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冬の登山で行動食が凍る?凍りにくい食べ物と持ち方

冬山の行動食が凍る問題と、凍りにくい食べ物をポケットに入れて持つ工夫

こんにちは、YAMA-GO編集部のりょうです。関西を拠点に、北アルプスを中心にULスタイルで山を楽しんでいます。このブログ「YAMA-GO」では、実際に使ったギアのレビューや選び方、山のノウハウなんかを発信しています。

冬の山の休憩でおにぎりを出したら、カチカチで歯が立たない。ゼリー飲料がシャリシャリで吸えない。そんな話を聞くと、冬の行動食は何を持てばいいのか迷いますよね。

僕自身、初めての富士登山では山頂の寒さを甘く見ていて、ご来光待ちの寒さに驚きました。槍ヶ岳ではゼリー系の行動食が重く、食べ物寄りにすればよかったと感じています。夏でも山の上は寒く、荷物の重さは体にこたえる。冬ならなおさらです。

この記事では、食べ物ごとに冬にどうなるかと、凍らせない入れ場所の運用を、食品の成分データやメーカーの情報をもとに整理しました。雪の無い低山に出かける人にも役立つ内容にしています。

  • 雪の無い冬の低山でも行動食が凍る理由と気温の目安
  • 水分量と糖の濃さで凍りやすい食べ物を見分ける方法
  • おにぎり・ゼリー・チョコ・ようかんが冬にどうなるかと持ち方
  • 必要カロリーの見積もり方と保温ボトルを持つかの判断

雪の無い冬の低山でも朝や日陰で行動食は凍る

結論から言うと、雪の無い冬の低山でも、朝や日陰、休憩中には行動食が凍る温度になることがあります。標高600m前後の山でも、真冬の最低気温は氷点下になる計算です。「雪が無いから大丈夫」と考えず、凍る前提で選んで持つのが安全かなと思います。

例として、東京近郊の高尾山(標高599m)の山頂の気温を見てみます。ふもとの八王子の平年値から、高度で換算した概算です。

月山頂換算の日最高山頂換算の日最低
12月約8.6℃約-2.3℃
1月約6.2℃約-4.9℃
2月約7.2℃約-4.0℃

日中に歩いていれば、汗ばむくらいの気温です。それでも朝の出発時や、山頂で止まった休憩中は氷点下の空気にさらされます。北斜面や谷筋の日陰は、この表よりさらに冷えることもあります。

食べ物側の目安も見てみます。パンは約-2℃、水は0℃で凍り始めるとされ、どちらも上の表の範囲に入ります。しかも、ごはんやパンが冷えて硬くなる変化は、0℃より上でも進みます。凍らなくても、冷えるだけで食べにくくなる食品があるわけです。

ザックの外ポケットや雨蓋は、外気と同じ温度帯になります。風が強いと体感はぐっと下がりますが、食品の温度は気温と日差し、体温で決まります。体から離れた場所ほど、気温どおりに冷えると考えておけばOKです。

僕は初めての富士登山で山頂の寒さをなめていて、ご来光を待つあいだは本当に寒い思いをしました。登り始めは暑いのに、止まった途端に冷える。冬の低山の休憩でも、同じことが起きるかなと思います。

ゴウ
ゴウ

雪が無い山なら、食べ物まで凍るなんて思わなかったよ。

僕も最初はそう思っていました。止まって休んでいる時間がいちばん冷えるみたいですよ。

りょう
りょう
ゴウ
ゴウ

じゃあ、何を持っていけば凍らないのか知りたいな!

食べ物ごとに、一緒に確かめていきましょう。

りょう
りょう

気温の換算はあくまで概算です。出かける前に、山域の天気予報や登山口の気温を確認してくださいね。

冬山の行動食のおすすめは凍りにくい高カロリー固形

冬の行動食の主力には、ナッツ・ようかん・栄養補助食品のバーのような、水分が少なく高カロリーな固形がおすすめです。凍って固まる心配が小さく、同じ重さで運べるエネルギーも多いからです。おにぎりやゼリー飲料は、主力ではなく脇役に回します。

主な候補を、冬の凍りにくさと注意点で並べるとこうなります。

種類代表例1gあたりのエネルギー冬の凍りにくさ注意点
栄養補助食品のバーカロリーメイト ブロック約5kcal凍って固まる心配が小さい口の水分を取られる
長期保存ようかん井村屋 えいようかん約2.9kcal糖が濃く凍りにくい甘さの好みが分かれる
ナッツ・柿ピーアーモンドなど約6kcal凍らない塩分・脂質が多い
ドライフルーツ干しぶどうなど約3.2kcal水分が少なく凍りにくい冷えると硬く感じることも
チョコレートミルクチョコなど約5.5kcal凍らないが硬く割れやすい小粒・薄板が食べやすい
ゼリー飲料inゼリー エネルギー約1kcal凍る・溶けても戻らない重い。疲れたときの保険
おにぎり・パンコンビニのおにぎりなど約1.6〜2.5kcal凍る・冷えて硬くなる温める手段がある昼食向き

表を見ると、凍りにくい食品ほどエネルギー密度も高いと分かります。ナッツやチョコは100gあたり550〜609kcalで、ごはんの約4倍です。冬は防寒着や保温ボトルで荷物が増えるので、軽くて凍りにくい固形を主力にすれば、重さと凍結の悩みが同時に減ります。

僕が夏の槍ヶ岳に行ったときは、ウィダーinゼリーとカロリーメイトを多めに持っていきました。ただ、ゼリー系は思った以上に重かったです。次からは食べ物寄りにしようと決めた失敗談で、冬はこの考え方がさらに大事になるかなと感じています。

カロリーメイト ブロックは1本100kcalで、メーカーも「エネルギー量の計算がしやすい」と説明しています。必要なカロリーから本数を逆算しやすく、主力の1つに置きやすい行動食です。口の水分を取られるので、温かい飲み物とセットで考えておくと食べやすいですよ。

カロリーメイト ブロック

1本100kcalで量を計算しやすく、水分が少ないので冬でも凍って固まる心配が小さい行動食

凍りやすさは水分量と糖の濃さで決まる

食べ物が凍るかどうかは、水分が多いかと、糖や塩が濃いかの2つでおおよそ判断できます。水が多いほど凍る材料が多く、糖や塩が濃いほど凍り始める温度が下がるからです。後者は「凝固点降下」と呼ばれる性質です。

日本食品標準成分表の値で、行動食に使う食品の水分を比べてみます。(出典:文部科学省『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』)

食品(100gあたり)水分エネルギー冬の傾向
ごはん60.0g156kcal凍る・冷えて硬くなる
もち44.5g223kcal冷えて硬くなる
食パン39.2g248kcal凍る・冷えてパサつく
練りようかん26.0g(推計値)289kcal糖が濃く凍りにくい
干しぶどう14.5g324kcal凍りにくい
アーモンド4.7g609kcal凍らない
ミルクチョコレート0.5g550kcal凍らないが硬くなる

並べてみると、水分がおおむね30gを下回る食品が、凍りにくい側に集まっています。例外的なのが練りようかんです。水分は少なくないものの、砂糖と水あめで糖がとても濃い。同じようかんでも、水ようかんは練りようかんの約2倍の水分があり、扱いが変わります。

硬くなる仕組みは3つ

1つ目は、水分が凍ってカチカチになる変化(ごはん・パン・ゼリー飲料)。2つ目は、デンプンが冷えて硬くなる「老化」(ごはん・もち・パン)。3つ目は、脂が冷えて固まる変化(チョコ・チーズ)。2つ目と3つ目は、凍らなくても起きます。

お店で迷ったら、しっとりしたものほど凍りやすく、乾いたものと甘く練ったものは凍りにくいと覚えておけば十分かなと思います。細かい数値を覚えなくても、この感覚で大きく外すことは少ないはずです。

冬山でおにぎり・ゼリー・ようかんは硬くなる?

答えは食べ物によって分かれます。おにぎり・パン・ゼリー飲料は凍って硬くなり、山の中で溶かしても元の食感には戻りにくいです。チョコは凍らないものの冷えると硬くなり、ナッツとようかんは氷点下でも硬くなりにくい側です。

水分の多いおにぎり・パン・ゼリー飲料は凍りやすく、ナッツ・ようかん・栄養補助食品は硬くなりにくいと左右で対比した図
食品氷点下で起きること冬の扱い
おにぎり・パン凍る+冷えて硬くなる行動中の主食には不向き
ゼリー飲料凍るとゼリー感がなくなる保険に1〜2個だけ
チョコレート脂が固まり硬く割れやすい小粒・薄板を先に割る
ナッツ・ようかん硬くなりにくい主力にできる
ゴウ
ゴウ

凍っちゃったおにぎりも、ポケットで温めれば元に戻るんじゃないの?

僕もそう思っていたんですが、元の食感には戻らないみたいですよ。

りょう
りょう
ゴウ
ゴウ

へえ、そうなんだ!どうしてなのか知りたいな。

食べ物ごとに、詳しく見ていきましょう。

りょう
りょう

おにぎりとパンは冷えて硬くなり凍ると戻らない

おにぎりとパンは、凍る前から冷えるだけで硬くなり、山の中で一度凍ると、自然に溶かしても食感は戻りにくいです。ごはんやパンのデンプンは、冷えると「老化」して硬く、パサパサになります。この変化は0℃より上でも進みます。

炊飯器メーカーの三菱電機は、冷凍ごはんの自然解凍は不可としています。理由は、解凍に時間がかかるとデンプンの老化が始まり、おいしさが落ちるから。凍らせて溶かすのを繰り返すと老化が早まる、という研究機関の報告もあります。

これを山に当てはめてみます。ザックの中でゆっくり冷えて凍り、ポケットでゆっくり溶ける。この流れは、まさに老化が進む条件です。BE-PALの冬のトラブル例でも、おにぎりが凍った、パンが食欲をなくすほどパサパサになった、という失敗が紹介されています。

老化したデンプンは、加熱し直せば柔らかさが戻ります。そのため、ごはんやパンは行動中の主食より、温める手段がある昼食向きです。

夏の涸沢ルートでは、徳沢でロッジの朝食に間に合わず、持ってきたおにぎりで済ませたことがあります。夏の山ではおにぎりは手軽な定番ですよね。冬に持つなら、出発後の早い休憩で食べ切る前提にして、それまでは内ポケットに入れておくのが現実的かなと思います。

ゼリー飲料は一度凍ると元の食感に戻らない

ゼリー飲料は、一度凍ると、溶けても水っぽいまま元のゼリー感には戻りません。森永製菓のinゼリーについての回答では、成分は概ね変わらないものの、ゼリー感がなくなるとされています。そのため冷凍は勧めていないそうです。(出典:森永製菓『「inゼリー」を冷凍してもいいですか?』)

inゼリー エネルギーは1袋180gで180kcal。重さの大半は水分で、計算上は約7割以上を占めます。水分が多く、糖もそれほど濃くない食品なので、氷点下では凍る前提で扱うのが無難です。

それでもゼリー飲料には、疲れて固形が喉を通らないときでも飲み込める良さがあります。そこで冬は、保険として1〜2個だけ内ポケットに入れるのがちょうどいい持ち方。主力にすると重いうえに、凍って飲みにくくなります。

inゼリー エネルギー

疲れて固形が入らないときの保険に。冬は凍らないよう内ポケットで持つのが前提

チョコは凍らないが冷えると硬く割れやすい

チョコレートは凍りはしませんが、冷えると硬く割れやすく、口どけも悪くなります。ミルクチョコの水分は100gあたり0.5gで、凍るための水がほぼありません。冷えて起きるのは、ココアバターという脂が固まる変化です。

やっかいなのは温度の変化です。冷えたチョコを急に暖かい場所へ移すと表面が結露し、白い粉をふいたようになります(シュガーブルーム)。体温で溶けかけてから再び冷えると、脂の結晶が粗くなるファットブルームも起きます。どちらも食べられますが、風味は落ちます。

冬に持つなら、薄い板や小粒タイプが食べやすいです。板チョコは出発前に割っておき、口の中で温めながら食べればOK。山小屋や車内に入った直後は袋を開けず、しばらく温度をなじませると結露を抑えられます。

ナッツ・ようかんは氷点下でも硬くなりにくい

ナッツとようかんは、氷点下でも硬くなりにくく、冬の行動食の主力にできる食べ物です。アーモンドの水分は100gあたり4.7gしかなく、凍る水がほとんどありません。冷えても食感があまり変わらないのも、外で食べるうえでありがたい点です。

ようかんは事情が少し違います。練りようかんの水分は26.0g(推計値)と少なくありませんが、糖がとても濃い食品です。和菓子の凍結点は-12〜-45℃のあいだで観測された、という研究資料があります。冬の低山の気温なら、凍り始めにくい側と考えてよさそうです。

ようかんの冬の実測データは商品ごとには公表されていないので、極端に冷え込む日は過信しないでくださいね。

長期保存タイプの井村屋 えいようかんは、1本60gで171kcal、賞味期間は5年6か月とされています。普段のザックに非常食として入れっぱなしにしやすいのも利点。甘さの好みは分かれるので、一度家で食べてから持っていくと安心です。

井村屋 えいようかん

1本60g・171kcal。糖が濃く凍りにくいうえ、長期保存できるので非常食も兼ねられる

ナッツは脂質が多く、柿ピーや塩味付きのものは塩分も多いので、大袋のままではなく1回分ずつ小分けにしておくと食べすぎを防げます。干しぶどうなどのドライフルーツも、水分が少なく凍りにくい仲間。ただ冷えると粘りが増して硬く感じることがあるので、ナッツと混ぜて持つと食べやすいかなと思います。

素焼きミックスナッツ(無塩・無添加)

水分がほぼ無く凍らない、冬の行動食の主力。無塩なので小分けにして少しずつ食べやすい

行動食を凍らせない入れ場所と分け持ち方

行動食を凍らせるかどうかは、入れ場所でほぼ決まります。次の休憩までに食べる分だけを体に近いポケットへ入れ、残りはザックの中心や背中側にしまいます。基本は「外気から遠く、体に近く」。休憩のたびに、ザックからポケットへ補充していきます。

すぐ食べる分は体に近い内ポケットへ、残りはザックの中心・背中側に入れる行動食の分け持ち方を示した図
入れ場所温度の性質向く食べ物
肌に近い内ポケット(ベースレイヤー〜中間着)体温に最も近い凍りやすいもの・次に食べる分
ジャケットの胸ポケット・ヒップベルトのポケット外気と体温の中間凍りにくい固形のすぐ食べる分
ザックの背中側・中心部外ポケットより冷えにくい予備・昼食・保温ボトル
ザックの外ポケット・雨蓋・カラビナ吊り外気と同じ温度帯凍っても困らないもの

衣服のいちばん内側の空気は、快適なときで32℃前後とされています。ここなら、ゼリー飲料やおにぎりのような凍りやすいものも守りやすい。逆に雨蓋やカラビナ吊りは、外気と風に直接さらされる場所です。

僕が使っているミレーのサースフェー30+5は、雨蓋の小さい部屋が、移動中の非常食などを入れるのにちょうどいいサイズです。ただ冬は、その雨蓋がいちばん外気にさらされる場所になります。出し入れしやすい場所ほど冷えやすい点は、覚えておきたいところですね。

すぐ食べる分だけ体温に近いポケットへ

ポケットに入れるのは、次の休憩までの1〜2回分だけで十分です。内ポケットは容量が小さく、1日分を詰め込むと動きにくくなります。凍りやすいものほど内側へ。ナッツやようかん、バーのような凍りにくいものは、外側のポケットで問題ありません。

ザックの中は、外ポケットより中心や背中側のほうが冷えにくい場所です。昼食や予備の行動食、保温ボトルはここにまとめます。休憩でザックを開けたら次の分をポケットへ移す、と習慣にしておくと補給が途切れにくいですよ。

飲み物も考え方は同じです。非断熱のボトルは、背中側やジャケットの内ポケットに入れるのが冬山経験者の定番。樹脂ボトルはキャップを締めて逆さに入れると、口側が凍りにくいと言われています。出発時にぬるま湯を入れておくのも、凍るまでの時間を稼ぐ方法です。

小分けと先割りでグローブのまま食べる

冬は、1回分ずつ小袋に分け、包装に切れ目を入れておくだけで、グローブのまま食べやすくなります。大袋の行動食は、開け閉めのたびにグローブを外すことになりがちです。手が冷えるのが嫌で、補給そのものを後回しにしてしまう。冬に起きやすい失敗パターンです。

寒さで手指の皮膚温が15℃前後まで下がると、細かい作業がしにくくなるとされています。包装を開ける、ファスナーを引くといった動作も同じです。グローブを外す回数を減らせば、そのまま補給の回数を守ることにつながります。

硬くなるチョコやバーは、家で一口サイズに割ってから小袋へ。冷えて硬くなったものは割りにくく、歯にも負担がかかります。小粒にしておけば、口の中で温めながら食べられますよ。

−15℃前後まで冷え切った金属に素手で触れると、数秒で凍傷のリスクがある温度まで皮膚が冷えることがあります。行動食を出すためにグローブを外したときも、ストックやアイゼンの金具には素手で触れないでください。

冬の登山は何kcal必要?補給は小分けでこまめに

冬の登山で行動中に補うエネルギーは、「体重×行動時間×5」で消費量を見積もり、その7〜8割が目安です。冬は防寒着や雪道でこの値より増える方向に働くので、少し多めに持ちます。食べ方は、1〜2時間に1回の小分けが基本です。

体重と行動時間から行動食の量を見積もり、1〜2時間ごとに小分けで補給する流れを示した手順図

体重と行動時間から行動食の量を見積もる

計算の手順はシンプルです。体重60kgの人が6時間歩く日帰りなら、60×6×5で約1,800kcal。その7〜8割の約1,260〜1,440kcalを、行動食と昼ごはんで補う計算になります。朝ごはんで取った分は、ここから差し引いて考えます。

手順内容
1. 消費量を出す体重×行動時間×5(kcal)
2. 補給量を決める1の7〜8割(朝食で取った分は差し引く)
3. 冬の上乗せを考える防寒着・雪道・風・荷物の増加ぶん多めに
4. 持っていく量を決める予定の1.5〜2倍。すぐ効く糖分も別に用意

冬にこの値より増えやすい理由は、重い防寒着や冬靴で動きにくくなることと、雪や凍った道を歩く手間です。米国の寒冷地栄養の資料では、軍の所要量が温暖時3,200kcal/日に対し、寒冷時は4,500kcal/日とされています。

これは兵士の野外活動の数値で、一般の登山者にそのまま当てはまるわけではありません。それでも、寒い中で動くほど必要な量が増えることは読み取れます。

荷物の重さも関係します。もう1つの見積もり方「コース定数×(体重+ザック重量)」では、荷物が1kg増えるごとに消費量も上乗せされます。防寒着や保温ボトル、アイゼンで冬のザックが重くなるぶん、夏と同じ量では足りなくなりやすいわけです。

風も見逃せません。トムラウシ山遭難事故の調査報告書では、風速10m/sに逆らって歩くと、消費エネルギーが5割以上増えるとされています。吹きさらしの稜線や山頂を歩く日は、式の値より多めに持っておきたいですよね。

持っていく量は、予定の1.5〜2倍が目安とされています。余った分は非常食になるので、無駄にはなりません。カロリーメイトのように量の分かりやすい食品を混ぜておくと、どれだけ食べたかも数えやすいですよ。

ここでの数値は、あくまで一般的な目安です。体格や体力、持病によって必要な量は変わるので、気になる人はかかりつけの医師などの専門家にご相談ください。

寒い日は持っているのに食べない不足に注意

冬の補給でいちばん気をつけたいのは、行動食を持っているのに食べないことによるエネルギー不足です。米国の寒冷地栄養の研究では、兵士が食事の味に不満が無くても、必要量を満たすほど食べていなかったと報告されています。寒いと、食べること自体が面倒になるんですよね。

冬の山で補給が減る理由は、手がかじかむことと、寒くて休憩を短く切り上げることです。止まると冷えるので、つい歩き続けてしまう。だからこそ、止まらずに口に入れられる量を小分けにしておく運用が役に立ちます。

シャリバテの主なサイン

手足のしびれ、くらくらする、急に力が入らない、足がもつれる、判断力が落ちる。陥ってから補給しても、30分〜1時間ほどは動けない状態が続くとされます。

冬は、止まって回復を待つあいだに体がどんどん冷えます。お腹が空く前、疲れる前に少しずつ食べる予防が、夏以上に大事になるかなと思います。

飲み物も同じで、冬は喉の渇きを感じにくくなります。水が凍ってしまうことも、飲む量が減る原因です。保温ボトルのココアや甘酒のような温かくて甘い飲み物なら、水分と糖分を一度に取れますよ。

保温ボトルは重さに見合う?冬の低山の昼ごはん

休憩で温かい飲み物を取りたいなら、0.5L級の山専用ボトルは重さに見合うと僕は考えています。ただ、時間がたった保温ボトルの湯はカップめんには温度が足りません。昼ごはんは「温める手段を持つ」か「冷えても硬くならない物で済ます」かを、先に決めておくのがコツです。

ゴウ
ゴウ

山の上で温かいものが飲めたら、ほっとするよね。でも重くないの?

そこなんですよね。僕も軽さは気になるので、一緒に数字で確かめてみましょう。

りょう
りょう
用品6時間後の保温効力(公式)本体の重さ満水時の重さ(計算)
山専用ボトル 0.5L(サーモス FFX-502)77℃以上約0.28kg約0.78kg
山専用ボトル 0.9L(サーモス FFX-902)80℃以上約0.39kg約1.29kg
スープジャー 0.5L(サーモス JBR-501)63℃以上約0.3kg―

このカタログ値は、室温20℃で熱湯を満量入れ、開け閉めせずに6時間置いたときの温度です。氷点下の屋外で、少ない湯を何度も注ぐ山の使い方は、試験より不利になります。使う前に熱湯を入れて少し待つ「予熱」をすると保温力が上がる、とメーカーも案内しています。(出典:サーモス『ステンレスボトル FFX-502』製品情報)

同じ容量なら、カップ式のほうが直飲みキャップより冷めにくいのも覚えておきたい点。モンベルのアルパイン サーモボトル 0.9Lでは、カップ式81℃以上に対し、直飲みタイプは75℃以上です。冬に使うならカップ式を選ぶと安心ですね。

飲み物1杯を140mlとすると、0.5Lで3杯ほど取れる計算です。日帰りの低山で、休憩ごとに温かいものを1杯ずつ飲む使い方なら、この容量で足りる人が多いはず。ゼリー飲料を固形に置き換えて浮いた重さを保温ボトルに回すと考えれば、ULの考え方とも両立しやすいかなと思います。

僕は夏の涸沢で、標高2,300mを超えたあたりで汗が冷えて寒くなり、ヒュッテの温かいラーメンがちょうど良かった経験があります。夏でもそう感じたので、冬の休憩で温かいものを口にできる価値は大きいはずです。

注意したいのがカップめんです。日清食品は、調理方法にある「熱湯」は沸騰しているお湯を指し、95℃以下の保温湯ではめんがうまく戻らないとしています。保温ボトルの湯は、6時間後で80℃前後です。(出典:日清食品『調理方法の「熱湯」とは?』)

つまり保温ボトルの湯では、メーカーの想定どおりにカップめんは作れません。相性がいいのは、アルファ米やフリーズドライのスープです。アルファ米は水でも戻る設計なので、ぬるめの湯でも待ち時間で調整できます。カップめんを食べたいなら、バーナーで沸かすのが確実です。

僕も秋の穂高岳山荘のテント場では、カップで作った雑炊風の山ごはんをテントの中で食べました。お湯で戻すごはんなら、冷えて硬くなったおにぎりのような心配がありません。

バーナーを使う場合は、ガスの性質にも注意が要ります。ガス缶は冷えると気化しにくくなり、火力が落ちます。冬は低温向けのカートリッジを選び、使う前は缶をジャケットの中などで温めておくのが一般的な対策です。

ガス缶を火で温める、風よけで囲うといった使い方は、破裂のおそれがあるとメーカーや公的機関が注意しています。テントの中でのバーナー使用も、一酸化炭素中毒の原因になるので避けてください。

スープジャーは、朝に熱いスープや雑炊を入れて昼に食べる使い方です。ただ、同じ容量の山専用ボトルより冷めやすい点は知っておきたいところ。もちを使ったぜんざいや雑煮も冬の山ごはんの定番ですが、もちは冷えると硬くなるので、温める手段があってこその食材です。

昼ごはんは二択で決める

温める手段を持つ(バーナー・スープジャー)か、冷えても硬くならない食品(ナッツ・ようかん・バーなど)で済ませるか。出発前にどちらかを決めておくと、荷物と食べ物の組み合わせに迷いません。

保温ボトルの容量や仕様は、モデルや年式で変わることがあります。正確な情報は、購入前に各メーカーの公式サイトでご確認ください。

サーモス 山専用ボトル FFX-502

0.5Lで6時間後77℃以上(公式値)。日帰りの低山で、温かい飲み物を3杯ほど取りたい人向け

価格目安:6,600円(メーカー希望小売価格・税込)

冬の登山で行動食や飲み物が凍る問題のよくある質問

スポーツドリンクなら冬山でも凍りにくいですか?

残念ながら、水とほぼ同じ温度で凍り始めると考えたほうがいいです。一般的なスポーツドリンクの濃さから計算すると、凍り始めは約-0.5〜-0.6℃で、0℃の水とほとんど変わりません(計算上の目安です)。冬は保温ボトルに温かい飲み物を入れるか、非断熱のボトルを背中側や内ポケットに入れて持つのが安心ですよ。

冬の登山でもハイドレーションは使えますか?

使えますが、凍りやすい弱点があります。チューブは細く中の水が少ないので、本体より先に凍って飲めなくなることがあるんです。メーカーは、飲むたびに水を本体へ吹き戻すことを勧めています。チューブを服の内側に通す、予備のボトル(できれば保温ボトル)も持つ、といった備えをしておくと安心です。

凍ってしまったおにぎりは、山でどうすれば食べられますか?

ポケットで溶かしても、炊きたての柔らかさには戻りにくいです。ごはんのデンプンは加熱し直すと柔らかさが戻るので、バーナーでお湯を沸かせるなら温めて食べるのがいちばんかなと思います。温める手段が無い日は無理をせず、ナッツやようかんなど他の行動食でエネルギーを補ってください。

冬の登山では水分をどれくらい持てばいいですか?

国立登山研修所のテキストにある脱水量の簡易式「体重×行動時間×5ml」の係数を、寒い時期は3〜4に下げて見積もる方法があります。体重60kgで6時間なら、脱水量は約1,080〜1,440ml(式からの計算)。その7〜8割を補給の目安にします。冬は喉が渇きにくいだけで、水分が要らないわけではありません。体調によっても変わるので、あくまで目安として調整してくださいね。

ペットボトルにお湯を入れて凍結を防いでもいいですか?

熱いお湯は避けてください。飲料メーカーは、ペットボトルに熱いお茶などを入れると容器が縮んで中身がこぼれ、やけどのおそれがあると案内しています。入れるならぬるま湯までにして、背中側や内ポケットで持つのが無難です。熱い湯を持ち歩きたいなら、保温ボトルを使うと安心ですよ。

冬の登山で行動食を凍らせない要点まとめ

ゴウ
ゴウ

雪が無い山でも、食べ物は凍る前提で考えないとだね。

そうなんです。何を持つかと、どこに入れるかの2つを押さえておけば安心かなと思います。

りょう
りょう

冬の登山で行動食が凍る問題は、食べ物の選び方と入れ場所でほとんど防げます。最後に要点を振り返っておきます。

冬の行動食は水分の少ない高カロリー固形を選び、すぐ食べる分は体に近いポケットに入れ、小分けでこまめに食べるという要点の俯瞰図
  • 雪の無い冬の低山でも、朝・日陰・休憩中は行動食が凍る温度になることがある
  • 凍りやすさは水分量と糖の濃さで決まる。しっとりした物ほど凍りやすい
  • 主力はナッツ・ようかん・栄養補助食品のバーなど、水分の少ない高カロリー固形
  • おにぎり・パン・ゼリー飲料は凍ると戻らない。持つなら内ポケットで早めに食べる
  • すぐ食べる1〜2回分だけ体に近いポケットへ。残りはザックの中心・背中側
  • 補給量は体重×行動時間×5の7〜8割が目安。冬は多めに、1〜2時間ごとに小分けで
  • 保温ボトルは温かい飲み物用。カップめんは沸騰したお湯が前提

ここで紹介した数値は、あくまで一般的な目安です。商品の仕様や最新情報は、各メーカーの公式サイトでご確認ください。体調や持病に不安がある人は、最終的な判断を医師などの専門家にご相談くださいね。

絶対にこれが正解という話ではありませんが、凍る前提で準備しておけば、冬の山の休憩はぐっと快適になるはずです。軽さと安全のバランスを取りながら、冬の山を楽しんでください。

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