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冬の登山は日照時間から計画する|下山時刻と行動時間の目安

冬の登山で日没から逆算して下山時刻を決める計画の考え方

こんにちは、YAMA-GO編集部のりょうです。関西を拠点に、北アルプスを中心にULスタイルで山を楽しんでいます。このブログ「YAMA-GO」では、実際に使ったギアのレビューや選び方、山のノウハウなんかを発信しています。

冬の山に行こうと計画を立て始めると、「何時までに下りてくればいいの?」と迷いますよね。冬は日が短いので、夏と同じ感覚で出発時刻を決めると、下山の途中で暗くなるおそれがあります。

僕は北アルプスで、ご来光を見るために夜明け前からヘッドライトで歩いたことが何度かあります。秋の穂高では、テント場に着いたのが17時過ぎでした。日の短い時期としては、余裕の少ない到着だったなと今は思います。

この記事では、日没時刻から逆算して「下山完了→折り返し→出発」の時刻を決める手順をまとめました。関東と関西の時刻例に加えて、日没時刻の調べ方や引き返しの基準、ヘッドライトの備えまで順に見ていきましょう。

  • 冬の下山完了は日没の1時間半〜2時間前が目安
  • 山の樹林や谷が16時ごろから暗くなる理由
  • 国立天文台のこよみの計算で日没時刻を調べる方法
  • 日没から折り返し・出発時刻を決める逆算の手順

冬の登山の下山時刻は何時?日没から逆算する

冬の日帰り登山は、15時までに下山を終える計画がひとつの目安です。冬の関東の日没は16時半ごろ。日没の1時間半〜2時間前に下山完了を置く考え方になります。

日没時刻から下山完了、折り返し、出発の順に逆算して時刻を決める4段階の流れ
ゴウ
ゴウ

冬って何時くらいまでに下りてくればいいの? 山の上だと、夕方の空はまだ明るく見えるんだけどなあ。

僕も最初は、日没までに下りれば大丈夫かなと思っていました。でも自治体や警察の目安を見ると、もっと早いみたいですよ。一緒に確かめてみましょう。

りょう
りょう
出どころ冬の下山完了の目安
大阪府(冬山登山の注意)15時までに下山を完了する計画。体力に自信がない人に合わせ、下山開始時刻を計画書に決めておく
兵庫県西宮警察署(山岳ニュース)林の中は午後4時には暗くなるので、遅くとも午後4時ごろまでに下山
一般的な登山の目安下山予定時刻は遅くとも日没の2時間前。山小屋泊なら午後3時前の到着が原則
雪山の解説記事(山と溪谷オンライン)冬は日没が早く雪道は歩きにくいため、早めのスタートで15時には下山できる計画を

どの目安も、平地の日没時刻よりかなり手前に下山完了を置いています。山の中は日没より先に暗くなること、冬は雪や凍結で予定より遅れやすいことが理由です。

数字にはばらつきがあり、西宮警察署の「午後4時」は関西の12月の日没の1時間弱前です。ほかの目安は「日没の1時間半〜2時間前」に集まるので、この記事では安全側のこの幅を基準にして、時刻を組み立てていきます。

下山完了は日没の1時間半〜2時間前が目安

下山完了時刻は、日没の1時間半〜2時間前に置くのが目安です。東京の12月上旬なら日没が16時28分なので、15時前後が下山完了の目安になります。夏なら夕方まで歩ける感覚が、冬は昼過ぎには下りに入る感覚に変わります。

幅を持たせているのは、山の条件で暗くなる早さが変わるからです。開けた尾根を下る道なら1時間半前でも間に合いやすい一方、樹林の長い道では余裕が足りません。冬山に慣れていないうちは、2時間前の側で計画するのが安心かなと思います。

関西の山なら、大阪の12月上旬の日没は16時47分で、関東より15〜20分ほど遅めです。そのぶん下山完了も15時15分前後まで後ろにずらせます。ただ、樹林の中が早めに暗くなる点は関東でも関西でも変わりません。

下山完了は「平地の日没時刻」ではなく「山の中で暗くなる時刻」から考えると決めやすくなります。

山小屋泊の場合

山小屋に泊まる計画でも、到着は午後3時前が原則とされています。小屋への到着時刻を下山完了と同じ扱いにして、そこから逆算すると組み立てやすいです。

冬の日照時間と山で暗くなる時刻を知っておく

冬至のころの昼の長さ(日の出から日の入りまでの時間)は、東京で約9時間45分です。夏至のころより約4時間50分も短く、しかも山の中では平地の日没より先に暗くなります。

日没、日没後およそ30分、樹林や谷の16時ごろという冬の山で暗くなる時刻の目安を並べたタイムライン

夏山と同じコースでも、使える明るい時間が大きく削られる。冬の計画は、まずこの前提を頭に入れるところから始まります。

日付(東京)日の出日の入り
2026年6月21日(夏至付近)4時25分19時00分
2026年12月1日6時32分16時28分
2026年12月22日(冬至)6時47分16時32分
2027年1月1日6時50分16時38分
2027年1月15日6時50分16時51分
2027年2月1日6時41分17時08分
2027年2月28日6時13分17時35分

表の時刻は国立天文台の計算値で、地点が変わると数分〜数十分ずれます。山行先の時刻は、後で紹介する方法で地点を指定して確かめてください。

冬至より12月上旬のほうが日没は早い

1年でいちばん日没が早いのは冬至ではなく、12月上旬です。東京では12月1日〜10日ごろに16時28分の日の入りが続きます。冬至の夕方は、それよりわずかに遅く暮れる日です。

反対に、日の出がいちばん遅いのは1月上旬です。冬至を過ぎても朝はしばらく遅いまま、という時期が続きます。12月から1月は、朝も夕方も暗い時間帯が重なる時期といえます。冬至だけを基準にすると、12月上旬の山行で夕方の余裕を見誤るかもしれません。

2月に入ると、日の入りは1か月で約30分遅くなります。同じ山でも、12月と2月下旬では使える明るい時間が1時間近く違う計算です。「前回は間に合ったから」と、別の時期の記録をそのまま使わないようにしたいですね。

地点冬至(12月22日)の日の入り
札幌16時03分
仙台16時20分
東京16時32分
長野16時35分
名古屋16時44分
大阪16時51分
福岡17時15分
鹿児島17時19分

同じ冬至でも、札幌と鹿児島では日の入りに約1時間16分の差があります。東や北の地域ほど早く暮れるので、他の地域の山行記録の時刻は、自分の計画にそのまま当てはめないのが無難です。

日没後何分で暗くなる?灯りなしは約30分

灯りなしで歩ける明るさが残るのは、冬の本州中部で日没後およそ30分です。国立天文台はこの時間帯を「常用薄明」と呼んでいます。

常用薄明は、日常生活に支障がない程度の明るさが残る時間帯のこと。太陽が地平線の下6度に沈むまでがその範囲です。日の入りを過ぎてもしばらく明るいのはこのためですが、長くは続きません。(出典:国立天文台暦計算室『暦象年表の用語解説』)

地点・日付日の入り常用薄明の終わり航海薄明の終わり
東京 2026年12月1日16時28分16時56分17時27分
東京 2026年12月22日(冬至)16時32分17時00分17時32分
長野 2026年12月22日16時35分17時04分17時37分
東京 2027年1月15日16時51分17時18分17時50分

その先の航海薄明は、空にまだ明るさが残る目安です。足元の石や木の根が見える明るさではないので、歩く目安には使えません。

しかもこの表は、地平線まで見通せる平地での計算値です。登山道ではこの時刻より前に暗くなるので、「日没後30分は歩ける」と当てにする計画は避けたほうがよさそうです。

日没後の30分は「予定どおり歩ける時間」ではなく、ヘッドライトを出して備える時間と考えてください。

谷や樹林の日陰は16時ごろから暗くなる

樹林帯や谷筋の登山道は、16時ごろから暗くなることがあります。大阪府は「林内は16時には暗くなることがある」としています。兵庫県西宮警察署も、林の中は午後4時には暗くなると呼びかけています。(出典:大阪府『冬山登山の注意』)

長野県警も、樹林帯は日が差し込みにくく、日没前から暗くなりやすいと注意しています。冬の東京の日没は16時半ごろなので、樹林の中では日没の30分ほど前から暗さが始まる計算です。

場所の条件暗くなるのが早い理由
谷筋・沢沿い・山の東斜面西側の尾根や山に太陽が隠れ、暦の日の入りより前に日が当たらなくなる
北斜面冬は太陽が低く(東京の冬至の南中高度は30.9°、夏至付近は77.8°)、日中から日が当たりにくい
密な樹林帯(スギ・ヒノキの人工林など)木の枝葉が光をさえぎり、林床は昼でも暗い
開けた稜線・山頂暦の日の入りまで明るいことが多い。標高が高いと日の入りがむしろ遅くなることもある

群馬県の調査では、密なスギやヒノキの人工林で、林床の明るさが林の外の平均2.6%しかありませんでした。昼間でもこの暗さなので、夕方の樹林は思った以上に早く足元が見えにくくなります。

見落としやすいのが、山頂と下の登山道での見え方のずれです。山頂は開けていて、暦の日の入りまで明るいことが多い。そこから下るほど周りの尾根が高くなり、谷や樹林ではすでに暗い、ということが起こります。

僕も10月の上高地で、下山して河童橋に着いた16時台には、あたりがもう薄暗くなり始めていました。冬はさらに日が短いので、山頂の明るさで下山の余裕を判断しないようにしたいですね。

日没時刻は国立天文台のこよみの計算で調べる

山行日の日没時刻は、国立天文台暦計算室の「こよみの計算」で調べられます。登山口付近を指定して「日の入り」と「常用薄明の終わり」の2つを出しておくと、下山完了の逆算にそのまま使えます。(出典:国立天文台暦計算室『こよみの計算』)

国立天文台のこよみの計算で登山口付近の場所と日付を指定して日没時刻を調べる手順
ゴウ
ゴウ

日の入りの時刻って、天気予報のアプリにも出てるよね? どれを見ればいいんだろう。

計算の条件がはっきり書いてあるのは、国立天文台みたいですよ。登山口の場所を指定して出せるので、手順を見ていきましょう。

りょう
りょう
ページ(国立天文台暦計算室)できること登山計画での使いどころ
こよみの計算日時と地点を指定して、日の出入り・南中や各種の薄明を計算。期間を指定してまとめて出せる登山口や山頂を地図で指定し、山行日の日の入りと常用薄明の終わりを出す
各地のこよみ都道府県ごとの主要地点の日の出入り表(年・月ごと)山域の最寄りの県庁所在地で、月ごとの推移を見る
今日のこよみ主要都市の当日の日の出・日の入りなど当日の朝の確認

計画づくりでメインに使うのは「こよみの計算」です。山行日の時刻を出す手順は次のとおりです。

  • 「計算日時」で山行日の年・月・日を選ぶ
  • 「計算地点」で「地理院地図で選ぶ」「Google Mapsで選ぶ」「市町村名を検索する」などから登山口付近を指定する
  • 「計算内容」の「日の出入り・南中時」でGoを押し、日の出と日の入りの時刻を出す
  • 薄明の種類で「常用薄明」を選んでGoを押し、朝の始めと夕方の終わりの時刻を出す
  • 候補日が複数あるときは、オプションの「間隔と期間」でまとめて計算する

週末や連休の候補日がいくつかあるときは、期間の指定が便利です。「1日ごとに1月間」のように指定すると、1か月分を表でまとめて出せます。

結果を読むときの注意

日の入りは「太陽の上辺が地平線に重なる時刻」で、周りの山や建物は考えていません。また、通常は標高0mとして計算されています。山頂では暦より遅く暮れることがありますが、谷や樹林の道は逆に早く暗くなります。

天気予報サイトや登山地図アプリの日の出・日の入り表示も便利です。ただ、計算の出どころはサービスごとに違います。国立天文台は日本の暦を発表している機関で、計算の条件が明示されている点が安心かなと思います。

調べた2つの時刻は、登山計画書のメモ欄などに書き出しておくのがおすすめです。次の章では、この時刻から下山完了と折り返し、出発の時刻を決めていきます。

下山時刻から折り返しと出発時刻を決める手順

時刻は「日没→下山完了→折り返し→出発」の順に、後ろから決めていくのがコツです。出発時刻から先に決めると、冬は下りの途中で日没を迎える計画になりやすいからです。

手順決め方
1. 日の入りを調べるこよみの計算で登山口付近を指定し、日の入りと常用薄明の終わりを出す
2. 下山完了時刻を置く日の入りの1時間半〜2時間前(冬の関東なら14時30分〜15時ごろ)
3. 下りの所要時間を出す地図の下りのコースタイム×冬の補正(1.2倍程度〜)+休憩
4. 折り返し時刻を決める下山完了時刻から手順3の時間を引く。この時刻に目標地点へ着いていなければ手前でも引き返す
5. 出発時刻を決める折り返し時刻から登りの所要時間(補正+休憩)を引く。明るくなり始める時刻を早さの限度の目安にする
6. 計画書と家族に伝える下山完了と折り返しの時刻を登山計画書に書き、家族などと共有する

ポイントは、登りより先に下りの時間を見積もることです。下山完了から下りの所要時間を引けば、何時までに山頂を離れるかが決まります。そこから登りの時間を引いて、ようやく出発時刻が出てきます。

冬のコースタイムは1.2倍と休憩で余裕を見る

冬のコースタイムは、地図の数字に1.2倍程度の補正をかけ、休憩時間を別に足すのがひとつの目安です。地図のコースタイムは、夏山(無雪期)の晴天時を前提にした数字。休憩時間も含んでいません。

代表的な登山地図の運営元は、悪天候時に1.2倍という補正を挙げています。雪山に慣れていない人は、雪のない時期の1.2倍程度を見込むという一般向けの解説もあります。積雪が多く歩きにくい日は、それ以上かかると考えておくほうが安全です。

山行記事では「積雪時は標準時間+2時間」と考える書き方も見かけます。一方で長野県警は倍率を示さず、冬は登山道の状態で所要時間が大きく変わるとしています。そのうえで、入山を早めるか、遅くなるなら行動を短くするよう求めています。

休憩の種類一般的な目安
小休止1時間に1回、5〜10分
大休止(昼食など)30分程度
冬に増えやすい停止防寒着の着脱・アイゼンの装着・行動食

冬は防寒着の着脱やアイゼンの装着で、立ち止まる時間が夏より延びやすいですよね。踏み跡のない降雪直後は雪をかき分けて進むことになり、夏道と違うルートを歩く場合もあります。

夏山でも、計画どおりにはなかなか進みません。僕が8月の槍ヶ岳に登ったときも、標準8時間30分の登りに9時間ちょっとかかりました。7月のジャンダルムの下山では、アイゼンを付けて下った雪渓でかなり時間を取られています。

ヤマレコやYAMAPには、自分のペースを標準のコースタイムと比べる機能があります。ただ、比べる相手の標準コースタイムは、その日の積雪や凍結、踏み跡の有無までは織り込んでいません。雪のある日にそのまま当てはめるのは避けたいところです。

折り返し時刻の決め方と山頂に着く期限

折り返し時刻は、下山完了時刻から「下りのコースタイム×補正+休憩」を引いて決めます。この時刻になったら、山頂や目標地点に着いていなくても引き返す。自分との約束の時刻です。

山頂で休憩をとるなら、その時間を引いた「山頂に着く期限」も出しておきましょう。たとえば折り返しが12時15分で、山頂休憩を30分とるなら期限は11時45分です。期限を過ぎて着いたときは休憩を短くして、予定どおりの時刻に下り始めます。

途中の分岐や小屋ごとに「ここを何時までに通過できなければ引き返す」チェック時刻を置くと、判断が早くなります。山頂直下で迷うより、手前の地点で決めるほうが気持ちも楽かなと思います。

北アルプスの横尾の登山口で、「午後2時以降の入山自粛」の貼り紙を見たことがあります。夏の山でも、時刻で区切って行動を決める考え方は同じなんだなと感じました。

折り返し時刻は登山計画書と家族への連絡にも書いておくと、当日にずるずる延ばしにくくなります。

関東と関西の低山で組んだ逆算の時刻例

標準コースタイムが登り3時間・下り2時間の低山を例に、冬至前後の関東で時刻を組んでみます。逆算すると、登山口の出発は7時45分になりました。

項目計算時刻
日の入り(東京・12月22日)暦の値16時32分
下山完了日の入りの約1時間半前15時00分
下りの所要時間2時間×1.2+休憩20分≒2時間45分―
折り返し(山頂を離れる時刻)15時00分−2時間45分12時15分
山頂に着く期限山頂休憩30分を引く11時45分
登りの所要時間3時間×1.2+休憩25分≒4時間―
出発11時45分−4時間7時45分

夏なら、多少出発が遅れても吸収できるコースです。冬は出発が1時間遅れるだけで、折り返し時刻までに山頂へ届かなくなります。

7時45分に出られないと分かったら、計画の段階でコースを短くするのがおすすめです。当日に遅れたときは12時15分の折り返し時刻を守り、山頂の手前でも引き返します。

出発時刻には、早いほうの限度もあります。冬至の東京で灯りなしに歩ける明るさになるのは、常用薄明が始まる6時19分ごろ。それより早く出るなら、登り始めからヘッドライトが必要です。

関西の山で、12月上旬に同じ条件のコースを歩く場合も見ておきます。

項目時刻(関西・12月上旬)
日の入り(大阪)16時47分
下山完了15時15分前後
折り返し12時30分
出発8時00分

関西は日没が遅い分、全体が15分ほど後ろにずれます。とはいえ樹林の中が16時ごろに暗くなる点は同じなので、下山完了を遅らせすぎないようにしたいですね。

この時刻例は、あくまで一般的な目安です。実際のコースタイムや積雪の状況で大きく変わるので、自分の山行に当てはめて組み直してください。

引き返し基準とヘッドライトで日没に備える

日没への備えは、引き返す基準を出発前に決めておくことと、日帰りでもヘッドライトと予備電池を持つことの2つが基本です。どちらも、計画どおりに進まない日に迷わず動くための準備です。

折り返し時刻を過ぎたら引き返す基準と、ヘッドライト・予備電池・ビバークの備えのチェックリスト
ゴウ
ゴウ

山の天気って、夕方に急に変わることがあるんだよね。そういうとき、ぼくは早めに戻りたくなるなあ。

その感覚は大事ですよね。現場で迷わないように、引き返す基準を先に決めておきたいです。一緒に整理してみましょう。

りょう
りょう

時刻・ペース・天候で引き返す基準を決める

引き返す基準は、「時刻」「ペース」「天候」「体調・装備」の4つで決めておくと判断しやすくなります。その場で考えると「もう少し行けそう」と先延ばしにしがちです。出発前に言葉にしておくのがおすすめです。

基準引き返す目安の例
時刻折り返し時刻や途中のチェック時刻を過ぎた
ペース登りが補正後のコースタイムより大きく遅れている
天候視界が悪くなった・風が強まった・雪が降り始めた
体調・装備疲れが強い・手足が冷える・装備をなくした

疲労による遭難は増えています。警察庁の統計では、遭難者に占める疲労の割合が令和2年の6.3%から令和7年は9.8%になりました。冬の時刻管理は、疲れをためないための備えでもあります。

自治体も、引き返す状況を事前に決めておくよう呼びかけています。新潟県は、どの状況で引き返すかを事前によく検討しておくよう求めています。鳥取県も、天候悪化の兆しが見えたら潔く中止するか引き返す勇気を、としています。

引き返す道で迷わないよう、目印を付けながら歩くことも勧められています。万一のときに早く下りられる別ルート(エスケープルート)も、地図で確かめておくと安心です。

入山が遅れた冬の八ヶ岳の遭難から学ぶこと

冬の入山時刻の遅れが、日没後の遭難につながった事例があります。長野県警は、いずれも「3、4時間早く入山する必要がある」と指摘しています。(出典:長野県警察山岳遭難救助隊『Mountain Rescue File No.3』)

2024年2月10日、八ヶ岳の天狗岳周辺で、18時以降に3件の救助要請が相次ぎました。3人の入山時刻は、午前10時ごろと午前11時ごろ(2人)です。日中は晴れていましたが、日没から夕方にかけて稜線付近で天候が悪くなっています。

3人とも日没近くまで稜線付近で行動し、疲労と天候の悪化が重なって動けなくなりました。1人が亡くなり、1人は体温30度・低血糖の状態で救助されています。寝袋とダウンで一夜をしのいだ1人だけが、翌日に自力で下山できました。

当事者の1人は、久しぶりの冬山でアイゼン歩行に苦労し、思ったよりペースが上がらなかったそうです。夏のコースタイムの感覚で入山時刻を決めると、こうしたずれが起こりえます。

この事例から学べること

入山が遅くなるなら、その日の行動を短くする。森林限界を超えるかどうかは、天候・日没時刻・残りの行程・疲れ具合で判断する。日帰りの予定でも、ツェルトや防寒着などビバークの備えを省かない。長野県警は、こうした考え方を求めています。

もうひとつ知っておきたいのが、救助ヘリの活動時間です。ヘリは基本的に日の出から日没までが活動時間で、日没後の要請だと翌朝以降になることがあります。冬の山で日没後に動けなくなると、一晩を山で過ごす前提になるかもしれません。

自力で下りられない状況になったら、ためらわずに110番か119番で救助を要請してください。迷っているうちに日が暮れると、救助はより難しくなります。

ULでもヘッドライトと予備電池は削らない

冬は日帰りでも、ヘッドライトと予備電池は削らない装備です。日没後に灯りなしで歩けるのは開けた場所でも約30分。樹林や谷は、それより早く暗くなります。

長野県警は、下山中にヘッドライトを持っておらず動けなくなった遭難を挙げています。2023年10月の八ヶ岳での事例です。県警は予備電池と、余裕があれば予備のヘッドライトも持つよう勧めています。

僕も奥穂高岳でご来光を見に行ったときは、3時45分ごろに山荘を出て、はしごのある岩場をヘッドライトで登りました。初めての富士山でも、7合目から8合目の途中で暗くなり、ヘッドライトを使っています。暗い山道でヘッドライトは必須だと実感しました。

ULの考え方でも、ヘッドライトと予備電池は軽くするために外す装備ではありません。軽さを求めるなら、外すのではなく電池の種類を見直すのがおすすめです。

電池の種類公式の使用温度の目安単4形1本の重さ(エナジャイザー公式)
アルカリ乾電池推奨使用温度5℃〜45℃(パナソニック)11.5g(EN92)
1.5Vリチウム乾電池−40℃〜60℃で使用可能(パナソニック・エナジャイザー)7.6g(L92)

低温では、乾電池もヘッドライト専用の充電池も弱くなります。ペツルは、0℃〜−20℃では点灯時間が最大50%短くなるとしています。使わないときはヘッドライトをポケットなどで温めておくと、電池の力を引き出しやすくなります。

冬用には、低温に強くて軽いリチウム乾電池を選ぶのもひとつの方法です。ただ、リチウム乾電池に対応していないヘッドライトもあります。取扱説明書で対応する電池を確かめてから使ってください。

エナジャイザー アルティメットリチウム 単4形(L92)

メーカー公式で−40℃〜60℃の使用に対応する1.5Vリチウム乾電池。単4形1本7.6gと軽く、冬のヘッドライトの予備電池に向きます(使う前にヘッドライト側の対応を確認してください)。

電池を交換するときは、新しい電池と使った電池、種類の違う電池を混ぜないでください。予備電池は鍵や小銭など金属と触れないように持ち歩きます。

ザックの奥にしまうと、暗くなってから探すことになりがちです。ヘッドライトは雨蓋や腰のポケットなど、すぐ出せる場所に入れておきましょう。出発前に電池の残量を確かめておくのも忘れずに。

冬の登山と日照時間のよくある質問

冬の登山で山小屋に泊まるときは、何時までに着けばいいですか?

山小屋泊は、午後3時前の到着が原則とされています。冬は日没が早いので、小屋への到着時刻を日帰りの下山完了と同じように扱い、そこから出発時刻を逆算すると組み立てやすいです。冬の営業状況は小屋によって違うので、事前に公式情報で確認してください。

山頂は日の入りが遅いと聞きました。下山を遅らせても大丈夫ですか?

標高の高い山頂では、暦より日の入りが遅くなることがあります。たとえば富士山頂の冬至の日の入りは16時49分と計算されていて、東京より遅めです。ただ、下るほど周りの尾根が高くなり、谷や樹林の道は暦より早く暗くなります。山頂の明るさではなく、登山口付近の時刻と樹林の暗さで下山時刻を決めるのが安心です。

天気予報アプリの日の入り時刻を使ってもいいですか?

当日の目安としては使えます。ただ、計算の出どころはサービスごとに違います。計画書に書く時刻は、国立天文台の「こよみの計算」で登山口付近を指定して出すと、計算の条件がはっきりしていて安心です。

YAMAPやヤマレコのコースタイムは、冬でもそのまま使えますか?

そのままではなく、補正して使うのがおすすめです。YAMAPの標準コースタイムは利用者のGPSログをもとに地形から計算したもので、雪の状態までは反映していません。1.2倍程度の補正と休憩を足して見積もり、当日はペース表示で遅れを確かめるのが現実的かなと思います。YAMAPのペース表示では、標準の80〜120%の帯が適正ペースの目安として示されます。

下山が日没に間に合いそうにないときは、どうすればいいですか?

まず、暗くなる前にヘッドライトを出して準備しましょう。暗くなってから急いで下ると、道迷いや転倒のおそれが高まります。警察庁の統計でも、遭難の態様は道迷いが30.9%で最も多く、転倒が19.2%で続きます。自力で下りるのが難しいと感じたら、ためらわず110番か119番で救助を要請してください。家族に下山予定時刻を伝え、登山届を出しておくことも大切な備えです。

冬の登山は日没から逆算して下山時刻を決める

ゴウ
ゴウ

日没の時刻から後ろ向きに決めていくんだね。これなら冬の山でも慌てずにすみそう!

そうですね。ただ時刻はあくまで目安なので、当日の天気や雪の状態を見て、早めに引き返す気持ちも持っておきたいですね。

りょう
りょう

冬の登山は、日照時間の短さを前提に、日没時刻から逆算して計画するのが基本です。最後に、この記事の要点を振り返ります。

冬の登山の時刻計画で押さえる、逆算の手順・暗くなる時刻・日没時刻の調べ方・引き返しと備えの要点まとめ
  • 下山完了は日没の1時間半〜2時間前(冬の関東で14時30分〜15時ごろ)が目安
  • 日没がいちばん早いのは12月上旬で、灯りなしで歩けるのは日没後およそ30分
  • 樹林や谷の登山道は16時ごろから暗くなることがある
  • 日没時刻は国立天文台の「こよみの計算」で登山口付近を指定して調べる
  • 「日没→下山完了→折り返し→出発」の順に、コースタイム1.2倍程度+休憩で組む
  • 折り返し時刻とチェック時刻を決め、過ぎたら手前でも引き返す
  • 日帰りでもヘッドライトと予備電池、ビバークの備えを持つ

ここで紹介した時刻や倍率は、あくまで一般的な目安です。山の状況は日によって変わるので、正確な情報は自治体や警察などの公式サイトをご確認ください。

冬山の経験が浅いうちは、登山ガイドなどの専門家に相談したり、経験者と一緒に行ったりするのも安心です。最終的な判断はご自身の責任で行い、無理のない計画で冬の山を楽しんでください。

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