こんにちは、YAMA-GO編集部のりょうです。関西を拠点に、北アルプスを中心にULスタイルで山を楽しんでいます。このブログ「YAMA-GO」では、実際に使ったギアのレビューや選び方、山のノウハウなんかを発信しています。
登山の服装を調べると、必ず出てくるのが「レイヤリング」。ただ3層の図を見ても、手持ちの服がどれに当たるのか、結局何枚着ればいいのかまでは分からないままですよね。
僕も最初はかなり適当に選んでいました。夏の槍ヶ岳で保温着だけ持たず、雨の山頂で震えた失敗もあります。この記事では3層の役割を手持ちの品目レベルまで落として、脱ぎ着のタイミングと買う順番までまとめます。
- ベース・ミドル・アウターの役割と、手持ちの服がどの層に当たるか
- 季節名ではなく気温帯から服装を逆算する手順
- 汗冷えを防ぐ、脱ぎ着の7つの合図
- 最初に買う3点の優先順位と、かかる金額の目安
登山のレイヤリングは3層と脱ぎ着が基本
レイヤリングの結論は、3層で役割を分け、こまめに脱ぎ着して体温を調節することです。汗を処理する層、保温する層、風雨を止める層。この3つが揃って初めて機能します。1つでも欠けると全体が崩れます。

ねえりょう、山の服って3枚も重ねるの?夏でも?
はい、夏でもです。着っぱなしにする3枚ではなくて、脱ぎ着する前提の3枚なんですよ。
へえ、そうなんだ!じゃあ何をどう分けるのか、一緒に見てみたいな
| 層 | 呼び方 | メーカー公式が挙げる役割 |
|---|---|---|
| 外側 | アウターレイヤー | 雨・風・雪などから体を守る |
| 中間 | ミドルレイヤー | 保温性を確保しながらウエア内をドライに保つ |
| 肌側 | ベースレイヤー | 肌表面の汗を素早く吸水拡散し、汗冷えを防ぐ |
モンベルの公式解説は、この3層で「衣服内気候を快適に保つ」と説明しています。あわせて状況に合わせてこまめに脱ぎ着することが重要だとも書かれています。3層は着方の話であり、同時に脱ぎ方の話でもあるわけですね。(出典:モンベル公式『レイヤリングシステム』)
ベース・ミドル・アウターの違いと順番
順番は肌側からベース、ミドル、アウターで固定です。役割が違うので、入れ替えても代用にはなりません。ベースは汗を肌から動かす層、ミドルは空気を抱えて保温する層、アウターは風と雨を止める層。ここは覚えてしまうのが早いです。
メーカーによっては5層で説明します。ファイントラックの5レイヤリングは、肌側に撥水インナー(L1)を足し、シェルを2枚に分けた数え方。3層と矛盾しているわけではなく、同じものを別の粒度で数えているだけです。(出典:ファイントラック公式『5レイヤリング』)
| 3層(モンベル公式) | 5層(ファイントラック公式) | 実際に手に取る品目 |
|---|---|---|
| (3層には無い) | L1 ドライレイヤー | 撥水メッシュインナー |
| ベースレイヤー | L2 ベースレイヤー | 速乾Tシャツ・長袖シャツ・タイツ |
| ミドルレイヤー(行動着) | L3 ミッドレイヤー | フリース・グリッドフリース |
| ミドルレイヤー(保温着) | L3 の厚い側 | インナーダウン・化繊インサレーション |
| アウターレイヤー | L4 ミッドシェル | ソフトシェル・ウインドシェル |
| アウターレイヤー | L5 アウターシェル | レインウェア上下 |
5層まで一気に揃える必要はありません。最初に足す価値があるのはL1のドライレイヤーだけで、シェルの二重化は厳冬期の話です。まずは3層を埋めるほうが先ですね。
何枚着るかは着る枚数と持つ枚数で決まる
「結局、何枚着ればいいの?」への答えは、枚数ではなく役割の充足です。とはいえ目安が無いと不安ですよね。着ている枚数とザックに入っている枚数を分けて数えると、この疑問はきれいに解けます。
| 場面 | 着ている枚数(上半身) | ザックの中 |
|---|---|---|
| 夏の低山・登り | 1枚(ベース)+ドライレイヤー | ウインドシェル/レイン上下/保温着 |
| 夏の稜線・休憩 | 2〜3枚(ベース+保温着、風があればシェル) | ― |
| 秋の登り | 1〜2枚(ベース+薄手フリース) | シェル/レイン上下/保温着 |
| 秋の稜線・休憩 | 3〜4枚(+保温着+シェル) | ― |
| 冬 | 2〜3枚(厚手ベース+行動保温着+シェル) | 保温着/レイン上下 |
表を縦に見ると、着ている枚数は季節が進んでも1〜2枚しか増えません。季節が進むと変わるのは、着る枚数よりも「何をザックに入れて上がるか」のほうです。夏でも保温着を持ち上がる理由が、ここにあります。
「何枚着るか」ではなく「何を持って上がるか」で考えると、季節が変わっても組み方は同じになります。
3層のうち2つの層が2役を兼ねている
3層モデルの落とし穴は、ミドルとアウターが1語で2つの役割を畳んでいる点です。ミドルは行動着と保温着、アウターは防風と防水。ここを分けないまま買うと、持っているのに使えない状態が起きます。

初心者にありがちな「レインウェアを着たら汗だくになった」「休憩でダウンを着たまま歩き出した」は、どちらもこの畳み込みが原因です。層の名前ではなくいつ着るかで分けると、選ぶときに迷いません。
行動着と保温着・防風と防水は別物
モンベルの公式解説も、ミドルレイヤーは行動着と保温着に分かれると明記しています。歩きながら着る行動着に要るのは、汗の透過性と速乾性。止まってから羽織る保温着に要るのは保温力です。求めるものが逆向きなんですよね。
| 区分 | 代表的な品目 | 着るタイミング | 求められる性能 |
|---|---|---|---|
| ミドル(行動着) | 薄手フリース・グリッドフリース | 歩きながら | 通気性・速乾性 |
| ミドル(保温着) | インナーダウン・化繊インサレーション(停滞用) | 止まってから | 保温力 |
| アウター(防風) | ウインドシェル・ソフトシェル | 風が冷たいとき | 防風性・軽さ |
| アウター(防水) | レインウェア上下 | 雨・強風のとき | 防水性(耐水圧) |
停滞用の厚手の保温着は、行動中に着るものではありません。ダウンを着たまま歩けば汗で濡れ、保温力が落ちます。休憩用に取っておきたい保温力を、歩きながら自分で潰してしまう形ですね。一方で、通気性を持たせた行動用の化繊インサレーション(いわゆる行動保温着)は、行動中に着続けられる保温着として作られています。同じ「保温着」でも、停滞用と行動用は別物として分けて考えてください。
防風と防水も別物です。ウインドシェルは風を止めますが、本降りの雨は通します。逆にレインウェアを防風着として常用すると、蒸れて内側が濡れます。モンベルのEXライト ウインド ジャケットは平均重量45g・収納0.4Lという軽さです。
この軽さが、こまめな脱ぎ着に向く理由になります。雨は降っていないが風が冷たい、という場面は山でいちばん頻度が高いですから。レインウェアで代用せず、防風は防風で1枚持つと快適さが変わります。
同じ防風でも、ウインドシェルとソフトシェルは性格が違います。脱ぎ着を繰り返すならウインドシェル、着っぱなしにしたいならソフトシェル。ソフトシェルのほうが暖かく、レインウェアより蒸れにくい代わりに、かさばります。
レインウェアは晴れでも持つ
モンベル公式は「晴れていても上下セットで必ず持参」としています。雨で体が濡れると低体温症の危険があるためです。傘やポンチョ、ビニールのカッパでは下半身が濡れて代わりになりません。
関連記事:登山用フリースの選び方|厚さと生地の違い
綿がダメな理由と手持ちの服の見分け方
綿が登山に向かない理由は、繊維の内部まで水を抱えてしまい、乾かないからです。濡れた衣類は熱を奪い続けます。汗をかく行動中には、この性質がいちばん効いてしまいます。

| 繊維 | 公定水分率 |
|---|---|
| ポリエステル | 0.4% |
| ナイロン | 4.5% |
| 綿 | 8.5% |
| レーヨン | 11% |
| ウール | 15.0% |
公定水分率は、温度20℃・湿度65%で繊維が含む水分の割合です。綿は8.5%、ポリエステルは0.4%。数字の差は小さく見えますが、乾く速さの体感はまったく違います。
米国国立公園局も「綿は水分を吸いやすく、濡れると暖かさを保てない」と明記しています。モンベル公式も「コットンやジーンズは乾きにくく、登山には向いていない」という書き方。綿のTシャツは層として成立しないと考えて差し支えないと思います。(出典:米国国立公園局(NPS)『Be Winter Ready For Your Adventure』)
ではウールはどうでしょう。公定水分率は15.0%と繊維の中で最も高いのに、濡れても冷えにくい素材として使われます。水蒸気を吸うときに熱を出す性質があるためです。ただし乾く速さは化繊に劣ります。
服装の失敗は、綿だけではありません。ただどの層で起きたかで並べ直すと、原因と対策が一対一になります。自分がどこでつまずいているのか、表で当たりを付けてみてください。
| 層 | よくある失敗 | 何が起きているか | 対策 |
|---|---|---|---|
| ドライレイヤー | そもそも無い | ベースが濡れて肌に張り付く | 撥水メッシュを1枚入れる |
| ベース | 綿のTシャツ | 繊維の内部に水を抱えて乾かない | 化繊かウールに替える |
| ベース | 汗をかいたまま着替えない | 濡れをリセットする機会を捨てている | 予備を1枚持つ |
| ミドル(行動着) | 厚いフリースを着たまま登る | 熱が余って大量に発汗する | 歩き出す前に脱ぐ |
| ミドル(保温着) | 保温着を持たずに夏山へ | 雨で気温が下がると手が無い | 夏でも携行する |
| アウター | 傘やポンチョで代用する | 下半身が濡れる・蒸れて冷える | 上下セパレートのレインウェア |
| アウター | 濡れてから着る | 内側に入った水は乾かない | 降り出す前に着る |
| 全体 | 一枚で通そうとする | 行動中と停滞中の熱産生の差に対応できない | 脱ぎ着を前提に組む |
ユニクロやワークマンで代用できる層
全身を専門ウェアで固める必要はありません。判断軸は2つだけ。素材が速乾か、そして行動中に着るか止まっているときに着るかです。この2軸で見ると、代用できる層とできない層がはっきり分かれます。
| 製品 | 行動中 | 休憩・防寒 | 判定の理由 |
|---|---|---|---|
| ユニクロ ドライEX | ◎ | ― | 速乾性が高く、ベースレイヤー向き |
| ユニクロ ヒートテック | ✗ | ― | レーヨン混。濡れると乾かず汗冷えの原因になる |
| ユニクロ ウルトラライトダウン | ✗ | ◎ | 行動中は汗で保温力が落ちる。休憩用なら有効 |
| ワークマン MOVE ACTIVE 等 | ◎ | ― | 1,000円台の速乾インナー |
| ワークマン イナレム レインスーツ | ― | ― | 上下セット約5,500円・耐水圧20,000mm |
| 綿のTシャツ・ジーンズ | ✗ | ✗ | 濡れると乾かず、体温を奪い続ける |
ヒートテックは街では優秀ですが、山の行動中には向きません。吸湿発熱の中心はレーヨンで、公定水分率は11%。登山の発汗量では吸った水分を抱えたまま乾かず、汗冷えの原因になります。
逆に代用しにくいのは、上下セパレートのレインウェアと登山靴です。安全に直結する層なので、ここは専門品かレンタルの二択。量販店にも耐水圧や透湿性を公表している製品はあるので、数値を見て選ぶ手もあります。
パンツ・タイツ・靴下はどの層か
上半身の3層は分かっても、下半身と足元でつまずく人は多いです。答えはシンプルで、下半身も同じ3層で数えます。タイツと靴下がベース、登山用パンツがミドル相当、レインパンツがアウターです。
| 手持ちの品目 | どの層か | 行動中に着てよいか |
|---|---|---|
| 登山用パンツ(化繊) | 下半身のミドル相当 | ◯ |
| タイツ(サポート/保温) | 下半身のベース | ◯ |
| ショートパンツ+タイツ | 下半身のベース+ミドル | ◯(岩肌でのケガ防止にもなる) |
| レインパンツ | 下半身のアウター(防水) | 雨・強風のときだけ |
| ジーンズ・綿のパンツ | どの層にもならない | 履かない |
| 登山用ソックス(化繊・ウール) | 足元のベース | ◯ |
| 綿の靴下 | 足元のベースにならない | 履かない |
| 撥水メッシュインナー(上下) | ドライレイヤー(ベースの下) | ◯(単体では着ない) |
| レーヨン混の吸湿発熱インナー | ベースにならない | 着ない |
靴下も素材と厚さの2軸で選びます。モンベル公式の厚さ区分は、薄手のトラベルから中厚手のウォーキング、登山全般の厚手トレッキング、冬季のアルパイン、厳冬期のエクスペディションまで。注意したいのは、ソックスの厚みが変わると靴のフィット感も変わるという点です。登山靴を買うときは、実際に使う靴下を履いて試着してください。
僕が槍ヶ岳に行ったときは、化繊の上下にスポーツタイツを合わせていました。1,200円ほどの安いものでしたが、半ズボンでも岩肌でのケガ防止になり、これはこれで役に立ちました。運動習慣がない人は、テーピング効果のあるタイプが合うかもしれません。
汗冷えを防ぐ脱ぎ着のタイミング
脱ぎ着のコツは1つだけです。状態が変わってからではなく、変わる直前に動かすこと。暑くなってから脱ぐ、寒くなってから着るでは、いつも一手遅れます。

でも歩いてる途中で止まるの、面倒じゃない?
面倒なんですよね。ただ濡れてからだと元に戻せないので、先に動くほうが結局ラクでした。
根拠は熱の作られ方にあります。無雪期の縦走の登りはおよそ7メッツ、座って休憩は1〜1.5メッツ。行動中は休憩中の約5〜7倍の熱を体が作っている計算になります。(出典:国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所『改訂第2版 身体活動のメッツ(METs)表』)
だから歩き出しで少し寒いくらいが、行動中にはちょうど良くなります。逆に休憩へ入った瞬間、熱の産生は数分の1に落ちます。寒くなってから羽織るのでは遅い、というわけですね。
状態が変わる直前に動かす7つの合図
「暑くなったら脱ぐ」では判断できません。実行できる条件に置き換えたのが、次の7つです。ほとんどが「〜する前」「〜の直前」に揃っているのがポイントですね。
| 合図 | やること | 理由 |
|---|---|---|
| 登山口を出る前 | 停滞時に着ていた1枚を脱ぐ | 歩き出すと熱の産生が5〜7倍になる |
| 歩き出して5〜10分 | まだ暑ければもう1枚脱ぐ | 濡れてからでは元に戻せない |
| 樹林帯を抜ける直前 | ウインドシェルを着る | 風速1m/sごとに体感が約1℃下がる |
| 休憩に入る直前 | 立ち止まる前に保温着を羽織る | 汗冷えは休憩開始の数分で始まる |
| 休憩を終える直前 | 保温着を脱いでからザックを背負う | 着たまま歩き出すと汗をかきやすい |
| 下りに入る前 | 1枚足す | 熱の産生が登りの半分程度まで落ちる |
| 雨が降り出す前 | レインウェアを着る | 濡れてから着ても内側の水は残る |
この7つは、教科書ではなく自分の1日から書き出したものです。初めての富士山(吉田ルート)では、5合目から7合目まではTシャツにウィンドブレーカーの下だけ。7合目の先で汗と気温に負けて上を追加し、下山では防寒着を脱いで薄着に戻しました。
山頂に着いたときも要注意です。滞在が長く風も強いので、濡れたベースレイヤーを着替えるか、上に1枚足しておきたい場面。予備の速乾Tシャツ1枚で、汗冷えを一度リセットできます。
僕も山頂に着いてすぐ、着ていた長袖を乾いたものに着替えました。当時は街用のヒートテックのままで、今なら行動中には選びません。それでもご来光を待つあいだは動かない時間が長く、あの1枚を替えていなければ座っていられなかったと思います。
汗冷え対策は、発生そのものを減らす手と、起きた後の被害を減らす手に分かれます。まずは道具代がかからないほうから。
- ペースを落として、発汗そのものを減らす
- 歩き出す前に1枚脱いでおく
- ベンチレーションや首元を開けて熱を逃がす
残りは道具で解決する手。買い足しは必要ですが、一度揃えれば毎回効いてくれます。
- 肌側に撥水インナー(ドライレイヤー)を入れる
- ベースを化繊の速乾素材にする
- ウインドシェルとレインウェアで風と雨を止める
ここに着替えは入れていません。着替えは道具ではなく手順で、すでに濡れてしまった状態を、乾くのを待たずにその場でリセットできる数少ない手段だからです。
汗冷えが低体温症につながる道筋
登りで汗をかき、稜線や山頂で立ち止まると熱の産生が落ちます。濡れた衣類が乾くときの気化熱と風が重なると、体温は急速に奪われます。低体温症は寒さそのものだけでなく、濡れ・風・エネルギー切れが重なることでも起こり、夏でも起こり得ます。震えが止まったのは軽くなったのではなく重症化のサインだという指摘もあります。仲間の様子がおかしいと感じたら、早めに下山や救助要請を判断してください。
関連記事:登山の汗冷え対策|服装の選び方と脱ぎ着で濡らさない運用
夏秋冬の服装は気温帯から逆算する
季節名で服を決めると、たいてい外します。同じ8月でも、低山と3,000m級では答えが違うからです。行動中に想定される気温帯から構成を逆算すると、季節をまたいでも同じ手順で組めます。

手順は3つ。まず目的地に近い平地の月別平年値を取り、標高差から気温を概算します。次に日最高を行動中の気温、日最低を停滞・朝晩の気温として2つ持ちます。最後に、その2つへ服を割り当てます。
気温は標高100mごとに約0.6℃下がるのが目安です。国際標準大気では100mにつき約0.65℃とされています。あくまで概算で、晴れて風のない日中は高く、放射冷却の朝や強風時は低く外れます。
| 行動中の気温 | ベース | ミドル(行動着) | アウター | 保温着(停滞用) |
|---|---|---|---|---|
| 25℃以上(夏の低山) | 半袖の薄手速乾 | 不要 | ザックに携行 | 薄手を携行 |
| 15〜25℃(夏の稜線・秋の低山) | 薄手長袖または半袖 | 休憩時のみ | ウインドシェル携行 | 携行 |
| 5〜15℃(秋の稜線・夏の高山の朝夕) | 薄手〜中厚手長袖 | 薄手フリース(登りは脱ぐ) | ウインドシェル着用 | 停滞時に着用 |
| 0〜5℃(晩秋・残雪期) | 中厚手長袖 | フリース着用 | シェル着用 | 休憩ごとに着用 |
| 0℃未満(積雪期) | 厚手 | 行動保温着 | シェル着用 | 厚手を携行・停滞時は必ず着用 |
稜線に出るルートは、1段階寒い側の欄を使ってください。風速が1m/s強まるごとに体感温度が約1℃下がる、という経験則が広く使われています。表の数字は気温であって、体感温度ではありませんから。
季節ごとに崩れ方も違います。夏は保温着を置いてくる、秋は日没後の冷え込みに対応できない、冬は厚着で歩き出して汗をかく。意外にも、いちばん崩れやすいのは夏だと思っています。
夏の話に入る前に、秋と残雪期の崩れ方を押さえておきます。モンベルの秋山向けの解説によると、9月から氷が張り、10月の降雪も珍しくありません。日没は10月半ばで夕方5時。行動中の暑さに合わせて薄着で通すと、日が落ちてから足すものが残っていないという崩れ方になります。
残雪期の4〜5月は、寒暖差そのものが相手になります。標高2,300m級への換算では、日最高と日最低の差が約13℃。樹林帯では汗をかくのに、森林限界を越えれば気象はまだ冬の続きです。濡れたまま稜線に出ると、風で一気に体温を持っていかれます。
そして夏です。気温が高い日ほど「保温着は要らない」と判断されがちですが、雨が降った瞬間、条件は秋や冬の側へ飛びます。夏の高山でも日最低は10℃前後まで落ちる概算になり、3,776mの山頂は7〜8月の月平均で5〜6℃台。ただしこれは月平均で、その日の天候や風で上下します。
この差は、数字よりも体で来ます。僕が7月に富士山へ登った日は、8合目のあたりでも5度を切っていました。下では暑いと感じていたのに、上では本当に寒い。同じ夏でも、標高で2〜3段違う欄を使うことになります。
夏の槍ヶ岳で保温着だけ抜けていた話
2018年の8月末、新穂高温泉から槍ヶ岳(3,180m)へ1泊2日で登りました。1日目は標準8時間30分のところ9時間ちょっと。運動不足がそのままタイムに出た形です。
問題は2日目でした。終日雨で、その日の山頂は夏でも5℃くらい。寒さで行動が苦しくなり、友人のジャケットを借りてなんとか凌ぎました。
そのとき着ていたのは、化繊の上下とインナーのスポーツタイツ。ベースもアウターも一応揃えていたのに、フリースかインナーダウンという保温着だけが抜けていたんです。夏だから要らない、と判断していました。
振り返ると、失敗の型としては教科書どおりでした。気温帯ではなく季節名で服を決め、雨で条件が秋・冬側へ飛んだのに対応する層が無い。しかも前日の消耗で、熱を作る力まで落ちていました。
借りられる同行者がいたから凌げただけで、単独なら選択肢はありませんでした。3層のうち1つでも欠けると、レイヤリングは機能しません。
買う順番と予算は危険度順で決める
全部を一度に買う必要はありません。優先順位は値段順でも人気順でもなく、欠けたときの危険度順です。無いと危ない層から順に埋めていきます。

- レインウェア上下 — 唯一、代替がきかない層。傘やポンチョでは代われない
- 速乾ベースレイヤー — 綿を置き換える。最も安く、効果が分かりやすい
- 保温着(インナーダウンまたは化繊インサレーション) — 止まったときに体の熱を逃がさない層。夏でも携行する
- ミドル(薄手フリース) — 行動中の温度調節の幅を広げる
- ウインドシェル — 雨は降っていないが風が冷たい、という最頻の場面を埋める
- ドライレイヤー(撥水インナー) — 汗冷えを構造的に減らす
線引きは3番と4番の間です。1〜3は「無いと危ない」、4〜6は「あると快適で、結果として安全になる」。1〜3が揃うまで4以降を買わないという順番が実用的かなと思います。
ドライレイヤーは後から足せばいい
ドライレイヤーは、肌とベースレイヤーの間に入れる撥水メッシュです。汗を吸って乾かすのではなく、汗を肌から離して上の層へ渡すのが役割。汗冷えを、起きてから対処するのではなく構造から減らす層です。
ファイントラックの公式説明では、肌に隙間なく接することで肌から汗を離し、濡れ戻りを抑えるとされています。ミレーのドライナミック メッシュはポリプロピレンを使い、素材そのものが水を持たないアプローチ。狙いは同じでも、設計の考え方が違います。
効果は分かりやすい層ですが、優先順位は後ろで良いと思っています。理由は価格です。ファイントラックのドライレイヤーベーシックTは5,544円で、モンベルのジオライン L.W.Tシャツ3,080円より高い。肌着の下にもう1枚という心理的なハードルもあります。
先に3層を埋めて、余裕が出てから足す。この順番なら予算の割り振りで迷いません。夏向けのクール、秋冬向けのウォームなど厚さの選択肢もあるので、使う季節に合わせて選んでみてください。
ファイントラック ドライレイヤーベーシックT
オールシーズン使える薄手タイプ。3層が揃ったあとの「4枚目」として検討しやすい1枚
価格目安:5,544円(税込・2026年9月時点の公式価格)
まず揃える3点はいくらかかるか
最初に揃える3点は、レインウェア上下・速乾ベースレイヤー・保温着です。合わせて4万円前後というのが、ひとつの目安になります。ブランドと素材で幅は大きく動きます。
| 層 | 代表的な選択肢 | 価格の目安 |
|---|---|---|
| ベース(化繊・薄手) | モンベル ジオライン L.W.Tシャツ Men's | 3,080円 |
| ベース(ウール・中厚手) | モンベル スーパーメリノウール M.W.ラウンドネックシャツ Men's | 8,800円 |
| 保温着(化繊) | モンベル EXライト サーマラップ ジャケット Men's | 15,400円 |
| 保温着(ダウン) | モンベル スペリオダウン ジャケット Men's | 19,500円 |
| レイン(ジャケット) | モンベル サンダーパス ジャケット Men's | 13,600円 |
| レイン(パンツ) | モンベル サンダーパス パンツ Men's | 9,600円 |
| レイン上下(低価格帯) | ワークマン イナレム ストレッチレインスーツ | 約5,500円 |
内訳も出しておきます。サンダーパスの上下にジオライン L.W.Tシャツ、EXライト サーマラップ ジャケットを合わせると約4万2千円。レインをイナレムのストレッチレインスーツに替えれば、約2万4千円まで下がります。金額の幅を作っているのは、ほぼレインウェアです。
上の表の2つは薄手半袖と中厚手長袖なので単純比較はできませんが、同じ厚さ・同じ形で並べると、ウールは化繊のおよそ1.8〜2.3倍の価格になります。最初の1枚は化繊で十分ですね。メリノウールは「乾きの遅さより、濡れても冷えにくいほうを取りたい」場面の選択肢になります。
買わずに済ませる手もあります。新しく買う前に、手持ちの組み合わせを見直すほうが効くこともあります。
- 手持ちの速乾スポーツウェアをベースに回す
- 回数が少ないうちはレインウェアや登山靴をレンタルする
- 薄手2枚を重ねて厚手1枚の代わりにする
ここに挙げた価格は、2026年9月時点で各メーカーが公表しているものです。改定されることもあるので、購入前には必ず公式サイトで最新の情報を確認してください。
登山のレイヤリングでよくある質問
雨の日はレインウェアの下に何を着ればいいですか?
基本はベースレイヤー1枚、寒ければベースに薄手のミドルを足した状態です。レインウェアの内側は蒸れやすいので、着込みすぎると汗で濡れます。保温着を足すのは歩き出す前ではなく、休憩で立ち止まる直前に。レインウェア自体も、濡れてからではなく降り出す前に着るのが基本です。
保温着はダウンと化繊、どちらを先に買えばいいですか?
無雪期の1着目なら、化繊のほうが扱いやすいと思います。断熱を担っているのは繊維のあいだの空気で、そこが水に置き換わると保温力が落ちるのはダウンも化繊も同じ。そのうえでモンベルのエクセロフトのように、濡れてもかさ高さを保つと公表している化繊綿があります。価格も化繊のEXライト サーマラップ ジャケットが15,400円、ダウンのスペリオダウン ジャケットが19,500円という関係。ダウンは同じ暖かさをより軽く小さくできるのが持ち味なので、荷物を絞りたくなった2着目で足すと生きてきますよ。
レインウェアの撥水が落ちてきたら買い替えですか?
その前に手入れを試してみてください。モンベル公式が示す順序は、まず洗濯で汚れを落とし、次に乾燥機などで熱処理を加え、それでも戻らなければ撥水剤を使う、という流れです。撥水剤は汚れの上からでは定着しません。ただし②の熱処理は製品ごとに可否が違い、縮みを理由にタンブラー乾燥を禁じているモデルもあります。手入れの前に、洗濯表示とメーカーの案内を確認してください。
帽子や手袋もレイヤリングに入りますか?
入ります。米国国立公園局の寒冷期のガイダンスも、フード付きの防風・防水アウターに加えて、帽子・手袋・ウールの靴下を挙げています。頭からは熱が逃げやすいためです。素材の考え方は上半身と同じで、綿の軍手は濡れると冷えるので避けたほうが無難ですね。
ヒートテックは休憩中や山小屋でなら着てもいいですか?
乾いた1枚を停滞用に持つ分には問題ないと思います。山小屋やテントに着いてから着替えて使う、という位置づけですね。避けたいのは、行動中に着ていた1枚をそのまま着て休憩に入ること。汗を抱えた状態では、吸湿発熱よりも濡れによる冷えのほうが勝ってしまいます。着替え用に持つなら、化繊の速乾シャツのほうが軽くて乾きも速いです。
まとめ:レイヤリングは3層と脱ぎ着で決まる
結局いちばん大事なのは、どれだった?
3層を埋めることと、変わる直前に動かすことですね。僕は保温着を抜いて痛い目を見ました。
レイヤリングは、たくさん着るための技術ではありません。役割の違う層を組み合わせ、脱ぎ着で調節するための考え方です。まずは手持ちの服がどの層に当たるかを整理するところから始めてみてください。

- 3層は「汗を処理する・保温する・風雨を止める」の役割分担。1つでも欠けると機能しない
- ミドルは行動着と保温着、アウターは防風と防水。それぞれ2役を畳んでいる
- 綿とレーヨン混は行動中に着ない。手持ちの速乾ウェアはベースとして使える
- 脱ぎ着は状態が変わる直前に。休憩は立ち止まる前に羽織る
- 服装は季節名ではなく、行動中の気温帯から逆算する
- 買う順番はレインウェア上下、速乾ベース、保温着。ドライレイヤーは後から足す
ここで挙げた価格や気温は、あくまで目安です。最新の仕様や価格は各メーカーの公式サイトで確認し、体調や持病に不安がある場合は医師などの専門家に相談したうえで計画を立ててください。山では無理をせず、引き返す判断も装備のうちですよ。
関連記事:ネックウォーマーとバラクラバの使い分け
