースレイヤー | エアリズムなど化繊のスポーツ用インナー | 綿混でないこと。汗の後の休憩では専用品と差が出る |
| Tシャツ・長袖 | 化繊のスポーツウェア全般 | 綿100%は不可 |
| 行動用パンツ | ジャージ、化繊のストレッチパンツ | ジーンズ・綿チノは不可(濡れると重く乾かない) |
| ミドルレイヤー | 手持ちのフリース | ポリエステル製で通気性のあるもの |
| 防風アウター | 防風・耐水のパーカ | 雨具の代わりにはならない。行動中の風よけまで |
| 水筒 | ペットボトル | 保温は効かない。秋や高山では保温ボトルが必要 |
| ザックカバー | 大きめのゴミ袋、防水スタッフバッグ | 本体の濡れは防げないが中身は守れる |
共通するのは、綿かどうかという一点です。綿は吸水すると乾かず、湿ったまま体温を奪い続けます。肌着・靴下・行動着は化繊かメリノウールを選んでください。
僕の初めての富士山も、実は服のほとんどが手持ちでした。上下はテニス用のウィンドブレーカー、インナーは化繊の半袖とヒートテック、防寒着に至ってはスノーボード用のジャケットです。
それで困ったかというと、まったく困りませんでした。山頂ではユニクロのウルトラライトダウンを着ている人も多くて、みんな同じようなことを考えているんだなと妙に安心したのを覚えています。
一方でスニーカーは、代用というより別物です。ソールが柔らかいので石の突き上げが足裏に直接来ますし、パターンが浅く濡れた岩や木道で滑ります。足首を守る構造もありません。
遭難態様のうち転倒と滑落を合わせると全体の36.5%。足元の装備は、道迷いに次いで多いこの事故に直接かかわる装備です。
代用でしのぐ期間は、標高の低い山の日帰りに限るのが安全です。標高2,500mを超える山や稜線に長く出る日は、装備の質がそのまま安全の余裕になります。防寒着と雨具だけは早めに登山用へ寄せてください。
装備一式の総額はいくら?5万円の配分例
低価格帯を選べば、第1層の装備は総額5万円前後でひととおりそろいます。下の配分は防寒着を手持ちのフリースで代用する前提で、代わりに最初から要る登山用ソックスと紙地図を入れています。同じ品目でも上位グレードで固めると10万円を超えるので、差が出るのは主にグレードの選び方です。

一式そろえるのって、やっぱり10万円くらいかかっちゃうの?
グレードしだいですね。命に関わるところに寄せれば5万円前後でも形になりますし、上を見ればきりがないです。配分を見てみましょうか。
| 配分先 | 金額の目安 |
|---|---|
| 登山靴 | 20,900円前後(入門定番モデル) |
| ザック(30L) | 12,100円〜19,500円 |
| レインウェア上下 | 5,500円(低価格帯の上下組)〜 |
| ヘッドランプ | 2,420円 |
| 登山用ソックス | 1,870円〜2,090円 |
| 紙地図 | 1,760円 |
こうして並べると、予算の半分近くが足元とザックに寄ります。ここを削って浮かせたお金で小物をそろえるより、小物を後回しにして靴に回すほうが、結果的に安く済むことが多いです。
| 予算帯 | 想定 | 実際の合計 |
|---|---|---|
| 3万円前後 | 必要最低限・コスパ重視 | 約26,000〜35,000円 |
| 5万円前後 | 今後も続けるつもりの人 | 約45,000〜63,000円 |
| 8万円前後 | 長期使用を想定 | 約65,000〜95,000円 |
見落としやすいのが小物の積み上げで、三種の神器だけで見積もった金額から5,000円〜15,000円ほど上振れしやすいと言われます。ソックスや地図、行動食まで数えておくと当日あわてません。
それから、装備以外にかかるお金もあります。富士山の吉田ルートは入山料が1人1回4,000円、地図アプリの有料プランは年5,700円、ココヘリは入会金3,300円と年会費6,600円といった具合です。
このあたりは装備というより、山に行くための固定費に近い感覚ですね。交通費や駐車場代、下山後のお風呂代も山行ごとに乗ってきます。
ここに挙げた価格はいずれも2026年8月時点の目安です。改定されることがあるので、最終的な金額は各メーカーや事業者の公式サイトでご確認ください。
レンタルは1回いくら?どこで買うか
宅配レンタルのセットは1泊2日で13,500円前後から、フル装備で24,000円ほど。2〜3回登る見込みがあるなら、買ったほうが安くなる品目が多いという分かれ目になります。
続くか分からないうちに全部買うのは、ちょっと勇気がいるよね。
分かります。1回だけ試したいならレンタルは合理的ですよ。ただ、靴だけは事情が違うんです。
| 事業者・プラン | 料金(税込) | 内容 |
|---|---|---|
| やまどうぐレンタル屋 まるごと6点セット | 13,500円〜(1泊2日) | 標準グレード。ゴアテックス指定は上位料金 |
| やまどうぐレンタル屋 まるごと7点セット | 16,000円〜(1泊2日) | 標準グレード |
| やまどうぐレンタル屋 フルサポート12点セット | 24,000円〜(1泊2日) | 装備をほぼ全部借りる構成 |
| やまどうぐレンタル屋 単品 | レインウェア3,000円〜/ザック3,500円〜/シューズ4,500円〜 | 足りないものだけ借りる使い方 |
| そらのした はじめての富士山登山セット(メンズ・7点) | 18,015円(1〜2泊) | ザック・雨具・靴・ヘッドランプ・ポール・スパッツ・ダウン |
利用時の条件も先に見ておくと安心です。やまどうぐレンタル屋はレンタル総額が1万円以上なら送料も返送料も無料。そらのしたは保証金5,000円と保険料500円が別途必要で、延滞は1日1,650円かかります。
配送は利用の3日前に届く運用が多く、直前で予定が動く人は日程に縛られる点が共通の弱点です。ここに挙げた料金や条件は2026年8月時点の公開情報なので、申し込み前に各社の公式サイトでご確認くださいね。
レンタルが向くのは、富士登山のような単発の目標がある場合や、保管場所がない場合ですね。逆に向かないのは、これから何度も登るつもりの人です。
いちばんの弱点は登山靴で、レンタルはサイズを指定できても、履き比べて足に合う1足を選ぶことまではできません。足に合う靴を探す作業だけは自分でやるしかないので、靴だけは買う、他は借りるという組み合わせも現実的です。
買う場所は、最初の1回に限れば専門店をおすすめします。足長・足囲の計測や傾斜台での確認、インソールの調整まで受けられるのは、やはり店頭ならではです。
| 買う場所 | 強み | 注意点 |
|---|---|---|
| 登山用品専門店(石井スポーツ・好日山荘など) | 計測・試着などフィッティングを受けられる | 取り扱いブランドは店によって異なる |
| メーカー直営店 | グレードの違いを比較しやすい | 他社製品は置かれないことがある |
| ワークマン等 | 上下組のレインスーツが5,500円水準 | 登山専用設計ではなく軽量性で劣る |
| オンライン | 価格比較がしやすく在庫が豊富 | 登山靴は避ける。ザックも背面長の確認が要る |
| アウトレット | 値引き品でも店頭ならフィッティング可 | 登山靴の型落ちは経年劣化に注意 |
アウトレットは、春夏物が2月〜3月、秋冬物が8月〜9月に入れ替わって商品が回りやすい時期です。ただし靴のソールは保管中も劣化するので、古い型を安さだけで選ぶのは避けてください。
富士登山の追加装備リスト、3点ないと入山不可
富士山の吉田ルートでは、防寒具・上下セパレートの雨具・登山に適した靴の3点がそろわないと五合目ゲートを通れません。あった方がよい装備ではなく、入山の条件です。(出典:富士登山オフィシャルサイト(富士山における適正利用推進協議会)『吉田ルートの通行規制』)

| 項目 | 内容(2026年シーズン・吉田ルート) |
|---|---|
| 入山料 | 1人1回 4,000円 |
| 開山期間 | 7月1日〜9月10日 |
| ゲート閉鎖時間 | 14:00〜翌3:00(山小屋宿泊者を除く) |
| 1日の上限人数 | 4,000人(山小屋宿泊者を除く) |
| 必須装備 | 防寒具/上下セパレート式の雨具/登山に適した靴 |
この3点が条件になっているのは、山頂の環境が理由です。気象庁の平年値では、富士山の8月の日平均気温は6.4℃、日最低気温は3.8℃。平地の真冬に近い数字で、風が加われば体感はさらに下がります。(出典:気象庁『富士山 平年値(年・月ごとの値)』)
僕が登った日も、八合目のあたりで気温は5度を切っていました。下では暑いと感じていたのに、上では本当に寒い。山頂に着いた時点でヒートテックを1枚着替えて、汗冷えを止めました。
ご来光を待つあいだは、ヒートテックにパーカー、その上へ防寒着とレインウェアを重ねたフル装備でした。下も防寒着のズボンとウィンドブレーカーの2枚重ねです。乾きやすい上着を多めに持っていったのが、結果的にいちばん効きました。
ヘッドランプも実質は必須です。ご来光を目指すなら深夜に山小屋を出ることになり、僕のときは2時起き、2時半出発でした。真っ暗な登山道にヘッドライトの列が続いていく光景は今でも覚えています。
行程の実感も書いておきます。五合目から七合目までは1時間ほどでしたが、七合目から八合目は約2時間かかりました。岩場の段差が長く続くこの区間が、いちばんつらかったです。
ご来光アタックは道幅が2人ぶんしかなく、渋滞でほとんど進まない時間が続きます。歩いているあいだは体が温まりますが、止まると一気に冷えます。防寒着が効いてくるのは、この止まっている時間です。
- 手袋: 八合目以降の岩場と、日の出前の冷え込みの両方に効く
- スパッツ(ゲイター): 下山の砂礫帯で靴に砂が入るのを防ぐ
- 現金: 山小屋のトイレや飲料の購入で必要になる場面がある
- ザックは25〜30Lが目安。日帰り装備より防寒着がかさばる
開山期間の外は、山小屋もトイレも救護所も使えません。装備をどれだけ整えても支援を受けられない時期がある、というのは頭に入れておきたいところです。
入山のルールや料金は年ごとに変わります。出発前に富士登山オフィシャルサイトなど公式の一次情報で最新の内容をご確認ください。
登山初心者の装備一式でよくある質問
装備一式は登山の何日前までにそろえればいいですか?
登山靴だけは、本番の2〜3週間前までに買っておくのがおすすめです。買ってすぐ本番で履くと当たる場所が分からず、靴擦れの原因になります。近所の散歩や低山で数回履き慣らしておくと、痛くなる場所を先に見つけられますよ。他の装備は直前でも間に合いますが、ヘッドランプの点灯確認とレインウェアの試着だけは前日までに済ませておいてください。
登山靴のサイズは普段の靴と同じでいいですか?
同じとは限りません。普段27cmを履いている人の足長の実測が25cmだった、という例もあるくらいなので、まずは店舗で足長と足囲を測ってもらうのが確実です。小さすぎると下りでつま先が当たって爪が内出血し、大きすぎるとかかとが動いて靴擦れになります。ミドルカットをジャストサイズで選んだ結果、歩行中にくるぶしのフック金具が当たって痛くなった例もあります。僕の場合は普段25cmで登山靴も25cmでしたが、本番で履く厚手の登山用ソックスを履いた状態で試着して決めました。
レンタルと購入はどこで損益が分かれますか?
ざっくり2〜3回だと思ってください。装備一式のレンタルは1泊2日で13,500円〜24,000円ほど。低価格帯の靴・ザック・雨具をそろえると38,500円前後なので、フルセットを借りるなら2回、いちばん安いセットなら3回で購入額に並ぶ計算です。年に何度か登るつもりなら、購入のほうが有利になる品目が多いです。ただし登山靴だけは事情が違って、レンタルはサイズを指定できても、履き比べて足に合う1足を選ぶことまではできません。逆に、装備の保管場所がない場合や、高価なゴアテックス製品を1回だけ使いたい場合はレンタルが向きます。
地図アプリの無料プランだけで足りますか?
低山の日帰りを数回試す間は無料プランでも歩けますが、地図のダウンロード数に月あたりの上限があるなど制約はあります。有料プランは年5,700円ほどで、地図のダウンロードが無制限になり、見守り通知などの機能も使えます。どちらを選ぶ場合でも、遭難でいちばん多いのは道迷いです。電池切れに備えて、紙の地図とモバイルバッテリーは併用してください。
登山届や捜索サービスは初心者でも必要ですか?
登山届は出しておくべきだと思います。長野県では登山安全条例で指定登山道を通行する場合の提出が義務づけられていますし、オンラインで提出でき費用もかかりません。遭難したときに捜索の開始が早まる効果があります。発信機で捜索してもらえるココヘリは入会金3,300円と年会費6,600円で、行く山域や頻度を見ながら検討するとよいかなと思います。
登山の装備一式は「三種の神器+2」から始める
結局、最初に買うのは3つでいいってことだよね?
はい、靴とザックと雨具ですね。あとはヘッドランプと防寒着。残りは登ってみて、足りないと感じたものから足していけば大丈夫ですよ。
装備一式は、全部そろえてから登るものではありません。命に関わる層に予算を寄せて、あとは手持ちの化繊ウェアでしのぎながら、自分に必要なものを見つけていくのがいちばん無駄がないやり方です。

- 最初に買うのは登山靴・ザック・レインウェア。ヘッドランプと防寒着まで含めた5つが第1層
- 登山靴は店で足長・足囲を計測し、本番用ソックスで試着する。つま先に約1cmの余裕を確認
- ザックは日帰り20〜30L。容量より背面長の適合とヒップベルトの有無を優先する
- 雨具は上下セパレートで耐水圧20,000mm以上・透湿性10,000g/m²・24hrs以上が目安
- 化繊のスポーツウェアは代用できるが、綿とスニーカーは避ける
- 低価格帯なら総額5万円前後。1回だけ試すならレンタルは1泊2日13,500円前後から
- 富士山の吉田ルートは防寒具・上下セパレートの雨具・登山に適した靴の3点がないと通行できない
ここに書いた金額や数値は、あくまで2026年8月時点の一般的な目安です。制度や価格は変わりますし、体力や登る山によって必要な装備も変わります。最新の情報は各メーカーや自治体の公式サイトでご確認ください。
そのうえで、体調や持病に不安があるときは、無理せず専門家にご相談を。山は逃げませんから、引き返す勇気も装備のひとつだと思っています。あなたの最初の一歩が、いい一日になりますように。
