こんにちは、YAMA-GO編集部のりょうです。関西を拠点に、北アルプスを中心にULスタイルで山を楽しんでいます。このブログ「YAMA-GO」では、実際に使ったギアのレビューや選び方、山のノウハウなんかを発信しています。
ザックのパッキング、調べるほど分からなくなりませんか。「重い物は背中側の上」と書いてあっても、いざ詰めると入りきらない。歩き出せば肩が痛いし、雨が降ると必要な物が出てこない。僕も最初はそうでした。
先に僕の結論を書きます。パッキングは減らす→重い物の位置→取り出す動線の3段階です。詰め方の工夫は、じつは3段階目にあたる話になります。
僕は2018年の夏、槍ヶ岳へ1泊2日で登りました。この山行に合わせて新調したのがミレーのサースフェーNX 30+5です。2日目は終日雨の下山で、防寒着が足りず友人のジャケットを借りて凌ぎました。その失敗と各社の公式情報から、あなたの山行に合う詰め方を一緒に整理していきます。
- 詰め方を工夫する前に総重量を減らす順番と、体重の20〜25%という荷重の目安
- 重い物を背中側の中〜上に寄せる原則と、地形で重心の高さを切り替える考え方
- 雨具・行動食・水を「雨の日に本当に取り出せるか」で決める置き場所の判断
- 槍ヶ岳の小屋泊で僕が担いだ物と、実測105gのサブザックを仕込む運用
登山ザックのパッキングのコツは3段階
パッキングのコツは、減らす・重い物の位置・取り出す動線の3段階に分けて決めることです。この順番でたどると、迷いどころがぐっと減ります。

詰め方より先にやることがあるの?
はい、持ち物そのものを減らす段階ですね。ここを飛ばすと、どれだけ上手に詰めても軽くはならないんです。
へえ、そうなんだ! 順番から見ていこうよ。
理由はシンプルで、背負う重さは詰め方では変わらないからです。行動中のエネルギー消費は「コース定数×(体重+ザック重量)」という式で見積もれます。体重とザック重量が、単純な足し算で並ぶ式ですね。
つまり荷物1kgは体重1kgと同じ重みで効くということ。配置を整えれば背負い心地は変わりますが、この式で見積もる消費エネルギーは、総重量が同じなら動きません。
| 段階 | 決めること | 判断の材料 |
|---|---|---|
| 1. 減らす | 持ち物と総重量 | 体重の20〜25%という公式の上限目安 |
| 2. 配置 | 重い物の位置と重心の高さ | 背中側・肩の高さ。地形で上下を切り替える |
| 3. 動線 | すぐ使う物の置き場所 | 下ろさずに届くか、雨でも開けられるか |
詰め方の工夫は3段階目。1と2を飛ばすと、効果はどうしても頭打ちになります。
減らす→配置→取り出し動線の順に決める
3段階を、もう少し具体的にたどってみます。減らす段階でやるのは、持ち物を床に並べて総重量を出すこと。次に、その重さが自分の背負える範囲に収まっているかを確かめます。
背負う重さの上限は、ドイター公式が体重の20〜25%を推奨しています。体重60kgの人なら12〜15kgが目安。軍隊の基準では33%まで認められる、という補足も添えられています。
この範囲を大きく超えていたら、配置を工夫する前に持ち物へ戻ります。順番が逆だと、重すぎる荷物を上手に詰める作業になってしまいますよね。
ザック側の前提も、ここで一度そろえておきたいところです。容量・背面長・重心の3つは、詰め方より先に効いてきます。
| 用途 | 容量の目安(モンベル公式) |
|---|---|
| 日帰り登山 | 20〜25L(装備を厳選すれば15Lでも可) |
| 山小屋泊 | 30〜40L |
| テント泊 | 50L以上 |
容量は大きいほど安心、とも言い切れません。荷物が少なすぎると下に沈んで重心がずれるためです。オスプレーが製品ごとに公表する推奨積載量にも、上限だけでなく下限があります。
背面長は、首を下に曲げたとき一番出っ張る骨から、腰骨の最上部までの長さで測ります。小型・中型パックはワンサイズで調節できないモデルがほとんど。ここが合っていないと、荷重は腰に載らず肩へ戻ります。
詰め方とフィッティングは一組で効きます。だから3段階に入る前に、いま使っているザックが自分の体と行程に合っているかを見ておくと近道かなと思います。
まず軽量化 詰め方の工夫より先に減らす
最初にやるのは軽量化です。削る順番はザック本体とテント、次にウェア類。小物を1つずつ削るより、大物の置き換えのほうが効きます。

同じ30Lクラスでも、ザック本体だけで400g以上の差がつきます。65Lクラスなら1.5kg前後の差。毎回かならず背負う重さなので、ここは総重量を詰めるときの起点になります。
削る前に、測り方を決めておくと迷いません。僕が使っているのはベースウェイトという物差しです。水・食料・燃料のような消費する物を除いた、装備そのものの重さを指します。
総重量は行程ごとに変わるので、前回の山行と比べにくいんですよね。ベースウェイトなら、山をまたいでも同じ条件で比べられます。消費物を足した実際の背負い重量は、パックウェイトと呼び分けます。
目安の置き方も紹介しておきます。背負える上限が「ここまでなら大丈夫」の線なら、こちらは「ここまで下げたい」という目標。山と溪谷オンラインの軽量化記事では、体重50kgの人を例に段階が示されています。
| 段階 | 体重比 | 総重量(体重50kgの例) | ベースウェイト |
|---|---|---|---|
| 一般的な装備 | 25% | 12.5kg | - |
| 軽量化を意識 | 20% | 10kg | 7kg |
| ライトウェイト | 15% | 7.5kg | 4.5kg |
ULバックパックのメーカー山と道は、ベースウェイト4.5kg以下、そこに水・食料・燃料を加えてパックウェイト6〜8kg程度をULの基準として示しています。同社が公開する実践例では、バックパック650g・シェルター360g・寝袋360gという内訳で約4.3kgでした。
いきなりここを目指す必要はないと思います。まずは自分のベースウェイトを一度量って、次の山行との差を見るくらいで十分。数字が出ると、どこを置き換えれば効くかが自然に見えてきます。
重さの効き方も、数字にすると分かりやすいです。国立登山研修所の研修課題では、空身の成人が6kcal/kg/hr、20kgのザックを背負う成人が9kcal/kg/hrとされています。(出典:日本スポーツ振興センター 国立登山研修所 研修事前課題資料)
荷物の有無だけで消費が1.5倍。同じ道を歩いても、背負う重さでこれだけ体への請求が変わるということですね。軽量化は楽をするためではなく、余力を残して帰るための作業だと思っています。
水も効きます。水は1Lで約1kg。脱水量は「体重×行動時間×5」で見積もり、その7〜8割を給水量の目安にする計算がよく使われます。
僕が槍ヶ岳へ行ったときは、水は1.5Lで足りました。途中で給水できるルートだったからです。2Lは重くて疲れる原因になる、というのが正直な実感でした。
ただし水場の有無はルートと季節で変わります。汗を多くかく時期は脱水量の係数も上がります。担ぐ量を減らすなら、水場の情報を公式の案内で確かめてからにしてください。
削る順番は「重い道具の置き換え」から。行動食と水は、重さを理由に削る対象にしにくい装備です。
抜いてはいけない物は防寒着で学んだ
僕がいちばん痛い目を見たのは防寒着です。2018年の槍ヶ岳、2日目は終日雨の下山でした。行動時間は6時間45分。
とにかく寒かったんです。フリースかインナーダウンが1枚あれば、と何度も思いました。結局は友人のジャケットを借りて凌ぎました。
夏でも山頂は5度前後まで下がる、というのが僕の体感です。防寒着は「軽量化で最初に抜きたくなるのに、抜いてはいけない物」の代表かなと思います。
公的機関やメーカーの案内も、この線引きははっきりしています。神奈川県警察の山岳遭難防止のページが挙げる一般携行品は、ヘッドランプ・ツェルト・ホイッスル・地図・コンパス・救急用品・非常食など。
モンベルの登山装備ガイドも、レインウェアは上下セットで必ず持参、地図とコンパスは必須装備としています。日帰りでもヘッドランプ・救急セット・エマージェンシーシートは必携、という整理です。
| 削れない側 | 削れる側 |
|---|---|
| ヘッドランプと予備電池 | 着替えの枚数 |
| レインウェア上下・防寒着 | 保温着とダウンの二重持ち |
| 地図とコンパス(アプリと併用) | かさばる嗜好品 |
| 行動食・非常食・水 | 重い旧世代のテント・シュラフ・ザック |
| ファーストエイド・ツェルト | 炊事用具と燃料(火を使わない献立なら) |
| 携帯電話と予備バッテリー・ホイッスル | 重複する機能の道具 |
削れない側の装備を、そのまま軽くする方法はあります。公式が書いているのは「不要な荷物を減らす」であって、必要な装備を抜くことではありません。
僕自身は、防寒着を抜くのではなく同じ保温力でより軽いものへ置き換える側に振っています。削れない側は据え置いたまま、ベースウェイトだけを下げる。軽さと安全のバランスが崩れると、ULは単なる装備不足になりますからね。判断に迷う装備があれば、山岳ガイドやショップの専門家に相談してみてください。
次に重い物の位置と重心の高さを決める
総重量が決まったら配置です。原則は重い物を背中側に寄せ、肩の高さに置くこと。ただし高さは地形で変えます。

ドイター公式は、30L以上の大型パックについて区画ごとの中身を示しています。まずはこの型を土台にすると迷いません。
| 区画 | 入れる物 |
|---|---|
| 底 | スリーピングバッグ、ダウン類、その他の軽い物 |
| メイン気室の外側(背中から遠い側) | 中くらいの重さの物(衣類など) |
| メイン気室の肩の高さ・できるだけ背中側 | 重い装備(テント・食料・厚手の保温着) |
| 雨蓋 | すぐ取り出せるように小物 |
もう1つの基本が、左右の重さをそろえること。片荷にすると、体は無意識に傾きを補正します。長く歩けば、その補正が疲れになって返ってきますよね。
重い物は背中側の中から上に寄せる
なぜ背中側なのかというと、重心が体から離れると後ろに引っぱられるからです。てこの原理で、同じ重さでも重く感じます。
ドイター公式は「荷物の最も重い部分は体に近く、理想的には肩の高さに置く」と書いています。あわせてパッキング中に重い部分が下へずれ落ちないようにとも注意しています。(出典:ドイター公式「How to pack a backpack」)
ずれ落ちたまま歩くと、肩への負担が通常より大きくなる。難所では安全上のリスクにもなる、というのが公式の説明です。
肩の痛みは、実は登山でいちばん多いトラブルでもあります。全国の高校山岳部を対象にした調査では、「ザックによる肩こりや腕のしびれ」が男女とも最も発生率の高い項目でした。
配置だけで解決しないときは、ヒップベルトの位置を疑ってみてください。グレゴリー公式は、腰骨の上端より約2.5cm上にベルトのパッド上端が触れる装着を案内しています。(出典:グレゴリー公式「フィッティング方法」)
大型ザックは荷重の大部分を腰で支えます。重心を整えても、ヒップベルトが骨盤から外れていれば荷重は肩に戻ります。配置とフィッティングは一組で効くわけです。
僕のサースフェーNX 30+5は、槍ヶ岳の行程でずっと違和感なく背負えました。背中も痛くなりません。本体は約1,500gと軽くはないのですが、腰に載っていれば重さは意外と気にならないものです。
重心の高さは地形で変え酸素消費が2割違う
重心の高さには条件分岐があります。歩きやすい道では高く、岩場のような難所では低く。ドイター公式が書いている使い分けです。
歩きやすい地形で高くするのは、重心が低いと後ろに引かれるためです。難所で低くするのは、前傾姿勢にはなるものの、バランスの安定性が上がるからだとしています。
高さの効き方を数字で示した研究もあります。内部フレーム式のザックで荷重位置を変え、生理指標を比べたものです。
| 指標 | 高い位置 | 低い位置 |
|---|---|---|
| 酸素摂取量 VO2 | 18.6 mL/kg/分 | 22.2 mL/kg/分 |
| 分時換気量 VE | 31.7 L/分 | 38.6 L/分 |
| 主観的運動強度 RPE | 2.8 | 3.7 |
条件は、女性10名が体重の25%の荷物を背負い、水平のトレッドミルを10分間歩くというもの。同じ荷物でも置く高さだけで酸素消費が2割前後変わったという結果でした。(出典:Stuempfle ほか『Ergonomics』2004(PubMed))
ただし、これは平らな床の上を歩いた実験です。不整地の登り下りや、バランスが問われる岩場にそのまま当てはめられる数字ではありません。
実際、下りではバランス能力そのものが落ちます。閉眼片足立ちの実験では、平らな固い地面ならほぼ全員が2分以上立てたのに、高度2,000m相当の低酸素室の下り坂ではその3割以下でした。
だから僕は、こう整理しています。整備された登り基調の道では高めに、岩場や鎖場、長い下りに入る前には低めに。転ぶと危ない場所ほど、重心は下げるという順番です。
数値はあくまで一般的な目安です。地形と当日の体調に合わせて、無理のない範囲で調整してください。
関連記事:登山ザックの重心はどこ?疲れにくい荷物の位置と詰め方
最後に雨具と行動食と水を取り出しやすい配置に
3段階目は動線です。置き場所は「ザックを下ろさずに手が届くか」と「雨の日に本当に開けられるか」の2つで決めます。

補給の頻度から考えると分かりやすいです。エネルギーは1〜2時間に1回、水分は0.5〜1時間に1回が目安とされています。
この頻度をザックを下ろしながら守るのは、正直つらいですよね。だから行動食と水は、背負ったまま届く場所に置くのが前提になります。
| すぐ出したい物 | 置き場所の考え方 |
|---|---|
| 雨具(レインウェア上下) | 雨蓋・最上部かフロントポケット |
| 行動食 | 雨蓋・ヒップベルトポケット・ショルダーの小物入れ |
| 水 | サイドポケットかハイドレーション |
| ヘッドランプ・救急用品・手袋 | 雨蓋または最上部 |
| 防寒着 | 上部だが雨具の下 |
| 着替え・シュラフ | 底 |
レインウェアは上下そろえても、かさは小さめです。モンベルのストームクルーザー上下なら、公式の収納サイズから換算して約1.6L。上のほうに置いてもかさの負担が小さいので、優先して手前に置けるわけです。
じゃあ雨蓋に入れておけば安心ってこと?
それが、そうとも限らなかったんです。僕は雨の日に、その雨蓋を開けられなくて困りました。
えっ、開かないの? どういうこと!
雨蓋が開けられない日は水と行動食を横から
僕のミレー サースフェーNX 30+5には、純正のレインカバーが付いてきます。ありがたい装備なのですが、留め具の位置の関係で、カバーを付けたまま雨蓋を開けられません。
開けるにはカバーを全部外す必要があります。風が強い日に外すのは、正直こわかったです。まさか純正のザックカバーが使いにくいとは、というのが当時の感想でした。
荷物を下にまとめて下からアクセスする手もあったのですが、初回はそこまで気が回りませんでした。雨の中で気づいても、もう詰め直せないんですよね。
この経験から、雨蓋に何を入れるかは、雨の日に雨蓋を開けられるかで決まると考えるようになりました。対策は3つあります。
- 雨天に使う物を、雨蓋ではなくサイドポケットやヒップベルトポケットへ移す
- 荷物を下に寄せて、下部アクセスから取り出せるようにしておく
- 外からカバーで覆う方式ではなく、中身側を防水袋で守る方式に切り替える
同じザックで助かった点もあります。サイドのボトルポケットが、上からだけでなく横からも手を入れられる構造でした。
僕は体が固くて、上からだと手が届きません。ザックを下ろさないと水が飲めないところを、横から抜いて解決できました。取り出しやすさは、ザック側の開口部の作りでも決まります。
ヒップベルトのポケットは、片側を広げると2倍の大きさになりました。通常サイズだと大きめのスマホが横向きに入りません。行動食の置き場としては、この広げられる側が使いやすかったです。
もう1つ気をつけたいのが、袋の入れ子です。ザックの内側に大きな防水袋を敷くパックライナー方式では、すぐ取り出したい物をライナーの中に入れないのが基本とされています。
ライナーを開けないと出せなくなるからです。レインウェアを奥に入れてしまうと、雨が降った瞬間に困ります。
暗い時間に歩く行程なら、ヘッドランプの置き場所も前夜に決めておきたいところ。2017年に奥穂高岳へ登ったときは、3時半起床・3時45分出発でご来光に向かいました。最初に手が伸びる道具は、枕元か雨蓋に置いておくと安心です。
スタッフサックの分け方と圧縮袋の限界
袋は2種類あります。中身を分ける袋と、かさを潰す袋は別物です。重さは10倍前後、価格も2倍以上の差になります。
小分け用のモンベル U.L.スタッフバッグは、1Lで6g。5個使っても30g程度にしかなりません。分ける袋を増やしても、重量のペナルティはほとんど無いわけです。
一方でかさを潰すコンプレッションスタッフバッグは、Sで68g、Lで119gあります。役割が違えば重さも違う。ここを混ぜて考えると、袋選びを間違えます。
| 目的 | 使う袋 | 重量の相場 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 中身を用途別に分ける | 軽量スタッフバッグ | 4〜10g | 防水性はない |
| かさばる物を潰す | コンプレッションバッグ | 68〜119g | 長期保管には使わない |
| 濡らせない物を守る | 防水スタッフバッグ | 43〜70g(3〜10L) | 開口部を3回以上折り返す |
| 中身をまとめて守る | パックライナー | 42〜126g | すぐ出す物は入れない |
分け方は、山と道が公開しているULパッキングの実践例が分かりやすいです。装備を用途別に3つの袋へ集約し、メイン気室に積み重ねる方式をとっています。
- いちばん上:食料・調理器具・予備水・エマージェンシーキット・ヘッドライトなど、行動中に使う可能性のある物
- 中段:着替え一式と手ぬぐい
- 底:寝袋・ダウンジャケット・ダウンパンツなど、行動中はほぼ使わない物
袋で層を作る利点は2つ。探し物のたびにザックをひっくり返さなくて済むことと、袋1つだけを持ち出せることです。小屋に着いてから必要な袋だけ抜く、という使い方ができます。
注意したいのは、軽量スタッフバッグに防水性がない点です。メーカー自身が「防水性はありません」と明記しています。濡らせない物は、防水スタッフバッグへ分けて入れてください。
圧縮袋にも限界があります。圧縮していいのは行動中だけです。モンベル公式は、ダウン製品や中綿入りウェアを付属のスタッフバッグに入れたまま収納するのは避けるよう案内しています。
半年間ギュッと押しつぶされた状態で保管すると、中綿のへたりが早くなり保温性の低下につながる、という説明です。ゴアテックスなどの防水透湿フィルムも、押しつぶされた状態が苦手とされています。
つまり圧縮袋は、山の上でかさを詰めるための道具。家に帰ったら解いて、ゆったり保管するのが前提ですね。
関連記事:登山ザックの雨対策|カバー・防水袋・ライナーの使い分け
槍ヶ岳の小屋泊とテント泊のパッキング例

ここからは実例です。小屋泊で担ぐ物は行き先ではなく、小屋が何を出してくれるかで決まります。
2食付きのプランなら、寝具と夕食・朝食は小屋持ち。シュラフ・マット・炊事用具・食料の大半を持たずに済みます。日帰り装備に数点が乗るだけ、というのが実感に近いです。
どのくらい乗るのかを、メーカー公表の収納サイズから積み上げてみます。
| 山小屋泊で足される物 | 換算容積 |
|---|---|
| ダウンジャケット | 約1.2L |
| インナーシーツ | 約1.0L |
| 軽アイゼン(残雪期のみ) | 約0.5L |
合計しても3L弱にとどまります。実際は隙間が生じるので下限として見る数字ですが、小屋泊が30〜40Lクラスで収まる理由はここにありますね。容量が跳ね上がるのは、寝具と食事を自前で持つときです。
僕の槍ヶ岳は1泊2日、1日目が約9時間の登りでした。水は1.5L、行動食は多めに。ゼリー飲料は重いので、食べ物寄りに寄せています。
行動食の重さは、カロリー密度で決まります。固形のバー系はおよそ5kcal/g、ゼリー飲料は1kcal/g前後。同じ1,000kcalを運ぶなら、バー系は約200g、ゼリー飲料は約1kgになります。
とはいえゼリーの価値は、疲れて食欲がないときでも飲み込めることにあります。主体は固形にして、ゼリーは1〜2個の保険として持つ。これで重さと機能が両立します。
小物では、塩タブレットとボディシートが効きました。風呂に入れない小屋泊で体を拭けるかどうかは、翌日の気分がけっこう変わります。山荘の充電スペースは口数が少ないので、モバイルバッテリーも持っていきました。
担ぐ物は小屋が何を出すかで決まる
泊まり方ごとの増分を、表にするとこうなります。行き先が同じでも、プランで担ぐ物が入れ替わります。
| 行程 | 小屋が提供する物 | 担ぐ物の増分 |
|---|---|---|
| 日帰り | なし | 基本装備のみ |
| 小屋泊(2食付き) | 寝具・夕食・朝食 | 防寒着・インナーシーツ・着替え・洗面まわり・サブザック |
| 小屋泊(素泊まり) | 寝具のみ | 上記+食料一式(炊事するなら燃料とクッカー) |
| テント泊 | なし | テント・シュラフ・マット・炊事用具・食料・水 |
料金の差は、そのまま担ぐ物の差です。穂高岳山荘の2026年度は1泊2食が15,500円、素泊まりが11,000円。差額の4,500円は、夕食3,100円と朝食1,400円の合計と一致します。
この差額を払って身軽になるか、食料を担ぐか。パッキングは、予約したプランを起点に組むと早いです。
インナーシーツの扱いも小屋ごとに違います。涸沢ヒュッテは紙の枕カバーを用意したうえで、より安心を求める人はインナーシーツ等を持参するよう案内しています。
2017年に泊まった穂高岳山荘では、布団はシングルサイズに毛布2枚でした。比較的暖かく寝られたので、寝具側の防寒を足す必要は感じませんでした。ただし混雑時は1枚を2人で使う場合もあります。
小屋にゴミ箱があり、行動中のゴミを捨てられたのも助かりました。下山の荷物がその分だけ軽くなります。ご来光で朝食の時間に戻れないときは弁当に変えてもらえたので、翌朝に担ぐ行動食の量も変わりました。
担ぐ物が決まったら、あとは置き場所です。この1泊2日の中身を、ここまでの原則に当てはめるとこうなります。雨蓋を開けられなかった反省もふまえた、いまの僕の詰め方です。
| 区画 | 入れる物 | その位置にする理由 |
|---|---|---|
| 底 | 着替え・インナーシーツ | 小屋に着くまで出番がない |
| メイン気室の外側 | たたんだサブザック・洗面まわり | 軽い物ですき間を埋める |
| メイン気室の背中側・肩の高さ | 予備の行動食・モバイルバッテリー | この行程でいちばん重い物を体に近づける |
| 最上部 | レインウェア上下、その下に防寒着 | 降ったら真っ先に出す順に重ねる |
| 雨蓋 | ヘッドランプ・救急用品・手袋 | すぐ使う小物をまとめる |
| サイドポケット | 水1.5L | 横から手を入れて抜ける |
| ヒップベルトポケット | 行動食・塩タブレット | 歩きながら届く |
小屋泊で背中側に寄せたいほど重い物は、じつはそう多くありません。水と行動食を除けば、あとは軽い物ですき間を埋める作業。30〜40Lクラスで収まるのは、いちばんかさばる寝具と食事を小屋が持ってくれるからですね。
テント泊になると話は別です。2021年10月に穂高岳山荘のテント場で泊まったときは、テント・シュラフ・マットに加えて食事の道具まで、全部が背中に乗りました。
テント・シュラフ・マットの3点だけで、軽い構成でも約2.1〜2.4kgになります。代表モデルで積み上げると、テント1.14〜1.36kg、シュラフ0.59kg、マット0.41kgという内訳。ここへザック本体と炊事用具、食料と水が乗っていきます。
詰め方の型でいえば、マットは外付け、シュラフとダウンは底、炊事道具は背中側の肩の高さです。10月の稜線は冷えるので、僕はカイロも持ち込みました。テントの内側は結露もします。装備が増えるぶん、減らす段階の効き方も大きくなるわけですね。
料金・営業期間・寝具の扱いは改定されます。予約の前には、必ず各山小屋の公式サイトで最新の情報をご確認ください。
105gのサブザックを最初から仕込む
小屋泊の荷物は、小屋まで担ぐ荷物と、山頂へ持つ荷物に分かれます。だから僕は、たためるサブザックを最初から仕込んでいます。
槍ヶ岳山荘グループの公式FAQも、穂先へ向かうときは登山用のザックを小屋の周辺に置き、サブザックで登ることを勧めています。大きな荷物は邪魔になるので、防寒着とカメラがあれば充分、という案内です。
僕が使っているのはモンベルのバーサライトパック15です。2018年8月、槍ヶ岳の小屋泊から山頂アタックに向かうために買いました。前年の奥穂高岳で「アタックバッグがあったほうが便利だ」と感じたのが動機です。
重さはキッチンスケールで実測105g。ついでに量った卵1個が59gだったので、卵2個より軽い計算になります。広げてもタオルを半分に折ったサイズより少し小さいくらいでした。
たたむと付箋ブロックほどの大きさ。この容積なら、メイン気室の隙間に押し込んでも配置に響きません。中にはハイドレーション用の引っ掛けがあり、ファスナーは両側から締められます。
失敗もありました。たたみ方が最初まったく分からなかったんです。手順は、本体の口を閉じた状態でパッキング用の口を開け、そこに手を突っ込んで本体を引っ張り込む。後半は入れにくいですが、押し込めば収まります。
細かいところでは、収納してもロゴは表に出ません。チェストベルトは幅の調整だけで、高さは変えられませんでした。とはいえ山頂を往復する荷物は少ないので、15Lで十分に足りています。
モンベル バーサライトパック15
実測105g・たたむと付箋ブロックほどのパッカブルザック。小屋に荷物を置いて山頂を往復する行程用に、僕が仕込んでいる1つです。
価格目安:約4,000円(2018年の購入当時)
小屋によっては、サブザックを貸し出しているところもあります。涸沢小屋の公式ページには、宿泊者の荷物預かりとサブザックの無料貸出の案内があります。必ず借りられるとは限らないので、予約時に確認してみてください。
小屋泊で担ぐ量が決まると、次に効いてくるのはザックの容量です。1泊2日から何がどれだけ増えるかは、容量側の記事で整理しています。
関連記事:小屋泊2泊3日のザック容量は何L?1泊2日との差と実例
ザックの外付けが危ない理由と付け方
外付けは無しか、ごくわずかに。ドイター公式が挙げる理由は、風の影響・濡れ・引っかかりの3つです。

風にあおられればバランスを崩します。外に出した物は当然濡れますし、岩や枝への引っかかりは転倒につながります。中に入る物は中に入れる、が基本ですね。
同じ公式は、ザックの中でスタッフサックを使うのは装備を整理する良い方法だとしています。外に吊るす前に、まず中で層を作れないかを考えたいところです。
それでも外付けが避けられない代表が、スリーピングマットとトレッキングポール。かさばるのに潰せない道具です。
外付けが増えるようなら、そもそも担ぐ物が多いサインかもしれません。減らす段階に一度戻ってみてください。
マットとポールは外付け可 先ゴムは外さない
僕も2021年10月の穂高岳山荘テント泊では、マットを外付けした大型ザックで歩きました。テント泊装備でマットまで中に入れるのは、正直むずかしいです。
付けるときに気をつけているのは、左右のバランスと体との距離です。片側だけに寄せると重心がずれます。ザックから離して吊るすほど、歩くたびに振られやすくなります。
トレッキングポールは、収納しやすさで選ぶという考え方もあります。シナノ公式は、使わないときの持ち運び方もポール選びのポイントで、自分のザックに収納しやすいものを選ぶよう案内しています。
そして先ゴムは外さない。滑りやすい場所では外して使う部品ですが、ザックに付けて移動する間は装着したままが基本です。
理由は2つ。1つは、むき出しの先端が人や自分に向かないようにするためです。もう1つは環境の問題になります。
シナノ公式は、登山中に外れて登山道に落ちた先ゴムは自然に還らず、環境破壊の要因になると書いています。電車・バスでの移動中は先ゴムの装着が義務とされ、一般公道や公共交通機関でもマナーとして求められます。
外れやすい部品なので、出発前に緩みを見ておく。それだけで落とす確率はかなり下がりますよね。
登山靴を外に括りつける方法が紹介されることもあります。ただ重い靴を背中から離れた位置に吊るせば、後ろに引かれる力は強くなります。落として拾いに戻れない場所もあるので、僕は中に入れるか、そもそも持たない工夫を先に考えます。
山頂へ向かうときの選択肢も思い出してください。外付けを増やすより、荷物そのものを小屋に置いてサブザックで往復するほうが、身体にも周りにも安全です。
登山ザックのパッキングのコツについてよくある質問
ザックの容量は、大きめを選んでおけば安心ですか?
大は小を兼ねないんですよね。容量に対して荷物が少なすぎると、中身が下に沈んで重心がずれます。オスプレーが製品ごとに公表している推奨積載量には下限もあり、たとえばタロン22は4.5〜13.6kgです。大型ザックは一定以上の重さが載って初めて、設計どおりに荷重が分散する構造だからですね。逆にUL系には上限があって、山と道 ONE は最適荷重域を最大11kgと定めています。担ぐ重さの見込みを先に出して、容量はそれに合わせる順番がおすすめです。
下山日に雨具が濡れてしまったら、どうやってザックに戻せばいいですか?
濡れた物と乾いた物を同じ袋に入れないのが基本です。防水スタッフバッグを1つ空けておくと、雨具をまとめて放り込めます。小屋泊なら乾燥室を使いたくなりますが、北アルプスの主要小屋では宿泊者専用として案内されていて、公式ページに記載のない小屋もあります。槍ヶ岳山荘は、干した物は利用者自身で管理すること、雨具を長期間入れっぱなしにすると防水性能が落ちるおそれがあることを案内しています。濡れる前提の行程なら、乾燥室の有無と使い方を予約の前に各小屋の公式サイトで確認しておくと安心ですよ。
詰め方を直しても肩が痛いときは、どうすればいいですか?
まずヒップベルトの位置を確認してみてください。グレゴリー公式は、腰骨の上端より約2.5cm上にパッドの上端が触れる装着を案内しています。次に背面長です。首を下に曲げたとき一番出っ張る骨から腰骨の最上部までを測ります。モンベル公式のフィッティング手順は、約10kgの荷物を入れて薄着で行うとされています。しびれや痛みが続くようなら、荷物を軽くしたうえで、専門店や医療機関に相談してください。
水はハイドレーションとボトル、どちらが取り出しやすいですか?
補給の頻度を守れるほうです。水分は0.5〜1時間に1回が目安なので、ザックを下ろさずに飲める形が向いています。ハイドレーションは背負ったまま飲めるのが利点。ボトルは残りの量が目で分かるのが利点ですね。僕は横からも手を入れられるサイドポケットに助けられました。水は1Lで約1kgあるので、置き場所は重量バランスにも効いてきます。
雨の日、ザックの中身はどうやって守ればいいですか?
登山専門店の解説では、三段構えで説明されています。第一層がパックカバー、第二層がザックの内側に敷くパックライナー、第三層が濡らせない物を個別に入れるドライサックです。ドライサックは入口を3回以上巻くと防水性が高まります。注意点として、レインウェアのようにすぐ取り出したい物はライナーの中に入れないでください。カバーは背中側を覆えず、ザックの縫い目やザックに使われるファスナーも防水ではない、とメーカー自身が説明しています。
まとめ:パッキングは減らす→重心→動線の順
つまり、詰める前にまず減らす。それから位置と動線ってことだね!
はい。順番さえ間違えなければ、あとは自分の山行に合わせて調整していけますよ。
登山ザックのパッキングは、減らす→重い物の位置→取り出す動線の3段階。詰め方の工夫は、いちばん最後の段階です。

- 詰め方より先に減らす。背負う重さの目安は体重の20〜25%で、体重60kgなら12〜15kg
- 重い物は背中側の肩の高さへ。岩場や長い下りではバランスを優先して低くする
- 高さだけで酸素消費が2割前後違う実験結果はあるが、条件は平地のトレッドミル歩行
- 雨具・行動食・水は、下ろさずに届くか・雨でも開けられるかで置き場所を決める
- 分ける袋は1Lで6g、潰す袋は68〜119g。圧縮していいのは行動中だけ
- 小屋泊で担ぐ物は、小屋が寝具と食事を出すかで決まる。予約したプランを起点に組む
- 実測105gのサブザックを仕込むと、小屋に荷物を置いて山頂を往復できる
- 外付けは風・濡れ・引っかかりを理由に最小限。ポールの先ゴムは付けたまま運ぶ
価格やスペック、山小屋の料金や営業期間は改定されます。購入や予約の前には、必ずメーカーや山小屋の公式サイトで最新の情報をご確認ください。装備の最終判断は、当日の天気とご自身の体力・経験に合わせて。迷ったら無理をしない選択が、いちばん安全です。
