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登山用フリースの選び方|厚さと生地の違いと稜線で寒かった実例

薄手グリッドフリースを着た登山者と、厚さ・生地・サイズ感の選び方のポイント

こんにちは、YAMA-GO編集部のりょうです。関西を拠点に、北アルプスを中心にULスタイルで山を楽しんでいます。このブログ「YAMA-GO」では、実際に使ったギアのレビューや選び方、山のノウハウなんかを発信しています。

登山用フリースって、薄手と中厚手のどちらを買えばいいのか、正直けっこう迷いますよね。お店に行くと厚さも生地も価格帯もばらばらで、決め手が見つからない。僕も最初はかなり適当に選んでいました。

そんな僕も、槍ヶ岳の2日目に雨と風で震えて、友人の上着を借りて凌いだことがあります。そこで学んだのは、フリースは暖かさではなく「どの場面で着るか」で選ぶということでした。

この記事では、厚さと生地の違い、重ね着前提のサイズ感、街着フリースで代用できる線引きまで、買う前に決めるべき順番で整理します。

  • 最初の1枚に薄手グリッド系をすすめる理由と、その厚さの目安
  • オンスやg/m²に直してブランドをまたいで厚さを比べる方法
  • 同じMでも身幅が5cm変わる、重ね着前提のサイズ感の決め方
  • ユニクロの街着フリースで代用できる場面と、避けたい場面

最初の1枚は薄手グリッド系でいい

登山用フリースの最初の1枚は、行動中に着たまま歩ける薄手のグリッド系が扱いやすいです。生地の目安は約150〜200g/m²。止まってからの保温は、フリースではなくインナーダウンや化繊の保温着に任せます。

登山用フリースの最初の1枚として薄手グリッド系・目安150〜200g/m²をすすめ、行動中の保温と停滞時の保温を別のウエアに分ける役割分担を示した図解

つまずきやすいのは「暖かい方が安心だろう」と厚手を選ぶ流れ。登り始めて10分で暑くなり、脱いでザックに入れて終わりになります。いちばん着ない1枚が、いちばん重い1枚になってしまうわけです。

薄手なら、ベースレイヤーの上に着たまま登り続けられます。脱ぎ着の回数が減り、休憩のたびに汗で冷える場面も減らせますよ。

この記事で最初の1枚にすすめる薄手フリースは、行動中の保温着。寒い屋外で止まってからの防寒は別の1枚に任せる。この役割分けが選び方の土台になります。

選ぶ順番は役割→汗抜け→厚さ

厚さから入ると迷子になります。実際に決まる順番は役割 → 汗抜け → 厚さの3段。厚さは最初に決める変数ではありません。前の2つが決まってから、行き先の気温帯で決まる従属変数です。

  • その1枚を「歩いている間」に着るのか、「止まっている間」に着るのかを決める
  • 歩いている間に着るなら、汗をどう抜くか(グリッド・中空糸・アクティブインサレーション)で生地タイプを決める
  • 止まっている間に着るなら、同じ重さでどれだけ暖かいかが効くので、フリースより中綿の保温着が候補になる

この順番で考えると、店頭で「100と200のどっち?」と悩む場面がほとんど消えます。役割が決まっていないから厚さで迷う、というのが本当のところかなと思います。

夏の稜線にフリースはいらないか

夏でも、稜線を歩く行程なら薄手を1枚は持ちます。樹林帯中心の日帰り低山なら、持たない判断も成り立ちます。分かれ目は標高と風、そして停滞時間が読めるかどうかです。

ゴウ
ゴウ

夏の山にフリースって、暑くて着ないんじゃないの?

歩いている間はそうなんですよ。問題は、止まったときと風が出たときですね。

りょう
りょう
ゴウ
ゴウ

たしかに稜線は、急に風が強くなる日が多いよ。じゃあ、どこで線を引くの?

僕なりの線引きを、条件で分けて見ていきましょう。

りょう
りょう
「持たない」が成立しやすい行程「持たない」が危うい行程
樹林帯が中心で、稜線に長時間出ない森林限界を越えて風が直接当たる
行程が短く、長時間の停滞が起きにくい渋滞・道迷い・天候待ちで停滞時間が読めない
寒くなったらすぐ下山できるエスケープに時間がかかる

数字で見ると分かりやすいです。北アルプス・涸沢(標高約2,300m)の8月の日最低気温は、松本の平年値を高度換算した概算で約9.5℃。富士山頂の8月の平均気温は6.4℃、7月は5.3℃です。(出典:気象庁『過去の気象データ 平年値(富士山)』)

夏の3,000m級で朝晩が1桁台になるのは、異常気象ではなく平年の姿。日中の行動時間帯だけを見て「夏だからいらない」と決めると、朝夕と稜線の側で足りなくなります。

そこに風が乗ります。ある事故調査報告書が引く等価冷却温度の表では、気温10℃・風速8.9m/sで0℃相当。ただしこの表のもとになったのは、南極でさまざまな気温・風速のもとで水が何分で凍るかを測った実験です。衣類を着ている実際の山では、そのままの数字にはなりません。

低体温症の環境要因は、寒さ・風・濡れの3つとされています。日本の夏山は雨が絡む日が多く、3つ目が加わりやすい。だから「濡れたまま止まる時間を作らない」が、装備を決めるときの線引きになります。

雨具は防寒具ではない

トムラウシ山遭難事故の調査報告書は「雨具は防寒具ではない」と明記しています。薄い下着1枚の上に直接雨具を着ていると、強風時には肌と外気の間の断熱層が失われ、裸体に近い状態になるためです。雨具の下に乾いた1枚があるかが効いてきます。(出典:日本山岳ガイド協会 トムラウシ山遭難事故調査特別委員会『トムラウシ山遭難事故 調査報告書』(2010年3月1日))

では、その下に何があればよかったのか。同じ報告書は、自己判断でビバークして生還した人の理由のひとつに雨具の下にフリースを重ね着したことを挙げています。自主的にフリースやダウンのジャケットを着た人もいて、それが生死を分ける要因となったことも考えられる、と書かれています。

もうひとつ、こんな証言も残っています。「ガイドから特段の指示がなかった。予想されていたら私はダウンを着込んでいたと思う」。つまり、持っているだけでは足りないということ。寒くなってからではなく、寒くなる前に着るまでが中間着の使い方かなと思います。

槍ヶ岳2日目に上着を借りた話

2018年の8月末、新穂高温泉から槍ヶ岳へ1泊2日で登りました。初日は9時間ちょっとかけて槍ヶ岳山荘へ。問題は2日目でした。

朝の予報は曇りのち雨のち雷雨。ご来光の登頂はあきらめ、小雨のタイミングを見て7時に穂先へ向かいました。登り30分、下り20分。山頂は強風と雨で長居できず、記念撮影だけで下りています。

このときフリースかインナーダウンが欲しくてたまりませんでした。持っていたのは化繊の行動着とレインウェアだけ。結局、友人のジャケットを借りて凌ぎました。

夏でも槍の山頂は5度くらいまで下がります。下山も終日雨で6時間45分。動いていれば保てる体温が、止まった瞬間に成立しなくなる感覚を、身体で覚えた山行でした。

中間着は「使う頻度」ではなく「最悪ケースの想定」で持つ装備。あの日以来、僕はそう考えるようにしています。

停滞の保温はインナーダウンに回す

フリースとインナーダウンは、どちらが暖かいかを競う関係ではありません。役が違うので、2つの役を1枚に兼ねさせないのが基本になります。

フリース(行動保温着)インナーダウン・化繊(停滞保温着)
着るタイミング歩いている間、着たまま止まった瞬間に上から羽織る
通気生地に隙間があり抜ける(風も通る)表地で覆うので抜けない(風は止まる)
濡れ絞れば着られるが断熱は落ちるダウンは大きく落ちる。化繊は程度が軽い
行動中に着ると汗を通すので破綻しにくい汗でロフトを潰す典型的な失敗

2枚持つときの重量は、薄手フリースが270〜340g前後。化繊やダウンの保温着が160〜300g前後で、合わせて450〜650g程度が目安です。

決して軽くはありません。それでもこの2枚で、行動中と停滞のどちらも埋まります。UL志向でも、ここは削らずに残す部分かなと思っています。

富士山でも同じでした。8合目でも5度以下で、下では暑いと感じていたのに上では本当に寒い。ご来光待ちの山頂ではユニクロのウルトラライトダウンを着ている人が多く、寒がりの友人はフリースとダウンを重ねていました。

汗抜けで決まるグリッドフリースとハイロフト

行動中に着るならグリッド系、止まる時間が長いならハイロフト。生地タイプの分かれ目は、暖かさそのものではなく汗の抜け方にあります。

グリッドフリースとハイロフトフリースを比較し、それぞれの得意なことと注意したい点を左右に並べた図解

グリッドフリースは、肌側に格子状の凹凸を作った編み方です。ポーラテックの説明では、格子の溝が開いた空気の通り道になって通気を増やし、凸部が汗を吸って外側へ運びます。生地量を減らしながら空気層を確保できるのが強みです。(出典:Polartec 公式 Power Grid)

ハイロフトは毛足を長く伸ばして、生地自体に大きな空気室を作るタイプ。ポーラテックのフリース素材のなかで、重量あたりの保温性が最も高いとされています。もこもこした見た目のもの、と考えると分かりやすいです。

ただしハイロフトには風を通しやすく、毛羽が枝や岩に引っかかりやすいという弱点があります。動き続ける行程では、表面が滑らかなものの方が扱いやすいですよ。

生地タイプ得意なこと注意したい点
グリッドフリース行動中の汗抜け。軽さと保温の両立製品ごとに厚さの幅が大きい
平面のストレッチ系他のウエアとの滑り。重ね着のしやすさグリッドのような通気を増やす溝はない
ハイロフト同じ重さで最大の暖かさ。圧縮しやすい風に弱い。毛羽が引っかかる
ダブル織り(テックフェイス系)風・小雪・擦れへの強さ同じシリーズ内でも重くなる
アクティブインサレーション行動中の温度調節の幅が広い価格帯が上がる

汗冷えは夏でも起きます。2017年に上高地から涸沢へ入ったとき、標高2,300mを超えたあたりで汗が冷えて寒くなりました。ヒュッテで頼んだ温かいラーメンが、あのときはちょうどよかったです。

フリースは基本的に防風ではありません。防風をうたう製品は、タフタ裏地やダブル織りの表地など、フリース以外の層を足して実現しています。

季節と行き先で決まる厚さの選び方

厚さを決める材料は、行き先の日最低気温と風です。日最高気温では決めません。行動中は自分の発熱があるので、暑い側は薄手で足ります。

登山用フリースの薄手・中厚手・厚手を生地の目付・g/m²の目安と想定される使い方で整理した早見表。1オンスは約33.9g/m²という換算式も添えている

効いてくるのは、休憩・山頂・朝夕・稜線に出た瞬間の側。ここを基準にすると、厚さの判断がぶれにくくなります。

薄手と中厚手はどっちを選ぶか

3シーズン中心なら薄手、秋や残雪期にも行くなら中厚手。迷ったら薄手を先に買うのが、失敗の小さい順番かなと思います。

段生地の目安体感想定される使い方
薄手約150〜200g/m²(4.6〜5.9オンス)着たまま登り続けられる3シーズンの行動着。ベースレイヤーの上に1枚
中厚手約200〜240g/m²(5.9〜7オンス)登り始めは暑い。稜線や冬なら着たままいける秋冬の行動着、残雪期、寒がりの人の3シーズン
厚手約270g/m²以上(8オンス以上)歩くと暑くなりやすい冬の停滞着、山小屋やテントの中、街着

中厚手1枚で行動と停滞を兼ねようとすると、行動中は暑すぎ、停滞時は薄すぎる状態になりがちです。2役を1枚に兼ねさせない。これが厚さ選びの最初のつまずきを避ける方法になります。

残雪期はとくに難しい季節です。月別の平年値で見ると、日最高と日最低の差は約13℃。1枚で通す発想が成り立たないので、薄手の行動着に別の保温着を足す構成が前提になります。

2021年のゴールデンウィークに、上高地から涸沢ヒュッテへ入ったことがあります。残雪期の1泊2日。早朝に歩き始めて、小屋に着いたのは13時ころでした。歩いている間は暑くも寒くもなく、ずっと快適だったんですよね。

寒かったのは、小屋に着いてからの夜です。ナンガのダウンジャケットと、パタゴニアの化繊の保温パンツを持って行っていました。行動中の体感で厚さを決めない。残雪期は、この分け方がいちばんはっきり出ます。

厚さはg/m²に直すと比べられる

表記がばらばらでも、g/m²に直せば生地の目付をブランドをまたいで比べられます。1オンス(oz/yd²)は約33.9g/m²。この式ひとつで横並びになります。ただし同じ目付でも、毛足の長さや編み方、表地の有無で厚みや暖かさは変わるので、暖かさの比較は同じ系統の生地どうしにとどめてください。

公式のオンス表記換算 g/m²(概算)該当する代表例
4.6オンス約156g/m²平面ダブルニットの薄手フリース
5.7オンス約193g/m²中空糸のジャカードフリース
5.9オンス約200g/m²表面を織りで覆ったダブル織り
6.5〜6.9オンス約220〜234g/m²ポーラテック パワーグリッド系
8オンス約271g/m²ハイロフトのダブル織り
10.3オンス約349g/m²6mm厚のパイル・フリース

この換算値は計算で出した目安で、メーカーの公表値ではありません。ただしパワーグリッドの生地単体の公表値が6.6オンス=223.78g/m²で、製品側の表記とも整合します。ざっくり比べる用途なら十分に使えます。

「100・200・300」というポーラテック クラシックの数字も、もとはg/m²由来の命名です。100が最も薄く、300が最も厚い保温レイヤー向けと位置づけられています。

注意したいのは、「グリッドだから薄手」とは限らないこと。生地単体でも、Mid Warmthの125〜172g/m²からHigh Warmthの197〜231g/m²まで幅があります。一語で厚さは決まりません。

もうひとつ。製品重量は丈やフード、ジッパーの有無で変わるので、生地の暖かさの指標にはなりません。厚さを見るなら製品重量ではなく、生地のオンスかg/m²を見てくださいね。

関連記事:登山のレイヤリング基本|3層の役割と選び方

重ね着前提のサイズ感の決め方

重ね着の余裕は、サイズを上げるのではなくフィット区分で確保します。登山用フリースには、重ね着を前提にした区分がブランド側で用意されているからです。

登山用フリースを重ね着前提で選ぶときのサイズ決定手順を、胸囲の実測からサイズチャート照合まで4つのステップで示した図解

パタゴニアの公式定義では、スリム・フィットは「ベースレイヤーや薄手の中間着を着用する余裕は残したデザイン」。レギュラー・フィットは「厚手の中間着を着用できるゆとりのあるデザイン」とされています。

区分を見ずにサイズだけ上げると、袖丈や着丈まで一緒に伸びます。袖が手を覆う、裾がザックのヒップベルトに噛む。別の不都合が出てくるわけです。

想定内側中間(フリース)外側
3シーズンの行動中化繊かメリノの薄手薄手グリッド・中空糸フリース風が出たらウインドシェル、雨ならレインウェア
3シーズンの停滞・山頂同上上の1枚を着たままインナーダウンや化繊の保温着を上から重ねる
秋・残雪期の行動中中厚手のベース中厚手フリース、または表地付きのアクティブインサレーション同上
冬の停滞中厚手のベース中厚手フリース厚手の保温着

並べてみると分かるとおり、保温着はフリースの上から重ねる順番が前提です。だからフリース側で「上に何かを重ねる余裕」を取る必要は、基本的にありません。余裕を持たせるのは、外側のシェルと保温着の側ですね。

  • 胸囲を実測する(脇の下の位置で1周)。身長からサイズを推定しない
  • その1枚をレイヤリングのどこに置くか決める。上に厚手を重ねる前提ならスリム寄り、単体でも着るならレギュラー寄り
  • ブランドの規格を確認する。北米企画のブランドは日本の正規流通品でもUS規格が多く、おおむね日本規格より1サイズ大きめ。着丈が短く袖丈が長い傾向がある
  • その時点の公式サイズチャートの数値で照合する。ブランド横断の「いつものM」は当てにならない

ウェブ上には旧サイズチャートの数値が大量に残っています。二次的なまとめではなく、その時点のメーカー公式チャートで照合してください。

同じMでも身幅は5cm変わる

同じブランド・同じMでも、身幅は5cm変わります。公式の仕上がり寸法を並べると、これがはっきり見えてきます。

製品(メンズ)フィット身幅 S身幅 M身幅 L
R1 ジャケットスリム50cm53cm58cm
R1 エア・フルジップ・フーディスリム51cm55cm60cm
R2 テックフェイス・ジャケットスリム52cm55cm60cm
R1 テックフェイス・ジャケットスリム53cm56cm61cm
R1 エア・クルーレギュラー54cm58cm63cm
ベター・セーター・1/4ジップレギュラー52cm56cm61cm

スリムのR1ジャケットがMで身幅53cm、レギュラーのR1エア・クルーがMで58cm。いずれも平置きの寸法なので、胴まわりでは10cmの差になります。

「Mで失敗した」「Lでちょうどよかった」という感想が人によって食い違うのは、多くの場合この区分の違いを見ていないから。サイズ表記だけでは判断できないんですよね。

フードの有無も、サイズで調整しようとしないのがコツです。フーディはヘルメットや他のジャケットのフードと干渉するので、ヘルメット対応かどうかで選びます。

ユニクロで代用できるかの線引き

停滞着や下山後の着替えなら街着フリースで十分です。ただし行動着として山に持ち込むなら、登山用の生地を選びたいところ。線引きはここにあります。

街着フリースと登山用フリースの違いを、生地の目付や汗を抜く構造の公式説明の有無、価格帯で比較した図解
ゴウ
ゴウ

990円のフリースと2万円のフリース、そんなに違うものなの?

素材はどちらもポリエステルなんですよ。違うのは、汗を抜く作りが入っているかどうかですね。

りょう
りょう

ユニクロのフリースフルジップジャケットの公式素材表記はポリエステル100%です(カラーによりリサイクルポリエステル54〜100%)。綿やレーヨンは入っていないので、ヒートテック類のような「行動中は厳禁」という素材上の問題は起きません。

つまり低山の日帰りや気温の高い時期なら、街着フリースを中間着に使うこと自体は否定されないわけです。差が出るのは素材の種類ではなく、次の4点。

差が出る点何が起きるか
生地の目付が公表されていない薄手か中厚手かを数値で確認できず、行動着に使えるかを買う前に判断できない
汗を抜く構造が公式説明で確認できないグリッドの溝や中空糸のような、汗を運ぶ生地側の設計は公式説明に書かれていない
登山特有の当たりへの配慮が公式説明で確認できない肩の補強、脇の下の排熱、袖口の仕様といった作り込みは公式説明に書かれていない
取扱い表示の制約タンブル乾燥不可。濡れたときや摩擦で色移りする場合があるとの注意書きがある

とくに効いてくるのが最後の1点です。雨や汗で濡れた状態で他のウエアやザックに色移りするのは、山ではけっこう扱いにくいですよね。

区分価格帯(2026年9月・税込)
量販店の街着フリース990円〜
国内大手アウトドアの薄手〜中厚手6,800〜9,900円
ザ・ノース・フェイスの登山向けフリース14,850〜18,700円
パタゴニアのテクニカル・フリース14,300〜33,000円

見落とされがちですが、二択ではありません。ワークマンにはフリースベースウェア(約1,280円)やメリノテック アクティブインサレーション フーディ(約2,900円)といった中間の選択肢があります。

上の価格帯の表と並べると、おおむね1/2〜1/3の水準です(2026年9月時点で編集部が確認した公式価格での比較)。ただし耐久性や細部の作りは専門ブランドに劣る面がある、というのは押さえておきたいところです。

そもそも買わないという選択

インナーダウンや化繊の保温着をすでに持っているなら、フリースを買わない判断も成り立ちます。停滞用の保温は、そちらで足りるからです。

足りないのは行動中の1枚。そこは薄手のベースレイヤーを2枚重ねる、ウインドシェルを足す、といった形で一部は代替できます。

逆にいちばん危ういのが、フリースだけ持っていて保温着を持っていない状態です。フリースは風を止められないので、稜線の風下でじっと待つ場面では力不足になります。

手持ちの装備を並べて、行動中の1枚と停滞用の1枚がそろっているかを確認する。買う前にやると無駄が減ります。

定番のR1やR2を判断軸で比べる

R1とR2の違いは、ざっくり言うと厚さと表面素材。歩き続ける行程ならR1系、止まる時間が長い季節ならR2系という分け方になります。

パタゴニアR1ジャケット、ファイントラック ドラウトセンサージャケット、ザ・ノース・フェイス マウンテンバーサマイクロジャケットの3モデルの特徴・価格を並べて比較した図
製品(メンズ)生地重さ価格(税込)向く場面
R1 ウルトラライト・フーディ4.6オンスの平面ダブルニット280g27,280円夏〜秋の行動着。軽さ優先
R1 エア・クルー5.7オンスの中空糸ジャカード278g17,050円3シーズンの行動着。ゆとりのあるフィット
R1 テックフェイス・ジャケット5.9オンスのダブル織り337g27,720円風や擦れが想定される稜線
R1 ジャケット6.9オンスのパワーグリッド343g24,200円3シーズン全般の定番
R2 テックフェイス・ジャケット8オンスのハイロフトのダブル織り480g28,600円秋冬・残雪期。停滞が長い行程

R1ジャケットは、全面が同じ生地ではありません。脇の下・サイドパネル・袖下だけ4.5オンスのジャージーを配したハイブリッドで、胴の保温を保ちつつ余分な熱を逃がす作りです。

同じ軸は、ほかのブランドにも当てはめられます。価格順に眺めるのではなく、その1枚がどの判断軸に効くかで見ていきますね。

耐久性を重く見るなら、ファイントラックのドラウトセンサージャケット。100回の洗濯後も未使用品と同レベルの汗処理性能を保つ洗濯耐久性を公表している日本製で、春から秋の行動保温着という位置づけです。18,711円で310g。

価格を抑えたいなら、ザ・ノース・フェイスのマウンテンバーサマイクロジャケット。ザックのショルダーハーネスが当たる肩に、別の織り生地を配して補強しています。14,850円で約270g。

軽さを突き詰めるなら、山と道のAlpha Vest。前身頃だけにアルファダイレクトを使い、背中は薄い生地にして、ザックを背負ったときの蒸れを抑える構成です。9,500円でSサイズ69g。

まず手に取りやすさで選ぶなら、国内大手のモンベル。薄手のクリマプラス100ジャケットがあり、価格帯は抑えめです(8,400円・平均重量333g)。

パタゴニア R1 ジャケット(メンズ)

6.9オンスのパワーグリッドに、脇の下・サイドパネル・袖下だけ4.5オンスの薄いジャージーを配したハイブリッド。3シーズンの行動着として基準になる1枚です。

価格目安:24,200円(税込)

ファイントラック ドラウトセンサージャケット(メンズ)

3層構造で汗を運ぶ日本製の行動保温着。100回の洗濯後も未使用品と同レベルの汗処理性能を保つ洗濯耐久性が公表されています。

価格目安:18,711円(税込)

ザ・ノース・フェイス マウンテンバーサマイクロジャケット(メンズ)

肩を別生地で補強した約270gの薄手フリース。価格を抑えつつ最初の1枚をそろえたい人に。

価格目安:14,850円(税込)

価格や仕様は2026年9月時点で確認した値です。モデルチェンジで変わることがあるので、購入前に必ず公式サイトでご確認ください。

買う前に確認したい5つのこと

最後に、レジに向かう前の確認を5つだけ。ここを押さえておけば、大きな失敗はほぼ防げます。

  • その1枚を「行動中」に着るのか「止まってから」着るのかを先に決めたか
  • 生地の目付(オンス/g/m²)が製品ページに書いてあるか
  • フィット区分を確認し、胸囲の実測値をその時点の公式チャートと突き合わせたか
  • フードの有無とヘルメット対応、肩の補強や袖口の仕様を確認したか
  • すでに持っている保温着と役割が重なっていないか

買ったあとの扱いでも寿命は変わります。毛玉はニット系フリースの構造上の性質で、パタゴニアも製品ページに「この製品も例外ではありません」と明記しています。

裏を返せば、毛玉を適切に取り除けば寿命を延ばせるということ。グリッド系には、毛玉防止加工を施した生地を使う製品もあります。

手入れの制約も見ておきたいところです。乾燥機は低温まで、または不可の製品があり、柔軟剤不可の指定が入るグリッド系もあります。

洗濯についてはもうひとつ。研究では、1回目の洗濯で2回目以降の2倍量以上のマイクロプラスチック繊維が排出されると報告されています。一般的な0.4〜0.5mmメッシュの洗濯ネットでは、削減効果はみられませんでした。(出典:塩原みゆき ほか『ドラム式洗濯機によるフリース布洗濯でのマイクロプラスチックの排出』日本家政学会誌 73巻8号)

洗いすぎない、必要なときに洗う。この運用が、そのまま環境負荷の低減にもつながります。

最後は自分の行程で判断を

ここに挙げた数値は、あくまで一般的な目安です。同じ夏の稜線でも、行程や体質、当日の天候で必要な保温は変わります。価格や仕様は公式サイトで最新をご確認のうえ、判断に迷うときは専門店のスタッフや経験者にご相談ください。

登山用フリースの選び方でよくある質問

すでにインナーダウンを持っています。フリースも買うべきですか?

急ぐ必要はありません。埋まっていないのは行動中に着る1枚なので、そこが要る行程かどうかで決めてください。低山の日帰り中心なら、ベースレイヤーを2枚重ねる、ウインドシェルを足す、といった形で一部は代替できます。ただしウインドシェルは風を止めるだけで、保温そのものはほとんど足せません。稜線や小屋泊が行程に入るなら、薄手を1枚足す価値がありますよ。買う前に手持ちの保温着を並べて、役割が重なっていないかも確認してみてください。

フリースとインナーダウン、先に買うならどちらですか?

行き先によります。夏から秋の稜線や小屋泊で、まだ保温着を持っていないなら停滞用を先に。すでにウルトラライトダウンのような1枚があるなら、行動中に着られる薄手フリースが次の1枚になります。

グリッドフリースはベースレイヤーとしても使えますか?

使えます。グリッド生地はベースレイヤーにもミッドレイヤーにも使われる素材です。ただし製品によって厚さの幅が大きいので、肌に直接着るつもりなら薄手側の目付を選んでください。

フーディとクルーネック、どちらを選べばいいですか?

上に何を着るかで決まります。レインウェアやヘルメットを使う行程では、フードが重なって使いづらくなることがあります。首まわりの保温を優先するならフーディ、重ね着のしやすさを取るならクルーネックが扱いやすいです。

フリースは洗濯機で洗えますか?

多くの製品は家庭で洗えます。ただし乾燥機不可や柔軟剤不可の指定がある製品もあるので、必ず取扱い表示をご確認ください。洗いすぎると生地の風合いが落ちるので、必要なときに洗うくらいがちょうどいいです。

登山フリース選びは行動着か停滞着かで決まる

ゴウ
ゴウ

結局、最初の1枚はどう選べばいいんだっけ?

歩きながら着られる薄手のグリッド系。止まってからの保温は、別の1枚に任せる。そこだけ覚えて帰ってもらえれば十分です。

りょう
りょう

登山用フリースは、暖かさの順に並べて上から選ぶものではありません。どの場面で着るかを先に決めると、厚さも生地も自然に絞れます。

登山用フリースの選び方の要点を、最初の1枚は薄手グリッド系・厚さの目安・重ね着のサイズ決め・街着フリースの使いどころの4項目に俯瞰でまとめた締めのまとめ図
  • 最初の1枚は行動中に着られる薄手グリッド系。生地は約150〜200g/m²が目安
  • 生地の目付はオンスやg/m²に直せばブランドをまたいで比べられる(1oz/yd²=約33.9g/m²)
  • 夏でも稜線を歩くなら薄手を1枚。停滞用の保温はインナーダウンや化繊に回す
  • 重ね着の余裕はサイズではなくフィット区分で確保する。同じMでも身幅は5cm違う
  • 街着フリースは停滞着や下山後の着替えに。行動着に据えるなら登山用の生地を選ぶ

僕自身、槍ヶ岳で震えながら友人の上着を借りた経験があります。絶対にこれが正解という話ではありませんが、あの日の失敗が今の選び方の土台です。価格や仕様は公式サイトで最新をご確認のうえ、あなたの行程に合う1枚を見つけてくださいね。

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