こんにちは、YAMA-GO編集部のりょうです。関西を拠点に、北アルプスを中心にULスタイルで山を楽しんでいます。このブログ「YAMA-GO」では、実際に使ったギアのレビューや選び方、山のノウハウなんかを発信しています。
登山の地図とコンパスって、覚えることが多すぎて手が止まりませんか。等高線の読み方から始まる解説を開くたびに、結局スマホのアプリだけでいいか、となってしまう気持ちはよく分かります。
先に結論を言うと、メインの地図はGPSアプリでよくて、紙地図とコンパスはスマホが死んだときの保険です。保険として持つなら、覚える操作は3つだけで足ります。この記事では、その3操作の手順と前の晩の地図の準備、コンパスの選び方と練習の順番までをまとめます。
- 覚えるのは整置・方角出し・現在地特定の3操作だけでいい理由
- 3操作それぞれの手順と、山のどの場面で使うか
- 磁北線の引き方3通りと、偏角を無視したときのずれ幅
- 軽さと予算で選ぶコンパスと、自宅から始める6段階の練習
登山の地図とコンパスは3操作だけ
登山の地図とコンパスで覚えるべきなのは、整置・方角出し・現在地特定という3つの操作だけです。読図の教本は地形の読み方から丁寧に積み上げていきますが、アプリを主役にする前提なら、そこまで背負い込まなくても使い始められます。

3つを並べると、役割も、覚えるのにかかる手間もはっきり違います。まずは全体像だけ眺めてみてください。
| 操作 | 何のためにやるか | 必要な条件 | 手順の数 | 山で使う頻度の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 整置(地図の向きを合わせる) | 目の前の尾根・谷・分岐が地図のどれかを対応づける | コンパスと地図だけ。視界も現在地も不要 | 2ステップ | 分岐・休憩・展望地のたびに数十秒 |
| 方角出し(進む先を決める) | 分岐でどちらへ進むか決める、視界不良で方向を保つ | 現在地が分かっていること | 5ステップ | 分岐やルートの不明瞭な区間で必要なとき |
| クロスベアリング(現在地特定) | 現在地を見失ったときに2つの目標から位置を割り出す | 地図上で特定できる目標が2つ以上見えていること | 目標1つにつき作図1本×2回 | 通常の山行ではほぼ使わない非常時の技術 |
この表で大事なのは、整置だけが前提条件を持たないところです。現在地が分からなくても、ガスで視界がなくても成立するので、最初に覚える価値があります。
逆にクロスベアリングは、周りの山や鉄塔が見えていることが前提の技術です。ガスや樹林の中では成立しませんので、これ一本に頼る設計にはできないんですよね。
整置と方角出しは迷う前に使う技術、クロスベアリングは迷った後に使う技術。この順番で覚えると挫折しにくいです。
警察庁がまとめた令和7年の山岳遭難では、態様別で道迷いが30.9%と最も多く、次いで転倒19.2%、滑落17.3%でした。遭難のすべてが道迷いから始まるわけではありませんが、単独の態様としては道迷いが最も多く、まず道を外さないことが対策の軸になると分かります。(出典:警察庁『令和7年における山岳遭難の概況』)
同じ資料で警察庁は、装備として「地図(登山地図アプリを含む。)」と「コンパス」の両方を挙げています。アプリがあればコンパスは要らない、という整理は公的な案内には出てきません。
地図とコンパスって、山に来る人はみんな使いこなしてるものなの?
僕も全部は使えないですよ。ただ、分岐で地図の向きを合わせるのだけは癖にしていて、これが一番出番が多いです。
じゃあ、その3つを順番に見ていこうよ!
3操作の使い方を手順で覚える
3操作は、手を動かす回数がまったく違います。整置は2ステップ、方角出しは5ステップ、現在地特定は作図を2回。ここではメーカー公式の手順に沿って、そのまま真似できる形で並べます。

道具はプレートコンパスと地図だけです。家の机の上でもなぞれるので、山に行く前に一度やっておくと現地での戸惑いが減りますよ。
整置は2ステップで地形に合わせる
整置は、地図の上辺(北側)を実際の北に向けるだけの操作です。スントの公式ガイドでも、手順は次の2ステップしかありません。
- コンパスを水平に持ち、磁針の赤い側を見て北がどちらかを確認する
- 地図の上辺(北側)が北を向くように地図を回す
これで周りの尾根や谷の並びが、地図と同じ向きに揃います。実際には、ベースプレートの縁を地図の磁北線に沿わせて置き、磁針と磁北線が平行になるまで地図ごと自分が回るやり方がよく使われます。
慣れないうちは地図だけをくるくる回してしまいがちですが、地図はまっすぐ持ったまま自分が回るほうが、目の前の地形との対応が頭に入りやすいです。
使う場面は分岐と休憩、それに展望が開けた場所。ひとつ数十秒で終わるので、分岐に着いたら一度やる、くらいの頻度でも十分に効きます。
机の上で試すときは、パソコンやスマホ、金属の脚から離れた場所で確認してください。室内は磁針が狂いやすく、正しくできているのかどうかが分からなくなります。
方角出しは5ステップで進む先を決める
地図から進む方角を出す操作は、現在地が分かっていることが前提です。分岐でどちらへ進むか決めたいとき、視界が悪くて方向を保ちたいときに使います。
- 出発点Aと目標Bの間に、進行線がBを向くようにコンパスを地図の上に置く
- カプセル内の導線が地図の磁北線と平行になり、カプセルのNが地図の北を向くまでカプセルを回す
- コンパスを腰の高さで水平に持ち、磁針と導矢が重なるまで自分の体ごと回る
- 進行線の先に見える目標物(木・岩・ピークなど)を選び、それを目印にして歩く
- 地形の目印と地図を照らし合わせながら、進み具合を確認する
シルバが公開している「1-2-3システム」も、呼び方が違うだけで中身は同じ流れです。地図に当てる、カプセルを回す、体を回す。この3拍子で覚えると忘れにくいですよ。
気をつけたいのは、磁北線を引いていない地図を使う場合です。手順3のあとに偏角を補正する操作が3つ増えるので、現地で思い出す負担が一気に上がります。
だから前の晩に磁北線を引いておくと、この5ステップがそのまま使えます。準備の話は次の章でまとめますね。
クロスベアリングで現在地を特定する
クロスベアリングは、見えている2つの目標から現在地を割り出す技術です。裏を返すと、目標が見えていないと何もできません。
原理はシンプルです。ある目標への方位角を測り、地図上でその目標から同じ角度の線を引くと、自分はその線上のどこかにいることになります。別の目標でもう1本引けば、交わった点が現在地です。
- 目標物Aに進行線を向け、磁針と導矢が重なるまでカプセルを回す
- コンパスを地図に移し、導線を磁北線と平行にしたまま、ベースプレートの縁を地図上のAに当てて線を引く
- 別の目標物Bで同じことを繰り返す
- 2本の線が交わった点が現在地
目標に選ぶのは、山頂・鞍部・鉄塔・橋のように地図上で1点に決まる地物です。連なった山並みや広い樹林を選ぶと線がぶれて、交点が定まりません。
精度のコツは角度にあって、2目標なら交わる角度が90度に近いほど誤差が小さくなります。3本引いて1点で交わらないときにできる小さな三角形は、そのまま測定の誤差の大きさだと思ってください。
実感としては、この技術がいちばん欲しい日ほど使えません。紅葉の時期に穂高へ行ったときは霧が流れていて、標柱の立つピークに着いても周りは真っ白でした。目標が見えなければ、作図のしようがないんですよね。
なので僕は、クロスベアリングを非常時の保険として最後に置いています。まず整置と方角出しで迷わないようにするのが本筋かなと思います。
山行前夜の準備で3操作が楽になる
山での手数は、前の晩の準備でほとんど決まります。磁北線を引いた地図を用意しておけば、現地での偏角の補正操作が丸ごと要らなくなるからです。

といっても、地理院地図の機能を使えば作図の手間はゼロです。やることは、どの地図を印刷するか決めて、磁北線を出して、袋に入れるだけですね。
地形図と山と高原地図はどちらを印刷
初めて紙地図を用意するなら、地理院地図で磁北線を表示して印刷するのが一番手軽です。ブラウザで開けて無料で、作図の手間もかかりません。
とはいえ、市販の登山地図にしかない情報もあります。まずは性格の違いを整理しておきます。
| 地図 | 縮尺 | 価格の目安 | 得意なこと |
|---|---|---|---|
| 2万5千分1地形図(紙) | 2万5千分1 | 3色版356円・多色版854円 | 等高線が細かく、地形の読み取りに強い |
| 電子地形図25000(オンライン) | 2万5千分1 | 1ファイル483円から | 歩く範囲を任意に指定でき、図郭の切れ目を気にしない |
| 地理院地図(ウェブ) | 表示で切り替え | 無料 | 磁北線の表示、印刷、画像保存ができる |
| 山と高原地図(昭文社) | 5万分の1が基本 | 1冊1,760円 | 登山道・コースタイム・危険箇所の注記が載る |
細かい地形を読みたいなら地形図、コースタイムや注記が欲しいなら山と高原地図、という住み分けです。等高線の細かさは、2万5千分1が主曲線10m・計曲線50mごとなのに対し、5万分の1では20mと100mごとになります。
同じ地形でも線の数が半分になるので、支尾根の分かれ方までは追いにくくなります。歩く山域が決まっているなら地形図を印刷して、コースタイムはアプリや市販の登山地図で補うのが現実的かなと思います。
紙の地形図は決まった範囲で刊行されるため、歩く山域が境目にかかると2枚必要になることがあります。この切れ目が気になるときに、任意の範囲を指定できる電子地形図が効いてきますよ。
磁北線の引き方は3通りから選ぶ
磁北線の用意は3通りあって、手間ゼロで済むのは地理院地図で表示して印刷する方法です。市販の登山地図に引くなら、分度器か縦横の比で作図します。
| 準備の方法 | 必要な道具 | かかる手間 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 地理院地図で磁北線を表示して印刷 | PCとプリンタ(コンビニ印刷でも可) | 表示を切り替えるだけ | 初めて紙地図を用意する人 |
| 市販の登山地図に自分で引く | 定規と分度器(縦横の比でも可) | 1枚あたり数分〜十数分 | 山と高原地図を使う人 |
| 引かずにコンパスの偏差目盛で補正する | 偏差対応目盛の付いたコンパス | 目標を変えるたびに操作が3ステップ増える | 現地で急に読図が必要になった人 |
分度器で引く場合は、地図の下辺に0度と90度を合わせて偏角の角度の位置に印を付け、基準の角と結びます。1本引けたら、あとは定規で平行線を必要な本数だけ写していくだけです。
分度器がなくても、横に10cm進むあいだに縦へ決まった分だけ下げた点を結べば、同じ傾きの線になります。線の間隔は4〜5cm前後にしておくと、地図のどこにコンパスを置いても近くに線があって扱いやすいですよ。
印刷はA4かA3で、折り目の位置に分岐が来ないかだけ見ておくと安心です。タイトル欄に山名と日付、それに偏角の値を入れておくと、現地で思い出す手間がなくなります。
濡れ対策はジッパー付きの保存袋かマップケースで十分です。同じ範囲をもう1枚刷って、ザックの別の場所に入れておくと、風で飛ばされたときの保険になります。
偏角を無視すると1kmで約133mずれる
日本のコンパスは真北ではなく磁北を指すので、補正しないまま1km直進すると東京近郊で約133m横にずれます。尾根の幅が100mもない場所なら、尾根から外れて隣の支尾根に入り込んでもおかしくない距離です。
ずれ方は地域によって違います。代表的な値を並べておきます。
| 地域(偏角・2020年値) | 1km進んだときの横ずれ |
|---|---|
| 那覇(5.5度) | 約96m |
| 東京・横浜・大阪(7.6度) | 約133m |
| 全国平均(7.8度) | 約137m |
| 長野・名古屋(8.0度) | 約141m |
| 札幌(9.7度) | 約171m |
| 北海道中頓別町内(11.2度・国内最大) | 約198m |
いちばん小さい那覇でも100m近くずれるので、日本は西偏が小さいから無視していい、という判断は成り立ちません。逆に言えば、500mで気づいて引き返せばずれは半分(東京近郊で約67m)で済みます。
早めに違和感を持つほど、傷が浅く済むということですね。ガスの中を直進するときほど、この差が効いてきます。
地形図の余白には「磁針方位は西偏約○度○分」と、刊行時点の値が書かれています。ただし偏角は動いていて、全国平均で50年に約1.4度、直近の5年でも約0.3度大きくなりました。(出典:国土地理院『磁気図』)
古い地形図の表記をそのまま信じると、その分だけずれます。数字を追いかけるのが面倒なら、地理院地図の磁北線表示に任せてしまうのが早いです。
関連記事:登山届の出し方
GPSアプリがあれば紙地図はいらないのか
答えは「メインはアプリでいい、でも紙地図とコンパスは外さない」です。警察庁も装備に地図(登山地図アプリを含む)とコンパスの両方を挙げ、併用が道迷いの防止につながるとしています。

よく誤解されますが、アプリが弱いのは電波ではありません。衛星測位は携帯の通信網を使わない仕組みなので、圏外でも現在地そのものは出ます。ただし深い谷や尾根の陰、密な樹林の下では衛星の電波が届きにくく、誤差が大きくなったり測位できないことがあります。困るのは地図画像の取得と、位置情報の送信のほうです。
だから入山前に、歩く範囲の地図をダウンロードしておくのが前提になります。ここまではアプリの運用の話で、紙地図の出番はもう少し先ですね。
| 場面 | スマホアプリでできること | 紙地図+コンパスの役割 |
|---|---|---|
| 計画時(自宅) | ルート作成、コースタイムの見積り、地図のダウンロード | 全体像の把握、エスケープルートと分岐の確認、磁北線入りの印刷 |
| 順調に歩いている間 | 現在地とルートの表示、ログの記録 | ザックの雨蓋などに入れて携行。基本は使わない |
| 分岐・迷いやすい地形 | 現在地を点で確認 | 整置して周囲の地形と対応づけ、進む尾根・谷を先に決める |
| ガス・視界不良 | 現在地は分かるが周囲の地形は見えない | 進行方向をコンパスにセットして方角を保つ |
| 電池切れ・故障・低温停止 | 何もできない | 整置・方角出し・(視界があれば)現在地特定 |
こうして並べると、アプリと紙地図は競合していないと分かります。アプリは現在地を点で教えてくれて、紙地図は周りの地形を面で見せてくれる。役割がそもそも違うんですよね。
スマホがあれば全部わかるんじゃないの?
位置は分かるんですけど、電池が切れたら手元に何も残らないんですよ。それに紙地図は計画のときの全体像や、分岐で周りの地形と対応づけるのにも使うので、理由はひとつじゃないですね。
スマホが死んだ時に残る紙地図の役割
紙地図とコンパスを持つ理由は圏外対策ではなく、端末が死んだときに手元に何も残らないことへの備えです。
端末が使えなくなる条件はいくつもあります。電池切れ、寒さによる電源断、落下や水没での破損、ログを取り続けることによる消費の増加。どれもアプリの課金では解決しません。
実際、僕がヤマレコに残した山行記録も、2日目のログが新村橋から先しか残っておらず、時刻もずれていました。行動自体は無事に終わりましたが、記録が欠けること自体は普通に起こります。
備えの重さも見ておきます。印刷した地形図は数グラム、コンパスは20〜35g程度で、シルバのNo.3で33gです。予備のモバイルバッテリーが200g前後であることを思えば、UL志向でも落としにくい重さかなと思います。
バッテリーで粘るのが本線ではあります。ヤマレコの公式も予備に10,000mAh以上をすすめていますし、圏外で電波を探し続ける動作を止める機内モードの使い方も案内されています。
そのうえで紙地図は、電源が尽きた先に残る最後の1枚です。ただし持っているだけで安全になる道具ではありません。完全に現在地を見失ってから位置を出すには視界と慣れが要るので、やはり迷う前の整置が効きます。
関連記事:登山アプリ比較|YAMAPとヤマレコどっち?実使用歴から解説
紙地図・コンパスに加えてGPS専用時計という選択肢も気になる方は、日帰り・縦走・雨天・冬山の条件別に必要性を整理した記事もあわせてどうぞ。
関連記事:登山にGPS時計は必要?スマホで足りる人・買うべき人の分かれ目
紙地図を保険にする前提として、圏外でもスマホのGPSが使える仕組みと出発前の準備を知っておくと判断しやすくなります。
関連記事:圏外でのスマホGPSの仕組みと出発前の準備
プレートコンパスはどれを買えばいい
3操作に必要な機能は3つだけです。透明なベースプレート、回転カプセルの導線と導矢、直線の縁とスケール。この3つを備えたベースプレート型なら、入門機でも3操作はできます。
ミラーやルーペ、蓄光の目盛は、あれば便利ですが3操作の成立条件ではありません。最初の1本は、機能を足すより持ち出しやすさで選ぶのがいいかなと思います。
軽さ20〜35gと壊れにくさで選ぶ
アプリを主役にする運用では、コンパスは保険です。毎回ザックに入れっぱなしにする前提なら、選ぶ基準は価格より軽さ(20〜35g前後)と壊れにくさになります。
そのうえで、3操作に効く機能とそうでない機能を切り分けておきます。
| 機能 | 3操作のどこで使うか | 無いとどうなるか |
|---|---|---|
| 透明なベースプレート | 地図に重ねて2点を結ぶ・磁北線に沿わせる | 地図の上で作業できず、方角出しと現在地特定が成立しない |
| 回転カプセルと導線・導矢 | 地図で作った角度を保持したまま体を回す | 角度を記憶できず、歩く間に方向を保てない |
| 直線の縁とスケール | 現在地と目標を結ぶ、地図上の距離を測る | 作図ができず距離感も出ない |
| 偏差(偏角)対応目盛 | 磁北線を引いていない地図での補正 | 家で磁北線を引いておけば代用できる |
定番はシルバのNo.3 Blackです。長さ108mm・幅54mm・質量33gで、使用できる温度は摂氏マイナス20度から60度まで。偏差対応目盛も付いています。
ベースプレートコンパスの原型にあたるモデルなので、迷ったときの基準にしやすい1本です。カプセル底の線は北側だけが赤く着色されていて、逆向きに合わせる誤操作を防ぐ作りになっています。
シルバ(SILVA)No.3 Black
ベースプレートコンパスの原型にあたる標準モデル。33gで偏差対応目盛付き、3操作にそのまま使えます
価格目安:4,950円(税込・2026年8月時点の公式価格)
もう少し価格を抑えたいなら、スントのA-10 NHという選択肢もあります。フィンランド製で限定生涯保証が付き、ベースプレートにはメートル法とヤード・ポンド法の両方のスケールが赤で印刷されています。
選ぶときは北半球用(NH)かどうかだけ必ず確認してください。磁気ゾーンの違う南半球用(SH)は、日本では磁針が傾いて安定しにくく、方角を読み取りづらくなります(全世界対応の磁針を積んだ上位モデルなら、どちらの半球でも使えます)。(出典:SUUNTO 公式サポート『Understanding balancing zones』)
スント(SUUNTO)A-10 NH
日本で使う北半球用のベースプレート型。限定生涯保証付きで、最初の1本の価格を抑えたい人向けです
価格目安:3,740円(2026年8月時点・価格比較サイト調べ。販売店により変わります)
僕はULスタイルで道具を選ぶので、軽さと安全性のバランスをいつも見ています。ただ、数十グラムで保険がひとつ増えるコンパスは、削る対象には入れていません。
予算帯と買って後悔しやすい例
価格の目安は、3,000〜5,000円台の標準クラスなら、3操作に必要な機能がひととおりそろっていて長く使いやすいというところです。3操作だけなら2,000円台の入門機でも足ります。
| 予算 | 選択肢の性格 | 補足 |
|---|---|---|
| 2,000〜3,000円台 | 入門クラスのベースプレート型 | 3操作には足りる。目盛の刻みやスケールの種類は上位機に劣る |
| 3,000〜5,000円台 | 標準クラス(スントA-10 NHが3,740円、シルバNo.7 Classicが4,070円、No.3 Blackが4,950円) | 偏差対応目盛や複数の縮尺スケールが付く中心価格帯 |
| 6,000円以上 | ミラー付きサイティング、ミリタリー系、競技用(上位は17,600円まで) | 精密な方位測定や競技用。3操作を覚える目的では過剰 |
紙の地形図が3色版で356円、山と高原地図が1冊1,760円なので、地図とコンパスを一式そろえても初期費用は5,000円前後から組めます。趣味の道具としては、かなり控えめな部類ですよね。(出典:国土地理院『紙地図(2万5千分1地形図など)』)
そのうえで、買ってから後悔しやすいパターンを挙げておきます。
- スマホの方位磁石アプリで代用する(磁気センサーはケースや内蔵部品の影響を受けやすく、そもそも端末が死んだときの保険にならない)
- 針が回るだけのキーホルダー型を買う(方角は分かるが地図に当てて角度を作れず、3操作のうち2つができない)
- 南半球用など磁気ゾーンの違う個体を選ぶ(磁針が傾いて安定しない)
- ミラー付きの上位機を最初に買い、かさばって持ち出さなくなる
- スケールが1種類しかない機種で、手持ちの地図の縮尺(2万5千分1と5万分の1)に合わない
もうひとつ、持ち方の落とし穴があります。磁石入りのスマホケースと同じポケットで運用すると、磁針のN極とS極が入れ替わることがあります。針が逆を指したままだと、180度違う方向へ歩くことになります。
山に入る前に、太陽の方角や分かっている地形で南北が正しいか確かめる。腕時計や鍵、金属フレームの眼鏡からも離して使う。これだけで防げるので、癖にしておくと安心です。
読図の練習は自宅から低山まで6段階
練習は段階3まで山に入らずにできます。いきなり山で全部やろうとすると挫折しやすいので、条件のやさしい場所から積み上げるのがおすすめです。

| 段階 | 場所 | 練習すること | 正解の確かめ方 |
|---|---|---|---|
| 1 | 自宅の机 | 磁北線を引く、または地理院地図で表示して印刷する。各部の名称と導線・導矢の位置を確認する | 引いた線が地形図の欄外の磁針方位と合っているか |
| 2 | 自宅の窓際・ベランダ | 整置(2ステップ)。見えている建物や山が、地図でも同じ方向にあるか確かめる | 遠くの目印の方角と地図上の方角の一致 |
| 3 | 近所の道路・公園 | 方角出し(5ステップ)。交差点や分岐、カーブを目標にセットする | 進行線の先に狙った道・建物が来るか |
| 4 | 見晴らしのよい公園・河川敷 | クロスベアリング。位置が分かっている場所で、遠くの2目標から作図する | 交点と実際の立ち位置のずれ |
| 5 | 標識の整った低山 | 分岐ごとに整置して、次に進む尾根・谷を先に言葉にしてから進む | アプリの現在地表示で答え合わせ |
| 6 | 同じ低山の再訪 | アプリを見ずに歩き、分岐でだけ答え合わせする | 下山後にGPSログと予定ルートを重ねて確認 |
段階5と6のいいところは、アプリで答え合わせができることです。紙地図とコンパスで出した推定と、アプリが示す現在地のずれを見れば、自分の読図の誤差が分かります。
独学の教材は公式のものが揃っています。シルバの日本総代理店は整置編と1-2-3システム編の解説動画を無料で公開していますし、スントは公式のユーザーガイドで偏角の補正や距離の測り方まで図つきで示しています。
対面で習いたい場合は、モンベルが「山歩き講習会 はじめての地図読み編」を各地で開いています。2026年8月時点の告知では、上野恩賜公園が5,800円、丹沢弘法山が10,500円、筑波山が11,300円でした。
この講習はコンパスを各自で持参する前提なので、申し込む前に1本用意しておいてください。開催地や参加費は回によって変わるので、最新の内容は公式サイトでご確認くださいね。
つまずきやすいのは、整置で地図だけを回してしまうこと、室内の磁気で磁針が狂うこと、それに練習したまま次の山行まで数か月あいて忘れてしまうことです。
忘れ対策は習慣化しかないかなと思います。僕も槍ヶ岳へ向かった新穂高のルートで、入口も看板も分かりにくいショートカットの分岐に入り込んで、時短にならないうえに険しい道を登ることになりました。
涸沢からザイテングラートへ上がったときも、知らないまま雪渓を横切る直登ルートへ入ってしまったことがあります。どちらも地図を見ていなかったわけではなく、分岐で立ち止まって地形と突き合わせていなかっただけでした。
分岐ごとに整置するを習慣にしておけば、山行のたびに練習になります。特別な時間を取らなくていいので、これがいちばん続きますよ。
登山の地図とコンパスの使い方でよくある質問
スマホの方位磁石アプリでコンパスの代わりになりますか?
保険という目的では代わりになりません。端末の磁気センサーは金属ケースや内蔵部品の影響を受けやすく、キャリブレーションの操作も必要です。そもそもスマホが電池切れや故障で使えなくなったときの備えなので、電源の要らないアナログのプレートコンパスを別に持つ意味があります。
紙の地図はどこで手に入りますか。費用はどれくらいですか?
国土地理院の紙の地形図は、全国の地図取扱書店と日本地図センターの通信販売で買えます。2万5千分1の3色版が1枚356円、市販の山と高原地図が1冊1,760円が目安です。費用をかけたくなければ、地理院地図をブラウザで開いて必要な範囲を印刷する方法もあります。価格は改定されることがあるので、最新は公式サイトでご確認ください。
磁北線を引いていない地図しか手元にないときはどうしますか?
偏差(偏角)対応目盛の付いたコンパスがあれば、その場で補正しながら使えます。ただし目標を変えるたびに操作が3ステップ増えます。時間があるなら地図に磁北線を引くか、地理院地図で磁北線を表示して印刷し直すほうが、現地の手数は確実に減ります。
クロスベアリングは初心者でも覚えるべきですか?
優先順位は最後で大丈夫です。整置と方角出しは迷う前に使う技術で出番も多いのに対し、クロスベアリングは現在地を見失った後に使う非常時の技術です。しかも周りの目標が見えていることが前提なので、まず前の2つを体に入れてから、見晴らしのよい公園で試すくらいの順番がおすすめです。
コンパスはザックのどこに入れておけばいいですか?
取り出しやすい雨蓋やポケットが使いやすいですが、磁石入りのスマホケースや鍵、金属の小物と同じ場所に入れるのは避けてください。強い磁界にさらされると磁針の極が入れ替わることがあります。使うときも腕時計やスマホから離し、山に入る前に南北が正しいか一度確かめておくと安心です。
地図とコンパスは3操作から始めよう
結局、覚えるのは3つだけでよかったんだね。
そうなんですよ。全部を完璧にしようとすると続かないので、まずは整置からで十分かなと思います。
この記事の要点を振り返ります。メインの地図はGPSアプリでよくて、紙地図とコンパスはスマホが死んだときの保険。だからこそ、覚える操作は3つに絞れます。

- 覚えるのは整置(2ステップ)・方角出し(5ステップ)・クロスベアリング(作図2回)の3操作だけ
- 整置は前提条件がなく出番も多い。最初の1つはここから覚える
- 前の晩に磁北線を引く、または地理院地図で表示して印刷すると、現地の補正操作が要らなくなる
- 偏角を無視すると1km直進で東京近郊なら約133mずれる。500mで気づけば半分で済む
- コンパスは3,000〜5,000円台の標準クラスで十分。北半球用を選び、磁石入りのケースから離して持つ
- 練習は自宅の机から始めて6段階。段階3までは山に入らずにできる
地図もコンパスも、持っているだけで安全になる道具ではありません。価格や仕様は変わることがあるので最新は公式サイトで確認して、ルートや天候の判断に迷うときは無理をせず引き返す選択と、山岳ガイドなど専門家への相談も検討してみてください。
