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冬の低山登山の注意点|初心者が夏と変える計画・装備・時間

冬の低山登山で初心者が夏と変える日没・凍結・汗冷えの3つの注意点

こんにちは、YAMA-GO編集部のりょうです。関西を拠点に、北アルプスを中心にULスタイルで山を楽しんでいます。このブログ「YAMA-GO」では、実際に使ったギアのレビューや選び方、山のノウハウなんかを発信しています。

冬に初めて低山へ行こうとすると、夏と同じ装備や計画で大丈夫なのか迷いますよね。雪の少ない低山なら初心者でも歩けますが、夏の感覚のままだとつまずく場面があります。

僕も2017年8月の奥穂高岳では汗が冷えて寒い思いをしました。2021年5月の残雪期の涸沢では、チェーンスパイクで雪道を歩いています。この記事では公的機関の情報を軸に、冬の低山で夏から何を変えればいいかを差分の形で整理します。

  • 冬の低山で夏と変わるのは日没・凍結・汗冷えの3つ
  • 15時下山完了から出発時刻と引き返し時刻を逆算する方法
  • 前日にできる凍結・積雪の確認手順と軽アイゼンの選び方
  • 汗冷えを防ぐ服装・手袋と、水・行動食の冬の持ち方

冬の低山登山の注意点は日没・凍結・汗冷えの3つ

結論から言うと、冬の低山で夏と大きく変わるのは日没の早さ・日陰の凍結・汗冷えの3つです。この3点だけは、夏の計画のままでは対応できません。計画・装備・時間配分をそれぞれ少し変えれば、リスクはかなり減らせます。

ゴウ
ゴウ

冬の山って、雪がなければ夏と同じ感覚で行けるの?

僕も最初はそう思っていました。でも変わる点は意外とはっきりしているみたいですよ。表で整理してみましょう。

りょう
りょう
変わる点夏の前提冬の現実変える行動
日の長さ東京の夏至付近は19時00分に日の入り12月上旬は東京16時28分・京都16時45分に日の入り出発を早め、下山完了を前倒しする
足元乾いた土や岩600m級でも12〜2月の日最低は氷点下の計算(高尾山を八王子の平年値から換算)。北斜面や日陰は凍結が残る軽アイゼンかチェーンスパイクを持つ
汗と冷え汗は蒸発して体を冷やしてくれる休憩で止まると服に残った汗が体温を奪い続ける薄着で歩き、休憩で保温着を羽織る
水喉が渇いたら飲む喉の渇きを感じにくく、水も凍る時間を決めて飲み、保温ボトルを使う

表の「変える行動」は、どれも特別な技術ではありません。夏の計画に少し足すだけで済むのが、冬の低山のいいところかなと思います。この先の章で、1つずつ具体的な手順にしていきます。

冬の事故は道迷いと転倒/原因は日没・凍結・汗冷え

冬山(12〜2月)の遭難で多いのは、雪崩ではなく道迷いと転倒・滑落です。山岳遭難対策中央協議会の資料(過去5年)では、内訳は次のとおりでした。(出典:山岳遭難対策中央協議会『冬山登山の警告文』(令和7年12月))

遭難の態様(冬山・12〜2月)割合
道迷い33.4%
転落・滑落21.6%
転倒18.8%
疲労・病気11.0%
雪崩1.7%

道迷い・転落滑落・転倒の3つで全体の7割強を占めます。低山で警戒したいのは、雪崩よりも「迷う・転ぶ・滑る」だと分かります。

この3つは、冬の3つの差と結びついています。暗くなれば道標や踏み跡が見えにくくなり、樹林帯の目印は雪や落ち葉に埋もれがちです。日陰の凍結が転倒や滑落に直結するのは、想像しやすいですよね。

福岡県警は「遭難の多くは下山中に起きている」としています。疲れて注意力が落ちた下りで、転倒・滑落・道迷いが起きやすいという指摘です。夕方の下り、凍った日陰、汗で冷えた体が重なると、事故の条件がそろってしまいます。

低体温症は天気が良くても起きる、と国立登山研修所のテキストは書いています。寒さ・風・濡れの3つがそろえば、標高の低い山でも油断できません。

冬の低山の事故は「迷う・転ぶ・滑る」が中心で、疲れが出る下山中に起きやすいと覚えておきましょう。

初心者でも冬に登れる低山の条件とは

初心者が冬に選ぶなら、軽アイゼンで足りる・行程が短い・途中で下りられるの3つがそろった山が目安です。加えて、登山口まで冬も行けるか、直近の情報が出ているかも確認します。標高の数字だけで「低いから安心」と決めないのがコツですね。

条件中身
滑り止めが軽アイゼンで足りる積雪が浅く、急斜面がない。前爪付きの10本爪以上やピッケルが要る山は対象外
行程が短い歩行3〜4時間・標高差500〜600mが初心者の目安(メーカーの装備ガイド)。冬は15時下山から逆算して収まる長さ
途中で下りられるケーブルカーや複数の下山路など、途中で切り上げる手段がある(高尾山が代表例)
登山口まで冬も行ける冬期閉鎖の道路の先に登山口がない。公共交通の便がある
情報が出ている自治体やビジターセンターが積雪情報を出している。直近の登山記録が見つかる
標高と斜面の向き高尾山(599m)を八王子の平年値で換算しても、12〜2月の日最低は氷点下。北斜面のコースは凍結が残りやすい

山岳遭難対策中央協議会の冬山装備チェックリストでは、10本爪以上のアイゼンが「必ず持参」です。軽アイゼンやチェーンスパイクは「状況によって持参」の扱いになっています。リストは冬山の標準装備で、山の難易度によって必要な装備は変わるとも注記されています。軽アイゼンやチェーンスパイクはメーカーも本格的な雪山には使わないよう案内しているので、軽アイゼンで歩ける範囲の山を選ぶことが、初心者の山選びの条件になります。

長野県の公式観光サイトが初心者向けに挙げる冬の低山も、上り1時間〜1時間40分ほどの短いコースが中心です。標高が1,000mを超える山でも、「短く、引き返しやすい」ことが選ぶ軸になっています。

関西なら金剛山や六甲山はどう考える?

関西の金剛山や六甲山は冬も多くの人が歩く山ですが、凍結と積雪がある前提で計画したい山です。公的機関の情報を見ると、どちらも夏と同じ感覚では足りないことが分かります。

金剛山(標高1,125m)について、大阪府は年によって12月中旬に積雪が見られるとしています。厳寒期には樹氷も見られる山です。持ち物では軽アイゼン(チェーンスパイク可)を必須の側に挙げ、特に下りのスリップに注意を促しています。

山上へのロープウェイは長く運行停止の状態だと、千早赤阪村が案内しています。「帰りはロープウェイで」という前提は冬の計画に使えないので、最新の状況は村の公式情報で確認してください。

個人の登山記録を見ると、下りだけ軽アイゼンを着けた例も、雪が少なく不要だった例もあります。年や時期で必要性が変わるので、持っていって使うかどうかを現地で決める考え方が合っています。

六甲山は最高峰が931.3mです。兵庫県警の集計では、2020年の県内山岳遭難114件のうち約半数(57件)が六甲山系でした。軽装備や計画不足による遭難が繰り返されていると報じられています。

環境省近畿地方環境事務所は、六甲地域で冬山体験教室を開いたことがあります。氷瀑や樹氷を観察しながら、アイゼンの着脱と歩行を練習する内容でした。都市に近い山でも、冬は凍る・積もる山だと考えておくと安心かなと思います。

関西の2山の見方

金剛山も六甲山も、滑り止めを持ち、下りに時間の余裕を残す計画が前提です。ルートの状況は年や時期で変わるので、出発前に最新の情報を確認しましょう。

登山口の林道が冬は通行止めになる山もある

冬は登山口までの道路や林道が閉鎖される山があります。山そのものは歩けても、登山口に着けなければ計画は成り立ちません。規制の型は大きく3つに分かれます。

  • 冬期閉鎖:冬の間ゲートを閉じる期間通行止め
  • 冬季の通行時間短縮・夜間通行止め
  • 積雪・凍結時の臨時通行止め
道路冬の規制(公式情報)
伊吹山ドライブウェイ(岐阜県・滋賀県)2026年度は11月23日で営業終了予定。それ以外の期間は冬季閉鎖
大台ヶ原公園川上線(奈良県)冬期は積雪・凍結のため閉鎖
奥多摩周遊道路(東京都)冬季(10月1日〜3月31日)の通行は9時〜18時。夜間は通行止め

伊吹山のように山頂近くまで車で上がれる山も、冬はその前提が使えません。奥多摩周遊道路のように通れる時間が決まっている道では、下山時刻もその時間に縛られます。

国有林の林道は森林作業のための道で、一般車の通行を想定していないものもあります。ガードレールなどの安全施設が無いことも珍しくありません。期間や時間は年度ごとに変わるので、道路管理者の公式情報で確認してくださいね。

冬の登山は日没何時?夏より2時間半早い12月上旬

1年で日の入りが最も早いのは冬至ではなく、12月上旬で東京16時28分・京都16時45分です。東京の夏至付近は19時00分なので、約2時間半早く日が沈みます。夏と同じ時刻に歩き始めると、下山の途中で暗くなる計算です。(出典:国立天文台 暦計算室『日の出入り(東京 2026年12月)』)

ゴウ
ゴウ

一番日が短いのは冬至じゃなかったの?

僕もそう思っていました。日の入りの時刻だけで見ると、冬至より前が一番早いみたいですね。表で確かめてみましょう。

りょう
りょう
日付東京の日の入り京都の日の入り
12月1日16時28分16時45分
1月1日16時38分16時56分
1月15日16時51分17時08分
2月28日17時35分17時51分

同じ「冬」でも、12月と2月末では日の入りが約1時間違います。一方で日の出は1月上旬が最も遅く、1月は朝も夕方も暗い時間が重なります。出かける月によって、計画の組み方を変える必要があるわけです。

暦の時刻は、地平線まで見通せる前提で計算されています。山の稜線や樹林は考慮されていないので、谷筋や東斜面では暦より早く暗くなります。灯火なしで動けるのは、開けた場所でも日の入り後30分ほどまでです。

樹林の中は、暦の日の入りより前に暗くなると考えて計画しましょう。

15時下山から出発と引き返し時刻を逆算

下山完了15時を先に決め、コースタイムと休憩から出発時刻と引き返し時刻を逆算する5つの手順の流れ図

冬の計画は、下山完了の時刻を先に決めて、そこから出発時刻を逆算するのが基本です。大阪府は冬山で「15時までに下山を完了する計画」を勧めています。理由は「林内は16時には暗くなることがある」ためです。(出典:大阪府『冬山登山における注意について』)

  • 下山完了の目標時刻を決める(例:15時)
  • 地図やアプリのコースタイム合計に、休憩時間を足す
  • 目標時刻から合計時間を引き、出発時刻の上限にする
  • 「この地点にこの時刻までに着かなければ戻る」という引き返し時刻を決める
  • 最終バスや道路の通行時間も、時刻の上限として確認する

冬は滑り止めの着脱や防寒着の脱ぎ着、凍った区間での減速に時間がかかります。休憩の見積もりは夏より多めにしておくと安心です。計画は、グループの中で体力に自信がない人に合わせてくださいね。

逆算の計算例

コースタイム往復4時間に、休憩と装着の1時間を足すと合計5時間です。15時に下山を終えるなら、遅くとも10時には歩き始める必要があります。12月上旬の東京の日の出は6時30分台なので、10時は上限と考え、移動の遅れや装着の手間を見込んで9時台には歩き始める計画にしておくと安心です。

引き返し時刻は、山頂手前の分岐など目印になる地点とセットで決めておくと迷いません。夏なら14時に山頂にいても余裕がありますが、冬に同じことをすると下山中に日の入りを迎えます。時刻が来たら、山頂の手前でも戻るのが冬のルールです。

冬の低山の凍結確認方法は夏に無い前日チェック

凍結の有無は、前日〜当日朝に、広い範囲の情報から路面の情報へ順に確認すれば、かなり見通せます。夏には要らなかった手順ですが、慣れれば短い時間で終わります。

前日から当日朝に広域の雪情報から登山口までの規制へ順に確認する5段階の凍結チェックの流れ図
  • 広域:気象庁「今後の雪」で、直近の降雪・積雪の分布をつかむ
  • 山名単位:自治体やビジターセンターの積雪情報を見る(掲載日も確認)
  • 路面単位:登山記録アプリの直近数日の記録で、凍結区間や滑り止めの要否を見る
  • 気温:平地の観測点から標高差で、山頂付近の最低気温を概算する
  • アクセス:登山口までの道路・林道の冬期規制を確認する

気象庁の「今後の雪」は約5km四方の格子の平均で、降雪量は少なめに出る傾向があります。おおまかな分布をつかむ道具と割り切り、山ごとの情報で補いましょう。分からなければビジターセンターに問い合わせるよう、東京都も勧めています。

登山記録アプリの情報は便利ですが、玉石混交です。長野県の冊子は「誰の情報か」「いつの情報か」を確かめるよう求めています。暖かい日が続けば数日で雪が消えることも、その逆もあるので、日付は必ず見てください。

気温は、標高が100m上がるごとに約0.65℃下がる計算で概算できます。標高599mの高尾山でも、12〜2月の日最低は氷点下になる計算です。山頂付近が氷点下になりそうなら、凍結がある前提で準備しておくと安心ですね。

晴れ予報でも凍る北斜面と日陰に注意

晴れの予報でも、北斜面・谷間・日陰は凍結が残ると考えておくのが安全です。長野県の公式観光サイトも「山の上部や北側斜面、谷間や日陰などでは思った以上に積雪が多く、凍結している所もあります」と注意しています。

冬は太陽が低く、東京の冬至付近の南中高度は30.9°です。夏至付近の77.8°と比べると、かなり低い位置を通ります。北斜面や谷筋に日が届きにくく、昼になっても解けない場所が残るのはこのためです。

凍りやすいのは、沢沿いや樹林の中の階段・木道、岩の上などです。落ち葉が積もった場所は滑りやすく、その下が凍っていることもあります。

同じ道でも、時間帯で路面は変わります。朝は凍って硬く、日中に一部が解けて泥になり、午後にはまた冷えて固まります。神奈川県のパークレンジャーも、凍結の状態は「時間によって変わる」と注記しています。

帰りの日陰は、朝通ったときと路面が変わっている前提で足を置きましょう。

軽アイゼンは必要?僕のチェーンスパイク体験

雪渓の縁でかがんで滑り止めを着ける登山者たちと赤い誘導マーカー
2021年5月、涸沢手前の本谷橋付近。雪渓の縁で滑り止めを着ける登山者たち(筆者撮影)

冬の低山でも、軽アイゼンかチェーンスパイクは持っていくものと考えておくのが無難です。大阪府は金剛山を含む南河内の冬山で、軽アイゼン(チェーンスパイク可)を持ち物の必須に挙げています。神奈川県や長野県の公式情報も、冬の滑り止めの携行を呼びかけています。

種類構造向く道
チェーンスパイク足裏全体にチェーンと短めの爪。つま先からかかとに引っかけて着ける積雪が浅い・雪があったりなかったり・急斜面がない
軽アイゼン(4〜6本爪)長めの爪をベルトで甲とかかとに固定する積雪が深い・カチカチに凍っている・斜度がある

この使い分けは東京都の整理です。東京都は、不適切な道具を選ぶと事故につながる可能性があるとして、行き先の雪の状態を事前に確かめるよう勧めています。どちらも簡易な滑り止めで、本格的な雪山には使えないとメーカーも明記しています。

僕がチェーンスパイクを使ったのは、冬の低山ではなく2021年5月、残雪期の北アルプス・涸沢です。上高地から涸沢ヒュッテまで歩いた1泊2日の山行でした。12本爪までは要らないと考えて、チェーンスパイクを選んでいます。

装着自体はスムーズでした。本谷橋の手前の雪渓の縁では、ほかの登山者もかがんで滑り止めを着けていました。涸沢の分岐の道標に着いたときも、登山靴にはチェーンスパイクを着けていました。

ただ、残雪期のシャバ雪をチェーンスパイクで歩くのは、思った以上に大変でした。雪が緩んでいると、踏み込んでも進みにくいんですよね。道具を持っているだけでなく、雪の状態に合う道具かどうかで歩きやすさが大きく変わると感じました。

季節も雪質も冬の低山とは違うので、この体験をそのまま当てはめることはできません。それでも「行き先の雪に合わせて選ぶ」という東京都の整理には、自分の失敗からも納得がいきます。

使う前に確認したいこと

メーカーは、出発前に自宅で装着を練習し、靴底の雪や土を落としてから着けるよう求めています。チェーンがたるむサイズは、脱落や転倒の原因になります。装着中は爪を引っかけて転びやすいので、歩き方にも慣れておきましょう。

凍結区間の手前で、余裕を持って着けるのがコツです。滑ってから慌てて着けるのでは遅く、特に下りは早めに判断したいところです。雪のない場所での使用は登山道を傷めるので、凍結区間を抜けたら外しましょう。

カフトゥーラ MICROspikes

つま先の金属ワイヤーで下りのずれを防ぎ、手袋のままでも着脱しやすいヒールタブを備えたチェーンスパイクです。靴の形でサイズが変わるので、公式のサイズ表で確認してから選んでください。

冬の登山の汗冷え対策は薄着で歩き休憩で羽織る

汗冷え対策の基本は、歩くときは少し寒いくらいの薄着にして、休憩に入ったらすぐ保温着を羽織ることです。寒いからと最初から着込むと汗が増え、止まったときに一気に冷えます。

ゴウ
ゴウ

寒いなら、最初から厚着していったほうがいいんじゃないの?

そう思いますよね。でも着込んで汗をかくと、止まったときに冷えるみたいなんです。仕組みから一緒に見てみましょう。

りょう
りょう

汗は1g蒸発するたびに0.58kcalの熱を奪います。止まって体の熱が減ったあとも、服に残った汗が乾くまで熱は奪われ続けます。休憩のたびに背中がひんやりするのは、この仕組みのせいです。

米国の軍の研究総説には、寒冷地用の厚い服で運動すると1時間に約2.0Lの汗をかいた例があります。服の断熱を半分ほどに減らすと、約0.4L/時まで下がりました。着込みすぎが、そのまま汗冷えの入口になるということですね。

僕も2017年8月の奥穂高岳で、汗冷えを経験しました。上高地から歩いて涸沢ヒュッテ(標高2,309m)に着いたころ、かいた汗が冷えて寒くなったんです。売店で食べた温かいラーメンが、ちょうどよかったのを覚えています。

季節も標高も冬の低山とは違いますが、止まったとたんに汗で冷える流れは同じです。夏山でもこうなるので、冬の低山では早めの手当てを意識したいところです。

汗冷えを防ぐ行動の型

歩き始めは少し寒いくらいの服装にする。登りで暑くなる前に1枚脱ぐ。休憩に入ったらすぐ保温着を羽織る。肌着が濡れたら替える。この4つを繰り返すだけでも、冷え方はかなり変わります。

濡れた服を脱ぐ効果は、マネキンを使った実験で確かめられています。約−15℃と約+10℃で毛布をかけたマネキンを比べると、濡れた衣類を除く(または水蒸気を通さない層を足す)ことで、熱の損失は19〜42%減りました。山での数字そのものではありませんが、濡れを断つ効果の目安になります。替えの肌着を1枚持つことは、軽さより優先していい装備かなと思います。(出典:Prehospital and Disaster Medicine(2012)のサーマルマネキン研究)

冬の低山の服装は夏装備に何を足す?

冬の低山の服装は、夏装備に保温着・手袋・帽子を足し、肌着を長袖に替えるのが基本です。全部を新しくそろえる必要はなく、足りない部分を足す考え方で十分です。

部位夏の低山冬の低山で足す・替える
肌着化繊Tシャツ綿を避け、化繊かウールの長袖
中間着なし〜薄手薄手フリースなど
保温着なし休憩・山頂用のダウンか化繊の保温着
アウターレインウェア上下とも冬も必携(風よけを兼ねる)
手不要〜薄手インナー手袋+保温手袋、予備を1組
頭・首日よけの帽子ニット帽・ネックゲーター
足薄手〜中厚ソックス厚手ソックス(靴がきつくならない範囲)
靴ロー〜ミドルカットハイカットの登山靴+滑り止め

肌着に綿を選ばないのは、汗を吸うと乾きにくく、濡れると暖かさを保てないためです。ウールは濡れても冷えにくく、化繊は乾きが速いという違いがあります。

レインウェアは冬も風よけとして役立ちます。ただしトムラウシ山遭難事故の調査報告書は、「雨具は防寒具ではない」と明記しています。薄い肌着の上に雨具を着るだけでは、強い風で体温が急速に奪われるためです。

同じ報告書には、ダウンを持っていても着ていなかった生還者の証言も残っています。保温着は持っていくだけでなく、寒くなる前に着ることまでがセットです。

靴下は厚手が安心ですが、靴がきつくなるほどの厚手や重ね履きは血流を妨げて逆効果です(米陸軍の指針)。足元は、大阪府が冬山の持ち物で必須に挙げるハイカットの登山靴が基本になります。

手袋は予備1組とオーバーグローブで濡れに備える

冬の手袋は、インナー手袋+保温手袋を基本に、予備を1組持つのが安心です。雨や雪、汗で濡れたときに替えがあるかどうかで、手の冷え方が大きく変わります。

モンベルは「雪山でグローブを失うと致命的な状況に陥る」として、予備の携行を勧めています。ファイントラックも、肌側の手袋・保温の手袋・雨や雪を防ぐアウターの3層で手袋を考えています。

冬の低山なら、薄手のインナー手袋に保温手袋を重ねる2枚が基本です。雨や雪で濡れそうな日は、防水のオーバーグローブを上から重ねます。北海道警察の冬山装備チェックリストでも、インナー手袋・防寒手袋・オーバー手袋は別々の項目です。

地図やスマホを見るときに素手になると、短い時間でも指先が一気に冷えます。細かい作業もインナー手袋を着けたまま行うよう、メーカーも勧めています。タッチ操作ができるインナー手袋を選ぶと、外す回数が減りますよ。

ファイントラック ドライレイヤーインナーグローブ

汗を手の外へ逃がし、肌への濡れ戻りを減らす肌側の手袋です。保温手袋の下に重ねる1枚目として使えます。

ファイントラック エバーブレスウィンタートレイルグローブ

ファイントラックが手袋の重ね着の外側に位置づける、冬のトレイル向けのグローブです。インナー手袋と組み合わせて使えます。

冬の登山で水は何リットル?凍らせない工夫と行動食

冬の低山の日帰りなら、水は1L前後が一つの目安です。夏より汗は減りますが、寒い時期も体の水分は失われ続けます。凍らない持ち方と、時間を決めて飲む習慣をセットで考えましょう。

国立登山研修所のテキストには、脱水量を見積もる簡単な式があります。「体重(kg)×行動時間(h)×係数」で、係数は春秋の5を、汗をほとんどかかない寒い時期は3〜4に下げます。

計算してみると

体重60kg・行動5時間・係数3〜4なら、脱水量は900〜1,200mlです。必要な給水量を脱水量の7〜8割とすると、約630〜960mlになります。あくまで一般的な目安なので、体格や汗のかき方で調整してください。

冬に水を飲む量が減るのは、喉の渇きを感じにくくなるためです。寒さで尿が増え、冷たく乾いた空気を吸うだけでも水分は失われます。喉が渇いたら飲むのではなく、休憩のたびに飲むと決めておくと忘れにくいですよ。

樹脂ボトルは、空気に触れる口側から凍りやすい傾向があります。キャップをしっかり締めて逆さまに入れ、ザックの背中側や上着の内側にしまう方法がよく紹介されています。ハイドレーションは、チューブが先に凍りやすい点に注意が必要です。

温かい飲み物は、真空断熱の保温ボトルで持つと冷めにくく安心です。熱湯を入れて1分ほど置く予熱で、保温力が上がるとメーカーは案内しています。ペットボトルに熱湯を入れるのは、飲料メーカーの案内に反するのでやめておきましょう。

サーモス 山専用ボトル FFX-502

冬山のような厳しい条件での使用を想定して開発された、0.5Lの保温ボトルです。グローブのままでも扱いやすい専用ポーチが別売りで用意されています。

行動食も、冬は性質が変わります。おにぎりやパンは冷えると硬くなり、ゼリー飲料のように水分の多いものは凍ることがあります。チョコレートやナッツは凍りませんが、冷えると硬くなります。

食べにくいからと量を減らすのは逆効果です。国立登山研修所のテキストは、シャリバテ(エネルギー切れ)を低体温症のリスクとして挙げています。休憩を短く分けて、少しずつこまめに口に入れるのがおすすめです。

食べることは体温をつくることにつながるので、寒い日ほど休憩のたびに少しずつ食べましょう。

関連記事:冬の登山で行動食が凍る問題と凍りにくい食べ物の選び方

ULでも削らないライトと登山届・引き返す判断

荷物を軽くしたいULスタイルでも、ヘッドライトと予備電池、登山届、引き返す条件は削りません。どれも重さはほとんど増えず、トラブルが起きたときの助かりやすさを左右するものです。僕も「軽さより先に安全を残す」を判断の軸にしています。

ULで削っていいのは、着替えの枚数や重複する機能などの「不要な荷物」です。ヘッドライト、レインウェア上下、防寒着、エマージェンシーシートは、軽い製品に置き換えても持たない選択はしません。

モンベルの装備ガイドは、日帰り登山でもヘッドランプ・救急セット・エマージェンシーシートを必携としています。大阪府も冬山の持ち物で、ヘッドライトと予備電池を必須に挙げています。

僕は2017年8月の奥穂高岳で、まだ暗い未明に山荘を出て、はしごのある岩場を山頂へ向かいました。暗い中の行動では、ヘッドライトが必須だと感じた経験です。冬の低山でも、下山が遅れれば同じ暗さの中を歩くことになります。

寒さは電池にも影響します。ペツルは、0℃〜−20℃では点灯時間が最大50%短くなるとしています。使わないときはポケットで温めておく、低温に強い1.5Vリチウム乾電池を選ぶ、といった工夫が役立ちます。

ただしリチウム電池に対応しないモデルもあるので、メーカーの対応表を確認してください。スマホも低温で電源が落ちやすくなるので、モバイルバッテリーと一緒に衣服の内側など冷えにくい場所に入れておくと安心です。

登山届は、低山の日帰りでも出しておきたいものです。冬山で遭難したパーティーのうち、登山届を出していなかったのは81.2%でした(山岳遭難対策中央協議会)。オンライン登山届の「コンパス」や地図アプリから、スマホで提出できます(地図アプリは連携した自治体向けなので、行き先の警察・自治体が受け付ける方法かを確認してください)。

YAMAPは計画を「保存」しただけでは届かず、「提出」を押して初めて自治体に届きます。紙で出す場合は、写しを家族に渡して「この時刻までに連絡がなければ捜索を頼んで」と伝えておく方法が勧められています。

引き返す判断は、時刻だけでなく天候・凍結・体調でも決めておきます。時刻の基準は日没の章で決めたので、ここでは時刻以外の条件を整理します。

条件引き返す目安
天候風が強まる、雨や雪が降り出すなど予報より悪くなったとき(寒さ・風・濡れがそろうと低体温症の条件になる)
凍結滑り止めを持っていない、または道具が路面に合わず不安を感じたとき
体調当日の朝に違和感があれば延期。歩いている途中の不調は、休んでから無理せず引き返す

長野県の公式観光サイトは「アイゼン等の装備がない場合や技術的に不安を感じたら、迷わず引き返してください」と呼びかけています。体調については、大阪府も無理をせず引き返すよう求めています。山は逃げないので、迷ったら戻るくらいでちょうどいいかなと思います。

引き返す条件は出発前に同行者と共有しておくと、現地で迷わず判断できます。

冬の低山登山の注意点についてよくある質問

冬の低山にストックやスパッツは必要ですか?

大阪府は南河内の冬山で、ストックとスパッツを「あると望ましい」持ち物に挙げています。必須ではありませんが、凍結や雪のある下りではストックが体を支える助けになります。スパッツは靴の中に雪が入るのを防ぎます。行き先の雪の状況を見て判断するといいかなと思います。

ヒートテックを冬の登山の肌着にしても大丈夫ですか?

行動中の肌着には向かないと考えておくと安心です。吸湿発熱の中心になるレーヨンは綿より水分を抱えやすく、汗を多くかく登山では乾かずに汗冷えの原因になります。肌着は化繊かウールの登山用を選び、ヒートテックは街着と使い分けるのがおすすめです。

チェーンスパイクはどんな靴にも着けられますか?

底の柔らかい靴から硬い靴まで幅広く対応する、とメーカーは説明しています。ただし靴の形によっては、対応サイズ内でも着けられないことがあります。サイズが合わずチェーンがたるむと、外れたり転んだりしやすくなります。メーカーのサイズ表を確認し、自宅で実際の登山靴に着けて練習しておきましょう。

冬の低山は何月ごろまで凍結に注意が必要ですか?

山や年によって違いますが、大阪府は金剛山を含む南河内で、年によって12月中旬に積雪が見られるとしています。600m級の低山でも12〜2月は日最低気温が氷点下になる計算で、3月も氷点下近くまで下がります。12月から3月ごろまでは凍結を前提に準備しておくと安心です。正確な状況は、行き先の自治体やビジターセンターの情報で確認してください。

雪が降った翌日に低山へ行っても大丈夫ですか?

積雪が深いと、チェーンスパイクでは足りず軽アイゼンが向く道になることがあります。登山口までの道路も、積雪や凍結で臨時の通行止めになる場合があります。ビジターセンターへの問い合わせや直近の登山記録で状況を確かめ、不安があれば日を改めるのが無難です。

冬の低山登山の注意点まとめ|日没・凍結・汗冷えに備える

ゴウ
ゴウ

夏と全部を変えるんじゃなくて、変えるのは3つなんだね。

そうなんです。足りない部分を足すだけなので、まずは近くの短いコースから試してみたいですね。

りょう
りょう

冬の低山は雪が少なく、初心者でも歩ける山がたくさんあります。ただ夏との差は日没の早さ・日陰の凍結・汗冷えの3つで、ここだけは夏の計画のままでは足りません。

冬の低山登山で夏から変える日没・凍結・汗冷えと、時刻・滑り止め・服装・水・ライトの要点を1枚にまとめた図
  • 日の入りは12月上旬が最も早い。15時下山完了から出発時刻と引き返し時刻を逆算する
  • 前日〜当日朝に積雪・凍結と、登山口までの道路規制を確認する
  • 軽アイゼンかチェーンスパイクを持ち、自宅で装着を練習しておく
  • 薄着で歩き、休憩ではすぐ保温着を羽織る。手袋の予備も1組持つ
  • 水は1L前後を目安に時間を決めて飲み、保温ボトルで温かい飲み物を持つ
  • ULでもヘッドライトと予備電池、登山届、引き返す条件は削らない

紹介した数値や時刻は、あくまで一般的な目安です。正確な情報は、自治体や道路管理者などの公式サイトで最新の状況をご確認ください。体力や経験に不安があれば、山岳ガイドなどの専門家に相談するのも一つの方法です。最終的には無理のない計画で、冬の低山を楽しんでくださいね。

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