広告 山

登山のためのトレーニング|バテない体力づくりを実践から解説

登山のトレーニングと体力づくりは低山登山を優先すべきという結論

こんにちは、YAMA-GO編集部のりょうです。関西を拠点に、北アルプスを中心にULスタイルで山を楽しんでいます。このブログ「YAMA-GO」では、実際に使ったギアのレビューや選び方、山のノウハウなんかを発信しています。

「次の山までにバテない体をつくりたい。でも何から始めればいいのか分からない」。僕もまったく同じ状態で、北アルプスへ通っていました。富士山、奥穂高岳、槍ヶ岳、そしてジャンダルム。登れはしたのですが、毎回どこかで脚が終わっていたんですよね。

この記事では、公的な資料の数字と、僕自身が本番で苦しんだ実感の両方から、日常でできるトレーニングの優先順位を整理します。先に結論を書くと、いちばん効くのは近所の低山を月2回登ることです。理由と、山に行けない週の埋め方まで順番に見ていきましょう。

  • 登山のトレーニングで最も効くのは近所の低山を月2回登ること
  • 平地のウォーキングだけでは足りない理由を筋肉の数字で確認できる
  • 自宅と街ならスクワットと階段昇降を先に置く優先順位
  • 本番まで1か月しかないときの現実的な埋め方

登山のトレーニングは低山を登るのが最良

結論から言うと、登山のトレーニングで最も効くのは、近所の低山を実際に登ることです。登りの筋力、心肺、下りの着地衝撃。この3つを一度に鍛えられるのは実登山だけなんですよね。頻度の目安は月2回です。

登山トレーニングの優先順位を示す図。1位は近所の低山を月2回登ること、2位は自宅のスクワットと街の階段昇降、3位は平地ウォーキングという順位と、月2000メートル積むなら週1回500メートル程度という頻度の目安
ゴウ
ゴウ

トレーニングって、やっぱり走ったりジムに行ったりするの?

それも効くんですけど、山の資料を読むと一番に挙がるのは「実際に山に登ること」なんですよ。ちょっと拍子抜けしますよね。

りょう
りょう
ゴウ
ゴウ

山のために山に登る。なんだか近道すぎない?

たぶん本当に近道なんです。なぜそうなるのか、数字で一緒に確かめてみましょう。

りょう
りょう

日本山岳会の医療コラム(大野秀樹)は、体力を上げるには実際の登山が最も有効だとして、月2回を目安に挙げています。平地のウォーキングだけでは十分ではない、という但し書きつきです。

量の基準もあります。鹿屋体育大学の山本正嘉教授らは、月に±2,000mの登下降を勧めています。ただし月1回でまとめて稼ぐと体への負荷が大きく、怪我を招きかねません。週1回、±500m程度の低山に分けるほうが安全です。つまり月2回は続けるための最低ラインで、月±2,000mまで積み上げたいなら週1回ペースが目標になります。

種目1週間の目安獲得ポイント
登山上り500m・下り500m500
坂道ウォーキング上り500m・下り500m400
階段昇降上り3,125段・下り3,125段400
ジョギング10km400
ウォーキング7万歩250
スクワット135回(15回3セット×3回)165
プランク45秒3セット×3回124

この換算表は笹子らの試案を長野県の「登山Safety Book」が一部改訂して載せたもので、週500ポイント・月2,000ポイントが目標です。読み取れることはシンプル。1日1万歩を7日続けても、低山1回の半分にしかならないということです。(出典:長野県『山岳遭難防止 登山Safety Book』)

あくまで目安の換算ですが、「同じ1週間でどれだけ登山に近い負荷を稼げるか」を比べるには十分に使えます。

本番だけで登った僕が苦しんだ話

僕の登山歴は2017年の富士山から始まりました。その1週間後に奥穂高岳、翌年に槍ヶ岳、2019年にジャンダルム。並べると立派に見えますが、実態は間の時期はほとんど登らず、本番だけ登るという登り方でした。

普段やっていたのは軽い筋トレ程度。スポーツマンでも体力自慢でもありません。それでも登れてしまうので、準備の必要性になかなか気づけないんですよね。

代償は毎回、行程の後半に出ました。2018年の槍ヶ岳では、新穂高温泉から槍平小屋まではほぼ標準どおり。ところが山荘までの最後の登りは、標準4時間のところ4時間25分かかりました。1日目の合計は標準8時間30分に対して9時間ちょっと。運動不足がそのまま時間差になった感覚です。

2017年の奥穂高岳も同じでした。6時前に上高地を出て、穂高岳山荘に着いたのが14時半ごろ。ザイテングラート自体は飛び抜けて厳しい道ではないのに、7時間以上歩いた後だと足が上がりません。道の難しさではなく、残っている体力で決まる区間でした。

下りはもっと分かりやすい。富士山の吉田ルートは、8合目からずっと砂利の坂で階段がありません。3時間強、自分の脚だけでブレーキをかけ続けた結果、両足で5か所も水ぶくれをつくりました。トレッキングポールを持たなかったことは、今でも後悔しています。

ポールの効果は実際に測られています。Schwameder らが1999年に報告した実験(被験者8名・傾斜25度)では、ポールのあり・なしで数値が変わりました。地面反力、膝関節のモーメント、脛骨大腿関節にかかる力が12〜25%減。トレーニングの代わりにはなりませんが、下りのダメージを減らす併用手段ではありますね。

登れた、けれど余裕はまったくなかった。この差が事前の積み上げで埋まると知ったのは、ずいぶん後のことです。

平地では太ももは5%・下りも補えない

平地のウォーキングが効きにくい理由は、筋肉の使われ方を測るとはっきりします。福永哲夫氏の筋電図による測定では、普通に歩いたときの大腿四頭筋の活動は最大筋力の5%程度。早歩きや階段、坂道を上っても10〜15%にとどまります。

一方で、筋力の維持・向上には最大筋力の30%以上が必要とされています。日常生活で30%以上を出している時間は、大腿四頭筋で1日11分、腹直筋ではほぼゼロ。歩いているだけでは、脚の筋肉は現状維持すら怪しいわけです。

強度の差もあります。国立登山研修所のテキストでは、下界の早歩きが4〜5メッツ、無雪期の登山は上りで7メッツ程度。ハイキングでも6メッツです。登山は早歩きの1.5倍かそれ以上のきつさ、という整理になります。

そして最大の非対称が下りです。下りは脚の筋肉が引き伸ばされながら力を出す動きで、平地の歩行にはほとんど出てきません。山本ほか(1997)は、サイクリングや平地ウォーキングでは山下り用の筋力は身につかないと報告しています。

階段を下りる動作は3.5メッツで、強度そのものは低い。それでも着地衝撃という別の負荷があります。強度と衝撃は別物、と分けて考えたほうが分かりやすいですよね。

山本正嘉教授は、下りで脚がガクガクになるトラブルについて、毎日ジムでトレーニングしている人より、2週間に1回山に行っている人の発生率が少ないと述べています。下界のトレーニングにも効果はあるが、限度がある。ここが低山を推す最大の理由です。

とはいえ、ウォーキングが無意味という話ではありません。同じ時間で稼げる負荷の桁が違い、下り対策が入らない。そう捉えるのが正確だと思います。

登山の体力の目安をテストで測る

メニューを組む前に、目標の山の要求と自分の現在地を、どちらも数字にしておくのが近道です。順序は「山の体力度を知る→自分の登高能力を測る→差を埋める」。この順で考えると、やることが自動的に絞れます。

マイペース登高能力テストのやり方を示す手順図。体重の10パーセントの荷物を背負い、心拍数を一定に保ちながら1時間でどれだけ登れるかを測り、1時間で430メートル登れれば7メッツの体力があるという目安を示す
どこで測るかテスト必要なもの分かること
自宅片脚立ち・長座体前屈・踏み台昇降テスト台と時計バランス・柔軟性・全身持久力
近所の低山マイペース登高能力テスト半日何メッツの登山に耐えられるか
決まったコース標準タイムとの比較遠征標準タイムに対する余裕度

自宅の層だけで完結させないのがコツです。片脚立ちや踏み台昇降テストは「あの山に登れるかどうか」を直接には答えてくれません。目標の山と直接つながるのは、次に挙げるマイペース登高能力テストだけなんですよね。

目標の山の体力度をコース定数で知る

目標の山がどれだけ体力を要求するかは、コース定数という数字で表せます。山本正嘉教授が考案した式で、標準コースタイム・歩行距離・累積の登りと下りから計算します。

式の中で圧倒的に重いのが、累積登り標高差にかかる係数です。時間や距離の係数を大きく上回るので、距離が短くても急登続きのルートは定数が跳ね上がります。だから「短いから楽だろう」は通じません。

コース定数体力的な目安
10前後初心者向き
20前後一般的な登山者向き
30前後日帰り登山で健脚者向き
40以上1泊以上の計画が必要

長野県の「信州 山のグレーディング」は、この定数を1〜10の体力度に置き換えて公開しています。無雪期・天気良好時という条件付きの評価で、体力度1〜3は日帰りが可能、4〜5は1泊以上、6〜7は1〜2泊以上が宿泊数の目安です。(出典:長野県『信州 山のグレーディング』)

ルート(起点)体力度ルート定数
蓼科山(女神茶屋)219.4
唐松岳(八方池山荘)326.0
燕岳(中房温泉・合戦尾根)431.9
涸沢(上高地)542.0
奥穂高岳(上高地・涸沢経由)764.8
槍ヶ岳(上高地)870.3

僕が2021年10月に歩いた前穂高岳から奥穂高岳の記録は、山行記録アプリの集計で体力度5、行動時間12時間54分、距離14.9km、登り1,915mでした。数字だけ見れば真ん中あたり。ただ1日目の前穂高岳から奥穂高岳への区間は、本当にしんどかったです。

体力度は下りの負担までは教えてくれません。下りが不安なら、一覧表の累積下り標高差を直接見るのが確実です。木曽駒ヶ岳から空木岳へ抜けるルートは登り1.36kmに対し下りが3.15km。体力度6という数字からは、この偏りは読み取れないんですよね。

評価は改訂されることがあります。計画を立てる前に、長野県の公式サイトで最新版を確認してください。

1時間で430m登れるかを測る

自分側の現在地は、マイペース登高能力テストで測れます。体重の10%の荷物で1時間に430m登れれば7メッツ相当。日本アルプスなどの本格的な登山ができる基礎体力がある、という読み方をします。

やり方はシンプルです。急な登りが標高差500m以上続くコースを選び、10分ほどウォーミングアップの歩行をしてから測定を始めます。荷物はザックだけでなく、身につけている衣類や靴の重さも含めて計量します。

大事なのはペースの取り方。マイペースとは「きつさを感じる手前」「息がはずまないで話しながら登れる」「数時間は同じ速さで登れる」速さのことです。全力で登ると速い値が出てしまい、テストの意味が消えます。

中高年の方は、全力で登ること自体が心臓への過度な負担になります。会話ができる速さを必ず守ってください。

1時間あたりの登高標高差メッツ体力面の評価
500m以上8メッツ台どのルートでも体力的リスクは少ない
400m以上7メッツ台難易度A・Bの一般ルートはリスクが少ない
300m以上6メッツ台A・Bでも少しリスク。時間をかけて下げる
300m未満6メッツ未満里山を数多く登って体力をつける段階

350mしか登れなければ、ハイキングは大丈夫でも無雪期の本格的な登山には不安が残る、という判定になります。厳しく感じるかもしれませんが、山に入る前に分かるほうがずっと安全ですよね。

決まったコースの標準タイムと比べる方法もあります。六甲山最高峰の標準タイムは3時間35分で、4時間6分以上かかる人は5メッツ以下という判定。高尾山の稲荷山コースなら1時間40分が標準です。

僕が測るなら、近場の六甲山からです。関西に住んでいるので、思い立った週末にそのまま会場にできるのが大きい。荷物は体重の10%なので、体重60kgなら6kgを目安に積みます。重さは水で調整すると、しんどくなったときに捨てて軽くできますよ。

筋力側の基準も知られています。膝を伸ばす筋力を体重で割った値が0.85kg/kg以上ならコースタイムより速く歩け、0.70kg/kg程度でコースタイム相当、0.65kg/kg未満はトラブルに見舞われやすいとされています。測定機器が要るので、まずは登高能力テストが現実的です。

道具のいらないチェックなら、片脚立ちと長座体前屈。両手を腰に当てた開眼の片脚立ちで90秒、長座体前屈で手のひらが爪先に届けば合格の目安になります。

自宅と街のメニューは有酸素より筋トレが先

迷ったら下半身の筋トレを先に置くのが実務的です。登山中のトラブル上位は、膝の痛み、下りで膝がガクガク、登りでのひどい息切れ、筋肉痛。息切れ以外は、筋力不足が関わっているものが多いんですよね。ただし膝の痛みだけは、関節そのもののトラブルが原因のこともあります。

平地ウォーキングと筋力トレーニングを比較する図。平地歩行は太ももの筋肉を最大筋力の5パーセントしか使わないのに対し、登山に必要な筋力の目安は30パーセントで、平地ウォーキングだけでは登山に必要な筋力に届かないことを示す
ゴウ
ゴウ

筋トレと有酸素、どっちからやればいいの?

両方いるんですけど、順番は付けられます。山でよく起きるトラブルを並べると、筋力側の話が多いんですよ。

りょう
りょう
ゴウ
ゴウ

へえ、息が切れるほうが困りそうなのに。

僕も最初はそう思っていました。しかも両方を同時に鍛えられる種目があるみたいなので、そこから見ていきましょう。

りょう
りょう

実際には、どちらか一方では足りません。国立登山研修所のテキストは、走る運動は心肺には良いが登山用の筋を鍛えるには十分でないとして、筋力トレーニングの並行を勧めています。逆に筋トレだけでは、長時間動き続ける心肺が育ちません。

そこで踏み台昇降やスロージョギングのような、筋力と持久力を同時に鍛えられる種目が効いてきます。中高年の登山者では約45%が膝の痛みを感じながら登っているという調査もあり、下半身を先に固める意味は大きいです。

種目鍛える部位1日の目安気をつける点
プランク腹筋群・背筋群10秒以上目線は下。きつければ膝をついてよい
スクワット大腿四頭筋10回×3セット以上つま先より膝を前に出さない
ヒップリフト臀筋群・ハムストリングス10回×3セット以上お尻に力を入れ、腰を反らしすぎない
踏み台昇降心肺機能・筋力15分以上踏み出す足は左右交互に
スロージョギング心肺機能15分以上かかとをつけずに小刻みに足踏み

長野県の「登山Safety Book」に載っている一覧です。前提として、その運動が登山の何に効くのかを意識すること、楽にできるようになったら回数やセット数を増やすことが挙げられています。

スクワットは下りの筋にそのまま効く

スクワットが登山に効く理由ははっきりしています。下山で使う筋肉と、スクワットで鍛えられる筋肉がほぼ同じだからです。身体を降ろす局面で大腿四頭筋が引き伸ばされながら力を出す。下りとまったく同じ様式の負荷がかかるわけです。

下りの負担は数字にも出ています。下り坂を40分歩くと、大腿四頭筋の筋力は30%近く低下するという報告があります。脚に力が入らない、膝がガクガクする。あの症状の正体がこれです。

段階量
初期10回×3セット
目標15回×5セット

頻度は週2〜3回。スクワットと腹筋をそれぞれ15回×5セット、週2〜3回が苦にならなくなれば、一般的な登山に十分な筋力と見なせるとされています。ゴールが見えていると続けやすいですよね。

フォームの注意は2つだけ。つま先より膝を前に出さないことと、腰を丸めないことです。富士登山向けの逆算メニューでは、上下それぞれ3秒かけるゆっくりした動作が勧められています。

慣れてきたら加重します。歩荷トレーニングと同じで、まずは体重の10%から始めて少しずつ増やすのが一般的な目安。登高能力テストの前提も同じ10%です。足の幅を変えるだけでも使う筋肉は変わるので、回数を増やすだけが漸進ではありません。

加重の中身も選べます。手持ちのザックに水入りのペットボトルや米袋を入れるだけで十分ですが、水なら不調のときに捨てて軽くできます。ウエイトベストは重量が体幹に密着して荷崩れしません。ただし本番のザックとは荷重のかかり方が違うので、背負い方まで寄せたいならザック加重が近いですね。

忘れがちなのがお尻と裏ももです。ヒップリフトで臀筋群とハムストリングスを鍛えておくと、大腿四頭筋の働きに頼らずに歩けるようになります。

効果が出るまでの時間も分かっています。42〜57歳の3名が剱岳の2か月前から登山とランニングを併用したところ、体重あたりの膝伸展筋力が全員10〜18%向上しました。結果は標準コースタイムの2/3〜3/4で踏破、登山後の筋肉痛も軽微。2か月あれば体は変わります。

関連記事:下山で膝が痛い原因と対策|歩き方とポールで負担を減らす

関連記事:登山の筋肉痛を防ぐ予防と回復法

階段昇降と速歩で心肺をまとめて鍛える

街で心肺を鍛えるなら、階段がいちばん効率的です。階段を上る動作は6.8メッツ、はやいペースで1段ずつなら9.3メッツ。平地の速歩が4.8メッツなので、同じ時間でもまるで違う負荷になります。

面白いのは、階段昇降を標高に翻訳できることです。踏み台昇降なら、台の高さ×回数がそのまま登った標高になります。高さ18cmの台を1,000回踏めば180m分。日常の階段が山の数字に変わります。

台を買うなら、高さの選び方だけ気をつけてください。市販のステップ台は10cm・15cm・20cm前後が一般的で、高いほど1回の負荷が上がります。最初から最大の高さにして膝を痛めるのが失敗例の筆頭です。床の音で続かない、収納できずに使わなくなる、もよく聞きます。

高さを調節できるモデルなら、楽になったら一段上げるという積み方ができます。価格の例を1つ。東急スポーツオアシスのシングルステップは、公式ショップで4,980円(税込・2026年8月時点)です。高さは8cm・13cm・18cmの3段階で、耐荷重は100kg。

とはいえ、買わずに始めて構いません。自宅や公園、駅の階段でも同じことはできます。台を足して変わるのは、高さが一定になることと、天候や時間帯に縛られないこと。まず階段で続いた人が買えばいいと思いますよ。

週の目標も同じ土俵で計算できます。ポイント換算表の階段昇降は、上り下り各3,125段で400ポイント。1段16cm換算で約500mに相当する設計です。通勤の階段を「今日は何m登った」と数える感覚は、続けるうえで意外と効きます。

生活パターン週の内訳合計
週末に低山1回だけ登山(上り下り各500m)500500(達成)
平日だけ・登山なしジョギング10km 400+スクワット週135回 165565(達成)
通勤だけで済ませたいウォーキング7万歩 250+階段昇降 400650(達成)
ウォーキングのみ週7万歩 250250(未達)

有酸素側をもう一段上げたいなら、信州大学の能勢博教授が考案したインターバル速歩があります。速歩3分とゆっくり歩き3分を交互に、1日5セット以上。週4日以上を5か月続けると、体力が平均15%向上したと報告されています。(出典:信州大学大学院医学系研究科 スポーツ医科学教室(能勢博教授))

速歩の強度は「10分歩いていると少し汗ばむが、友人と軽い会話はできる」くらい。通勤や買い物の行き帰りに分けて実施しても構いません。まとまった時間が取れない人には、こちらが現実的だと思います。

膝が心配ならスロージョギング。1分間に180歩のピッチで、笑顔で話せる速度を保ちます。自宅なら、かかとを地面につけずに小刻みに足踏みするやり方で1日15分以上。ウォーキングより強度が高く、ジョギングより膝への負担が小さい運動です。

ランニングを増やす場合は要注意です。週の走行距離が10kmを超えると膝関節障害が起こりやすいという報告があり、事前トレーニング中に膝を痛めた事例も報告されています。

登山の体力づくりは何ヶ月前から週何回

目安は本番の2か月前から、低山を月2回、筋トレを週2〜3回です。初心者向けの一般解も「本番の1〜2か月前から」で一致しています。ここから逆算すれば、今週やることが決まります。

登山本番2か月前からのトレーニング計画を示すタイムライン図。2か月前からスクワットを週2〜3回開始し、回数を10回×3セットから15回×5セットへ段階的に増やし、本番の1〜2週間前に本番の半分程度の負荷を1回入れるという流れ

そもそも、なぜ期間と頻度を決めるのか。2022年の国立登山研修所サテライトセミナーで、268名へのアンケートが行われました。何らかのトラブルを感じている人は約7割。それでいて対策は「特に何もしていない」が約30%でした。

気になるのはその先です。来年の目標を聞くと、「今年よりレベルアップ」か「今年と同レベル」が約90%を占めていました。不安を自覚しながら何もせず、翌年は同じかそれ以上の山を計画している。このずれを埋めるのが、期間と頻度の設計だと思っています。

本番までの残りできること割り切ること
3か月以上月±2,000mを週±500m×4回に分割。筋トレは10回×3セットから15回×5セットへ特になし
2か月登山を月1〜2回+週数回のランで脚筋力10〜18%向上は届く範囲体力度を大きく上げるのは難しい
1か月筋トレと踏み台昇降で筋力側は動かせる大幅な持久力の底上げは間に合わない。ペース・荷物・天候で埋める
2週間本番の半分ほどの負荷の登山を1回入れる新規の体力向上はほぼ望めない

直前の1回には意味があります。本番の1〜2週間前に、本番の半分くらいの負荷の登山を1回入れる。残存効果と呼ばれる考え方で、1〜2か月の間に2〜3回できれば繰り返しの効果も積み上がります。

逆に、やめたときの落ち方も知っておくと計画が立てやすいです。筋量は運動する機会が減って4週間で開始前に戻り、さらに4週間でそれ以下になるという報告があります。ただし2週間程度なら筋力はほぼ落ちません。仕事が詰まった2週間は、そこまで恐れなくて大丈夫ですよ。

最後にひとつ、身も蓋もない話を。国立登山研修所のテキストには、「これさえやっておけば万全という体力トレーニングのメニューは存在しない」と明記されています。メニュー表を探し回るより、残り期間と目標の山に合わせて組み替えるほうが早いということですね。

ジャンダルムの前に西穂で慣らした

2019年7月にジャンダルムへ行く前、僕がやった準備は1つだけでした。1か月前の6月に、西穂高岳を日帰りで登る。それが本番に向けた唯一の慣らしです。

岩場の感触を思い出し、長時間歩く感覚を戻す。今から振り返ると、本番の半分ほどの負荷を事前に一度入れるという考え方に近かったと思います。効果はあったはずです。

ただ、正直に言うと準備はそこまででした。慣らしを1回入れた以外は、間の時期はほとんど登らず本番だけ。日常でやっていたのは軽い筋トレ程度です。

結果は2日目に出ました。穂高岳山荘を3時40分ごろに出て、上高地に戻ったのが15時06分。合計11時間22分の行動になりました。馬の背もロバの耳も、恐怖と集中で体力を確実に削ってきます。

いちばん危なかったのは、天狗のコルから岳沢小屋へ下る雪渓でした。7月でも残雪があり斜度がきつい。アイゼンを着けていたのに5mほど滑落して、本気で「このまま岩に当たるのかな」と思いました。

あのとき脚に余力があったかと聞かれると、自信がありません。疲れた脚は、判断も足元も雑にします。今の僕が同じ計画を立てるなら、2か月前からの低山月2回を必ず足します。

間に合わないなら山選びで埋める

間に合わないと分かったときの答えは、精神論ではありません。公的に挙げられている回避策は3つ。標準コースタイムよりゆっくり登る、不要な荷物を減らす、悪天候では登らないです。

ペースを落とす効果は数字で出ています。標準の1.2〜1.5倍の時間をかければ、運動強度は5〜6メッツまで下がる計算です。ただし行動時間が延びる分、天候悪化などのリスクは増えます。明るいうちに下りられるかとセットで考えてください。

荷物を減らす効果も大きいです。行動中の消費エネルギーは、コース定数×(体重+ザック重量)で表されます。体重とザックの重さが単純な和で効くので、荷物1kgは体重1kgとまったく同じ重みになるわけです。

僕が槍ヶ岳で学んだのもここでした。水を2L担いで登って、単純に重くて疲れました。あのときの僕の条件なら、途中で給水できるルートで1.5Lあれば足りました。必要量は体重・荷物・行動時間・気温で変わるので、水場の確実さとあわせて決めてください。水は飲めば軽くなる荷物でもあります。

そして、山選びそのものを1段下げる判断。体力度1〜3は日帰りが可能、4〜5は1泊以上が目安なので、日程を1日足すだけでも余裕は生まれます。同じ山でも、泊まりを挟むと別の山のように歩けますよ。

2017年の奥穂高岳がまさにそれでした。上高地から1泊2日で登りましたが、初日がとにかくしんどい。歩いても歩いても着かない、という感覚です。涸沢に泊まる2泊3日が一般的と言われる理由が、体でよく分かりました。

同じ道を60代らしき方々も普通に登っていました。体力が足りないなら、時間を足す。これがいちばん確実な埋め方だと思います。

40代50代の登山の体力づくり

この年代で押さえるべきは2つです。落ちる場所が偏っているので、脚と腹を意図的に鍛えること。そして心臓側の備えをすること。どちらも「歳だから仕方ない」で終わらせない具体策があります。

40代50代の登山者向けの注意点をまとめた図。太ももの前側と腹部の筋肉が優先的に落ちやすいこと、登山初日の午前中はゆっくりしたペースで歩くこと、休憩しても脈拍が90以上のままなら要注意であることを示す

背景の数字も先に見ておきましょう。警察庁がまとめた令和7年の山岳遭難統計では、遭難者のうち40歳以上が75.6%を占めていました。60歳以上に限っても47.6%、死者・行方不明者では40歳以上が91.6%です。山で深刻な事態に至っているのは、圧倒的にこの年代なんですよね。(出典:警察庁『令和7年における山岳遭難の概況』)

態様別の内訳も見ておきます。遭難の原因を分類したうちの「疲労」は、令和2年の6.3%から令和7年は9.8%へ。人数で見ると170人から356人で、5年で約2.1倍です。読み方に幅はありますが、体力不足そのものが遭難の入口になりうる変化だと思います。

安藤真由子氏は「40歳頃を境に筋力やバランス力、持久力は一気に低下する」としています。長野県山岳総合センターの冊子の題は、そのまま「過去の体力 過去のもの」。身体機能の衰えを自覚しないまま、昔と同じ山を選んでしまうことが遭難の要因に挙がっています。

落ちるのは太ももとお腹だけ

加齢による筋肉の減り方には、はっきりした偏りがあります。福永哲夫氏の測定では、上腕前部の筋量は60歳代まで男女ともほとんど変化しません。減るのは大腿前部と腹部です。

20歳代を100とすると、70歳代で大腿前部は約80%、腹部は約70%まで減ります。著しくなるのは50歳代以降で、10年で約10%、1年で1%のペースです。

さらに厄介なのが、量より力が速く落ちること。膝を伸ばす筋力は、20歳を100%とすると70歳では60%まで落ちます。筋量が80%なのに筋力は60%。差の原因は脳と神経系の老化と考えられています。

つまり、登山でいちばん使う場所が優先的に落ちていく構造なんですよね。しかも日常の歩行では大腿四頭筋を最大筋力の5%しか使っていないので、生活の中では自然に維持されません。

一方で、対策の効果も測られています。大学生が2週間の寝たきり生活を送ると大腿前部は約8%萎縮しますが、同じ期間に膝を伸ばす筋力トレーニングを毎日15分行った場合は筋量が減りませんでした。1日15分の筋トレには、それだけの意味があります。使えば残る、という当たり前のことが数字にも出ているんですよね。

体力を10%上げたときの変化も具体的です。これまで4時間かかっていた登山が3時間30分になり、同じ山を同じ速度で登るなら心拍数が10拍/分ほど下がります。登山中の関節痛や心筋梗塞のリスクも20%低下すると整理されています。きつさの感じ方そのものが変わる、ということです。

年齢の話とは少し別ですが、僕の記録にも同じ偏りが出ていました。前穂高岳から奥穂高岳の12時間54分も、槍ヶ岳で標準を25分超えた登りも、遅れは行程の後半に出ています。先に切れたのは、腕でも握力でもなく脚でした。使う場所から順に足りなくなるのだと思います。

だからこそ、40代・50代はスクワットとプランクを意図的に入れる。「年齢に関係なく続けましょう」より、一段だけ具体的な話です。

初日午前と脈拍90が危険信号

ここからは安全の話です。国際山岳医の大城和恵医師の解説によると、中高年が山で心臓突然死を起こす場合はほぼ全例が心筋梗塞で、起こすのは34歳以上・男性が9割とされています。

発生が多いのは登山の初日・午前中。急な運動、寒さや暑さ、薄い空気、水分不足といった変化にからだがストレスを感じ、交感神経が活性化するためと説明されています。緊張は1日目が最も強いそうです。

だから初日はゆっくり。目安は「平地の半分のスピード」「話をしながら登れるペース」。乳酸が溜まらない速さを守ります。

自分で確かめる2つのサイン

出発前に脈拍を測っておき、休憩のたびに測り直します。休んでも1分間に90回以上打っているなら要注意で、休憩・水分・ペースダウンが必要です。もう1つは排尿の回数。いつもより少なければ脱水のサインとされています。

前日の過ごし方も効いてきます。十分な睡眠をとる、アルコールを控える、水分を摂る。この3つが予防として挙げられています。

僕自身、富士山の山小屋でビールを飲んで寝たら、軽い高山病でしんどい思いをしました。心臓の話とは別物ですが、前夜の一杯が翌日に響くのは実感としてよく分かります。

実測データも、この年代の負担を裏づけています。60歳代の方が常念岳を自分のペースで登ったとき、ペースは一定なのに心拍数は登り始めの最大心拍の80〜90%から、終盤には90〜100%まで上がっていました。

準備側で外せないのが健康診断です。40歳以上の男性は病院で検査を受け、日ごろ運動していない人は運動負荷試験を受けることが勧められています。持病があるなら、今の治療のままで登山に行けるかを主治医に確認してください。

ここに挙げた数値は、いずれも一般的な目安にすぎません。体力にも持病にも個人差が大きい部分です。胸の違和感や強い息切れがあるなら、その場で引き返す判断を優先してください。最終的な可否は専門家にご相談ください。

最後にひとつだけ。読み終えたら、近所の低山を1つ決めてみてください。標高差500mくらいの登りがあるコースなら、そのまま登高能力テストの会場になります。月2回の1回目が、今度の週末です。

登山のトレーニングでよくある質問

ジムに通わないと登山のトレーニングはできませんか?

いいえ、自宅と通勤だけでも成立します。週500ポイントという目標は、ウォーキング週7万歩の250ポイントに階段昇降の400ポイントを足せば超えられる設計です。筋力側もスクワットやプランクといった自重種目で動かせます。費用の感覚も添えておきます。24時間ジムの例では、月会費9,900円にセキュリティキーの発行手数料5,500円が加わります(エニタイムフィットネス渋谷店・2026年8月時点)。公営のトレーニング室なら1回300円という例も(渋谷区スポーツセンター・同時点)。金額は店舗や自治体で変わるので、通う前に最新の情報をご確認ください。

ランニングだけでは登山の体力はつきませんか?

心肺は鍛えられますが、登山用の筋力としては足りないとされています。走る運動は水平方向、登山は垂直方向なので、使う筋肉がやや異なるためです。坂道を使えばある程度は近づきますが、下りの着地衝撃までは再現できません。走るなら筋力トレーニングを並行させてください。なお週の走行距離が10kmを超えると膝を痛めやすいという報告があるので、増やし方は慎重に。

忙しくて2週間トレーニングを休みました。体力は落ちますか?

筋力についてはほぼ落ちないとされています。ただ、落ち方は筋力と持久力で同じではありません。最大酸素摂取量は4週間以内でも、鍛錬者で4〜14%低下するという報告があります。つまり2週間の空白で先に削られるのは、筋力ではなく持久力だと考えられます。再開するときは、いきなり元のセット数に戻さず、歩く時間や階段の量から先に戻すと立ち上がりが楽ですよ。

秋冬は山に行きません。オフシーズンもトレーニングは必要ですか?

翌シーズンに同じレベル以上の山を計画しているなら必要です。春夏の登山で得た体力も、秋冬に運動機会が減れば落ちてしまいます。冬の間は自宅の筋トレと階段昇降で最低限を保ち、春先から低山の頻度を戻すと立ち上がりが楽になります。同じ低山を同じペースで登り続ければ、体力の変化を測るものさしにもなりますよ。

膝が痛いときもトレーニングを続けていいですか?

少し休むと痛みが消えるなら、筋疲労や筋力不足による一時的なものであることが多いとされています。ただし変形性膝関節症の初期も、動作の開始時だけ痛み休めば痛みがとれるとされているので、休むと消えることは原因の裏付けにはなりません。歩き始める前から痛い、膝が腫れている、毎回のように繰り返すといった場合は、受診が勧められています。自己判断で続けず、整形外科で診てもらってください。原因が分かれば、やるべきトレーニングもはっきりします。

登山のトレーニングは低山月2回が軸

ゴウ
ゴウ

結局、いちばん効くのは山に登ることだったんだね。

そうなんですよね。そのうえで、行けない週を階段とスクワットで埋める。この形がいちばん続けやすいと思いますよ。

りょう
りょう

最後に、この記事の要点をまとめます。

登山のトレーニングと体力づくりの要点を1枚にまとめた図。最も効くのは近所の低山を月2回登ること、自宅ではスクワット、街では階段昇降とインターバル速歩、期間は本番の2か月前から、40代以降は大腿前部と腹部の筋力低下に注意という要点を俯瞰できる
  • 最も効くのは近所の低山。月2回が続けるための最低ラインで、月±2,000mまで積むなら週1回±500mが目標
  • 平地歩行では大腿四頭筋は最大筋力の5%しか使わず、維持に必要な30%に届かない
  • 現在地はマイペース登高能力テストで測る。体重の10%の荷物で1時間430mが7メッツの目安
  • 自宅ではスクワットを初期10回×3セットから目標15回×5セット・週2〜3回まで積む
  • 街では階段昇降とインターバル速歩。台の高さ×回数で登った標高に換算できる
  • 期間は本番の2か月前から。1〜2週間前に本番の半分の負荷を1回入れる
  • 40代以降は大腿前部と腹部が優先的に落ちる。初日午前はゆっくり、休んでも脈拍90以上は要注意

数値はいずれも一般的な目安で、体力にも持病にも個人差があります。ルートの最新情報は公式サイトで確認し、体調に不安があれば専門家にご相談ください。無理をせず引き返す判断が、いちばん頼りになる装備だと思います。

あわせてチェック

いまの登山靴、足に合っていますか?足型・シーン・価格からブランドを見直せます。

登山靴ブランド徹底比較|スカルパ・サロモン・LOWA・キャラバン・ホカはどれを選ぶべき?

-山
-, ,