こんにちは、YAMA-GO編集部のりょうです。関西を拠点に、北アルプスを中心にULスタイルで山を楽しんでいます。このブログ「YAMA-GO」では、実際に使ったギアのレビューや選び方、山のノウハウなんかを発信しています。
登山届(登山計画書)って、いざ出そうとすると「どこに、どうやって出すの?」で手が止まりますよね。登山口のポストに入れるのか、警察署へ持っていくのか、それともアプリなのか。僕も最初は分からないまま、とりあえず現地のポストに紙を放り込んでいました。
結論から言うと、いまはスマホの登山アプリかコンパスから出すのが早くて確実です。ただし条例で義務の山域には、アプリからでは出せない期間や区域もあります。この記事では提出方法の全パターンを整理したうえで、実際の操作手順、書く項目、義務のある山域と期限、そして「出したのに機能しない」落とし穴までまとめました。
- 登山届の出し方は6通り。これから選ぶならアプリかコンパスが最短
- YAMAPは「保存」ではなく「提出」まで押さないと届かない
- 北アルプスなど条例で義務の山域と、10日前・20日前という提出期限
- 出したのに機能しない3つの落とし穴と、家族への伝え方
登山届の出し方はアプリ提出が確実
登山届の出し方は大きく分けて6通りありますが、これから選ぶならYAMAP・ヤマレコ・コンパスのいずれかからオンラインで出す方法が確実だと思います。計画づくりと提出、家族への共有が1回の操作でまとまるからです。

そもそも登山届の提出先は、入る山域を管轄する警察署や警察本部(地域課)が基本です。火山地区の条例など目的別の届出では、県の防災・危機管理の部門が窓口になる山もあります。出し方は違っても、届く先はこのあたりだという理解でいます。
| 出し方 | 手続きの実際 | 向いている場面・注意点 |
|---|---|---|
| 登山口・交番の登山届ポストに投函 | 用紙に記入して現地の箱に入れる | 準備なしで当日出せる。ただし管理者は自治体・警察・山小屋・地元山岳会とまちまちで、回収の頻度が読めない |
| 管轄の警察署・警察本部へ郵送・FAX・持参 | 山域ごとに管轄署が違う(東京の山域なら青梅・五日市・高尾の各署) | 確実に警察へ届く。日数がかかるので直前の計画には向かない |
| 電子メール | 山梨県警のようにメールの窓口を設けている県がある | 県によって可否が違うので、県警のページで窓口の有無を確認する |
| 都道府県の電子申請サービス | 埼玉県警・長野県・群馬県警などがフォームを公開 | その県の山にしか使えない。複数県にまたがる山行では両方に出す |
| オンライン登山届「コンパス」 | 日本山岳ガイド協会が運営。無料の会員登録で全国どこでも提出できる | 提出内容は都道府県警・自治体と共有される。条例で義務の山域でも正式な提出方法として認められている |
| 地図アプリ(YAMAP・ヤマレコ) | 計画づくりからそのまま提出できる | YAMAPは協定を結んだ県へ直接、ヤマレコはコンパス経由。未締結の地域では印刷して別途提出する |
義務のない山域なら、提出先は登山届ポストでも警察署でも構いません。ただし条例で義務のある山域は提出先と期限が指定されているので、そちらは指定どおりに出してください。どの方法でも、届いたことを自分で確認できると安心です。
アプリが確実な理由は家族共有と下山通知
アプリ提出が確実だと言えるのは、対応している自治体であれば提出の瞬間に警察・自治体への届出と家族への共有が同時に終わるからです。YAMAPは提出時に緊急連絡先へメールが飛び、コンパスも登録した緊急連絡者と計画を共有します。
もうひとつが下山通知の仕組みです。コンパスは下山予定時刻を過ぎても通知が出ていないと、3時間ごとに本人へ督促メールを送り、7時間を過ぎると緊急連絡者へ「下山未確認」のメールを送ります。
つまり自分が動けなくなっても、「まだ帰ってきていない」ことに気づく人が自動的に増えるわけです。自分で通報できない状況になったときは、家族や知人の要請が捜索の起点になるので、この気づく人がいるかどうかが効いてきます。
ただしコンパスの下山通知は警察へ自動連絡される仕組みではありません。通知が届くのは緊急連絡者までで、そこから先は受け取った人の判断になります。
紙で出した場合は、この下山連絡の仕組みが無いことがほとんどです。だからアプリが有利という話であって、紙がダメという話ではありません。紙には紙の運用の仕方があります。
自分はどの方法で出すのが正解?
どの方法が正解かは、いま自分が地図アプリを使っているかどうかで決まります。使っているならそのアプリから、使っていないならコンパスから。まずはこの2択でだいたい片が付きます。
でも、登山口のポストに入れるやり方もあるんだよね?
ありますよ。前日や当日に思い立ったときは、ポストが頼りになります。ただ、入れっぱなしにしない工夫がいるんですよね。
入れっぱなしにしない、ってどういうこと?
誰か一人に、行き先と帰る時刻を伝えておくところまでがセット、という意味です。
| あなたの状況 | 第一候補 | そう勧める理由 |
|---|---|---|
| YAMAPやヤマレコをすでに使っている | いま使っているアプリからそのまま提出 | 計画づくりと提出、家族への共有が1回の操作で終わる |
| アプリを入れていない・これから始める | コンパス(Web・無料・全国対応) | 会員登録だけで全国どの山域にも出せて、都道府県警・自治体と共有される |
| 提出先の県がアプリと未連携/条例で別扱い | 県の電子申請、または県警へメール・FAX・郵送 | 富山の剱岳の冬期のように、アプリからの提出に対応していない制度がある |
| 前日・当日に思い立った/スマホが不安 | 登山口の登山届ポスト+家族への計画共有をセットで | ポスト単独だと、不在に気づく人がいない限り中身が読まれない性格の届出になる |
この4つのどれに当てはまるかを決めれば、方法は1本に絞れます。全部を比べて一番いいものを探すより、自分の状況に当てはめたほうがずっと早いです。
登山届の提出そのものに費用はかかりません。コンパスは無料ですし、YAMAP・ヤマレコも無料プランのまま提出できます。
紙で出すなら家族への共有とセット
紙で出すなら、登山届の控えを家族に渡すところまでを1セットにしてください。ポストに入れた紙は、その山域で行方不明者が出て初めて中身が見られる、という性格の届出だからです。
ポストの数は山域によって差があります。白山では石川県側に6か所、岐阜県は北アルプス地区と活火山地区に23か所が設置されています。数が多い山域でも、回収の頻度までは登山者からは見えません。
渡し方のコツは、「この時刻までに連絡がなかったら警察に捜索を頼んでほしい」と具体的に伝えることです。「山に行ってくる」だけだと、家族は待つべきか通報すべきかを判断できません。
紙で出すときの順番
用紙は登山口の備え付けでも、県警が配っているものでも構いません。記入したら控えを1枚とって家族に渡し、そのあとでポストに投函する。この順番にすると渡し忘れが減ります。
確実さを取るなら、管轄の警察署や警察本部へ郵送・FAX・持参という方法もあります。ただ届くまでに日数がかかるので、直前に決めた山行には向かないですね。
北アルプスなど義務の山域と提出期限
登山届が義務かどうかは、県単位ではなくその県の指定された山域と期間で決まります。北アルプスなら岐阜県側は通年で義務、長野県側も指定登山道を通るなら届出が必要です。

そして義務のある山域には、提出期限が決まっているものがあります。谷川岳の危険地区は10日前まで、剱岳周辺の冬期は20日前までです。手順を調べてから期限を知ると間に合わないので、先に確認しておきたいところですね。
| 県 | 対象の山域 | 対象期間 | 提出期限 | 罰則 |
|---|---|---|---|---|
| 群馬 | 谷川岳の危険地区(マチガ沢・一ノ倉沢ほか) | 3月1日〜11月30日 | 登山日の10日前まで | 3万円以下の罰金 |
| 富山 | 剱岳とその周辺の指定区域 | 12月1日〜翌5月15日 | 登山日の20日前まで | 5万円以下の罰金または科料 |
| 岐阜 | 北アルプス地区(槍ヶ岳・穂高岳・笠ヶ岳ほか)と活火山地区 | 通年 | 登山前 | 5万円以下の過料 |
| 新潟 | 新潟焼山の山頂から半径2kmの活火山地区 | 通年 | 入山の1週間程度前が目安 | 5万円以下の過料 |
| 石川 | 白山の活火山地区(火口域から4kmの範囲) | 通年 | 登山前 | 5万円以下の過料 |
| 長野 | 指定登山道(北アルプス・南アルプス・八ヶ岳ほか) | 通年 | 通行前 | 罰則なし |
| 山梨 | 富士山(県側3,000m以上)・南アルプス・八ヶ岳の指定区域 | 12月1日〜翌3月31日 | 定めなし | 罰則なし |
表を見ると分かるとおり、義務であることと罰則があることは別です。長野県と山梨県は届出が必要でも罰則の規定を置いていません。だからといって、出さなくていいという話にはならないですよね。
罰則がある県でも中身は違って、群馬・富山は刑事罰にあたる罰金や科料、岐阜・新潟・石川は行政上の秩序罰である過料です。ただ、登山者として気にするべきは金額よりも、実際に運用されているかどうかかなと思います。(出典:岐阜県『山岳遭難防止条例』)
岐阜県では無届け登山への罰則が実際に適用されていて、2020年に3件、2021年に1件の摘発が報じられています。条例があるだけで動いていない、という状態ではないわけです。
条例の対象となる山域や期間は告示で改正されます。ここに挙げた内容はあくまで目安なので、出かける前に県や県警の公式サイトで最新の内容を確認してください。
アプリで出せない山域は県の電子申請へ
アプリで全部済むかというと、そうはいかない山域があります。富山県警は、YAMAPからの登山届提出は剱岳周辺の条例(12月1日〜翌5月15日)と、室堂周辺の山岳スキー等安全指導要綱(4月・5月・11月)には対応していないと明示しています。
この期間・区域に入るなら、コンパスか富山県の電子申請サービスから別途出す必要があります。冬の剱岳を計画する人は、20日前という期限とセットで覚えておきたいところです。(出典:富山県『剱岳周辺地区の冬期登山届の提出について』)
谷川岳の危険地区はもっと独特です。書面で出す場合は、登山届を2通つくって10日前までに谷川岳登山指導センターへ郵送すると、「登山届出済」の印を押した1通が交付され、それを携帯して登ります。2025年4月15日からはコンパスからのオンライン提出も選べるようになり、書面と好きなほうを使えます。受理印を持ち歩く運用は、ほかの県ではあまり見かけません。
新潟焼山と石川県側の白山は、窓口が警察ではなく県の防災・危機管理の部門です。登山届は警察に出すもの、という思い込みはいったん外しておいたほうがいいですね。
僕がよく行く北アルプスは長野・岐阜・富山にまたがりますし、白山も石川県側と岐阜県側で条例が別です。どこから入るかで、そもそも調べるべき県が変わってきます。
槍ヶ岳へ登ったときも、新穂高温泉から入るなら新穂高センター、上高地から入るなら横尾登山口で出す、と入り口ごとに提出する場所が決まっていました。同じ槍・穂高でも入る側で窓口が変わるので、義務も提出先も県名ではなく山域と入り口で決まると覚えておくと、調べる順番を間違えません。
義務のない山はいつまでに出せばいい?
義務のない山には期限の定めがないことがほとんどですが、「前日でいい」と考えないほうが安全です。郵送や電子申請は届くまでに日数がかかりますし、条例のある山域は先ほどのとおり10日前・20日前という期限があります。
僕はルートと下山時刻が固まった時点で出すようにしています。目安としては、日帰りでも数日前、山小屋やテント泊が絡むなら1週間ほど前にひととおり出しておくと落ち着きます。
義務でない山でも、各県警は通年で提出を呼びかけています。遭難したときに捜索の手掛かりになる価値は、義務かどうかとは関係ないですからね。
そして出したあとに計画を変えたら、必ず出し直してください。届と違うルートに入ると捜索が空振りになります。急な計画変更をしないことは、各県警に共通した呼びかけでもあります。
アプリとオンラインの提出手順
アプリもコンパスも、流れは「計画をつくる→提出の操作をする→下山後に通知を出す」の3ステップで共通です。詰まるのはたいてい真ん中の、提出の一手だけですね。

ここでは3つのサービスについて、どこまでやれば「出した」ことになるのかを分けて書きます。自分が使うものの項目だけ読んでもらえれば大丈夫です。
YAMAPは提出ボタンまで押す
YAMAPで一番大事なのは、「保存」と「提出」は別の操作という点です。計画を保存しただけでは登山届になりません。「提出する」を押して初めて、協定を結んだ自治体へ届きます。
押し忘れて警察から届出状況の照会が来た事例が、YAMAPから公式に報告されています。画面のうえでは計画ができあがっているので、出した気になってしまうんですよね。
提出できるのは協定を結んだ県で、2025年8月の秋田県が30例目になりました。未締結の地域では、計画を印刷して別の方法で出すことになります。
北アルプスのようにルートが複数県にまたがる場合は、チェックポイントのある県の両方に提出されます。上高地から入って新穂高へ抜けるようなときに、長野と岐阜のどちらへ出すか自分で悩まなくていいのは楽です。
提出のタイミングで緊急連絡先に設定した宛先へメールが届くので、家族への共有もここで終わります。
自治体側の受理実績を見ると、宮城県では2023年6〜12月の登山届全体の54.5%、長野県では2022年4月〜2023年3月の40%がYAMAP経由でした。受け取る側から見ても、もう主要な提出経路のひとつになっているということですね。
YAMAP
登山届の提出と家族への共有は無料プランのままできます。地図の枚数やルート外れ警告を増やしたい人だけ、プレミアムを検討する形で十分です
価格目安:無料プランあり/プレミアムは年割5,700円・月額780円(2026年8月時点の目安)
ヤマレコとコンパスは連携登録で完了
この2つは仕組みが違います。ヤマレコはコンパスへ橋渡しする形、コンパスは単体で完結する形です。アプリをまだ入れていない人は、後半のコンパスのところだけ読めば足ります。
ヤマレコの手順は、山行計画の編集画面で「コンパスへの登録」をオンにするところから始まります。本人情報にコンパスのメールアドレスとパスワードを登録し、利用規約に同意して保存すると、コンパス経由で提出されます。
保存後に「コンパスに登録済み」と表示されれば、それが完了の合図です。コンパスのアカウントを持っていなくても、新規登録を「はい」にすれば同時に済ませられます。
つまずきやすいのは、無料プランだと提出できるのがスマホアプリからだけ、という点です。パソコンで計画を作り込む人はここで止まりがちなので、提出の操作だけはスマホで、と覚えておくといいですよ。
コンパスを単体で使う場合は、まず会員登録からです。氏名・カナ・性別・都道府県・メールアドレス・パスワードを入れて登録すると、計画の作り方を4つから選べるようになります。
- 地図から作成する(ルートを地図上でたどって作る)
- 人気の山から作成する(登られている山を選んで作る)
- フォームから作成する(行程を文字で入力する)
- 富士山などの定型登山届を使う(用意された様式を選ぶ)
計画ができたら提出し、下山したら下山通知を出す。これで一連の流れが終わります。初回だけ住所などの入力に少し手間がかかりますが、2回目以降は保存した情報を使い回せます。
コンパスは日本山岳ガイド協会が運営していて、利用は無料です。全国どの山域でも提出でき、条例で義務の山域でも正式な提出方法として認められています。アプリを入れていない人の第一候補にしているのは、この守備範囲の広さが理由です。
富士山には定型の登山届が用意されていて、QRコードやリンクから入山口を選ぶだけで出せます。ただし入山料の納付や事前登録とは別の手続きなので、混同しないよう気をつけてください。
ヤマレコ
コンパスへの登山届提出は無料プランでもスマホアプリから行えます。パソコンからも出したい人や、計画づくりを作り込みたい人がプレミアムの対象です
価格目安:無料プランあり/プレミアムは年間払い4,900円・月間払い780円(2026年8月時点の目安)
登山届に書く項目と記入例
書く項目は全国でだいたい共通で、「誰が・どこへ・いつ・どう歩き・何を持つか」と緊急連絡先に集約されます。様式が違っても、聞かれることは同じなんですよね。
具体的には次の内容です。アプリなら画面の指示どおりに埋めれば揃うので、紙で書く人が抜けを確認する用に使ってください。
- 登山者と同行者全員の氏名・年齢・性別・住所・携帯電話番号
- 緊急連絡先(メンバー全員分。続柄と、昼も夜もつながる番号)
- 目的の山域・山名(管轄の警察署を特定するために必要)
- 登山方法(一般登山道/積雪期/岩登り・沢登りなどの形態)
- 行動予定(入山日時・分岐や小屋の通過予定時刻・宿泊地・下山日時)
- エスケープルート(悪天や体調不良のときに短縮下山する道)
- 装備と食料・水の計画(雨具・防寒着・ヘッドランプ・ツェルト・非常食など)
- 山岳保険の加入状況
- 交通手段(公共交通なら発着時刻、マイカーなら車種・色・ナンバーと駐車場所)
行動予定の欄の記入例
いちばん手が止まるのが行動予定の欄です。僕が新穂高温泉から槍ヶ岳へ入ったときの1泊2日を実際に歩いた時刻で並べると「5:30 新穂高温泉発 → 6:25 穂高平小屋 → 7:20 白出沢出会 → 8:25 滝谷出会 → 9:35 槍平小屋 → 14:40 槍ヶ岳山荘(泊)→ 翌8:25 山荘発 → 15:10 新穂高温泉下山」の一行になります。通過点と時刻を矢印でつなぐだけで十分で、あとは自分のコースタイムを当てはめれば形になります。
車の欄は「新穂高温泉の無料駐車場に駐車/車種・色・ナンバー」の順で、置いた場所から書き始めると漏れません。エスケープルートは「悪天なら槍ヶ岳山荘へ上がらず槍平小屋から往路を下山」のように、引き返す地点と下る道をセットで書きます。
呼び方は「登山届」「登山計画書」「登山者カード」「入山届」といろいろありますが、中身はほぼ同じものです。谷川岳のように、危険地区に入らない一般コースの登山者が出すものを「登山カード」と呼び分けている例もあります。
登山計画書のテンプレートはどこで手に入る?
登山計画書のテンプレートは、各県警や自治体が配っているPDFやExcelをダウンロードするのが基本です。全国共通の決まった様式はないので、どれか1つを使えば大丈夫です。
山岳団体の書式や市販の用紙、登山口に備え付けの用紙でも構いません。埼玉県警のように、詳しい内容の登山届と携帯版の簡潔版を2種類そろえている県もあります。
書き慣れないうちは、項目の多い詳細版を一度そのまま埋めてみるのがおすすめです。何を聞かれるのかが体に入ると、次から簡潔版でも迷わなくなります。
ちなみにアプリやコンパスを使うなら、テンプレートを探す作業そのものが要らなくなります。入力欄が最初から用意されているので、埋めていけば形式は勝手に整いますからね。
僕が毎回書き漏らす車と装備の欄
正直に書くと、僕が毎回あとから「あ、書いてない」となるのが車の欄と装備の欄です。行程と時刻はきちんと書くのに、この2つは後回しにしがちなんですよね。
車の欄が効くのは、登山口の駐車場に残された車から「まだ下りていない人がいる」と分かるからです。僕は上高地へ入るときはあかんだな駐車場、槍ヶ岳へ新穂高から入るときは登山口の無料駐車場に車を置きますが、その場所と車種・色・ナンバーがそのまま手掛かりになります。
装備の欄は、遭難したときに「どれくらい持ちこたえられるか」を捜索する側が見る材料になります。雨具や防寒着、ヘッドランプ、非常食があるかどうかで、緊急度の見立てが変わるわけです。
僕は槍ヶ岳に登ったとき、2日目が終日雨で寒く、フリースかインナーダウンを持ってくればよかったと後悔しました。装備欄を埋める作業は、こういう準備の穴に出発前に気づく時間でもあります。
エスケープルートと山岳保険の加入状況も抜けやすい欄です。埋めるのに時間はかからないので、提出前にこの4つだけ見直す癖をつけると安心ですよ。
関連記事:登山のコースタイム目安とは?初心者の倍率と実測比較で解説
登山届未提出は罰則より捜索の遅れ
「登山届を出さないとどうなるのか」の答えは、罰則より先に、遭難したときの捜索が遅れることです。罰則がある山域は限られていますが、捜索の話はどの山でも同じように効いてきます。

出さなかったら罰金になっちゃうのかと思ってた。
罰則があるのは一部の山域だけなので、そこだけで考えると実際のリスクを見誤るかなと思います。
じゃあ、何がいちばん困るの?
探してもらうときに、どこを探せばいいのかが誰にも分からなくなることですね。
救助要請の多くは、本人や同行者が現場から携帯電話などで出しています。ただ、本人が動けない・電波が届かない・単独で意識を失ったといった場合は、家族や知人が異変に気づいて要請するしかありません。届を出していても、下山予定を知る人がいなければ、その起点が生まれないわけです。逆に家族が気づいても、届が無ければ捜索範囲を絞る材料がないわけです。
登山届の効き目は「警察に届いていること」と「不在に気づく人がいること」の2つが揃って初めて出ます。片方だけでは動かない、と思っておいたほうがいいです。
実際の遭難がどれくらい起きているのかも見ておきます。警察庁のまとめによると、令和7年の山岳遭難は3,122件・3,623人で、うち死者・行方不明者は332人でした。態様別では道迷いが30.9%で最も多くなっています。(出典:警察庁『令和7年における山岳遭難の概況』)
道迷いは、本人も自分がどこにいるのかを説明できなくなる遭難です。届に書いた行動予定やエスケープルートが、そのまま探す範囲の当たりをつける材料になります。
一人で登る人はとくに意識しておきたいところです。単独登山の遭難者1,367人のうち死者・行方不明者は209人で15.3%。2人以上で登った場合の5.5%と比べると、9.8ポイントの差があります。
誰かと登っていれば、その場で異変に気づいて助けを呼べます。単独だとその役目を担うのが、届と、下山予定を知っている家族だけになるわけですね。
夏山シーズンは件数自体も増えます。令和7年の7〜8月の2か月間だけで発生件数808件・遭難者917人と、統計が残る1968年以降で最多でした。人が多く入る時期ほど、届の有無が効いてくるくらいに考えておくと安心です。(出典:警察庁『令和7年夏期における山岳遭難の概況』/nippon.com『夏の山岳遭難:25年は過去最多の808件、917人』)
登山届が未提出だったために捜索範囲を絞れず、いまも行方不明のままの人がいる、と記している県警もあります。紙一枚、操作ひとつのことで結果が変わるのは、たぶんここです。
発見が遅れて生死が分からないまま長期化すると、死亡ではなく失踪として扱われ、生命保険金の受け取りに支障が出ると複数の登山メディアで指摘されています。制度の詳しい扱いは保険会社や専門家にご相談ください。
提出済みでも機能しない3つの落とし穴
ポスト投函だけで済ませた、提出ボタンを押していない、下山通知を出し忘れた。この3つが機能しない代表例ですが、どれも出した直後と下山直後の確認を習慣にすれば塞げます。ここではその確認の手順をまとめます。

1 伝えた相手を確かめる
まず、下山予定を知っている人が本当にいるかを確かめます。相手は家族でも友人でも1人で構いません。渡すのは山名とルート・下山予定時刻・車を置いた場所・つながる電話番号の4点です。アプリで出した人も、緊急連絡先の欄に入れた相手が当日そのメールを見られる人かどうかを見ておいてください。
2 提出できたかを確かめる
次に、提出の操作が通ったかを確かめます。ヤマレコは保存後に「コンパスに登録済み」と表示されるのが合図です。YAMAPは提出のときに緊急連絡先へメールが飛ぶので、受け取った相手に「届いた?」と一言聞くのがいちばん確実。ルートが複数県にまたがるときは、経由地がどの県に入っているかも見ておきます。
3 下山・中止のときの操作
最後は山から帰ったあとです。下山したら下山通知、天候などで登山そのものを取りやめたときは登録の解除まで済ませます。エスケープルートで途中から下りた場合も下山したことに変わりはないので、同じように通知を出してください。警視庁も登録解除を忘れないよう案内しています。
計画を直前に変えたときは、出し直しの手順もセットです。アプリやコンパスなら計画を編集して提出し直し、家族にも新しい行程を送り直します。ポストに入れた紙は取り下げられないので、変更後の計画をもう一度出す形になりますね。
それから、位置共有と登山届は別物です。YAMAPのみまもり機能やヤマレコの「いまココ」は、家族が今どのあたりにいるかを見るための仕組みで、警察や自治体に計画を届ける登山届の代わりにはなりません。
役割で分けると、登山届は「探す側に渡す情報」、位置共有は「待つ側が見る情報」です。両方あると心強いですが、片方で済ませないようにしたいですね。
下山届や登録解除の要否はシステムや県で違います。長野県のように下山届は不要とされている例もあるので、使う仕組みの案内を一度読んでおくと安心です。
登山届の出し方でよくある質問
日帰りの低山やハイキングでも登山届は必要ですか?
条例の対象でなければ義務ではありませんが、出しておくに越したことはないかなと思います。遭難で最も多いのは道迷いで、標高の低い山でも起こります。アプリやコンパスなら数分で出せるので、日帰りでも同じように出しておくと安心です。
登山届の提出にお金はかかりますか?
かかりません。有料になるのは登山届そのものではなく、地図まわりと安全機能です。YAMAPなら1か月にダウンロードできる地図の枚数、活動中のルート外れ警告、みまもりの通知先の数(無料は1件、プレミアムは5件)。ヤマレコなら同時に持てる地図の枚数と、パソコンからの提出です。届を出すだけなら無料の範囲で足ります。
下山通知を出し忘れたまま帰ってしまったら、どうすればいいですか?
気づいた時点ですぐ下山通知を出してください。コンパスは下山予定時刻を過ぎると3時間ごとに本人へ督促メールが届き、7時間を過ぎると緊急連絡者へ「下山未確認」の連絡が飛びます。帰宅から時間が経っているなら、通知を出したうえで緊急連絡先の家族へ自分から一報を入れておくと、心配や空振りの連絡を残さずに済みます。
富士山の入山料を払えば登山届を出したことになりますか?
別物です。入山料の納付や事前登録は入山するための手続きで、登山届はそれとは別に出す必要があります。富士山にはコンパスの定型登山届が用意されているので、入山口を選ぶ形で出せます。年ごとに手続きが変わるので、最新の内容は富士登山の公式サイトで確認してください。
家族が登山アプリを入れていなくても計画を共有できますか?
できます。YAMAPやコンパスは、緊急連絡先に登録したメールアドレス宛に通知が届きます。ヤマレコの「いまココ」も、見守る側はアプリを入れなくてもWebから確認でき、利用者登録も不要です。相手に合わせて渡し方を選べば大丈夫ですよ。
まとめ:登山届の出し方はアプリと家族共有で決まる
結局、いちばん簡単な出し方はどれだったの?
アプリを使っているならそのアプリから、使っていないならコンパスから。あとは家族に伝えるところまでやれば十分ですよ。
登山届の出し方を整理すると、選ぶ基準はわりとシンプルです。いま持っている道具に合わせて方法を1本に絞り、提出したことと下山したことを人に伝える。この2つが揃っていれば形になります。

- 提出方法は6通り。これから選ぶならアプリかコンパスが最短
- YAMAPは「保存」ではなく「提出」まで押して初めて登山届になる
- アプリを入れていないならコンパスの会員登録から。無料で全国どこでも出せる
- 義務は県ではなく山域と期間で決まる。谷川岳は10日前、剱岳の冬期は20日前まで
- 車と装備、エスケープルート、山岳保険の欄は書き漏らしやすい
- 出したあとは下山通知まで。ポストだけで終わらせず、行き先と帰る時刻を家族に伝える
ここに書いた期限や罰則はあくまで目安で、条例の対象は改正されます。出かける前に県や県警の公式サイトで最新の内容を確認し、判断に迷うところは各窓口や専門家にご相談ください。
登山届は、書いているうちに自分の計画の穴が見えてくる書類でもあります。安全のための義務というより、山を楽しむ準備の一部だと思って出してもらえたらうれしいです。
