こんにちは、YAMA-GO編集部のりょうです。関西を拠点に、北アルプスを中心にULスタイルで山を楽しんでいます。このブログ「YAMA-GO」では、実際に使ったギアのレビューや選び方、山のノウハウなんかを発信しています。
山小屋に2泊3日。ザックは何リットルを選べばいいのか、正直けっこう迷いますよね。1泊2日より1日長いぶん、ひと回り大きいものが要る気がしてしまいます。
先に結論を書くと、小屋泊2泊3日は35L前後が目安です。手持ちが30Lクラスなら、条件しだいでそのまま行ける可能性があります。
僕自身、槍ヶ岳の小屋泊も残雪期の涸沢もミレーの30+5Lで回してきました。実際に増える荷物の実数と、僕が詰めた中身から、あなたの手持ちで足りるかを一緒に見ていきましょう。
- 小屋泊2泊3日のザック容量が35L前後に落ち着く理由
- 1泊2日から増えるのは行動食と着替えだけという実数
- 手持ちの30Lで行ける条件と、40L以上が必要になる条件
- 僕が槍ヶ岳と涸沢の小屋泊で30+5Lに詰めた中身と配置
小屋泊2泊3日のザック容量は35L前後
小屋泊2泊3日でこれから選ぶなら、35L前後が現実的な目安です。必要な量そのものは30〜35L、余裕を見ると35〜40Lという帯で、その真ん中が35L前後という位置づけになります。手持ちが30Lクラスなら、条件がそろえばそのままでも足ります。あくまで一般的な目安で、季節や行程によって必要な容量は動きます。

容量が足りるかを決めるのは、重さではなく「かさ」です。メーカーが公表している収納サイズを体積に直せば、必要な容量を積み上げで出せます。夏から秋の2食付きプランで、かさばる側の持ち物を積むと次のようになります。
| 持ち物 | 収納容積の目安 |
|---|---|
| レインウェア上下(モンベル ストームクルーザー上下の公称値) | 約1.6L |
| 保温着(薄手のダウンジャケット1枚) | 約1.2L |
| インナーシーツ(化繊) | 約1.0L |
| 着替え1日分 | 約1L |
| 行動食3日分 | 約1〜1.5L |
| 水1L | 1.0L |
| 小物一式(ヘッドランプ・救急セット・洗面・充電まわり・地図) | 約2〜3L |
合計はおおむね9〜11Lです。この数字だけ見ると、15Lくらいでも入りそうに思えますよね。ところが実際のパッキングでは、荷物の形が噛み合わず必ず隙間が生まれます。
経験的には、積み上げた容積の2.5〜3倍あると雨蓋を無理なく閉じられます。9〜11Lなら計算上は22〜33Lですが、ここに行動中に脱いだ防寒着や非常装備、出し入れのしやすさぶんが乗ります。30〜35Lが現実的な下限で、余裕を見ると35〜40L。よく言われる目安の帯と、ちょうど重なる形です。
この帯は各社の公式な目安とも一致します。モンベルと山と溪谷オンラインは山小屋泊を30〜40L、グレゴリーは宿泊を含む登山で35L以上としています。定説をそのまま信じるというより、積み上げの結果として同じ場所に着いた、という理解が近いです。(出典:グレゴリー公式『バックパックのおすすめの使い方』)
積み上げた容積はあくまで下限。2.5〜3倍を最低ラインに、脱いだ衣類や非常装備のぶんまで見て35L前後を選ぶと外しません。
1泊2日から増えるのは着替えと行動食
1泊2日から2泊3日に伸びて増えるのは、行動食1日分と着替え1セットだけです。重さで350〜550g、かさでは1L弱にとどまります。

泊まる日が1日増えるんだから、荷物もどーんと増えるんじゃないの?
僕も最初はそう思っていました。でも数えてみると、増えるのは2つだけなんですよ。
へえ、そうなんだ!じゃあザックも同じ大きさでいけるの?
そこが今回いちばん確かめたいところですね。まずは増える中身から見てみましょう。
| 増える項目 | 重さの増分 | かさの増分 |
|---|---|---|
| 行動食1日分 | 200〜300g | 0.3〜0.5L |
| 着替え1セット | 150〜250g | 0.5L前後 |
| 合計 | 350〜550g | 0.8〜1.0L |
拍子抜けするくらいの量ですよね。1L弱なら、雨蓋やサイドポケットで吸収できる範囲です。30+5Lのような拡張つきのザックなら、拡張分だけで増分の5倍の逃げ場があります。
ただし行動食は、中身の選び方で重さが激変します。固形のバー系が1gあたり5kcal、ゼリー飲料は1kcal前後。同じ1,200kcalを運ぶのに、240gと1,200gという差が出ます。
つまり全部をゼリーで賄うと、それだけで容量も重量も破綻します。主体は固形にして、ゼリーは食欲が落ちたとき用の保険に回すのが現実的です。僕も槍ヶ岳のときに、ゼリー系は重いと痛感しました。
着替えのほうは、化繊のTシャツで100g前後が目安です。下着とソックスを足しても1セットで150〜250g、かさは0.5L前後にしかなりません。行動着を着たまま乾かす運用なら、2泊3日でも1セットと下山後の上1枚で足ります。
稜線や高所の山小屋は水が貴重で、たいてい風呂がありません(横尾山荘や赤岳鉱泉のように入浴できる小屋もあります)。ボディシートで拭いてから着替えるのが現実的な清潔管理になります。ここを日数ぶん持とうとすると、いきなり容量が苦しくなります。
水と安全装備は日数で増えない
水と安全装備は、泊数が増えても増えません。これが「2泊3日でも同じザックで回せる」いちばんの理由です。
水は小屋や水場で毎日補給します。だから担ぐのは、常に行動1日分だけ。1Lで約1kg・容積1Lを占めるので、満タンで担ぐほど容量と重量を同時に削られます。
僕が槍ヶ岳の新穂高温泉ルートで出した結論は、給水前提なら1.5Lで十分、でした。2Lは重くて、疲れる原因になるだけでしたね。上高地ルートでも上高地で給水できるので、容器さえあれば水は現地調達できます。
そもそも必要な水分量は、担げる量を超えます。体重60kgの人が8時間歩くと、目安で2,400mlほどが失われる計算です。だからこそ担ぐ設計ではなく、こまめに補給する設計になります。(出典:国立登山研修所『夏山リーダー研修 事前課題』)
ヘッドランプ、レインウェア上下、防寒着、地図とコンパス、救急セット。この辺りは日帰りでも2泊3日でも同じ一式です。日数に比例しないので、泊数が増えても必要な容量には効きません。
槍ヶ岳と涸沢で30+5Lに詰めたもの

僕が小屋泊で使ってきたのは、ミレーのサースフェー30+5です。30Lクラスでも小屋泊は十分に成立するというのが、実際に背負ってきた実感でした。

買ったのは2018年、槍ヶ岳の1泊2日に行くことになったタイミングです。新穂高温泉から入って槍ヶ岳山荘に泊まる行程で、荷物が入らずに困る場面はありませんでした。当時の記載スペックは重量1,490g、背面サイズはM48cm・L51cmでした。
いちばん効いたのは、サイドのボトルポケットに横から手が届く点です。僕は体が硬く、上からだと自分では水が取れません。ザックを降ろさずに飲めたのは、槍ヶ岳の行動中に本当に助かりました。
雨蓋が2室あるのも小屋泊向きでした。小さいほうに絆創膏などの応急処置アイテムと移動中の非常食を入れておけば、行動中に本体を開けずに済みます。背面はパッド以外に隙間があって空気が通り、夏の登りで効きました。
不満もあります。まず純正レインカバーの留め具の位置で、カバーを付けたまま雨蓋を開けようとすると全部外す必要がありました。風の強い日に外すのは怖かったです。まさか純正のカバーが使いにくいとは、正直盲点でした。
あとは重さですね。1,490gは、いまの軽いモデルと比べると軽快とは言えません。ヒップベルトのポケットも、通常サイズだと大画面のスマホが横向きに入りませんでした。片側は広げて2倍にできるので、そこで逃げています。
ミレー サースフェーNX 30+5
雨蓋2室とサイドの横アクセスが小屋泊で効いた1本。夏〜秋の2食付きで装備を絞れば、拡張の5Lが1泊2日と2泊3日を同じ積み方で兼用する余地になります
価格目安:28,050円(税込)
残雪期の涸沢は、同じ小屋泊でも荷物が変わりました。2021年5月のGWに上高地から涸沢ヒュッテへ入って泊まった山行で、ザックは槍ヶ岳と同じサースフェー30+5です。夜が寒く、ナンガのダウンジャケットとパタゴニアのダウンパンツを持ち込みました。
足元はチェーンスパイクで通しましたが、残雪期のシャバ雪を歩くのは大変でしたね。ダウン上下とチェーンスパイクが乗っても30+5Lには収まりましたが、同じ小屋泊でも、防寒装備が増える時期は容量に余裕が要るとはっきり分かった山行です。
2017年の奥穂高岳では穂高岳山荘に泊まりました。館内にゴミ箱があって登山中のゴミを捨てられたので、下山時の荷物が減ったのは地味にありがたかったです。ご来光で朝食の時間に戻れないときは、弁当に替えてもらえました。
行程そのものの実感も書いておきます。槍ヶ岳を1泊2日で回った結論は「1泊2日は気力が要る」でした。2泊3日なら余裕を持って登れます。荷物が1L増えることより、1日の行動時間が減る効果のほうがずっと大きいと感じています。
手持ちの30Lで足りるかの線引き
手持ちで行けるかどうかは、容量ごとにだいたい線が引けます。30Lは条件つきで可、35Lなら余裕をもって可。25L以下になると、夏でもかなり苦しくなります。

| 手持ちの容量 | 小屋泊2泊3日での可否 | 条件・注意 |
|---|---|---|
| 25L以下 | 難しい | 積み上げ9〜11Lの2.5〜3倍という下限を下回りやすく、脱いだ衣類や隙間のぶんで雨蓋が閉じにくい |
| 30L(拡張なし) | 条件つきで可 | 2食付き・夏〜秋・着替えは1日分・水は補給、が全部そろう場合 |
| 30+5L(雨蓋拡張) | 可 | 拡張の5Lが防寒着や下山後の着替えの逃げ場になる |
| 35L | 余裕をもって可 | 圧縮を頑張らなくても収まり、出し入れの順番も守れる |
| 40L以上 | 条件しだいで必要 | 残雪期・カメラ機材・共同装備の分担がある場合 |
| 45L以上 | 小屋泊では過剰になりやすい | 空きが多いと荷物が下に沈んで重心がずれる |
表の下2行は、大は小を兼ねないという話です。容量に対して荷物が少なすぎると、中身が下に沈んで重心がずれます。空きがあると「念のため」で物が増えていくのも、あるあるですよね。
30Lで行ける4つの条件
30Lで2泊3日に行くなら、次の4つがそろうことが前提です。どれか1つ崩れるだけでも、雨蓋が閉じにくくなる場合があります。装備の実寸やザックの形で差が出るので、本番の荷物で一度詰めてみてください。
- 1泊2食付きのプランを選ぶ(寝具と夕食・朝食が小屋持ちになる)
- 着替えを1日分に絞る(行動着は着たまま乾かす)
- 水は担がず小屋や水場で補給する(携行は1〜1.5L)
- 保温着を1枚に統一する(フリースと薄手ダウンの二重持ちをやめる)
どれも「持ち物を減らす」か「小屋の提供に置き換える」方向の手です。2食付きと素泊まりの差額は、北アルプスの主要な小屋で4,500〜5,000円ほど。この差額を払うか、3日分の食料と炊事具を担ぐかの選択になります。
つまり容量は、ある程度までならお金で買えるわけです。素泊まりを選ぶと、その逆が起こります。
逆に、やってはいけない手もあります。安全装備を容量の都合で削ることと、外付けに頼りすぎることです。背中から離れた荷物はてこの原理で重く感じますし、岩場や鎖場では引っかかりのリスクにもなります。
40L以上が要るのは残雪期とカメラ
40L以上が要るのは、夏の一般的な小屋泊ではありません。残雪期などの防寒期と、カメラ機材。この2つが主な理由です。
残雪期は足元の装備が増えます。僕がGWの涸沢で使ったチェーンスパイクは収納で0.5Lほど、重さはペアで242〜316gが目安です。ただし必要な装備は雪の状態と行き先で変わり、北穂高岳のように前爪付き12本爪アイゼンとピッケルの準備を求められる区間もあります。ここに厚手のダウン上下や手袋の替えが乗ると、35Lでは窮屈になってきます。
僕がGWの涸沢に入ったときも、まさにその状態でした。ダウンの上下を持った時点で、夏の小屋泊とは別物の荷物になります。
カメラを持つ人はさらに条件が変わります。ボディとレンズ、予備バッテリーで1〜2kg・2〜4Lが上積みされるうえ、すぐ出せる場所を占有するからです。同行者の共同装備を分担する場合や、素泊まりで3日分の食料を担ぐ場合も同じように増えます。
逆に言えば、これらが無いなら45L以上は小屋泊では持て余します。空いたぶんを埋めたくなって、結局は重くなる方向に働きます。
30Lで足りない人が見る4つの比較軸
買い足すと決めたなら、この容量帯で差が出る軸は4つです。本体重量・拡張の有無・背面長・レインカバー。容量の数字だけで選ぶと、だいたいここで後悔します。

| 比較軸 | 見るポイント |
|---|---|
| 本体重量 | 同じ35L前後で554g〜1.84kgと幅がある。必ず背負う重さなので総重量の起点になる |
| 拡張の有無 | 「30+5」のような雨蓋拡張があると、1泊2日と2泊3日を1本で兼用しやすい |
| 背面長 | 5段階調節などの調節式か、固定サイズか。固定サイズなら背面長を測ってから選ぶ |
| レインカバー | 内蔵・付属・別売で分かれる。別売なら追加費用と50〜100g程度の追加重量 |
実際の製品を並べると、差の大きさが見えてきます。価格と重量は各ブランドの公式スペックから拾ったものです。
| モデル | 容量 | 本体重量 | レインカバー | 価格 |
|---|---|---|---|---|
| ミレー サースフェーNX 30+5 | 30+5L | 1,500g | 付属 | 28,050円 |
| ドイター フューチュラ32 | 32L | 1,440g | 付属 | 22,000円 |
| グレゴリー スタウト35 | 35L | 1.31kg | 別売 | 30,800円 |
| オスプレー ケストレル38 | 36L(L/XLは38L) | 1.84kg | 内蔵 | 31,000円 |
| 山と道 THREE(M) | 40L | 554〜682g | なし | - |
同じ30〜40Lクラスでも、本体だけで1.3kgほどの開きがあります。ただし軽いモデルには前提があります。フレームやヒップベルトを簡略化して軽さを得ているので、公式が示す荷重の上限を超えると快適性が落ちます。
山と道はONEで最適荷重域を最大11kg、THREEで10kg程度までとしています。中身を軽くしてから、それに合う軽さのザックを選ぶ。この順序を逆にすると、肩に荷重が集中してしまいます。(出典:山と道『ONE』製品ページ)
肩こりや腕のしびれは、高校山岳部を対象にした調査でも発生率がいちばん高いトラブルでした。試着は約10kgの荷物を入れて、薄着で行うのがメーカー公式の手順です。空のまま背負っても、荷重のかかり方は分かりませんからね。
拡張30+5なら1泊2日と兼用できる
日帰りから小屋泊まで1本で回したいなら、拡張つきの30+5Lが素直です。基準の30Lに、5Lの伸びしろが乗ると考えると分かりやすいと思います。
2泊3日で増える荷物は1L弱でした。拡張の5Lは、その5倍の逃げ場になります。基準容量が小さいぶん、荷物が少ない日でも中身が沈みにくいのも利点です。
僕のサースフェーもこのタイプで、槍ヶ岳の1泊2日と同じ積み方のまま2泊3日へ伸ばせる感触でした。下山後の着替えや土産が増えたときも、拡張ぶんで吸収できます。
関連記事:小屋泊1泊2日のザック容量は何L?30Lで足りる条件
買わずに15Lサブザックを足す手
容量が足りない理由が「アタックのとき大きいザックが邪魔」なら、買い替えは要りません。15L前後のパッカブルサブザックを足すほうが安く済みます。
僕が使っているのはモンベルのバーサライトパック15です。キッチンスケールで量ったら105gで、卵2個より軽い計算でした。折りたたむと付箋のブロックくらいまで小さくなります。
これがいちばん効くのは、同じ小屋に2連泊してピークを往復する行程です。大きい荷物を小屋に置いて、空身に近い形で登れます。2泊3日ならではの使い方で、これがかなり気持ちいいですよ。
連泊は費用の面でも有利になる場合があります。穂高岳山荘は2泊目以降、1名あたり2,000円の割引を公式に設定しています。料金や運用は年度で変わるので、予約の前に必ず公式サイトで確認してください。
関連記事:登山ザックの背面長の測り方と調整|肩が痛い原因はここ
35Lに詰める持ち物リストと配置
何をどこへ入れるかまで決めると、容量が足りるかの実感が持てます。ザックを下部・中央・上部・雨蓋の4つに分けて考えるのが基本です。

35Lって言われても、実際どこに何を入れるのか想像つかないなあ。
分かります。僕も最初は、思いついた順に放り込んでいました。
入れる順番なんてあるの?
使う順と重さで決めるんですよ。表にすると分かりやすいので、並べてみますね。
| 入れる場所 | 入れるもの | 目安容積 |
|---|---|---|
| 最下部 | 着替え1セット、インナーシーツ、耳栓やタオルなど小屋で使う小物 | 2〜3L |
| 中央・背中側 | 水(1〜1.5L)、行動食の本体 | 2〜3L |
| 中央・外側 | 保温着、着替えの予備、パッカブルのサブザック | 2〜3L |
| 上部 | レインウェア上下、防寒用の薄手ミドル | 2L前後 |
| 雨蓋 | ヘッドランプ、救急セット、当日ぶんの行動食、地図、日焼け止め、財布 | 1〜2L |
| サイドポケット | 飲み水のボトル(横から手が届くもの) | - |
| ヒップベルトポケット | スマホ、塩タブレット、行動食の小袋 | - |
重いものは背中側に寄せ、左右の重さをそろえます。背中から離れた位置にある重量は、てこの原理で実際より重く感じます。荷物をスタッフバッグで小分けにすると隙間なく詰められて、重量バランスも整えやすくなります。
早朝にピークを往復する日は、サブザックとヘッドランプを最後に取り出せる場所へ。雨蓋が2室ある製品なら、小さいほうに応急処置アイテムと移動中の非常食を入れておくと、行動中にザックを降ろさずに済みます。
よくある失敗も挙げておきます。着替えを日数ぶん持つ、行動食を全部ゼリーにする、水を満タンで担ぐ。この3つは、いずれも容量と重量を同時に無駄にします。
小屋が用意するので持たない5つ
小屋泊が軽くなるのは、5つを小屋が用意してくれるからです。この5行があるおかげで、テント泊より15〜20L小さいザックで足ります。
- 寝具(布団・毛布)=シュラフ・マット・シュラフカバーが不要
- 夕食と朝食=食材・クッカー・バーナー・燃料・食器が不要
- 水=小屋によって無料か有料。担ぐのは行動中のぶんだけ
- トイレ・洗面所・乾燥室・充電(有料の小屋もある)
- 枕カバー(涸沢ヒュッテは紙の枕カバーを用意)
前提は2食付きのプランです。素泊まりを選ぶと、食事まわりが全部戻ってきます。小屋泊の身軽さは、プランとセットで成り立っていると考えたほうが安全です。
迷いやすいのがインナーシーツですね。小屋の方針で必須・推奨・任意が分かれます。涸沢ヒュッテは紙の枕カバーを用意したうえで、より安心を求める人には持参を案内しています。
重さは素材で3倍ほど違います。シルクで130g、化繊で320〜400gが目安。扱いは小屋ごとに変わるので、予約した小屋の公式案内をそのつど確認してください。
関連記事:登山ザックのパッキングのコツ|重い物の位置と小屋泊の実例
関連記事:ザックのレインカバーは必要か(選び方と代用品の限界)
関連記事:登山ザックの重心はどこ?疲れにくい荷物の位置と詰め方
容量を上げる前に中身を削る僕の基準
容量が足りないと感じたとき、僕がまず見るのは中身のほうです。大きいザックを買うと、空いたぶんだけ荷物が増えます。UL寄りの考え方ですが、軽さのためというより容量を決めるための順序として効きます。
基準になるのがベースウェイトです。水・食料・燃料など消費するものを除いた、装備そのものの重さを指します。専門店の分類では、ライトウェイトで8〜9kg程度、ウルトラライトで4〜5kg程度が目安です。
小屋泊はここで有利ですよね。テント・シュラフ・マット・炊事具を持たないので、何もしなくてもベースウェイトが下がります。だからこそ、残りをどう削るかで30Lか35Lかが決まります。
削る意味は、消費エネルギーにも直結します。行動中の消費は、体重とザック重量の単純な和で効くとされています。荷物1kgは体重1kgと同じ重みで身体に返ってくる、と考えると納得しやすいです。
削る順番の基準
まず「小屋が用意するもの」を持たない。次に機能が重複する装備を1つに統一する。最後に、同じ機能でより軽い製品へ置き換える。この順で見ていくと、容量を上げずに解決する場面が多いです。
削ってよい装備と削らない安全装備
削ってよい装備と、容量の都合では削らない装備ははっきり分かれます。安全装備は容量の調整弁にしない。ここだけは譲らないほうがいいです。
| 区分 | 中身 |
|---|---|
| 削らない | ヘッドランプと予備電池、レインウェア上下、防寒着、地図とコンパス、行動食と非常食、水、ファーストエイド、ツェルトやエマージェンシーシート、携帯電話と予備バッテリー、ホイッスル |
| 削ってよい | 着替えの枚数、機能が重複する保温着、かさばる嗜好品、重い旧世代のザックやシュラフ、火を使わない献立にするなら炊事具と燃料 |
削らない側は、警察やメーカーが必携として挙げているものとほぼ重なります。行動食と水を減らすと、判断力の低下や体温調節の失敗につながるとも指摘されています。重いから減らす、の対象にはしにくい部類です。
とはいえ「同じ機能でより軽い製品に置き換える」ことはできます。効果が大きいのはザック本体、次にウェアの順とされています。買い替えの優先順位としても使えますよ。
ここで挙げた数値や区分は、あくまで一般的な目安です。必要な装備は行程・季節・体力で変わるため、最新の情報は公式サイトで確認し、最終的な判断は経験者や専門家にも相談したうえでご自身の責任で行ってください。
関連記事:登山用モバイルバッテリーの容量目安|日帰り〜テント泊で何mAh必要か
小屋泊・テント泊・縦走で容量が変わる境目
小屋泊とテント泊の差は、日数ではなく5点セットの有無です。テント・シュラフ・マット・炊事具・食料。これがそのまま容量の段差になります。
山岳テント1張は、収納した状態でおよそ4〜5Lを占めます。シュラフとマットを足すと10L前後。小屋泊の35Lがテント泊で45〜50Lへ跳ねる理由は、この容積で説明できます。
| 用途 | 容量の目安 |
|---|---|
| 日帰り登山 | 20〜30L |
| 山小屋泊 | 30〜40L |
| テント泊 | 45〜50L以上 |
逆に言えば、5点を持たない小屋泊で50Lを買うと空きが大きすぎます。同じ人が両方やるなら、小屋泊用の30〜40Lとテント泊用の50L以上は別の道具、と割り切るほうが結局は快適です。(出典:モンベル『バックパックの選び方』)
では縦走はどうでしょう。小屋をつないで歩く縦走なら、日数が伸びても増えるのは行動食と着替えだけです。ここまで見てきた話が、そのまま当てはまります。
境目が動くのは、素泊まりや自炊を挟むときです。食料と炊事具が戻ってくると、小屋泊のはずが一気にテント泊寄りの容量になります。プラン選びは、そのまま容量選びでもあるわけですね。
小屋泊2泊3日のザック容量でよくある質問
小屋泊2泊3日で着替えは何日分持てばいいですか?
1セットと、下山後に着る上を1枚あれば足りると思います。行動着は着たまま乾かす前提で、小屋では就寝着を兼ねた予備を使う形です。3セット持つと500〜750gと1.5Lほどを余分に占めます。泊まる小屋にもよりますが、稜線の小屋はたいてい風呂がないので、ボディシートで拭いてから着替えるのが現実的ですよ。
インナーシーツは必ず持っていくべきですか?
小屋の方針しだいで、必須・推奨・任意に分かれます。標高の高い小屋は水の制約で寝具を毎晩は洗えないため、持参を勧める案内が増えています。使い捨てシーツを有料で用意する小屋もあります。重さの目安はシルクで130g、化繊で320〜400gほど。泊まる小屋の公式案内を予約前に確かめてください。
2泊3日の荷物は何kgくらいが目安ですか?
指導者向けの登山テキストにある白馬岳1泊2日縦走の体力カルテでは、衣類や靴も含めて10kg程度という数字で負担度を見積もっています。ただし余裕を持って背負える重さは個人差がとても大きく、同じ年代・同じ性別でも数倍の幅があるという調査結果もあります。数字を追うより、10kgほど入れて試着したときの感触を優先してください。
山小屋の予約や食事の時間は、持ち物にどう影響しますか?
主要な小屋は完全予約制が増えていて、泊まれなかったらテント、という逃げ道は前提にできません。ツェルトは持つとしても、テント一式を予備で担ぐ運用にはしないほうがいいです。昼食の提供は14時前後で終わる小屋が多いので、到着が遅い行程では行動食を厚めに持ってください。運用は年度で変わるため、最新の情報は公式サイトでご確認ください。
レインカバーは別売でも大丈夫ですか?
別売でも問題はありませんが、追加の費用と50〜100g程度の重量が乗ります。それより気をつけたいのは留め具の位置です。僕のサースフェーは、カバーを付けたまま雨蓋を開けようとすると全部外す必要がありました。中身をスタッフバッグや防水袋で小分けにしておくと、カバーだけに頼らずに済みます。
まとめ:小屋泊2泊3日のザックは35L前後で足りる
結局、2泊3日でもザックを大きくしなくていいってことだよね?
そうなんですよ。増えるのは行動食と着替えだけ、でしたね。
小屋泊2泊3日のザック容量は、35L前後が目安です。手持ちが30Lでも、条件がそろえば十分に成立します。最後に要点をまとめておきます。

- かさばる持ち物の積み上げは9〜11L。その2.5〜3倍に脱いだ衣類や非常装備のぶんが乗るので35L前後に落ち着く
- 1泊2日から増えるのは行動食1日分と着替え1セットだけで、合計0.8〜1.0L
- 30Lで行く条件は2食付き・着替えは1日分・水は補給・保温着1枚の4つ
- 40L以上が要るのは残雪期の防寒装備、カメラ機材、共同装備の分担がある場合
- 買い足すなら本体重量・拡張の有無・背面長・レインカバーの4軸で比べる
- 容量を上げる前に中身を削る。ただし安全装備は容量の調整弁にしない
料金や小屋の運用、製品スペックは年度で変わります。出発の前には公式サイトで最新の情報を確認して、装備の最終判断はご自身の体力と経験に合わせて行ってください。無理をしない選択が、結局はいちばん軽いです。
