こんにちは、YAMA-GO編集部のりょうです。関西を拠点に、北アルプスを中心にULスタイルで山を楽しんでいます。このブログ「YAMA-GO」では、実際に使ったギアのレビューや選び方、山のノウハウなんかを発信しています。
同じ装備なのに、日によって肩がやたら痛い。歩いているとザックに振られる感じがする。そんな経験、ありませんか。僕も最初はかなり適当に詰めていて、何が悪いのか分からないまま歩いていました。
この記事では、重い物をザックのどこに置くかを、前後・上下・山行タイプの順に整理します。水が減って重心が動く問題や、肩痛とふらつきの切り分けまで、詰め方の手順としてまとめました。
- 重い物は背中側が先、高さを決めるのはその次という順番
- 平地は高め、岩場と下りは低めという山行別の使い分け
- 水や行動食が減ったときに詰め直すタイミング
- 肩痛やふらつきを症状から逆引きする切り分け方
重心は背中側が先で、高さは次に決める
ねえりょう、重い物って上に入れるのが正解なの?下がいいって言う人もいるよね。
そこ、けっこう答えが割れてるんですよ。先に決まるのは上下じゃなくて、背中に寄せるかどうかなんです。
へえ、順番があるんだ。
結論から言うと、ザックの重心はまず背中側に寄せる。高さを決めるのはその次です。前後と上下では、根拠の強さがまるで違います。

背中に近づけるほど安定するのは、実験でもメーカー公式でも一致しています。一方の「重い物は上か下か」は条件で答えが変わる話。同じ強さの原則として並べないのが大事です。
| 軸 | 結論の強さ | 根拠の性質 |
|---|---|---|
| 背中側に寄せる(前後) | ほぼ確定。例外なし | 背中から離すと立っているときの安定性が全面的に悪化する実験値がある |
| 高いか低いか(上下) | 条件で変わる | 平地では高い位置が省エネという報告と、差が出ないという報告が並ぶ |
この順番を知っているだけで、詰め方の迷いはかなり減りますよ。まずは前後、それから上下です。
重い物は背中側の中〜上、軽い物は底と上部
基本の配置は、重い物を背中側の中〜上、軽くてかさばる物を底です。ドイターの公式解説も、この置き方をゾーンで示しています。
| ゾーン | 入れる物 |
|---|---|
| 底部 | シュラフ、ダウンウェアなど軽くかさばる物 |
| 主室の外側(背中から遠い側) | 衣類など中くらいの重さの物 |
| 主室の背中側・肩の高さ | テント、食料、厚手の保温着など最も重い物 |
| 雨蓋 | すぐ取り出したい小物 |
| サイドポケット | 左右均等に振り分ける |
縦の並びは、出し入れの頻度でも決まります。上部は地図や行動食、中間はレインウェアや手袋、下部はシュラフや着替え。到着まで使わない物ほど下、が目安です。
もうひとつ大事なのが、歩いている間も同じ位置を保つこと。隙間があると中で荷物が踊り、重心が一歩ごとに動きます。柔らかい小物で埋め、最後にベルト類を締め直します。
小分けの道具も効きます。スタッフバッグでまとめると隙間なく詰められ、左右のバランスも整えやすい。フレームのないUL系なら、スリーピングマットを筒状にして入れ、形を出してから詰めるのが定番です。
僕は槍ヶ岳の1泊2日で、ミレーのサースフェー30+5に一泊分を詰めました。重い物を背中側に寄せておいたおかげか、9時間ちょっと歩いても背中は痛くならなかったです。
詰め終わったら一度背負って、荷物が中でゴソッと動かないかを確かめる。
関連記事:登山ザックのパッキングのコツ|重い物の位置と小屋泊の実例
重い物は上と下どちらが正解か
上下位置には、唯一の正解がありません。研究の結論そのものが割れているからです。ここは正直に書きます。
平らなトレッドミルで体重の25%を背負った実験では、高い位置のほうが省エネでした。女性10名を対象に、荷物の位置を高・中央・低の3通りで比べたものです。(出典:Stuempfle ら(Ergonomics 47(7), 2004))
| 指標 | 高い位置 | 低い位置 |
|---|---|---|
| 酸素摂取量 VO2 | 18.6 mL/kg/分 | 22.2 mL/kg/分 |
| 分時換気量 VE | 31.7 L/分 | 38.6 L/分 |
| 主観的なきつさ RPE | 2.8 | 3.7 |
数字だけ見ると高い位置の圧勝に見えます。ただし条件が肝心。平らなトレッドミルを10分歩いた結果であって、岩場や下りに広げてよい話ではありません。
別の研究では、体重の20%だと酸素摂取量も心拍数も差が出ませんでした。差が出たのは主観のうち肩の負担感だけ。そちらは低い位置のほうが楽という評価です。
つまり上下は、平らな道を楽に速く歩くための最適化。安定のための最適化ではありません。だからこそ、次の章のように山行タイプで切り替えるのが現実的かなと思います。
背中から40cm離すと安定性は全部落ちる
前後の話は、上下と違って数字がはっきりしています。背中から40cm離すと、立っているときの安定性はすべての指標で悪化しました。
実験は、荷物を後ろに伸びたバーへ固定し、背中からの距離だけを変えたもの。荷はわずか体重の5%です。狭い足幅で目を閉じ、90秒立ったときの足裏の重心の動きを測っています。(出典:Daffin ら(Work, 2023))
| 比べた距離 | 結果 |
|---|---|
| 0.20m と 0m | 差が出たのは2つの指標だけ |
| 0.40m と 0m | すべての指標で悪化 |
| 0.40m と 0.20m | 3つの指標で悪化 |
体重の5%といえば、60kgの人で3kgほど。それだけの軽い荷でも、40cmまで離すと揺れが全面的に増えたわけです。20cmでは差が出た指標は一部でしたが、荷が重くなればもっと効いてくると考えておくのが安全でしょう。
登山でこの「離れた位置」に当たるのが外付けです。マットや三脚を外に吊ると、一気に20〜40cm級の距離になります。ドイター公式も、外付けは風の抵抗と濡れの理由で最小限を勧めています。
感覚としては、てこと同じ。腕を伸ばして持つと重く感じるのと同じ理屈で、離れた荷は体を後ろへ引きます。それを打ち消すために、背筋や脚が余計に働きます。
重心の高さは山行タイプで切り替える
高さの決め方は、手を使う場所があるかどうかが第一の目安です。手を使うなら低く、使わないなら高く。これに加えて、強風の稜線と段差の大きい下りも低めにします。

| 山行タイプ | 重心の高さ | 背中からの距離 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 樹林帯・林道・なだらかな縦走路 | 高め(肩甲骨〜肩の高さ) | 密着 | 後ろに引かれず、平地では省エネ側のデータがある |
| 岩場・鎖場・はしご | 低め(腰〜背中中央) | 密着 | 前傾しやすくバランスを崩しにくい。岩への接触も減る |
| 風の強い稜線 | 低め | 密着 | 高い重心と横風の組み合わせは、横向きに振られる力が大きい |
| 段差の大きい下り | 低め | 密着 | 高い重心は後傾を誘発し、体重が後ろへ抜けやすい |
同じ山行の中でも切り替えられます。山小屋を出る朝に、その日の行程で決めるのが実用的。稜線に出る前の休憩で、重い物を一段下げるだけでも変わりますよ。
平地と樹林帯は肩の高さが省エネ
平地や樹林帯では、重い物を肩の高さまで上げて背中に密着させます。ドイター公式が基本形として挙げている置き方です。
理由はシンプルで、荷の重心と自分の重心が一直線に近づくから。ザックに後ろへ引かれない分、余計な力がいりません。
上高地から横尾までの道が、まさにこのタイプ。僕が歩いたときは休憩込みで約3時間、川沿いのほぼ平坦な道が続きました。手を使う場所はゼロで、ひたすら歩くだけの区間です。
ただし、省エネの根拠が平らなトレッドミルの実験だという点は忘れないでおきたいところ。段差の多い道や下りに、そのまま当てはめないほうが安全です。
岩場と鎖場で低くする4つの理由
岩場と鎖場では逆に、重い物を腰〜背中中央まで下げます。ドイター公式も、難易度の高い地形では低い位置を勧めています。
- 三点支持は体を岩に近づける姿勢。高い位置の重心は、体を岩から引きはがす向きに働く
- 低くすると前傾姿勢になるが、そのぶんバランスを崩しにくい。岩場では前傾が欠点でなく利点になる
- 高く積んだ荷や膨らんだ雨蓋は、かがんで通る場所やはしごの下降で岩に当たり、体勢を崩す
- 片脚立ちに近い姿勢が増えるほど、左右の片荷が直に効いてくる
槍ヶ岳の穂先は、往復50分ほどの短い岩場でした。小雨と強風のなか、三点支持でゆっくり登り、はしごは風に流されないようしっかり握って通過。前年の奥穂高では怖さを感じなかったのに、槍の穂先はさすがに緊張しました。
そもそも三点支持は、手足4点のうち3点で体を支え、1点だけを動かす基本動作です。足は岩に対して垂直に置き、靴のグリップで支える。この姿勢と、体から離れた高い荷は相性が悪いわけです。
取り付く前の準備も重心の一部です。トレッキングポールと小物はザックにしまい、引っかかりを減らします。1つの鎖に何人も同時に取り付かないのも基本ですね。
ヘルメットは、僕は必須だと思っています。長野県も槍・穂高連峰のうち、北穂高岳から涸沢岳などの岩稜帯を「山岳ヘルメット着用奨励山域」に指定しています。涸沢では、ザイテングラートの滑落遭難者が使ったヘルメットの実物が展示されていました。
稜線の横風と下りは低めで密着
稜線と下りも、低めで背中に密着が基本です。ただし理由は横風と後傾、それぞれ別にあります。
まず横風。重心が高いほど、横から押されたときに体を回そうとする力が大きくなります。しかも荷が重いほど、立っているときの揺れ自体が増えていきます。
| 条件(目を開けた状態) | 0kg | 16.0kg | 20.5kg |
|---|---|---|---|
| 両脚立ちの平均動揺速度 | 0.27°/秒 | 0.34°/秒 | 0.41°/秒 |
| 片脚立ちの平均動揺速度 | 1.03°/秒 | 1.19°/秒 | 1.27°/秒 |
注目したいのは、片脚立ちの値が両脚の3倍以上あること。岩場の一歩や大きな段差ほど、荷の重さが効いてくるわけです。目を閉じた条件では増え方がさらに大きくなっていて、ガスや薄暮で足元が見にくい日も、視覚の情報が減るぶん影響が出やすいと考えておきたいところです。
下りは連鎖で効きます。重心が高く後ろにあると腰が引けて後傾し、体重が真下でなく後方へ抜ける。そこからスリップにつながります。
対処は詰め方と歩き方の両輪です。重心を下げて密着させ、歩幅を狭めてポールを使う。恐怖で後傾したときは、ウエストベルトに手を置くと姿勢が戻りやすいですよ。
僕は初めての富士登山で、下りにポールを持たず後悔しました。8合目からずっと砂利の坂で、自分の足でブレーキをかけ続ける下り。両足で5箇所も水ぶくれができました。
下りではバランス能力そのものも落ちます。閉眼片足立ちのテストが分かりやすい例。平らな固い地面ならほぼ全員が2分以上立てるのに、低酸素室の下り坂ではその3割以下という報告があります。
脚も同時に削れていきます。下りは筋肉が引き伸ばされながら力を出すので、細胞が傷つき筋力が落ちる。「下りで脚がガクガクになる」の正体はこれです。疲れるほど重心の粗さがそのまま出ます。
水が減ると重心は勝手にずれる
水って飲んだら軽くなるよね。荷物が減るんだから、良いことなんじゃないの?
軽くはなるんですけど、そのぶん重心がずれるんですよ。僕も最初は気づいていませんでした。
水は1Lで約1kg。日帰りで1〜2L担げば、1日かけて1〜2kg分の重心が消えていきます。動くことを前提に組むのが正解です。

減っていくのは水・行動食・燃料。どれも背中側の中〜上に置く「重い物」ばかりです。だから重心は下がって後ろに残り、軽い衣類だけが上に残ります。
担ぐ水の量が決まれば、動く重心の大きさも先に読めます。ここを読んでおくと、詰め直すタイミングも決めやすいですよね。
水はどこに入れるのが正解か
重心だけで選ぶなら、ハイドレーションが理想です。背面パネルと主室の間に収まるので、最も体に近く、しかも左右対称になります。
| 置き方 | 重心への影響 | 実用上の弱点 |
|---|---|---|
| ハイドレーション(背面パネルと主室の間) | 最も体に近く左右対称。理想的 | 対応ザックが要る。残量が見えない。冬は凍る |
| ボトルを主室の背中側・中〜上 | 体に近く、重心を作りやすい | 取り出すのにザックを下ろす必要がある |
| ボトルをサイドポケット | 背中から離れ、片側だけだと片荷になる | 行動中に飲めるのが最大の利点 |
現実にはサイドポケットを使う人が多いはず。ただし片側だけに1Lを入れると、約1kgの左右差が肩と腰に効き続けます。2本を左右に振り分けるか、片側が空いたら詰め替えるのが現実解です。
僕は槍ヶ岳でミレーのサースフェー30+5を使いました。サイドのボトル入れが横からも開くタイプで、体が固くて上から手が届かない僕でも、ザックを下ろさずに飲めたのは助かりました。
ミレー サースフェーNX 30+5
小屋泊向けの30+5L。横からも開くボトルポケットとレインカバーが標準で付きます
価格目安:28,050円(税込)
担ぐ量の目安は、体重と行動時間から出せます。脱水量はおおよそ体重1kgあたり毎時5mL。体重60kgの人が8時間歩けば約2,400mLで、補給はその7〜8割が目安とされています。
この係数は季節で動きます。基準は春や秋の、歩くと少し汗ばむ状況。汗を多量にかく暑い時期は増やし、ほとんどかかない寒い時期は減らして調整します。夏と晩秋で担ぐ量が変わるのは当然というわけです。
とはいえ全部を担ぐ必要はありません。僕は槍ヶ岳では給水前提で1.5Lにしました。2L持つと、それだけで疲れる原因になるからです。水場の状況は必ず公式サイトの最新情報を確認してください。
軽くなったのに疲れるなら休憩で詰め直す
「軽くなったのに疲れる」の原因としてまず疑いたいのが、荷が減ってできた隙間です。中で荷物が動くと、重心が歩くたびにずれます。行動時間や水分・エネルギー不足でも疲れは出ますが、詰め直しで取り除けるのはこの隙間の分です。
総重量は減っているのに安定感は落ちる。これ、けっこう起こります。対処は隙間を柔らかい物で埋める、中身を縦長に詰めて左右のコンプレッションを引く、ベルト類を締め直すの3つです。
詰め直すタイミングは、行程の中で決めておくと迷いません。僕は次の5つを目安にしています。
- 朝の出発時。その日の行程で重心の高さを決める(登り主体なら高め、岩稜や下り主体なら低め)
- 水を半分飲んだ休憩時。空いた隙間を衣類で埋め、重い物を背中側の元の高さに戻す
- 稜線に出る前・岩場に入る前。重い物を一段下げ、ポールと小物をしまう
- 山小屋にザックをデポしてピストンする時。アタックザックに必要分だけ移す
- 下山開始時。コンプレッションストラップを引き直し、縦長にまとめ直す
4番目のアタックザックは、盲点になりやすいところ。容量は15〜20Lが目安です。ただしフレームもヒップベルトもないサブザックに重い荷を入れて長時間歩くのは、肩のしびれの典型パターンですよ。
僕は槍ヶ岳の山頂アタック用に、モンベルのバーサライトパック15を買いました。キッチンスケールで実測105g、卵2個より軽い畳めるザックです。軽くても、重い物を背中側に寄せる原則は変わりません。
大きすぎるザックを空気で背負わない。容量に対して荷が少ないと、下に沈んで重心がずれる。
肩痛とふらつきは原因から逆引きする
症状が出ているなら、高さをいじる前に原因を逆引きしましょう。肩の痛みもふらつきも、重心の高さが主因とは限りません。

| 症状 | 第一に疑う原因 | 次に疑う原因 |
|---|---|---|
| 肩の前側・肩甲骨まわりが痛い | 荷重が腰に載っていない | 荷が背中から離れている/総重量が多い |
| 腕・指がしびれる | ショルダーストラップの圧迫が長時間続いている | フレーム・ヒップベルトのないザックで重い荷を背負っている |
| 歩くとザックに振られる・ふらつく | 総重量が重い/中で荷物が動いている | 荷が背中から離れている(外付け含む) |
| 一方の肩だけ痛い・体が斜めになる | 左右の片荷(サイドの水筒が片側だけ等) | ザックの背面長が合っていない |
| 下りで腰が引ける | 重心が高すぎ、かつ後方にある | 荷が背中から離れている |
| 腰が痛い | ベルトの位置が高すぎる/低すぎる | 前傾が強すぎる |
この表の順に見ていくと、直す手順が決まります。詰め方とフィッティングで解決する項目が多いのも分かりますよね。
肩が痛いのは高さでなく腰荷重
肩の痛みでまず疑うのは、荷重が腰に載っていないことです。大型ザックは肩でなく腰で大半を支える設計。荷重の7〜8割を腰で受けるという表現が広く使われます。
グレゴリー公式は、ウエストベルトのパッド上端が腰骨の上端より約2.5cm上に触れる位置を指定しています。チェストストラップは脇の下のラインの高さで、締めすぎない。
順番の説明はメーカーで少し違いますが、狙いは同じです。荷重を腰に載せてから、肩と胸を整える。モンベル公式は約10kgの荷物を入れ、薄着で合わせるところまで手順に書いています。
厄介なのが、肩に荷重が乗り続けたときのしびれ。ザック麻痺と呼ばれ、鎖骨と第1肋骨の間で腕の神経が圧迫されて起こります。やせ型の人ほどリスクが高いとされています。
腕や指のしびれ・力の入りにくさが出たら、様子見にせず医療機関に相談してください。
予防の柱は道具側にもあります。フレームとヒップベルトのあるザックを使うと発生率が下がるとされ、逆に荷の重さと肩を圧迫する時間が長いほどリスクは上がります。
高校山岳部の実態調査でも、登山中のトラブルで最も多いのが「ザックによる肩こりや腕のしびれ」でした。珍しい話ではないんです。
ふらつくなら重心よりまず総重量を削る
ふらつくときの一次対処は、総重量を減らす・背中に密着させる・中で動かさないの順です。高さの調整はその後で構いません。
根拠は実験にあります。30名が体重の20%を背負った条件では、荷を高く置いても低く置いても、立っているときの揺れは変わりませんでした。効いたのは、荷を背負うこと自体です。
重さはエネルギーにも効きます。行動中の消費エネルギーは、コース定数×(体重+ザック重量)という式で見積もられます。この式では、荷物1kgが体重1kgとまったく同じ重みを持ちます。
国立登山研修所の資料では、空身で6kcal/kg/時、20kgを背負うと9kcal/kg/時とされています。荷物の有無だけで消費が1.5倍。削った1kgは、ちゃんと効いてくれます。(出典:国立登山研修所(日本スポーツ振興センター)『夏山リーダー研修会 事前課題 3 食糧計画』)
背負える重さの個人差も大きいところ。高校生への調査では、同じ学年・同じ性別でも余裕を持って背負える重さに3〜4倍の幅がありました。人と比べず、自分の実感で決めるのが確実です。
ザック側にも適正があります。オスプレーのタロン22は推奨積載量4.5〜13.6kg、山と道のONEは最適荷重域を最大11kgと公表。上限だけでなく下限もあるのがポイントです。
背負う重さの上限も公式に出ています。ドイターは自分の体重の20〜25%を目安として示しています。体重60kgなら12〜15kgあたり。まずはここを超えていないかを見るのが早いです。(出典:deuter 公式『How to pack a backpack』)
軽い荷を大きなザックに入れると、荷が下に沈んで重心を作れません。僕はUL寄りですが、軽ければ正義とは思っていません。安全に必要な物は残したうえで、余分を見直す順番かなと思います。
ここまでの話は、詰め方で直る範囲と、ザックの構造で決まる範囲に分けられます。無料で直せるところから手を付けるのがおすすめです。
| 要素 | 詰め方で変えられるか | 補足 |
|---|---|---|
| 重心の高さ | 変えられる | 重い物の上下位置で調整する |
| 背中からの距離 | 変えられる | 背中側に寄せる。外付けを減らす |
| 左右のバランス | 変えられる | サイドポケットの振り分け |
| 荷重が腰に載るか | 半分は構造 | 背面長が合っていることとベルト位置が前提 |
| 荷が体から離れない保持力 | 構造 | フレームの有無・背面パネル・コンプレッション |
| 荷が下に沈むか | 構造+容量選択 | 容量が大きすぎると沈む |
女性は背面長とハーネス形状を見る
女性の場合、詰め方より先に見たいのは背面長が合っているかです。ここが合っていないと、どこに重い物を入れても荷重は腰に載りません。
背面長は、首を下に曲げたとき一番出っ張る骨から、腰骨の最上部までの長さ。小型・中型のザックはワンサイズが多く、調節できないモデルもあります。
女性向けモデルは、背面長が短めの設計です。肩幅が狭くバストを圧迫しにくいハーネス、骨盤の張りに合わせて角度をつけたウエストベルトも特徴。同じ容量でも背負い心地は変わります。
揺れ方にも差の報告があります。18〜25歳の15名を対象にした研究の話。荷の位置にかかわらず、女性のほうが立っているときの重心の動きが大きいという結果でした。
ただし「女性だから軽く」という単純な話ではありません。余裕を持って背負える重さは、同じ年代・性別でも3〜4倍の幅があります。性別ではなく、自分の背面長と背負った感覚で決めるのが基本です。
サイズ表記はモデルごとに違います。僕が使ったミレーのサースフェーNX 30+5なら、背面長はM48cm・L51cmの2サイズ。背面長43cmは、別商品として用意されているウィメンズモデルのサイズです。調節式のモデルもあり、選び方が変わります。
サイズの数値は各社の公式サイトに出ています。可能なら店頭で、10kgほどの荷物を入れて背負わせてもらうのが確実。迷ったらお店の人に相談してみてください。
ザックの重心と詰め方のよくある質問
マットやテントをザックの外に付けるのはやめたほうがいいですか?
重心の面では不利になります。外付けは背中からの距離を一気に伸ばすうえ、風の抵抗と濡れの原因にもなるからです。メーカー公式も最小限を勧めています。どうしても入り切らないときだけにして、できるだけ体に近い位置で短く固定してください。
雨蓋には重い物を入れてもいいですか?
雨蓋はすぐ取り出したい小物の場所と考えてください。重い物を上に載せると背中から離れやすく、かがんで通る場所やはしごで岩に当たる原因にもなります。行動食・地図・防寒小物くらいに留め、重い物は背中側の主室へ入れるのがおすすめです。
荷物が少ない日も重心は気にしたほうがいいですか?
むしろ気にしたほうがいいです。容量に対して荷物が少なすぎると、荷が下に沈んで重心がずれます。中身を縦長にまとめて左右のコンプレッションを引くと形が出ます。日帰りの容量は20〜30Lくらいが一般的な目安です。
トレッキングポールがあれば重心は気にしなくていいですか?
残念ながら代わりにはなりません。ただ、下りで後傾したときの支えにはなります。僕は初めての富士登山で持たずに行き、砂利の下りで両足に水ぶくれを作って後悔しました。なお鎖場や岩場に入る前は、引っかかり防止のためしまうのが基本です。
どうしても荷物を減らせないときはどうすればいいですか?
公式に挙げられている回避策は、標準コースタイムよりゆっくり登る・不要な荷物を減らす・悪天候では登らないの3つです。ゆっくり歩けば運動強度は下げられますが、行動時間が延びる分のリスクは増えます。無理だと感じたら引き返す判断も大切かなと思います。
関連記事:登山ザックの背面長の測り方と調整|肩が痛い原因はここ
ザックの重心は背中側が先・高さは山行で変える
重心って、結局は背中に寄せるのが先なんだね。
そうなんです。高さは山行タイプで変える。この順番だけ覚えて帰ってもらえたら十分ですよ。
登山ザックの重心は、前後・上下・時間の3つで考えると迷いません。最後に要点をまとめます。

- まず背中側に寄せる。背中から40cm離すと、立っているときの安定性はすべての指標で悪化する
- 上下に唯一の正解はない。高い位置が省エネというデータは、平らな道での話
- 平地と樹林帯は肩の高さ、岩場・鎖場・稜線・下りは腰〜背中中央まで下げる
- 水は1Lで約1kg。減ってできた隙間は休憩ごとに埋め、ベルトを締め直す
- 肩が痛いなら高さより腰荷重、ふらつくなら重心より総重量から見直す
- 背面長が合っていないと、どう詰めても荷重は腰に載らない
ここで挙げた数値は、あくまで一般的な目安です。ザックの仕様やサイズは各メーカーの公式サイトで確認し、しびれや痛みが続くときは専門家に相談してください。無理をしない、引き返す判断も装備のうちかなと思います。
