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アイゼン10本爪と12本爪の違い|残雪期・厳冬期の選び方

アイゼンの10本爪と12本爪の選び方。残雪期と厳冬期の違いと、まず登山靴の対応を確認する

こんにちは、YAMA-GO編集部のりょうです。関西を拠点に、北アルプスを中心にULスタイルで山を楽しんでいます。このブログ「YAMA-GO」では、実際に使ったギアのレビューや選び方、山のノウハウなんかを発信しています。

アイゼンを買おうとして、10本爪と12本爪のどちらにするかで手が止まっていませんか。たった2本の差なのに、重さも値段も用途の説明もまちまち。正直けっこう迷いますよね。

僕は残雪期の涸沢へ行ったとき、12本爪までは要らないと考えてチェーンスパイクを選びました。ところが雪が緩んだシャバ雪で思った以上に進みにくく、足元の装備を段階で考え直すきっかけになりました。

この記事では、10本爪と12本爪の構造の違いから、登山靴との相性、チェーンスパイクとの境目、季節ごとの選び方までを順番に整理します。読み終えるころには、自分の靴と行き先に合うアイゼンが絞り込めるはずです。

  • 10本爪と12本爪の差は本数より前爪まわりの作りにある
  • 本数より先に確かめたい登山靴の装着方式とサイズ
  • チェーンスパイクから12本爪までの境目は前爪の有無
  • 残雪期・厳冬期の選び方と迷ったときのレンタル活用

アイゼン10本爪と12本爪の違いは前爪の形にある

10本爪と12本爪の違いは、爪が2本多いか少ないかより、前爪とそのまわり(フロントブロック)の作りに表れやすいのがポイントです(減る爪の位置はメーカーで異なります)。どちらもつま先に前爪を持つ本格アイゼンで、前爪の無いチェーンスパイクとは別物です。

10本爪と12本爪のアイゼンを並べ、前爪まわりの作りに違いが出やすい点を比べた図
ゴウ
ゴウ

10本と12本って、2本違うだけだよね?爪が多いほうが滑りにくいの?

僕も最初はそう思っていました。でも調べてみると、本数より前のほうの作りが効いてくるみたいですよ。一緒に見ていきましょう。

りょう
りょう

まず押さえたいのは、両者の共通点です。どちらも前爪があるので、硬く凍った斜面でつま先を蹴り込めます。前爪の無い道具では、足裏を平らに置く歩き方しかできません。

モンベル(カジタックス)の LXT-10 と LXT-12 は、前爪の厚さ2.5mm・爪の長さ最大35mm・素材が共通です。同じメーカーなら、前爪そのものの性能に公表上の差はありません。

では、何が違うのか。差が出るのは、前爪のまわりに爪を何本並べるかと、その部分の長さです。この前側の作りが、合わせられる靴の大きさや斜面での安定感に効いてきます。

ちなみに前爪の向きは、本数とは別の軸です。一般登山や縦走用は横向きの板状の前爪が主流で、雪面に面で効きます。縦向きの前爪は硬い氷向きとされ、一般登山なら横向きで足ります。

10本爪はフロントブロックが小さいとは限らない

「10本爪はフロントブロックが小さい」という説明をよく見かけます。ただ、全メーカーに当てはまる話ではありません。減っている2本の位置は、メーカーによって違うんです。

メーカー・モデル12本爪10本爪減っている2本の位置
グリベル G12 / G10前部8本+後部4本前部6本+後部4本前部(フロント側)
ペツル バサック / イルビス12本10本中足部とするレビューがある

グリベルは前部の爪を減らした設計で、10本爪は確かにフロント側がコンパクトです。一方のペツルは、中足部の2本の差とするレビューがあります。減らし方がそもそも違うわけです。

前部の爪が少ないと、前側のフレームを短くできます。そのぶん小さい靴に合わせやすくなるのが、10本爪の大きな存在理由。ペツルのイルビスも、小〜中サイズの靴に合うよう前部がコンパクトとされています。

なので「10本爪は前が弱い」と一括りにせず、気になるモデルの爪の配置を確かめてみてください。公式の図や説明を見ると、どこが削られているかが分かりますよ。

重さの差は小さくULでも12本爪は候補になる

UL志向の僕としては、軽い10本爪につい惹かれます。ただ実際に数字を並べると、重さの差は思ったより小さいんです。

比較(ペア)10本爪12本爪差
モンベル LXT(ベルト式)770g825g55g
グリベル ニュークラシック EVO806g964g約160g

片足に直すと、差は数十グラム程度。冬靴は片足800g〜1kg以上あるので、足元全体で見ればごく一部です。軽さだけを理由に10本爪を選んでも、歩いて分かるほどの差にはなりにくいかもしれません。

価格もほぼ横並びです。モンベルのベルト式同士なら、10本爪が16,390円、12本爪が17,490円。差は1,100円なので、値段で選ぶ理由もあまりありません。

行き先が前爪を必要とするなら、ULでも12本爪を外す理由は少ないと思います。軽さは削れるところで削り、足元の安全は残す。僕はそういうバランスで考えています。

本数より先に登山靴の装着方式を確認する

アイゼン選びで最初に決めるのは、本数ではなく手持ちの登山靴が対応する装着方式です。方式が靴に合わなければ、10本爪でも12本爪でも安全には使えません。

登山靴のコバの位置からベルト式・セミワンタッチ・ワンタッチのどれが使えるかを判断する流れ図

よくある失敗が、靴を確かめずにワンタッチ式を買い、コバが無くて付けられないケース。アイゼンを先に買い、後から選んだ冬靴と方式が合わなかったという話もあります。順番は「靴→アイゼン」と覚えておくと安心ですよ。

ベルト・セミワンタッチ・ワンタッチの違い

装着方式は3つあり、違いは靴への固定のしかたです。それぞれ、靴に求めるコバ(靴底のふちの張り出し)も変わります。

装着方式固定の仕組み必要なコバ着脱の速さ
ベルト式(C1)前後の樹脂ハーネス+ナイロンテープ不要遅い
セミワンタッチ(C2)つま先はハーネス、かかとはレバーかかと中くらい
ワンタッチ(C3)つま先は金属のトゥベイル、かかとはレバーつま先とかかと速い

ベルト式はコバが要らないぶん、合わせられる靴の幅が広いのが強みです。そのかわり、テープを通して締めるので着脱に手間がかかります。寒さで手がかじかむ場面では、この差が地味に効いてきます。

ワンタッチ式は素早く確実に固定できる反面、靴との相性が出やすい方式です。モンベルの LXF-12 では、トゥベイルが靴のコバに20mm以上接していないと合わないとされています。

見落としがちなのが、本数によって選べる方式が変わる点です。モンベルの10本爪はベルト式(LXT-10)だけ。12本爪はベルト式・セミワンタッチ・ワンタッチの3方式がそろいます。

グリベルの G10 にはセミワンタッチ版と前後樹脂ハーネス版があり、メーカーごとに事情は違います。ワンタッチで素早く着脱したいなら、12本爪のほうが選択肢は広いと考えておくとよさそうです。

ちなみにモンベルの12本爪は、ベルト式17,490円・セミワンタッチ18,590円・ワンタッチ19,690円。値段に響くのは、本数より方式の違いのほうなんです。

手持ちの登山靴と足のサイズで付くか確かめる

付くかどうかは、靴を4つのポイントで見ると判断しやすくなります。

  • ソールの硬さ:曲がるソールの靴は不可。柔らかすぎる靴はアイゼンを破損させる恐れがあると、取扱説明書にも明記されている
  • コバ:かかとにあればセミワンタッチ、つま先にもあればワンタッチまで候補。無ければベルト式のみ
  • 靴底の長さ:足のサイズ(cm)ではなく、靴底の前後の長さ(mm)で見る
  • 幅とつま先の形:幅広の靴はワイド版、つま先が反った靴は柔らかい連結バーのモデルが合わせやすいとされる

ソールの硬さは、海外の販売店が使う B規格・C規格で整理すると分かりやすいです。Bは靴のソールの硬さ、Cはアイゼンの装着方式の区分。両者を近づけて選ぶのが安全側とされています。

靴の区分ソールの目安合わせやすい装着方式
B0曲がる3シーズン靴アイゼン不可
B1やや硬い4シーズン靴C1(ベルト式)
B2さらに硬い靴(コバはかかとのみが多い)C1〜C2
B3最も硬い靴(つま先・かかとにコバ)C1〜C3

足のサイズが小さめの人は、ここで10本爪が有利になります。同じモンベルのベルト式でも、対応する靴底寸法の下限は10本爪が205mm、12本爪が230mmです。(出典:モンベル公式『LXT-10アイゼン』)

12本爪は長さを最短にしても、前後の爪の間隔が詰まって合わない場合があります。モンベルのベルト式で選ぶなら、靴底が230mmに届かない小さめの靴は10本爪のほうが合わせやすいはずです。他メーカーやワンタッチ式は対応範囲が違うので、モデルごとの寸法表で確かめてください。

それでも、対応サイズ内なのに靴の形で付かない場合があると取扱説明書には書かれています。いちばん確実なのは、靴を店に持ち込んで実際に装着してみることです。

長さ調整は家で済ませる

靴とアイゼンの前後・上下に隙間が無いよう、連結バーの長さは山へ行く前に合わせます。現地で初めて付けると、寒さで手がかじかんで締められないこともあります。説明書を見ずに着脱できるまで、家で練習しておくと安心です。

チェーンスパイクから12本爪までの境目は前爪

滑り止めの装備を段階で並べると、いちばん大きな段差はチェーンスパイク・軽アイゼンと10本爪のあいだにあります。境目は本数ではなく、前爪があるかどうかです。

チェーンスパイク、10本爪、12本爪へと装備が段階的に強くなり、境目が前爪の有無にあることを示す階段図
ゴウ
ゴウ

チェーンスパイクにも爪がいっぱい付いてるよね。あれじゃだめなの?

実は僕、残雪期の涸沢でそれを試したんですよ。なかなか大変でした。どこで線を引くか、一緒に整理してみましょう。

りょう
りょう

10本爪と12本爪の差より前爪の有無が大きい

メーカーやレンタル業者の用途の説明を並べると、段階の違いがはっきりします。

段階前爪用途の説明向かない場面
チェーンスパイク無し冬の低山や夏の雪渓歩行向け(モンベル)急斜面・硬く凍った斜面・森林限界より上
軽アイゼン(4〜6本爪)無し夏の雪渓や冬の低山歩き向け(レンタル業者)前爪の蹴り込みが要る斜面
10本爪有り冬季の縦走向けの軽量型(モンベル)ソールが曲がる靴との組み合わせ
12本爪有り冬季の縦走からアルパインクライミングまで(モンベル)ソールが曲がる靴との組み合わせ

チェーンスパイクと軽アイゼンは、どちらも本格的な雪山には使わないよう明記されています。前爪が無いので、凍った急斜面でつま先を蹴り込めないからです。

一方の10本爪と12本爪は、どちらも前爪を持ち、できる動作は同じ。差は前部の支持点の数や、合わせられる靴の大きさといった範囲にとどまります。

まず「前爪が要る山か」を決め、要るなら10本爪か12本爪かを靴とルートで選ぶ。この順番だと迷いが減ります

涸沢のシャバ雪でチェーンスパイクに苦労した話

残雪期の涸沢へ向かう雪の斜面を登る登山者の後ろ姿
筆者撮影:残雪期の涸沢への雪の斜面

ここからは僕自身の話です。2021年のGW、5月6日〜7日に上高地から涸沢ヒュッテまで、2人で小屋泊の山行をしました。

足元はチェーンスパイク。ピッケルは持たず、12本爪までは要らないだろうという判断でした。本谷橋の手前では、雪渓の縁でかがんで滑り止めを付ける登山者を何人も見かけました。

本谷橋のまわりの河原は雪に埋まり、その先の涸沢直下は夏道がすっかり雪の下。広い雪の谷を、たくさんの踏み跡をたどって登っていきました。

チェーンスパイクの装着自体は、すんなりできました。苦労したのは、その後の雪の状態です。思いのほかシャバ雪で、とにかく進みにくかったんです。

見渡す限り白い斜面が続き、進んでいる実感を持てないのもつらかったですね。早朝に上高地を出て、涸沢ヒュッテに着いたのは13時ころでした。

緩んだ雪では、チェーンスパイクの裏に雪が団子状に付きやすくなります。爪も短いので、踏ん張りが効きにくい。僕が感じた歩きにくさは、まさにこの組み合わせだったと思います。

ヒュッテに着くと、別のパーティが雪崩に巻き込まれて捜索されていると聞きました。翌朝の下山中には、谷を埋める雪崩のデブリも目にしています。残雪期は雪の状態だけでなく、雪崩のリスクも現実にある季節です。

振り返ると、あのルートで朝の凍った急な雪渓を歩いていたら、前爪の無い足元では不安が残ったはずです。チェーンスパイクで足りるのは、傾斜が緩く凍っていない残雪まで。それもシャバ雪では団子になって歩きにくい、という前提つきです。これが、僕がこの山行から持ち帰った線引きです。

ちなみに2017年8月に奥穂高岳へ登ったときも、本谷橋から涸沢のあいだには8月頭なのに残雪帯がありました。涸沢からザイテングラートへの直登ルートには雪渓のトラバースがあり、そのときはアイゼン無しで通れました。ただ、時期によっては厳しい道だと感じています。

低山の雪道でも前爪付きが要る場面

低山の雪道なら、チェーンスパイクや6本爪の軽アイゼンで足りる場面が多いです。踏み固められた雪道や緩い雪渓は、まさにその守備範囲です。

ただし、低山だから前爪は要らないとは言い切れません。凍結した急斜面や、雪や氷と岩が混じった斜面があるルートでは、前爪付きのアイゼンが必要になります。

冬の低山は、思ったより冷え込みます。高尾山(599m)を麓の平年値から換算すると、12〜2月は山頂の日最低気温が氷点下になる計算です。

日中に緩んだ雪が冷え込みで凍れば、同じ道でも硬い凍結路に変わります。標高が低くても、北斜面や谷筋は冷気が溜まりやすいので要注意です。

行く前に最新の山の状況を確かめ、傾斜と凍り方で装備を決めるのがおすすめかなと思います。低山で前爪付きが必要か迷う道なら、無理に進まず引き返す判断も持っておきたいですね。

残雪期と厳冬期で何本爪が必要か

目安は、厳冬期の北アルプスのような高山なら12本爪、残雪期の一般ルート中心なら10本爪も選択肢です。ただし残雪期でも、朝の凍った急な雪渓を通るなら前爪付きは欠かせません。

残雪期は軽さ優先で10本爪も選択肢、厳冬期の北アルプスは12本爪が安心という季節別の選び分け

長野県警山岳遭難救助隊長も、残雪期の登山にはアイゼン・ピッケルなどの雪上装備が欠かせないと呼びかけています。季節の名前だけでなく、通る斜面の傾きと硬さで考えたいところですよね。

厳冬期の北アルプスなら12本爪が必要な理由

厳冬期については僕の体験ではなく、メーカーや専門の解説の位置づけをもとに整理します。

12〜2月の高山の稜線や凍結した急斜面では、前爪の蹴り込みが欠かせません。そのため12本爪が標準とされ、モンベルも12本爪を「冬季の縦走からアルパインクライミングまで」と位置づけています。(出典:モンベル公式『LXT-12アイゼン』)

12本爪は前部の爪が多いぶん、つま先側の支持点も多くなります。硬い斜面の下りやトラバースでも、接地する爪の数が多いのは心強いところです。

もう一つの理由が靴です。厳冬期は、保温材入りでソールが曲がらず、コバのある冬靴とセットで考えます。冬靴のコバがかかとにあればセミワンタッチ、つま先とかかとの両方にあればワンタッチも使えるので、着脱の速さや固定の確実さを取れる12本爪が選びやすくなります。

12本爪が基本になる山

厳冬期の森林限界より上の稜線、凍結した急斜面の登り下り、硬い雪の急なトラバース、岩稜混じりの雪稜。こうした条件がある山は、12本爪を基本に考えると安心です。ただし小さめの靴は、12本爪の対応靴底寸法に届かないことがあります(モンベルのベルト式なら12本爪は230mmから、10本爪は205mmから)。その場合は10本爪が現実的な選択肢になります。

残雪期で軽さを優先するなら10本爪も選択肢

残雪期の一般ルート中心で、靴が小さめ、または軽さを優先したい。そんな人には、10本爪も十分に候補になります。前爪があるので、急な雪の斜面にも対応できます。

残雪期の難しさは、一日の中で雪の状態が変わることです。涸沢(約2,300m)の気温を麓の平年値から概算すると、5月は日最高が約12.6℃、日最低が約-0.6℃になります。

朝は雪面が硬く凍り、日中は緩んでシャバ雪になる。同じルートでも、時間帯で必要な装備が変わる季節です。

だからこそ、軽さを優先する場合も前爪は残しておきたいところ。UL的に削るとしても、前爪のある10本爪までにとどめるのが、僕の考える安全とのバランスです。

樹林帯はチェーンスパイク、雪の斜面や稜線から前爪付きに履き替える2本持ちの人も多いようです。雪が団子状に付きやすい季節なので、アンチスノープレートの有無も確認しておくと安心ですよ。

前爪の引っ掛けで転ばないアイゼンの歩き方

アイゼンの事故を防ぐ基本は、両足の間隔を広めに取り、足を引きずらないことです。前爪は10本爪にも12本爪にもあるので、本数に関係なく同じ注意が要ります。

長野県警山岳遭難救助隊長は2023年春、アイゼンに絡む遭難事例が毎年多発していると注意を呼びかけました。挙げられている例は次のとおりです。(出典:長野県『山岳通信』春の特別号(2023年4月19日))

  • 前爪をズボンに引っ掛けて転倒・滑落する
  • 足首をひねって行動不能になる
  • 足がもつれて前爪をふくらはぎに刺してしまう
  • 前後の人との間隔が近く、振り上げた足が当たる
  • アイゼンを付けたままのシリセードで下肢を骨折する

取扱説明書にも、アイゼンを付けると引っ掛けて転倒する可能性が高くなると明記されています。慣れた道でも、アイゼンを履いた足は別物と思っておくくらいがちょうどいいかなと思います。

場面歩き方のポイント
平らな雪道両かかとの間に足がもう一つ入るくらい間隔を空ける
緩〜中程度の斜面斜度に応じて爪先を開き、足裏全体を雪面に置く(フラットフッティング)
トラバース山側の足は進行方向、谷側の足は下向きに開く。ピッケルは山側の手に持つ
急で硬い斜面の登りつま先を蹴り込んで前爪を効かせる(フロントポイント)
下り腰を落として重心を低くする

前爪を蹴り込む歩き方は、ふくらはぎへの負担が大きめです。フラットフッティングと片足ずつ交互に使うと、疲れにくいとされています。

転ばないための準備

スパッツ(ゲイター)を着けて、ズボンの裾が爪に掛からないようにします。爪の裏に付いた雪の団子は、ピッケルやストックで叩いて落とします。放置すると爪が効かなくなるからです。

そして何より大切なのが、雪の斜面に出る前の練習です。平らな場所で両足が絡まないか試し、すり足にならない歩き方を体に覚えさせておきましょう。不安があれば、講習会や山岳ガイドに教わるのも一つの方法です。

10本爪か12本爪か迷うなら最初はレンタル

どちらにするか決めきれないなら、最初はレンタルで試してから買うのがおすすめです。実際に履いてみると、自分の靴や歩き方との相性が分かります。

ゴウ
ゴウ

借りるのと買うのって、どっちが得なの?

行く回数しだいみたいですよ。料金を並べて、一緒に比べてみましょう。

りょう
りょう

やまどうぐレンタル屋の料金(2026年10月時点・通常ページの税込)を例に並べてみます。

品目1泊2日2泊3日
チェーンスパイク/軽アイゼン(6本爪)3,000円4,000円
10本爪 グリベル G10ワイド5,000円6,000円
12本爪 グリベル エアーテック系・BD セラッククリップ5,000円6,000円
12本爪 グリベル G12 EVO6,000円7,000円

同じ店でも、10本爪と12本爪の料金差は1泊2日で0〜1,000円。モデルによっては同額です。料金で迷うより、行き先と靴で選んでかまわない差です。

冬用登山靴とアイゼンをセットで借りると、アイゼンは靴のサイズに合わせて調整済みで届きます。単品で借りる場合は、自分の靴のメーカーとサイズを伝えて調整してもらう形もあるようです。

買うかどうかの目安は、使う回数です。モンベルの LXT-12 は17,490円で、G12 の1泊2日レンタルのおよそ3回分にあたります。

年に数回以上は雪山へ行くなら購入、まず試したいならレンタル。この線引きが一つの目安になりそうです。

買う段階になったら、先に確かめた靴の装着方式に合うモデルから選びます。たとえばグリベルは、10本爪の G10 と12本爪の G12 に前後樹脂ハーネス版とセミワンタッチ版がそろっています。靴に合わせて選び分けやすいシリーズです。

グリベル G10 アイゼン(10本爪)

前部の爪を減らしてコンパクトにした10本爪。前後樹脂ハーネス版とセミワンタッチ版があり、小さめの靴とも合わせやすい選択肢です。

グリベル G12 アイゼン(12本爪)

前部8本+後部4本の12本爪。前後樹脂ハーネス版とセミワンタッチ版があり、厳冬期の高山や凍結した急斜面も視野に入れるなら候補になります。

買って後悔しやすい例

靴を確かめずにワンタッチ式を買い、コバが無くて付かない。対応靴底寸法を確かめずに小さい靴へ12本爪を買い、最短に縮めても合わない。この2つは特に避けたい失敗です。

スペックや価格は変わることがあるので、正確な情報は各メーカーの公式サイトや取扱説明書をご確認ください。ルートに合う装備に迷ったら、最終的な判断は登山用品店のスタッフや山岳ガイドなど専門家に相談するのが確実です。

アイゼン10本爪・12本爪のよくある質問

普段のトレッキングシューズに10本爪や12本爪は付けられますか?

ソールが硬い重登山靴クラスの3シーズン靴なら、ベルト式を付けられることがあります。かかとにコバがあれば、セミワンタッチも候補です。ただしソールが曲がる軽量靴に強く締めると、破損や脱落のリスクが上がります。付けられても保温材の無い靴は、氷点下の稜線で足先が冷えやすい点にも注意してください。

6本爪の軽アイゼンで残雪期の北アルプスに行けますか?

6本爪の軽アイゼンには前爪が無く、レンタル業者も本格的な雪山登山には使用不可としています。残雪期でも、朝の凍った急な雪渓や雪稜を通るルートなら、前爪付きのアイゼンを選ぶのが安心です。山小屋や公式の最新情報でルートの状態を確かめてから判断してください。

アイゼンを付けたまま岩場や土の道を歩いても大丈夫ですか?

取扱説明書では氷雪上専用とされ、氷雪以外で使うと爪が折れ曲がる恐れがあります。アンチスノープレートが傷つく原因にもなります。雪が途切れて岩や土が続く区間では、外して歩くのが基本です。

アンチスノープレートは必要ですか?

あったほうが安心です。爪の裏に雪が団子状に付くと爪が効かなくなり、雪が緩む残雪期は特に起きやすくなります。モンベルの場合は別売で、LX-10用2,200円・LX-12用2,420円が公式に関連商品として掲載されています。同梱かどうかはモデルで違うので、購入時に確認してください。

使い終わったアイゼンの手入れはどうすればいいですか?

使用後は水洗いして乾かし、市販の防錆油を塗っておきます。爪が摩耗したら金工ヤスリで削り、毎回の使用前に爪やハーネスのひび・変形、テープのほつれを点検しましょう。持ち運ぶときは左右の爪を内側に重ねて収納袋に入れると、ザックやウェアを傷めません。

まとめ:10本爪か12本爪かは靴と行き先で決まる

アイゼン選びの要点を、装着方式の確認、前爪の違い、季節別の選び方、迷ったらレンタルの順に俯瞰した図
ゴウ
ゴウ

2本の差より、前爪と靴のほうが大事だったんだね。

そうなんです。僕も涸沢で、足元の装備を段階で考え直しました。

りょう
りょう

10本爪と12本爪の違いは、本数そのものより前爪まわりの作りや合わせられる靴の大きさに表れます(減る爪の位置はメーカーで異なります)。選ぶ順番さえ押さえれば、自分に合う1本は自然と絞り込めますよ。

  • 最大の境目は前爪の有無。チェーンスパイク・軽アイゼンと10本爪のあいだに大きな段差がある
  • 選ぶ順番は「登山靴の装着方式→行き先→本数」。方式が合わないと本数に関係なく使えない
  • 厳冬期の高山や凍結した急斜面なら12本爪、残雪期の一般ルートで靴が小さめ・軽さ優先なら10本爪も候補
  • 重さ・価格の差は小さい。小さめの靴は対応靴底寸法を確認(モンベルのベルト式なら12本爪は230mmから、10本爪は205mmから)
  • チェーンスパイクで足りるのは傾斜が緩く凍っていない残雪まで。迷ったらレンタルで試してから買う

数値はあくまで一般的な目安です。山の状況は年や日によって変わるので、出発前に公式情報を確かめ、無理をせず引き返す判断も持っておいてください。

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