こんにちは、YAMA-GO編集部のりょうです。関西を拠点に、北アルプスを中心にULスタイルで山を楽しんでいます。このブログ「YAMA-GO」では、実際に使ったギアのレビューや選び方、山のノウハウなんかを発信しています。
登山のファーストエイドキット、何をどれだけ入れればいいのか迷いますよね。調べると17〜19点も並んだリストが出てきます。全部そろえたら重くなりそう…と手が止まる人も多いかなと思います。
僕自身、初めての富士登山の下りで両足に5か所の水ぶくれを作り、トレッキングポールを持たなかったことを後悔しました。この記事では、日帰りで最低限持つ10点を、山で起きやすいトラブルの順に整理します。市販キットで足りない物や軽くまとめるコツ、収納と使用期限の管理まで一緒に見ていきましょう。
- 日帰りで最低限持つファーストエイドキットの中身10点と数量の目安
- 靴ずれ・すり傷・捻挫・虫刺され・頭痛や腹痛の症状別に使う物と手当ての基本
- 市販キットで足りない理由と、自作するなら足したい3品
- 泊まりや夏に足す物、収納場所と使用期限の管理のコツ
登山のファーストエイドキットの中身は10点前後
結論から言うと、日帰り登山のファーストエイドキットは10点前後で足ります。中身は、靴ずれ・すり傷・捻挫・頭痛や腹痛といった、山で起きやすいトラブルに合わせて選びます。市販キットを土台にするなら、靴ずれ用の絆創膏・テーピング・飲み慣れた常備薬を自分で足すのが近道です。

とはいえ、登山メディアや専門誌のリストを見ると、点数はけっこうバラバラ。代表的なものを並べると次のとおりです。
| リストの出どころ | 点数 | 重さの目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 登山専門誌のウェブ版(基本解説) | 17点 | 300g以下 | カイロ・経口補水パウダー・手指用の消毒ジェルまで入る網羅型 |
| 登山メディアの現役ガイド取材 | 19品目 | 記載なし | ガイドが他人を手当てする場面も想定 |
| UL専門店(ハイカーズデポ)の店主が監修 | 約12品目 | 約200g | 鎮痛解熱剤・靴擦れパッド・プリカットのテープなどに絞った構成 |
| 登山アプリ運営会社のスタッフ5人 | 7〜14品目 | 記載なし | 靴擦れ特化・子どもの擦り傷特化など、人ごとに偏る |
点数が多いリストは、他人を手当てするガイドの立場や、泊まり・縦走まで見越したものが中心です。日帰りの自分用なら、ここから絞り込めます。どのリストにも共通する考え方は2つ。「自分の登山スタイルに合わせて厳選する」ことと、「使い方を知らない道具は持っても意味がない」ことです。
日帰りで最低限持つ10点と数量の目安
日帰り・1人分なら、次の10点が僕の考える最小セットです。複数のリストに共通して残る品目を、役割ごとに並べました。
| 役割 | 品目 | 数量の目安 | メモ |
|---|---|---|---|
| 靴ずれの予防・手当て | ハイドロコロイド絆創膏(靴ずれ用の大きめ) | 2〜3枚 | 濡れや剥がれで貼り替えが要る |
| 靴ずれ予防・固定 | テーピングテープ(紙テープ/伸縮50mm) | 1巻を小分けして1〜2m分 | 紙テープは靴ずれ予防、伸縮50mmは捻挫の固定や装備の補修に使う |
| すり傷・切り傷 | 絆創膏(普通サイズ) | 5枚前後 | 小さな傷用 |
| 出血・汚れた傷 | 滅菌ガーゼ | 2〜3枚 | 押さえて止血・傷の保護 |
| 感染予防 | 使い捨て手袋(ニトリルなど) | 1〜2組 | 他人の血液に触れないため |
| 頭痛・発熱 | 飲み慣れた解熱鎮痛薬 | 1〜2回分 | 市販キットには入らない |
| 腹痛・下痢 | 飲み慣れた胃腸薬・下痢止め | 1〜2回分 | 市販キットには入らない |
| 虫刺され・かぶれ | 抗ヒスタミン成分の塗り薬 | 小容量1本 | 夏〜秋は優先度が上がる |
| 切る・留める | 小さいはさみ・安全ピン | 各1 | 手で切れないテープがある |
| 保温 | エマージェンシーシート | 1枚(約50〜65g) | 日帰りでも必携とされる装備 |
数量は1人・日帰りの一般的な目安で、公的な基準ではありません。傷を洗う水は行動用の飲み水で兼用するので、数に入れていません。
このうち、靴ずれ用の絆創膏・テーピング・常備薬の3つは、国内の市販救急セットに入っていないか、少ない品目です。ここを自分で足せるかどうかが、山で使えるキットになるかの分かれ目かなと思います。
エマージェンシーシートは、救急セットと同じ袋に入れるリストが多い品目。メーカー公式の登山装備ガイドでも、日帰り登山の必携装備に入っています。
ULでも削らず多用途化と小分けで軽くする
ULスタイルでも、ファーストエイドキットは削る側ではなく「削れない安全装備」の側です。軽くしたいなら、品目を減らすより多用途化と小分けで詰めていきます。
国立登山研修所のテキストは、体力が足りないときの対策に「不要な荷物を減らして軽量化する」を挙げています。削る対象は、あくまで不要な荷物。救急セットそのものを外す話ではない、というのが僕の考えるULのバランスです。
| 軽くする工夫 | 具体的なやり方 |
|---|---|
| テーピングを兼用する | 伸縮テープ1本で、捻挫の固定・靴ずれ予防・装備の破損補修をまかなう |
| 水を兼用する | 傷の洗浄は行動用の飲み水で行い、専用の洗浄液を持たない |
| ポールを添え木に数える | トレッキングポールを添え木の代わりとして考える |
| テープは芯から外す | 巻き芯から外し、必要な長さ(1〜2m分)だけ持つ |
| 薬は1〜2回分だけ | 不安から箱ごと持たず、その山行で使う分に絞る |
逆に危ないのが、不安から何でも詰め込むこと。UL専門店の店主が「一番危険」な例に挙げるのは、使い方を知らない添え木や三角巾と、大量の医薬品です。
重さの目安は、UL専門店の監修構成で約200g、網羅型でも300g以下。ザック全体から見れば小さな重さなので、ここを削って安全を手放すのは割に合わないと僕は考えています。
組んだら家で広げる
キットを組んだら、一度家で中身を広げてみてください。使い方が分からない物は外すか、使い方を調べてから入れ直します。応急手当の講習を一度受けておくと、中身の選び方にも自信が持てるはずです。
山で起きやすい順に見る症状別の中身と使い方

山で起きやすいトラブルは、目安として靴ずれ>すり傷>捻挫>頭痛・腹痛の順です。キットの中身も、この順に手厚くしておくと困りにくくなります。

米国のアパラチアン・トレイルを7日以上歩いたハイカー334人の調査では、いちばん多い訴えが足の水ぶくれで64%でした。長く歩くほど、まず足にトラブルが出るということです。警察庁の2025年の統計でも、遭難者の19.2%は転倒によるものでした。転倒は、すり傷や捻挫につながります。(出典:警察庁『令和7年における山岳遭難の概況等』)
ただ、この並びは研究と統計を組み合わせた目安です。日本の日帰り登山者を対象にした頻度の統計は見当たらないので、自分の山行に合わせて調整してください。
山でいちばん多いけがって、転んだときのすり傷だと思ってた!
僕も最初はそう思ってました。長く歩く人ほど、足の水ぶくれに悩まされるみたいですよ。
じゃあ、足のトラブルから順番に見ていこう!
| 症状 | 山でやること | 使う中身 |
|---|---|---|
| 靴ずれ | 違和感の段階で止まって貼る | テーピング・ハイドロコロイド絆創膏 |
| すり傷・切り傷 | 水で洗って覆う・ガーゼで押さえて止血 | ハイドロコロイド絆創膏・絆創膏・ガーゼ・手袋 |
| 捻挫 | 冷やす・テープで固定・靴紐を締め直す | 伸縮テープ・バンダナ・トレッキングポール |
| ハチ・虫刺され | 離れる・洗う・冷やす・塗る | 抗ヒスタミン軟膏 |
| 頭痛・腹痛 | 飲み慣れた薬を用法どおり飲む | 解熱鎮痛薬・胃腸薬 |
靴ずれはテーピングを歩き出す前に貼って防ぐ
靴ずれは、できてから手当てするより、歩き出す前にテープを貼って防ぐほうが効果的です。水ぶくれは、歩き始めの早い段階でできやすいからです。
根拠になるのが、砂漠を6ステージで250km走るレースの参加者128人を対象にした研究。水ぶくれができやすい部位に紙テープを貼ると、水ぶくれが40%減りました。しかも、できた水ぶくれの80%は第2ステージまでに起きています。
痛くなってから貼るより、スタート前のひと手間のほうが効くということですね。できやすい部位は、足指が50%、かかとが23%でした。過去に水ぶくれができた場所に朝のうちに貼っておくのが、研究の条件に近い使い方です。
研究で使われたのは、幅2.5cm(足指用)と5.1cm(母趾球・小趾球・かかと用)の紙テープ。キットには細いものと太いものを少しずつ入れるか、太いテープを切って使います。
歩いている途中で違和感が出たら、我慢せずにその場で止まって貼りましょう。赤みや痛みの段階なら、テープやハイドロコロイド絆創膏で摩擦を減らしておきます。
水ぶくれができてしまったら、洗って清潔に覆い、圧迫と摩擦を減らすのが共通の手当てです。破るかどうかは医療機関やメーカーで説明が分かれるので、自己判断で無理に処置しないでください。むけかけた皮は、はがさず残すのが基本とされています。
靴の中の湿気も、靴ずれの一因です。予備のソックスも足のトラブル対策として、救急セットと同じ感覚で持っておくと安心かなと思います。
3M マイクロポア(紙の医療用テープ)
水ぶくれ予防の研究で使われた紙テープ。細いものと太いものを少量ずつキットに入れておくと、足指にもかかとにも貼れます。
富士山の下りで水ぶくれ5か所、ポールを持たず後悔
ここで僕の失敗談をひとつ。初めての富士登山(2017年・吉田ルート)の下山で、両足に5か所の水ぶくれを作りました。
8合目から下は、階段のない砂利の坂がひたすら続きます。自分の足でずっとブレーキをかけ続けるので、足の親指と小指に負担が集中しました。朝6時ごろに下り始めて、5合目に着いたのは9時過ぎです。
そのあいだ、ずっと同じ負担がかかり続けたわけです。当時の後悔として残っているのは、トレッキングポールを持っていかなかったこと。下りはとにかくしんどく、ポールがあればもう少し楽だったはずです。
あとから調べ直すと、この水ぶくれはテープ研究の「歩き始めに多い」とは少し違う型でした。長い下りで、足指が靴の中で前に滑ってできるタイプです。ただ、できた場所の足指は、研究でもいちばん多かった部位でした。
なので今の僕なら、長い下りの前にも足指へテープを貼り足します。朝のスタート前と下りの前に、足を見直すタイミングを作っておくと安心です。
長い下りの前は、足指のテープとトレッキングポールをセットで準備しておきましょう。
すり傷・切り傷は消毒せず水で洗い湿潤で覆う
すり傷・切り傷は、消毒せずに飲める水で洗い、乾かさずに覆うのが今の基本です。昔ながらの「消毒して乾かす」とは逆なので、意外に感じる人も多いかもしれません。
僕もジャンダルムからの下山では、浮き石だらけのガレ場で何度も転びかけました。岩場やガレ場では、手のひらや膝をすりむくことはいつでも起こりえます。
日本創傷外科学会は、傷を水道水などで洗うだけで感染を十分に抑えられるという報告を紹介しています。日本皮膚科学会のガイドラインも、傷は湿った環境で治すのが基本という立場。過剰な洗浄や消毒は、かえって治りを妨げうるとしています。
野外医療の学会(Wilderness Medical Society)の指針も、傷は早めに飲める水で洗うよう求めています。洗う水に何かを混ぜたり、傷に塗ったりはしません。山では行動用の飲み水で、砂や土をしっかり流します。
ペットボトルのキャップに穴を開けて水圧をかける工夫も、いくつかのリストで紹介されています。血が出ているときは、清潔なガーゼで傷口を直接押さえて止血。他人の手当てでは、手袋で血液に直接触れないようにします。
洗った傷を覆うのに便利なのが、ハイドロコロイド絆創膏です。ニチバンの「ケアリーヴ 治す力」は、すり傷・切り傷に加えて靴ずれも効能に含みます。パッドが濡れたり液が漏れたりしたら貼り替えるので、予備も入れておきましょう。(出典:ニチバン『ケアリーヴ 治す力』製品情報)
覆わずに受診したい傷
感染のおそれがある傷、かさぶたのある傷、虫刺されには、ハイドロコロイド絆創膏は使えません。土や砂が深く入り込んだ傷や動物にかまれた傷は、洗ったあとガーゼで保護するまでにして、医療機関を受診してください。
ちなみに、傷口用の消毒液を入れない構成は、今の指針と矛盾しません。専門誌のリストにある消毒ジェルは、手当てする人の手指用という位置づけです。
ニチバン ケアリーヴ 治す力
効能に靴ずれを含むハイドロコロイド絆創膏。Sからジャンボ、指先用のT型までサイズがあるので、かかとなど広い部位には大きめを選びます。
価格目安:希望小売価格 750円(税別)
捻挫の応急処置はテープ固定と靴紐の締め直し
山で足首をひねったら、冷やせる物で冷やし、テープで固定して靴紐を締め直すのが現実的な応急処置です。氷のない山では、教科書どおりのRICE処置を全部はできないからです。
RICE処置は、4つの手当ての英語の頭文字をとったものです。山での置き換えは次のとおり。
| 手当て | 基本のやり方 | 山での現実的な代わり |
|---|---|---|
| 安静(Rest) | 患部を動かさず固定する | テープやバンダナで固定。ポールを添え木にする |
| 冷却(Ice) | 氷をタオルで包んで15〜20分当て、感覚が戻ったら繰り返す | 沢水・雪・冷えたペットボトル |
| 圧迫(Compression) | テープや包帯でやや圧迫ぎみに固定する | 伸縮テープで固定。締めすぎない |
| 挙上(Elevation) | 心臓より高い位置に上げる | 休むときは足を高くしておく |
氷を直接当てると凍傷の危険があります。圧迫しすぎると、足先の血の巡りが悪くなるので注意してください。
北海道警察の解説では、足首の捻挫の予防と再発防止に、幅50mmの伸縮テープを使う例を紹介しています。同じ解説は、テーピングの効果が時間とともに落ちる点にも触れています。
靴紐を締め直して、足首を靴で支えるのも大事な手段です。足は時間とともに腫れてくるので、靴を脱いだら早めに履き直すのが実務上のコツとされます。
富士山の砂利の下りを歩いて、僕がハイカットの登山靴をおすすめしたいと感じた理由は2つ。下りの砂利が入りにくいことと、足首を支えてくれる安心感です。ただ、靴の高さで捻挫そのものが減るかははっきりしていないので、テープや靴紐の締め直しと合わせて考えています。
無理に歩かない目安
体重をかけられない、形が変わっている、広い範囲が強く腫れている。こうした場合は骨折の可能性もあります。無理に歩かず、110番か119番で早めに救助を要請してください。ためらううちに日が暮れると、救助が難しくなります。
ニチバン バトルウィン 伸縮タイプ E(E50F)
幅50mm×4m(伸長時)の伸縮テープ。手では切れないので、はさみとセットでキットに入れます。
価格目安:希望小売価格 800円(税別)
ハチ・虫刺されは夏〜秋に抗ヒスタミン軟膏を足す
ハチに刺される事故は8・9月に集中します。夏〜秋の山行では、抗ヒスタミン成分の塗り薬を忘れずにキットに入れておきましょう。
森林総合研究所によると、ハチの巣作りは5月ごろに女王バチ1匹で始まります。夏から秋にかけて働きバチが増え、攻撃性が高まります。オオスズメバチは、約80mも追いかけてくることがあるそうです。(出典:森林総合研究所『森林レクリエーションでのスズメバチ刺傷事故を防ぐために』)
刺されたときの流れは次のとおりです。
- すぐにその場を離れる
- 毒をできるだけ早く取り除く
- 刺された部分を水でよく洗う
- 冷やす
- 抗ヒスタミン軟膏を塗る
アンモニアや尿を塗るのは有害なので、やめてください。じんましん・めまい・吐き気・息苦しさなど、全身に症状が出たら一刻も早く医療機関へ。ハチ刺されによる死亡は、多くが刺されて1時間以内に起きています。
ハチ毒のアレルギーがある人は、医師に処方されたエピペン(アドレナリン自己注射薬)を持つことが最優先です。心当たりがある人は、山に行く前に医師に相談してください。
毒を吸い出すポイズンリムーバーは、森林総研が野外での携帯をすすめています。一方で、効果を裏付ける質の高い研究は乏しいという医療者の指摘もあります。ミツバチの針は、取り方より取る速さで腫れの大きさが変わったという実験も。持つなら、あくまで補助と考えるのがいいかなと思います。
虫よけスプレーは、刺すハチには効きません。梅雨や秋雨の低山では、ヤマビルにも同じ軟膏が使えます。取り除いたら血を押し出し、水で洗って軟膏を塗り、絆創膏で覆います。マダニは帰宅後に体に付いていないか確かめ、数週間は発熱に注意してください。
頭痛・腹痛の常備薬は飲み慣れた物を1〜2回分
常備薬は、普段から飲み慣れた薬を1〜2回分持つのが基本です。山で初めての薬を試すと、合わなかったときに逃げ場がないからです。
長く歩くハイカーの調査では、下痢は56%で2番目に多い訴えでした。日帰りでも、寝不足や標高の高い場所で頭が痛くなることはあります。
僕も初めての富士登山では、山小屋でビールを飲んで寝たら少し高山病になり、しんどい思いをしました。高い山での頭痛が続くときは、薬で抑えて進むより、無理をせず下ることも考えてください。痛み止めは、頭痛や生理痛など普段から起きる痛みのために持つ物。けがの痛みを消して無理に歩くための物ではありません。
| 成分(製品の例) | 区分 | 買うときの扱い |
|---|---|---|
| ロキソプロフェン(ロキソニンS など) | 第1類医薬品 | 薬剤師からの説明が必要 |
| イブプロフェン(イブA錠 など) | 指定第2類医薬品 | 登録販売者のいる店でも買える |
| アセトアミノフェン | 製品により第2類など | 登録販売者のいる店でも買える |
市販薬のロキソプロフェン・イブプロフェン・アスピリン製剤は、15歳未満は服用できません。アセトアミノフェンには3歳以上の子どもが使える製品もありますが、抗炎症作用はマイルドです。アスピリン喘息の人も注意が必要です。
もうひとつ大事なのが、薬は他人にあげない・もらわないこと。登山メディアのライターも、かつて困っている登山者に痛み止めをあげていたと振り返っています。善意でも、相手の体質や持病までは分からないからです。
持病の薬は別枠で、予定より多めに持ちます。どの薬をどれだけ持つかは、かかりつけの医師や薬剤師に相談してください。
市販のファーストエイドキットで足りる?

市販のファーストエイドキットは、土台としては使えますが、そのままでは足りません。国内の救急セットには内服薬が入らず、靴ずれ対策も手薄になりがちだからです。

お店で売ってる救急セットを買えば、それで完成じゃないの?
僕も最初はそう思ってました。でも中身を見ると、山で困りやすい物が抜けていることが多いみたいですよ。
何が足りないのか、一緒に確かめてみよう!
市販品は、大きく3つの形に分かれます。
| 形 | 例 | 中身 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 入れ物だけのポーチ | 登山用品メーカーの救急ポーチ | なし(自分で詰める) | 中身を自分で決めたい人 |
| 国内の中身入り救急セット | アウトドア・防災向けの19点セットなど | 三角巾・包帯・キズテープ・消毒ワイプ・はさみ・アルミブランケット・手袋・ポイズンリムーバーなど | 何からそろえればいいか分からない人の土台 |
| 海外の中身入りULキット | 米国のAdventure Medical Kitsの軽量モデル(約102g) | 靴ずれ用のモールスキン・鎮痛薬・抗ヒスタミン錠まで入る | 軽さ重視の人(国内品で再現するなら薬は自分で足す) |
選ぶときに見たいのは、内服薬と靴ずれ対策が入っているか、それに防水性と重さです。地面に置いて中身を広げやすいかも、手当てのしやすさに直結します。
国内の市販キットに薬が入っていない理由
国内の救急セットに薬が入っていないのは、医薬品の販売に薬機法上の許可が要るからです。そのため、アウトドア用品として売られるセットは、内服薬を含まない構成が一般的。解熱鎮痛薬や胃腸薬は、自分でドラッグストアなどで買い足す前提になります。
対照的なのが、米国向けの中身入りキットです。Adventure Medical Kitsの「Ultralight/Watertight .5」は約102g。2人で1〜2日の行程向けに設計されています。鎮痛薬や抗ヒスタミン錠、靴ずれ予防のモールスキンまで入っています。
国内のセットは、切り傷用の絆創膏やガーゼ、消毒綿が中心の構成が多め。山でいちばん多い靴ずれに効くハイドロコロイド絆創膏やテーピングは、少ないか入っていないことが多いです。三角巾のように、使い方を知らないと役に立たない物が入っていることもあります。
Adventure Medical Kits Ultralight/Watertight .5
靴ずれ予防のモールスキンまで入った約102gの軽量キット。国内の販売ページで内容物を確認してから選んでください。
救急セットを自作するなら市販品に3品を足す
自作するなら、市販の救急セットを土台に3品を足すのがいちばん手早い方法です。足すのは「靴ずれ用の絆創膏」「テーピング」「飲み慣れた常備薬」の3つ。ゼロから全部そろえるより、抜けている物だけを埋めるほうが無駄がありません。
手順は次の5ステップです。
- 入れ物を決める(ポーチかジップロック)
- 靴ずれ・すり傷・捻挫用の外用品を入れる(ハイドロコロイド絆創膏・テープ・ガーゼ・絆創膏・手袋)
- 飲み慣れた内服薬を1〜2回分足す(持病の薬は別枠で多めに)
- 季節で入れ替える物を足す(夏は経口補水パウダー、晩秋〜冬はカイロ)
- 家で一度中身を広げ、使い方が分からない物を外す
よくある失敗は、使った分を補充し忘れること。登山アプリ運営会社のスタッフも、下山後に必ず補充することを注意点に挙げています。
はさみの入れ忘れに注意
伸縮テーピングには、手で切れない製品があります。はさみを入れ忘れると、いざというときにテープが使えません。
泊まり・縦走は貼り替え分と胃腸薬、夏は経口補水を足す
小屋泊・テント泊や縦走では、品目はほぼそのままで、貼り替え分の被覆材と胃腸薬を増やします。夏は経口補水パウダーも足しておきます。下山や受診までの時間が延びる分、自分で手当てを続ける量が要るからです。

| 増やす・足す物 | 理由 |
|---|---|
| ハイドロコロイド絆創膏・テープの貼り替え分 | 濡れや液漏れで交換が必要になる |
| 胃腸薬・下痢止め・風邪薬 | 日数が延びるほど不調が起きる機会が増える |
| 爪切り・ダニ取り | 長期の山行で追加する物として挙げる例がある |
| 経口補水パウダー(夏) | 大量に汗をかいたときの水分・塩分補給 |
| カイロ(晩秋〜冬) | 待機中や朝夕の冷え対策 |
ハイドロコロイド絆創膏やテープ、ガーゼ、手袋は、日帰りでも泊まりでも品目は同じ。変わるのは数量だけです。日数が延びるほど、お腹の不調や風邪で内服薬の出番も増えていきます。
夏に怖いのが熱中症です。環境省のマニュアルでは、涼しい場所へ移り、首の両脇・脇の下・足の付け根を冷やすのが効果的とされています。大量に汗をかいたときは、経口補水液やスポーツドリンク、食塩水(水1Lに食塩1〜2g)で補給します。(出典:環境省『熱中症環境保健マニュアル2022』)
呼びかけへの反応がおかしい、吐き気や嘔吐がある場合は、口から飲ませずに医療機関へ。ちなみに、冷却ジェルシートを額に貼っても体を冷やす効果はないと、同じマニュアルに書かれています。
僕が槍ヶ岳に1泊2日で登ったときも、持ち物で必須だと感じたもののひとつが、熱中症対策の塩タブレットでした。経口補水パウダーと合わせて、夏は塩分をとる手段を持っておくと安心です。
寒さの面では、初めての富士山のご来光待ちで、山頂の寒さを甘く見ていたのが僕の反省点。晩秋〜冬や待ち時間が長い山行では、カイロを足しておくと安心です。持病がある人や長い縦走を計画している人は、事前に医師や薬剤師に相談しておきましょう。
ポーチかジップロックか、収納場所と使用期限の管理

入れ物は、軽さ優先ならジップロック、手当てのしやすさ優先ならポーチが向いています。どちらでも大切なのは、雨蓋や外ポケットなど、すぐ出せる場所に入れること。薬の使用期限も、シーズン始めと使った直後に見直しましょう。
| 入れ物 | 重さ | 価格(税込) | 特徴 |
|---|---|---|---|
| チャック付き袋(ジップロックなど) | ポーチより軽い | 安価 | 軽さ優先。中身が見えて探しやすい |
| モンベル アクアペル ファーストエイドバッグ 0.5L | 50g | 2,300円 | ロールトップ式。鋭利な物用の小袋付き |
| モンベル ファーストエイドバッグ S | 80g | 5,200円 | 開くとバッグ自体がトレーになる |
| モンベル ファーストエイドバッグ M | 115g | 6,600円 | Sと同じ構造でひと回り大きい |
モンベルのポーチはどれも防水性が高いものの、公式に「完全防水ではない」と明記されています。薬や絆創膏は、チャック付き袋に入れて二重にしておくと安心です。
ULの考え方なら、日帰りはジップロックで始めるのが軽くて手軽かなと思います。中身が増える泊まりや、地面に広げて落ち着いて手当てしたい人には、トレーになるポーチが便利です。
収納場所で避けたいのが、メイン気室の底です。けがをしてから荷物を全部出すことになり、手当てが遅れます。行動中や緊急時に出す物は、雨蓋や外ポケットに入れるのがパッキングの原則です。
僕が槍ヶ岳で使ったミレーのサースフェー30+5は、雨蓋が2室に分かれていました。小さいほうの部屋は、絆創膏などの応急処置アイテムや非常食を入れるのにちょうどいい大きさです。
靴ずれ用の絆創膏とテープだけを小分けにして、ヒップベルトのポケットに入れておくのもおすすめ。違和感が出た段階で、止まってすぐに貼れます。同行者にもキットの場所を伝えておくと、自分が動けないときに取り出してもらえます。
薬の使用期限は、秋田県薬剤師会が示す目安が参考になります。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 市販薬(未開封) | 期限表示があればそれに従う(表示がない製品は製造から通常3年) |
| 市販薬(開封後) | 製造からの期間内で6か月程度(適切に保管した場合) |
| 保管温度 | 室温(1〜30℃) |
未開封で3年以上品質を保てる製品は、箱に期限が書かれていないこともあります。箱から出して小分けすると、薬の名前・用量・期限が分からなくなるのが落とし穴。袋に書き写すか、箱の該当部分を切り取って一緒に入れておきましょう。
夏の車内に置きっぱなしのザックは高温になり、薬の保管条件を外れるおそれがあります。ハイドロコロイド絆創膏やテープも、古くなると粘着力が落ちて剥がれやすくなります。外箱に使用期限があれば、それに従って入れ替えてください。
見直すタイミングは、シーズンの始まりと、使った山行の直後がおすすめです。使った分をその日のうちに補充しておけば、次の山行で慌てずに済みます。
登山のファーストエイドキットの中身でよくある質問
低山の日帰りハイキングでもファーストエイドキットは必要?
必要だと考えています。メーカー公式の登山装備ガイドでも、日帰り登山で救急セットは必携とされています。高尾山の事故の分析では、50歳代以上の事故要因の58%が転倒でした。低い山でも転んですりむくことはあるので、絆創膏とテープ、常備薬くらいの小さなセットは持っておくと安心です。
子どもと登るとき、ファーストエイドキットの中身で気をつけることは?
いちばん注意したいのは薬です。大人がよく使う市販の痛み止めのうち、ロキソプロフェンやイブプロフェン、アスピリンの製剤は15歳未満には使えません。アセトアミノフェンには3歳以上の子どもが使える製品がありますが、選ぶときは薬剤師に相談してください。すり傷用の絆創膏も、大人だけのときより多めに入れておくと安心です。
グループ登山なら、ファーストエイドキットは1つで足りる?
絆創膏やテープのような外用品は共有もできますが、薬は各自で持つのが基本です。現役ガイドへの取材でも、薬は「あくまで個人用」とされています。はぐれたときや、手当てする人が動けないときに備えて、最小限のセットは一人ひとりが持つのがおすすめです。
エマージェンシーシートがあれば、ツェルトはいらない?
役割が違うので、代わりにはなりません。エマージェンシーシートは、体から出る熱を反射して体温の低下をやわらげる薄いシートで、重さは約50〜115gです。ツェルトは風や雨を遮る小さな空間を作る簡易テントで、約105〜585g。ツェルトの中でシートにくるまると、両方の効果を合わせられます。
日焼け止めや虫よけも、ファーストエイドキットに入れていい?
入れて問題ありません。UL専門店の店主が監修したリストにも、虫除けや日焼け止めが入っています。毎回使う日用品を救急ポーチに一緒に入れて、ポーチの場所を毎回意識する工夫を紹介している登山アプリ運営会社のスタッフもいます。ただし虫よけは刺すハチには効かないので、ハチ対策は別に考えてください。
まとめ:登山のファーストエイドキットは10点前後で足りる
10点くらいなら、思ったより軽くまとまりそうだね!
そうなんですよね。僕も富士山で失敗したので、足のトラブル対策だけは外さないようにしたいです。
登山のファーストエイドキットは、全部入りの網羅リストを目指さなくて大丈夫です。山で起きやすい順に中身を選び、日帰りなら10点前後に絞りましょう。

- 日帰りの中身は10点前後。靴ずれ・すり傷・捻挫・頭痛や腹痛の順に手厚くする
- 市販キットは土台にして、靴ずれ用の絆創膏・テーピング・飲み慣れた常備薬の3品を足す
- 靴ずれはテープを歩き出す前と長い下りの前に貼って防ぐ
- 傷は消毒せず飲める水で洗い、湿潤で覆う。汚れた深い傷は受診する
- ULでもキットは削らず、多用途化と小分けで軽くする
- 泊まり・縦走は貼り替え分と胃腸薬、夏は経口補水パウダーを足す
- キットは雨蓋や外ポケットに入れ、薬の期限はシーズン始めと使用後に見直す
数量や使用期限は、あくまで一般的な目安です。薬の選び方や持病については、医師・薬剤師にご相談ください。製品の最新情報は、各メーカーの公式サイトで確認してください。
応急手当の講習で使い方を身につけておくと、いざというときも落ち着いて動けるはずです。軽さと安全のバランスを取りながら、あなたの山行に合ったキットを組んでみてください。
救急セットと同じく、山では排泄の備えも事前に決めておきたい項目です。
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