こんにちは、YAMA-GO編集部のりょうです。関西を拠点に、北アルプスを中心にULスタイルで山を楽しんでいます。このブログ「YAMA-GO」では、実際に使ったギアのレビューや選び方、山のノウハウなんかを発信しています。
今回は、僕自身も最初に知りたかった登山のザックによる肩こりの原因や、痛みを防止する対策についてまとめてみます。テント泊などで荷物が重くなると、どうしても肩が痛いと悩むことってありますよね。背負い方を少し変えたり、なで肩の人はパッドやリュックのベルトを工夫したりするだけで、驚くほど快適になることが多いです。
この記事では、僕が色々と試行錯誤してきた経験をもとに、肩への負担を減らすコツを紹介していきますね。
- なぜザックを背負うと肩が痛くなるのかという根本的な原因
- 自分の体型に合った正しいザックの選び方とフィッティング手順
- 荷物の詰め方や歩行中の工夫で肩への負担を分散させるコツ
- 休憩中や下山後に取り入れたいストレッチなどの身体のケア方法
登山のザックによる肩こりの原因と対策
まずは、どうして山歩きの最中に肩がガチガチに固まって痛くなってしまうのか、その理由と、痛みを未然に防ぐための基本的な対策についてお話ししますね。ここを理解しておくと、後々の工夫がグッと効果的になりますよ。
なぜ痛い?肩への負担が増大する理由

登山中の肩こりは、普段のデスクワークやスマホの見過ぎで感じるような「ジワジワとした凝り」とは、根本的にワケが違います。
十キロ、二十キロにもなる重い荷物が、肩周りの筋肉をダイレクトに圧迫し、下方向へ牽引し続けることで起こる、非常に強力な物理的ダメージが原因なんですよね。
日常の肩こりが血行不良や姿勢の悪さからくる慢性的なものだとすれば、登山の肩こりは重力という絶対的なパワーが肩にのしかかる、急性のトラブルと言っても過言ではありません。
そして、その痛みを爆発的に加速させてしまう一番の理由が、ザックの重心が自分の背中から離れてしまっていることにあります。
人間の体は、自分自身の重心(体の中心軸)と荷物の重心が近いほど、重さを感じにくく、またバランスを取りやすく設計されています。

この強大な力に逆らって斜面を登り続けるため、僕たちは無意識のうちに上半身を大きく前傾させたり、首をカメのように前に突き出したりして、必死にバランスを取ろうとします。
僕自身、登山を始めたばかりの頃は、この不自然な姿勢のまま登り続けてしまい、下山する頃には肩がちぎれそうに痛くなっていました。
この「不自然な前傾姿勢」と「後ろへ引っ張られるザック」の板挟みになり、悲鳴を上げるのが、首から肩、背中にかけて広がる巨大な筋肉である僧帽筋(そうぼうきん)や背筋群です。
つまり、単なる「荷物の重さ」そのものよりも、重心のズレによって引き起こされる無駄な筋肉の酷使(力み)こそが、肩への負担を何倍にも増大させている最大の犯人なんですね。
腕の痺れや神経麻痺が起きる危険性
単なる筋肉の疲れだと甘く見ていると、少し怖い症状に繋がることもあります。肩への圧迫が限界を超えると、首から腕にかけて伸びている神経の束(腕神経叢)がダメージを受けてしまうことがあるんです。
これを「腕神経叢麻痺(いわゆるリュックサック麻痺)」と呼んだりするのですが、初期症状としては肩の強い痛みに加えて、腕や指先がピリピリと痺れる感覚が出ることがあります。進行すると、テントの設営どころか手を挙げることすら難しくなってしまうケースもあるので注意が必要です。
体に合う背面長や容量の正しい選び方

肩こりを防ぐ一番の防御策は、なんと言っても「自分の体にぴったり合ったザックを選ぶこと」です。どれだけ高価でクッション性が良いモデルでも、サイズが合っていなければ本来の機能を発揮できません。
特に重要なのが背面長(トルソー)のサイズです。腰骨の上端から首の後ろの一番出っ張った骨までの長さに、ザックの背面サイズを合わせる必要があります。これが長すぎたり短すぎたりすると、重さが腰に乗らずに100%肩にのしかかってしまい、すぐに肩が悲鳴を上げてしまいます。
負担を減らすためのパッキングのコツ

自分の背中にぴったり合うザックを手に入れたら、次に立ちはだかるのが「荷物の詰め方(パッキング)」です。
実は、全く同じ総重量の荷物だったとしても、中身の配置を変えるだけで、肩に感じる体感重量は数キロ単位で変わってきます。適当に詰めるのは絶対にNGですよ。
パッキングを成功させて肩への負担を劇的に減らすためには、ザックの中を4つの階層(ゾーン)に分けて考えるのが一番わかりやすいです。
一つずつ、僕なりの具体的な詰め方のコツを解説していきますね。
- 最下層(底面):土台を作る
一番下には、寝袋(シュラフ)やテントのフライシート、予備の防寒着など、「かさばるけれど軽いもの」を入れます。これらがザック全体のクッション兼しっかりとした土台になってくれます。底面がフラットになると重心がブレにくくなりますよ。 - 中層・背中側:パッキングの最重要エリア
ここが肩こり防止の生命線です!飲料水や食料、テントの金属ポールなど、「一番重くて密度の高いもの」は、必ず背中側の中央(肩甲骨の間あたりの高さ)に配置してください。
背中(支点)から重い荷物が数センチ外側へ離れるだけで、後ろに引っ張られる力が強くなり、肩への食い込みが急増してしまいます。 - 中層・外側:重量物を固定するバリア
背中側に置いた重い荷物が歩行の振動で外側にズレていかないよう、レインウェアや追加の着替えなどを外側に詰め込んで「壁」を作ります。 - 最上層(トップ):軽くてすぐ使うもの
行動食、ヘッドライト、ファーストエイドキット、地図などを入れます。頭の近くに重いものを置くのは絶対に避けてください。歩くたびに頭の動きに連動してザックが振り子のように左右に振られ、肩や体幹を無駄に消耗してしまいます。
あともう一つ、僕自身が初心者の頃によくやってしまった失敗が「左右のバランスの崩れ」です。
パッキングが完了したら、必ずザックの上部にあるトップハンドルを片手で持ち上げて、空中に吊るしてみてください。
この時、ザックが地面に対して垂直になっていれば合格です。
もし左右どちらかに傾いていたら、歩いている間ずっと片方の肩だけで余分な重さを支え続けることになります。パズルみたいで最初は少し面倒かもしれませんが、この一手間が翌日の肩の疲れを劇的に変えてくれますよ!
なで肩に役立つチェストベルトの活用

なで肩で悩んでいる方、意外と多いんじゃないでしょうか。僕の周りでも、「歩いているうちにショルダーハーネスがズリ落ちてきてストレスだ」という声をよく聞きます。これを防ごうと無意識に肩をすくめて歩くことが、肩こりの大きな原因になっているんです。
そんなときに絶対に使ってほしいのが、左右の肩ベルトを胸の前で繋ぐチェストストラップ(胸ベルト)です。これを鎖骨の少し下あたりに合わせ、呼吸が苦しくならない程度に留めておくだけで、ハーネスの開きを防いでくれます。
もし今お使いのザックに付いていない場合は、後付けできるチェストストラップも数百円からアウトドアショップなどで売られているので、ぜひ試してみてください。荷重を胸全体で受け止められるようになり、かなり楽になるはずです。
登山のザックで肩こりを防ぐ実践的ケア
ここからは、実際に山を歩いている最中のテクニックや、疲れた体を癒やすケア方法についてお話しします。装備を整えた上でこれらの小技を組み合わせると、長丁場の山行でも肩の痛みをかなり軽減できますよ。
疲労を分散させる歩行中の背負い方

自分の体型に合ったザックを選び、完璧なパッキングができたとしても、何時間も重い荷物を背負って歩き続ければ、どうしても同じ箇所に負荷が集中してしまいます。
そのまま同じ姿勢を続けると、ベルトが当たっている部分の毛細血管がずっと圧迫され、血流が悪くなって痛みに変わってしまうんですよね。
そこで僕がよくやっているのが、歩きながら各ベルトの締め具合を少しずつ変えていく「動的フィッティング」というテクニックです。一箇所の筋肉を酷使し続けるのではなく、意図的に使う筋肉をローテーションさせていくイメージですね。
このように、数十分おき、あるいは地形の変化に合わせてこまめにベルトを微調整するだけで、疲労の蓄積を驚くほど防ぐことができます。ちょっとした手間に感じるかもしれませんが、長丁場の山行での効果は絶大です。
そして、歩行中の肩こり予防でもう一つ忘れてはいけないのが「歩く姿勢」です。
疲れてくると、どうしても顎が前に出たり、背中が丸まって腰が引けたりしがちですよね。僕もキツい登りだと、つい足元ばかり見て姿勢が崩れてしまいます。
でも、人間の頭って約5kgもあるんです。姿勢が崩れて頭が前に出ると、その頭の重さとザックの重さがダブルで首の後ろや肩の筋肉にのしかかり、一瞬で強烈な肩こりを引き起こしてしまいます。

後付け肩パッドで痛みを和らげる方法
どうしても今のザックだと肩に食い込んで痛い、でもまだ買い替えたくない…という場合は、後付けのショルダーパッドを導入するのも一つの手ですね。
最近は、立体的なエアクッションが配置されたパッドなどが販売されています。これを取り付けると、面ではなく無数の「点」で重さを分散してくれるので、局所的な血管の圧迫を防いでくれます。メッシュ素材のものなら汗ムレ対策にもなるので、夏の低山ハイクなんかでも重宝しますよ。
休憩中に実践すべき肩甲骨ストレッチ

歩き続けて固まった筋肉は、小休止のときにこまめにほぐしてあげるのが一番です。特に、ザックの重みで癒着しやすい肩甲骨周りのケアは欠かせません。
簡単なのは、首の横を伸ばすストレッチです。伸ばしたい側の腕を腰の後ろに回し、反対の手で頭をゆっくり横に倒します。首から肩にかけての筋肉がじんわり伸びるのを感じたら、そこでキープします。
あとは、山小屋の壁や太い木の幹などを使って、手のひらを壁に当てたまま腕をゆっくり上へスライドさせていくのも、肩甲骨周りの血流を一気に良くしてくれるのでおすすめです。無理のない範囲で試してみてください。
手や足裏からくる痛みの連鎖を防ぐケア
肩こりの原因って、実は肩そのものではなく「手」や「足」の疲れから来ていることも多いってご存知でしたか?人間の体は筋膜というネットワークで全身が繋がっているので、意外なところが影響しているんです。
例えば、トレッキングポール(ストック)を強く握りすぎると、前腕の筋肉がガチガチになります。すると、その緊張が腕から胸を伝わって肩を前に引っ張り、いわゆる「巻き肩」の状態を作ってしまいます。これが背中側の筋肉をピンと引っ張り続け、肩こりになってしまうんです。
登山のザックによる肩こりを解消しよう

ここまで、登山のザックによる肩こりの原因から、選び方、パッキング、そして歩き方やケアの方法までお話ししてきました。
肩こりや腕の痛みは「登山にはつきものだから我慢しよう」と思われがちですが、実はギアの見直しやパッキングの工夫などで、その大部分は防ぐことができるんですよね。自分に合ったサイズを選び、重いものを背中側に寄せて、正しく背負う。これだけでも本当に世界が変わります。
ただし、もし慢性的な痛みや痺れが続く場合は、無理は禁物です。最終的な判断は専門家にご相談いただくなど、自分の体としっかり相談しながら山を楽しんでくださいね。この記事が、皆さんの安全で快適なULハイクやテント泊の一助になれば嬉しいです!