こんにちは、YAMA-GO編集部のりょうです。関西を拠点に、北アルプスを中心にULスタイルで山を楽しんでいます。このブログ「YAMA-GO」では、実際に使ったギアのレビューや選び方、山のノウハウなんかを発信しています。
ザックの雨対策って、調べるほど分からなくなりますよね。「カバーは必須」と書いてある記事もあれば、「カバーは不要、中身を防水袋に入れれば済む」と言い切る記事もあります。どちらが正しいのか、初めて雨の山に行く前だと判断できません。
僕は槍ヶ岳の下山で終日雨に打たれたことがあります。そのとき効いたのは、高い道具ではなく「カバー」と「中身の袋分け」を重ねる二段構えでした。この記事では、何をどこまで守るかを段階で整理し、費用と重量まで具体的に比べます。
- ザックカバーと中身の個別防水を重ねる二段構えが結論になる理由
- 電子機器・シュラフ・行動食を濡れて困る度合いで3段階に分ける考え方
- 構成7パターンの初期費用と追加重量、二段構えと防水ザックのコスト比較
- 雨の日の運用と、濡れて帰ったあとの乾かし方・撥水スプレーの可否
ザックの雨対策は二段構えが結論

結論から言うと、ザックカバーで浸水量を減らし、濡らせない物は袋で個別に守る二段構えが現実的です。カバーは中身とザック本体の両方を守り、袋は入れた物だけを守ります(口の閉じ方や袋の破れしだいで、浸水することもあります)。役割が違うので、どちらか一方を選ぶ発想からいったん離れましょう。

「カバー必須派」と「カバー不要・ドライバッグ派」が対立して見えるのは、守る対象の定義が違うからです。前者はザック本体の保水まで含めて考え、後者は中身さえ無事なら本体は濡れてよいと考えます。前提を分ければ、両方の主張は事実として両立します。
| 方式 | 置き場所 | 守る対象 | 重量の目安 |
|---|---|---|---|
| パックカバー | ザックの外側にかぶせる | ザック本体+中身(背面側は覆えない) | 20〜35Lクラスで65〜118g |
| パックライナー | ザックの内側に敷く | 中身だけ | 専用品は50L対応で74g・70L対応で98g |
| 防水スタッフバッグ | ザックの中でアイテム単位に小分け | 入れた物だけ | 3Lで43g・10Lで70g |
| 防水素材のザック本体 | ザックそのもの | 中身(開口部の閉じ方しだい) | 本体重量に含まれる |
この4方式は互いに排他ではなく、重ねて使えます。シートゥサミット公式の解説も、カバーを使う方法とドライサックに入れる方法を並べて挙げ、両者は併用できると説明しています。上の表を見ると、重ねても増える重さは意外に小さいと分かりますよね。
どこまで守るかは、想定する雨の強さでも変わります。体感の言葉だと人によってぶれるので、気象庁の予報用語(1時間雨量の区分)に当てはめて考えると条件がはっきりしますよ。(出典:気象庁『雨の強さと降り方』)
| 想定する雨と長さ | 1時間雨量 | ザック側の考え方 |
|---|---|---|
| やや強い雨が数時間 | 10〜20mm | カバーだけでしのげることが多い領域。濡らせない物は袋に入れておく |
| 強い雨〜激しい雨が半日 | 20〜50mm | 背面・縫い目からの浸入が現実になる。個別防水が効く領域 |
| 非常に激しい雨〜猛烈な雨 | 50mm以上 | 装備より先に、行動を続けるかどうかを判断する領域 |
自分の山行がどの行にあたるかを先に決めると、必要な備えの量が見えてきます。日帰りの通り雨と、稜線で半日打たれる山行では、同じ「雨対策」でも答えが変わるからです。
カバーは「浸水量を減らす層」、中身の袋は「最後に効く層」。役割を分けて考えると迷いません。
付属ザックカバーでは濡れる3カ所
カバーを着けても濡れる場所は、おおむね背面まわり・縫い目やファスナー・ボトムの3カ所です。しかもこれは使い方が悪いからではありません。メーカー自身が限界を公表しています。
| 濡れる場所 | 原因 | 現場での対処 |
|---|---|---|
| 背面・ハーネスまわり | 風で吹き付ける雨が背中とカバーの隙間から入る | 背中に接する位置へ濡らせない物を置かない |
| 縫い目・ファスナー | 縫い針の穴が構造的な弱点。ザックに使われるファスナーは防水をうたう製品でも撥水止まりのことが多い | 中身側の袋分けに守りを任せる |
| ボトム | 地面に置いた際の浸み上がり、たまった水 | 地面に直置きしない |
シートゥサミットは自社カバーの製品ページで、風で吹き付ける雨が背中とハーネスの隙間から入り込むことがあると明記しています。同社の解説では、ザックの縫い目は防水ではないとも説明されています。カバーは完全防水を約束する道具ではない、という位置づけです。
面白いのは設計側の割り切りです。モンベルのジャストフィット パックカバーは、水が浸入した際にボトムのドレインシステムで排出すると説明しています。水が入る前提で、たまった水を抜く作りになっているわけです。
ザック本体も同じです。グレゴリーは自社のバックパックを「防水仕様ではなく、雨などの水気を弾く撥水仕様」と公式に書いています。つまりカバーも本体も、長時間の雨では中身を守り切る設計にはなっていません。
付属カバーが無いザックなら、別売カバーを足す選択になります。オスプレーのULレインカバー Mは30〜50L対応で112g、上部のバックルとヒップベルトのバンジーコードで留める構造です。強風でカバーだけ飛ばされる失敗を避けたい人には、固定方法が明確なモデルが安心かなと思います。
オスプレー ULレインカバー M(30〜50L対応・112g)
上部バックルとヒップベルトのバンジーコードで固定する別売カバー。テープドシーム仕様で、30Lクラスのザックから使えます。
価格目安:6,820円(税込・2026年9月時点の公式表示)
関連記事:登山ザックのレインカバーは必要?純正が使いにくかった実体験
濡れて困る度合いで3段階に分ける

対策の強さは装備ごとに変えます。濡れたら何が起きるかで、絶対に濡らせない・濡れると困る・濡れてよいの3段階に分けるのが基本です。全部を同じ強さで守ると、費用も重量も無駄になります。
ねえ、雨の日って全部の荷物を袋に入れたほうがいいの?
全部やると重くなるし、お金もかかるんですよね。僕は濡れて困る度合いで分けています。
へえ、そうなんだ!じゃあ、どれが一番守らなきゃいけないの?
そこが分かれ目なので、一緒に見ていきましょう。
| 段階 | 該当する装備 | 濡れたときに起きること | 必要な守り |
|---|---|---|---|
| 絶対に濡らせない | 電子機器、シュラフ、ダウンの防寒着、着替え、紙の地図 | 行動不能・保温不能に直結する | 個別に防水(ドライバッグ・防水ポーチ・二重袋) |
| 濡れると困る | 行動食、予備電池、ファーストエイド | 品質は落ちるが行動は続けられる | 簡易な袋分け。雨の中で食べる分だけはライナーの外へ |
| 濡れてよい | レインウェア、ザックカバー、ゲイター、水筒 | もともと濡れる前提の装備 | 防水しない。すぐ取り出せる位置に置く |
見落とされがちなのは3段目です。レインウェアをパックライナーの中に入れてしまうと、雨が降り出したときにライナーを開けることになります。守るために閉じた袋を、雨の中で開けるという本末転倒が起きるわけです。
雨の中で取り出す物は外へ
レインウェア・ザックカバー・行動食・水は、ライナーの外か、ザックを開けずに取れる位置へ。雨中でザックを開ける回数を減らすことが、そのまま浸水量を減らします。
電子機器はIPX8表示を信じない
スマホの防水表示は安心材料になりますが、IPX8の試験条件はメーカーが定めるため、同じ表示でも保証される範囲は製品ごとに違います。「防水スマホだから裸で持つ」は、少し危うい判断かなと思います。
IP保護等級は国際電気標準会議の規格で、日本ではJIS C 0920が対応します。IPX7は水深1m・30分の水没で有害な影響を受けない等級です。一方のIPX8は、継続的に水中で使えるという等級ですが、その水深と時間はメーカーが決めます。
つまり表示だけでは、雨中行動の何時間分に耐えるのかは読み取れません。試験は真水が前提で、パッキンは経年で劣化します。表示は「条件つきの合格証」と受け取り、袋で二重にしておくほうが気楽です。
もっと注意したいのがモバイルバッテリーです。本体は原則として防水仕様ではなく、濡らした直後の充電はショートによる異常発熱につながります。NITEに通知されたリチウムイオン電池搭載製品の事故は、2020年から2024年の5年間で1,860件、うち約85%が火災に発展しました。(出典:製品評価技術基盤機構(NITE)『夏バテ(夏のバッテリー)にご用心』)
しかも事故は6月から8月がピークで、夏山シーズンとそのまま重なります。濡らすと壊れるのではなく、濡らすと燃えることがあると考えたほうが安全側です。完全に閉じられる袋に入れ、濡れた直後は通電しないでください。
水濡れ後のバッテリーに異常な熱や膨らみが出たら、充電せず使用を中止し、メーカーの案内を確認してください。
シュラフはドライバッグ、小物はジップロック
シュラフとダウンは収納したときの容積で選ぶドライバッグ、行動食や紙ものはジップロックの二重が扱いやすいです。守り方の強さを、道具の値段ではなく中身のリスクで決めます。
ダウンの保温はかさ高で決まります。濡れて羽毛が束になると、その日の夜の保温力が落ちます。小屋泊でもテント泊でも、シュラフは最優先で守る一枚です。
メーカー公式の容量目安では、3シーズン用ダウンシュラフが13L、ダウンセーターが3〜5L、ダウンパーカが5〜8Lとされています。ただし公式は、シュラフの容積は中綿と生地で変わるため保温温度域からサイズを決められない、とも注意しています。
ですから「#3なら何L」と決め打ちしないでください。自分のシュラフを収納した状態の容積を見てから選ぶ、が正しい順序です。迷ったらワンサイズ上げる案内も公式に併記されています。
ジップロックは、どこまで信用するかを決めておくと使いやすくなります。業務用のフリーザーバッグは厚さ0.06mmで、ライナー代用に使われる45Lポリ袋の2倍の厚みがあります。それでも口は押さえて閉じるジッパーで、折り返して締めるドライバッグとは構造が違います。
ジップロックの線引き
向くのは行動食・紙もの・小物・スマホの二重目。向かないのは単独でシュラフを守ることと、水没する可能性がある沢や渡渉です。雨に打たれる範囲なら十分、水没や強い圧迫は想定外と考えてください。
入れる位置にも一つ注意があります。背面側は最後まで濡れない場所ではありません。カバーを着けても背中側の隙間から吹き込むので、背中側に置けば安全という配置ルールは成立しないんです。
重い物を背中側に寄せるパッキングの原則は、防水とは別の軸です。袋の中で重い物を背中側に寄せれば、重量配置を崩さずに袋分けできます。
関連記事:登山ザックのパッキングのコツ|重い物の位置と小屋泊の実例
構成7パターンの費用と重量を比較

30Lクラスのザックを想定して構成を組むと、二段構えは8,330円・追加196gで、表で比べた防水ザック(ルレイパック23・16,500円)より安く収まります。「二段構えは高くつく」という印象は、必ずしも当たりません。

| 構成パターン | 内訳 | 初期費用 | 追加重量の目安 | 守れる範囲 |
|---|---|---|---|---|
| A: カバーのみ | ジャストフィット パックカバー 30L | 3,600円 | 98g | ザック本体+中身(背面・縫い目は除く) |
| B: 専用ライナーのみ | ウルトラシルパックライナー M(70L対応) | 4,730円 | 98g | 中身のみ |
| C: 二段構え | 上記2点 | 8,330円 | 196g | ザック本体+中身の二重 |
| D: カバー+個別ドライバッグ | パックカバー30L+アクアペル3L+10L | 9,100円 | 211g | 本体+濡らせない物だけ二重 |
| E: 汎用ポリ袋+カバー | パックカバー30L+45Lポリ袋 | 3,600円+数十円 | 98g+十数g | Cとほぼ同じ範囲(耐久は劣る) |
| F: 防水ザックに買い替え | ルレイパック23(23L) | 16,500円 | ±0(買い足しなし) | 中身(開口部の閉じ方に依存) |
| G: 電子機器だけ防水ポーチ | モバイルドライポーチ M | 2,530円 | 38g | スマホ等1点のみ |
価格はいずれも2026年9月時点の公式表示で、あくまで目安です。なお容量をそろえた同条件の比較ではありません。ライナーは30Lクラスに合うSサイズ(50L対応・74g)が正規代理店で品切れ・価格非表示のため、価格の出ているM(70L対応・98g)を代表値に置いています。Fのルレイパックは23Lで、追加重量の±0は「本体のほかに買い足す物がない」という意味です。表を横に眺めると、守れる範囲が広い構成ほど値段が上がるわけではないと分かります。買う前に、自分がどこまで守りたいのかを先に決めてください。
二段構えは防水ザックより安い
カバーとライナーを重ねるCは8,330円、防水ザックに買い替えるFは16,500円です。二段構えは、この防水ザックを買うおよそ半分の金額で組めます。しかも今使っているザックをそのまま使えます。
増える重さは200g弱です。これを重いと見るか許容と見るかは、山行の長さと荷物の中身しだいかなと思います。僕は小屋泊なら、この重量増は保険として納得できる範囲だと感じています。
内訳も確かめておきましょう。この8,330円は、3,600円のパックカバーに4,730円の専用ライナーを足した金額です。先に挙げた別売のULレインカバー(6,820円)を選ぶ場合は、合計11,550円になります。どちらの組み合わせでも、比較したルレイパック23の16,500円は下回ります。
よく聞く「ライナーは重い」も、前提を確かめる価値があります。専用のパックライナーは50L対応で74g、70L対応で98gです。パックカバー(65〜118g)とほぼ同じ重量帯に収まります。
200gを超えるという話は、沢登り向けドライバッグをライナーに流用した場合の数字です。同じ「ライナー」でも、想定している製品が違うわけですね。重量を比べるときは、どちらの前提かを必ず確認してください。
シートゥサミット ウルトラシルパックライナー M(70L対応・98g)
ザックの内側に敷く専用ライナー。芯のないロールトップで閉じる構造で、パックカバーと同じ重量帯に収まります。
価格目安:4,730円(税込・2026年9月時点の正規代理店表示)
パックライナーとポリ袋の差
費用だけならポリ袋が圧倒的です。差が出るのは口の閉じ方と、破れたときの粘りだと考えてください。数十円の袋でも、使い方を守れば十分に働きます。
代用に使われる45Lのポリ袋は、650×800mm・厚さ0.03mm・素材LLDPEが一般的な規格です。30〜40Lクラスのザックの内側には、この寸法がちょうど収まります。まず試すなら、家にある袋で構いません。
一方で専用ライナーは、口を折り返して締めるロールトップのクロージャーとシームテープ処理を持ちます。ポリ袋側に欠けているのは、まさにこの2つです。薄さと引き裂き強度はトレードオフなので、予備を1枚足しておくと安心です。
中間の選択肢もあります。山と道のPack Linerは、バックパックの発送用ポリ袋をオリジナルサイズにした製品で、公式表示はH900×W500mm・42g・素材100%ポリエチレンです。専用ライナーより軽く、袋としては専用サイズという位置づけになります。
公式の使い方は3段階です。バックパック内に設置し、寝袋やダウン・着替え・電子機器など濡らしたくない装備を入れ、口を折り曲げて閉じてから他の荷物を詰めます。尖った物を入れるときは穴に注意、という注記もあります。
選ぶときの優先順位も書いておきますね。僕は軽さそのものより、「雨の中で確実に閉じられるか」を上に置きます。ULを意識していても、閉じ方があやしい袋を最後の守りにはしたくないからです。予備を1枚持てるかどうかも、同じくらい大きな判断材料かなと思います。
山と道 Pack Liner(H900×W500mm・42g・3枚セット)
バックパックの発送用ポリ袋をオリジナルサイズにした軽量ライナー。折り返して閉じる前提の袋で、予備を持ちやすい3枚セットです。
防水スタッフバッグは何Lを選ぶ
スタッフバッグは入れる中身の容積から選びます。小物なら1〜3L、衣類や行動食なら5〜13Lが公式の目安です。ザックの容量から逆算する道具ではありません。
| 中身 | 目安容量 |
|---|---|
| ヘッドランプ・ファーストエイドキットなど小物 | 1〜3L |
| 衣類・行動食 | 5〜13L |
| ダウンセーター(インサレーション) | 3〜5L |
| ダウンパーカ | 5〜8L |
| 夏用ダウンシュラフ | 10L |
| 3シーズン用ダウンシュラフ | 13L |
| 3シーズン用化繊シュラフ | 13〜20L |
表はあくまで出発点です。同じ3シーズン用でも、中綿と生地で収納サイズは変わります。手元の装備を実際に詰めてから、ワンサイズ上を選ぶくらいが失敗しにくいです。
閉じ方にもコツがあります。登山専門店の解説では、ドライサックは入口を3回以上巻くことで防水性が高まると案内されています。袋を買い替えるより、巻き数を守るほうが効果は大きいかもしれません。
重量の感覚もつかんでおきましょう。3Lクラスで43g、10Lクラスで70gが一つの目安です。ヘッドランプと予備電池を1つの袋にまとめておくと、暗くなってから探し回らずに済みます。
シートゥサミット ウルトラシルドライバッグ 3L
ヘッドランプ・予備電池・ファーストエイドなど小物をまとめる最初の1枚に。ロールトップを3回以上巻いて閉じます。
価格目安:2,500円(税込・2026年9月時点の正規代理店表示)
槍ヶ岳の終日雨で効いた運用と下山後

道具をそろえても、差がつくのは雨の中での動き方です。降り出す前に着ける、ザックを開ける回数を減らす、この2つだけで浸水はかなり変わります。

僕が痛感したのは2018年8月の槍ヶ岳でした。新穂高温泉ルートから1泊2日、槍ヶ岳山荘泊です。2日目は8時25分に山荘を出て15時10分に下山するまで、ずっと雨でした。
それでもザックの中身は濡れずに済みました。当時履いていたキャラバンのC1_02Sも、この日は終日雨のなかで浸水を感じませんでした。特別な装備ではなく、着けるタイミングと置き方でしのげた実感があります。
ちなみに山頂アタックの朝は「曇のち雨のち雷雨」の予報で、ご来光登頂は中止しました。雨対策は行くための道具であって、行けるかどうかの判断とは別物です。無理をしない判断が先にあります。
降り出す前と休憩中のザックカバー
カバーは降り出してから着けるのでは遅いです。着けるためにザックを下ろせば、開いた雨蓋から水が入ります。雨雲が見えた時点か、直前の休憩で先に着けてしまいましょう。
カバーをザックの中に入れて持たない、というのも地味に効きます。中に入れていると、カバーを取り出すために雨の中でザックを開けることになるからです。雨蓋の外ポケットか、ボトム収納のあるモデルならそこから出します。
レインウェアと同時に着けるのも手です。ザックを下ろす回数が1回で済みます。休憩と装備変更をまとめると、体も濡れにくくなりますよ。
付属カバーなら安心かというと、そこも一度確かめてほしいところです。僕が槍ヶ岳で使ったミレーのサースフェー30+5には専用カバーが付属していました。ところが留め具の位置の関係で、カバーを着けたまま雨蓋を開けられません。
開けるたびに全部外す必要があり、風が強い日は外すこと自体が怖かったです。純正のカバーが使いにくいというのは、正直まったくの盲点でした。寸法が合うことと、使いやすいことは別問題なんですよね。
対策はシンプルです。雨蓋を開ける回数そのものを、パッキングの段階で減らしておきます。
- 雨の日に取り出す物は上に置かず、下にまとめておく
- 行動食と水は、ザックを開けずに取れる位置へ事前配置する
同じザックのサイドポケットは、上からだけでなく横からもボトルを取り出せました。体が固くて上から手が届かない僕には、これが本当に助かりました。カバーを着けるとサイドが塞がる構造だと、水分補給のたびにザックを下ろすことになります。
富士山に登ったときも、ザックカバーを着けて歩いています。カバー自体は決して万能ではありませんが、着けているあいだは本体が水を吸うのを抑えられるぶん、ザックが重くなりにくいです。
休憩中のザックの置き方
濡れた地面や水たまりに直置きしないでください。岩の上、外したカバーの上、木に立てかけるのが基本です。ボトムを下にして立てると、雨蓋のファスナーから浸入しにくくなります。
よくある失敗も挙げておきます。行動食を食べて荷物が減ると本体のマチが薄くなり、カバーが緩みます。ドローコードで締め直せるタイプなら、行動中に直せて安心です。
乾かしすぎない濡れたザックの乾かし方
濡れて帰ったら、直射日光を避けて風通しの良いところで陰干しします。乾燥機やドライヤーは使いません。ここは各社の公式案内が一致しています。(出典:グレゴリー公式『メンテナンス』)
- 中身を全部出し、ジッパーとポケットを開ける
- 背面パッドなど水を含む部分は、手で押すか乾いたタオルで吸わせる
- 直射日光を避け、風通しの良いところで陰干しする
- 完全に乾く前に収納しない(カビや錆の原因になる)
- ビニール袋に密閉せず、湿度の低い場所で保管する
紫外線は生地を傷めるので、日なたで一気に乾かすのは逆効果です。保管でもう一つ気をつけたいのが置き場所で、車内や屋外倉庫のような高温多湿の場所は避けてください。
山小屋の乾燥室は、標準装備だと思って計画すると当てが外れます。北アルプスの主要小屋でも、槍ヶ岳山荘や涸沢ヒュッテには宿泊者専用の乾燥室がある一方、涸沢小屋の公式ページには記載がありません。濡れる前提の計画なら、事前に確認しておく対象です。
僕が泊まった槍ヶ岳山荘にも乾燥室はありました。広くはないので、混み合う日は場所を選べないと考えておくといいかもしれません。同小屋の公式案内では、干した衣類は利用者自身が管理し、取り違い防止に名札を付けるよう求められています。
ここで一つ、反直感の注意があります。槍ヶ岳山荘は雨具類を長期間放置すると防水性能が低下するおそれがあると公式に書いています。乾燥室は高温になるため、入れっぱなしで翌朝取りに行く運用はレインウェアに負担をかけます。
つまり「乾かせばよい」ではなく「乾いたら取り出す」が正解です。雨具は乾いた時点で回収し、寝る前に手元へ戻しておく。この一手間が、翌シーズンの防水性能を守ります。
濡れたレインウェアやザックカバーを着けたまま玄関に上がらず、外で水気と汚れを落としてから受付しましょう。
濡れた装備の置き場は小屋ごとにルールが違います。受付のときに、乾燥室の場所と濡れたザックをどこに置くかを一緒に聞いておくと迷いません。テント泊なら、フライをかけてから前室に荷物を入れ、ザックは地面に直接置かないようにします。
撥水スプレーはザックに使えるか

答えは「製品の適用素材しだい」です。ザックに使えないと明記されているはっ水剤があります。登山用品売り場にあるからといって、どのザックにも吹いてよいわけではありません。
スプレーをかけたら、ザックも防水になるの?
そこは僕も勘違いしていました。弾く力は戻せても、通さない力にはならないみたいですよ。
へえ、そうなんだ!じゃあ何のためにかけるの?
ザックが水を吸って重くなるのを遅らせるためですね。順番に見ていきましょう。
はっ水性は生地の表面で水を弾く性能、防水性は水を裏側に透過させない性能で、この2つは別物です。はっ水剤で回復できるのは前者だけ。だからスプレーは、中身を守る手段ではありません。
位置づけとしては、ザックが水を吸って重くなるのを遅らせる手入れです。中身を守る役割はカバーとライナーが持ちます。この役割分担を先に切り分けておくと、期待外れになりません。
コーティング布に吹けないスプレー
使う前に見るのは、缶に書かれた「使用できない素材」の欄です。ここにポリウレタン・ビニルコーティング布製品が入っている製品があります。多くのザックが、まさにその生地です。
たとえばモンベルのO.D.メンテナンス はっ水スプレー(330mL)の公式表示では、使える素材はナイロン・ポリエステル・綿・ウール等の布製品とされています。一方で使えない素材には、皮革やゴム、プラスチックと並んでポリウレタン・ビニルコーティング布製品が挙げられています。(出典:モンベル公式オンラインショップ『O.D.メンテナンス はっ水スプレー 330mL』)
多くのバックパックは、表地ナイロンの裏面にポリウレタンコーティングを施した生地です。つまり「登山用品だからザックにも吹いてよい」とは言えません。同じ売り場の製品でも、対象が違うわけですね。
- ザックの取扱表示とメーカーのメンテナンス案内を先に見る
- 使うはっ水剤の「使用できない素材」欄にコーティング布製品が入っていないか確認する
- 目立たない場所で試してから全体に使う
- 屋外の風通しの良い場所で、15cmほど離し、乾かしながら薄く重ねて吹く
- 加工後は20分以上乾かす
15cmほどの距離も、加工後20分以上の乾燥時間も、モンベル公式の案内です。数字を守るより先に、まず自分のザックが対象かどうかを確かめてください。ここを飛ばすと、手入れのつもりが生地を傷めます。
なお同社のはっ水剤はPFASを含まない処方に切り替わっています。「フッ素系のほうが強い」という昔の説明が、そのままは当てはまらなくなっている点も覚えておくといいかなと思います。
お金と手間のかけ方でいうと、僕は本体のはっ水より先に、中身の袋分けを厚くします。本体が濡れても歩けますが、中身が濡れると行動そのものが止まるからです。はっ水剤を買い足すのは、手持ちのザックの取扱表示と缶の「使用できない素材」を突き合わせてからで遅くないかなと思います。
洗って熱を入れてから撥水剤の順番
レインウェアも含めたメーカー公式のはっ水回復の手順は①洗って汚れを落とす→②熱処理→③それでも戻らなければはっ水剤です(②の熱処理はザック本体には当てはめません。後述します)。順番を守らないと、同じ手間でも効きません。
理由は単純で、はっ水加工は汚れの上から施しても定着しないからです。汚れたザックにいきなりスプレーしても、性能はほとんど戻りません。洗うことが手入れの本体だと考えてください。
洗い方は各社ほぼ共通です。中身を出してジッパーを開け、中性洗剤で押し洗いし、水が濁らなくなるまですすぎます。汚れが部分的なら、その箇所だけスポンジでこすり落とせば十分です。
熱処理はザックには当てはめない
②の熱処理は、乾燥機を使えるレインウェアなどの手順です。ザック本体は乾燥機・ドライヤーを使わないよう各社が明記しているため、洗ったあとは陰干しで乾かし、それでも弾かないなら適用素材を確認してはっ水剤へ進みます。
この点は前の章の乾かし方と混同されがちです。濡れて帰った日の乾燥は、水気を抜くための工程。洗ったあとの熱処理は、撥水を戻すための工程です。目的が違うので、ザックでは陰干しに一本化すると迷いません。
手入れが効かなくなる線引きもあります。ポリウレタンコーティングが剥離し始めると、べたつき・変色・粉状の剥がれが出てきます。モンベル公式は、この状態では洗濯で悪化する可能性があり、生地の再コーティングはできないため買い替え時期の目安にするよう明記しています。
そこまで来たザックに雨対策用品を買い足すのは、少し順序が違うかもしれません。中身の個別防水に切り替えるか、買い替えを検討するほうが結果的に安く済みます。判断に迷うときは、メーカーのサポートに写真を送って相談するのが確実です。
劣化は使用頻度よりも保管環境に強く左右されます。高温多湿の場所に置けば、使っていなくても進みます。シーズンオフの保管の仕方が、翌シーズンの雨対策そのものだと考えてください。
登山ザックの雨対策でよくある質問
日帰り登山でもパックライナーまで必要ですか?
濡らせない物が少ないなら、必須ではないと思います。日帰りならスマホ・モバイルバッテリー・予備の防寒着だけを小さな防水袋に入れ、カバーと組み合わせる形で足りることが多いです。逆にシュラフや着替えを背負う小屋泊・テント泊では、ライナーを1枚入れておくと安心感が違います。
ザックカバーは容量が合っていればどれでも使えますか?
容量表記だけで選ぶと、まれに合わないことがあります。対応レンジの粒度はブランドで違い、30Lのザックでもモンベルは1サイズに絞られる一方、ドイターは3製品が候補に入ります。ドイターは形状によっては使用できない場合があると注記しているので、外寸と形状も見て選んでください。
雨の日、スマホとモバイルバッテリーはどこに入れるのが安心ですか?
どちらも袋で二重にして、背中に接する位置は避けるのがおすすめです。背面側はカバーの隙間から吹き込む場所なので、安全地帯ではありません。バッテリーは完全に閉じられる袋に入れ、濡れた直後は充電しないでください。異常な発熱があれば使用を中止しましょう。
沢や渡渉があるルートでもジップロックで足りますか?
水没の可能性がある場面では足りないと考えてください。ジップロックの口は押さえて閉じるジッパーで、水没させる使い方は製品の想定外です。渡渉があるルートでは、開口部を3回以上折り返して締めるドライバッグに切り替えるほうが安全側になります。
買ってすぐのザックにも撥水スプレーをかけたほうがいいですか?
新品のうちは表面のはっ水が生きているので、急いでかける必要はありません。むしろ製品によっては、ザックの生地が使用できない素材に含まれます。水を弾かなくなってきたと感じたら、まず洗ってみて、それでも戻らないときに適用素材を確認したうえで検討してください。
登山ザックの雨対策は二段構えで組み立てる
全部を完璧に防水しなくてもいいんだね。
そうなんですよね。守る物を決めてから道具を選ぶと、荷物も財布も軽くなりますよ。
雨対策は、カバーで浸水量を減らし、濡らせない物を袋で守る二段構えが土台になります。あとは自分の山行に合わせて、どこまで守るかを決めるだけです。

- カバーと中身の袋分けは役割が違う。背面・縫い目・ボトムは濡れる前提で組む
- 濡れて困る度合いで3段階に分け、レインウェアなど取り出す物はライナーの外に置く
- IPX8の試験条件はメーカー定義。電子機器とモバイルバッテリーは袋で二重にする
- 二段構えは8,330円・追加196gで、比較したルレイパック23(16,500円)より安く組める
- 降り出す前にカバーを着け、帰宅後は陰干し。乾燥機とドライヤーは使わない
- はっ水剤は使用できない素材を確認してから。洗ってからでないと定着しない
紹介した価格や重量は2026年9月時点の公式表示で、あくまで目安です。仕様や価格は変わるので、購入前に各メーカーの公式サイトをご確認ください。装備の適合や生地の傷みで迷ったら、メーカーのサポートや山道具の専門家にご相談いただくのが確実です。
そして何より、雨の強さによっては行動そのものを見直す判断が先に来ます。無理をせず引き返す選択も含めて、雨の日の山を安全に楽しんでもらえたらうれしいです。
