こんにちは、YAMA-GO編集部のりょうです。関西を拠点に、北アルプスを中心にULスタイルで山を楽しんでいます。このブログ「YAMA-GO」では、実際に使ったギアのレビューや選び方、山のノウハウなんかを発信しています。
今回は、僕自身も最初に知りたかった、登山のザックを洗う際の洗剤の選び方やお手入れ方法について、まとめてみます。ザックそのものの選び方で迷っている方は、先に登山ザックメーカーの特徴とおすすめの選び方も参考にしておくと、素材や用途ごとの違いがイメージしやすいと思います。
山に行けばザックは泥だらけになりますし、夏場は背中の汗をたっぷり吸い込んでしまいますよね。そのまま放置するとカビが生えたり、なんとも言えない嫌な臭いがしてきたりします。でも、いざ洗濯機で洗おうと思っても、「普通の洗濯洗剤やエマールでいいの?」「ウタマロ石鹸でこすっても大丈夫?」「グランジャーズやニクワックスみたいな専用品じゃないとダメ?」など、疑問が尽きないと思います。
お気に入りのギアを長く、そして快適に使い続けるためには、汚れの種類や生地の素材に合わせたケアが必要です。この記事では、僕の実体験と失敗談も交えながら、自宅でできる最適なメンテナンス方法をご紹介しますね。
- ザックの素材に合わせた最適な洗剤の選び方
- 泥汚れやカビ、気になる臭いを撃退するピンポイントな対処法
- 生地を傷めないための正しい手洗い手順と乾かし方
- お気に入りのギアを長持ちさせる保管のコツ
登山のザックに適した洗剤の選び方

ザックって、レインウェアやダウンジャケットと同じくらい過酷な環境で使われるのに、意外と洗い方が知られていないんですよね。「服と同じように適当な洗剤で洗えばいいか」と思ってしまうかもしれませんが、実はそれが一番の落とし穴なんです。
僕も登山を始めたばかりの頃、実家の洗濯機にあった普通の粉末洗剤でザックを洗ってしまい、生地が水をベチャッと吸い込むようになってしまって後悔したことがあります。ここでは、汚れのレベルやザックの素材に応じて、どの洗剤を選ぶべきかを一緒に見ていきましょう。
専用クリーナーで撥水性を維持する

数万円もするアルパイン用のザックや、PUコーティング・撥水加工が施されている高価なギアを洗うなら、個人的にはアウトドアギア専用クリーナー一択かなと思います。
なぜ普通の洗濯洗剤がダメなのかというと、一般家庭用の洗剤(特に弱アルカリ性のもの)は、皮脂汚れを落とす力が強いんですよね。
その洗浄力や洗剤の残留成分によって、ザックの表面に施されている「耐久撥水(DWR)加工」の働きが低下したり、繊維が本来持っている必要な油分まで奪い去ってしまったりすることがあるんです。
さらに、柔軟剤や漂白剤、蛍光増白剤が含まれていると、それらが生地の表面に残って水を惹きつけるようになり、撥水性が落ちてしまうことがあります。防水透湿素材のケアについては、登山のレインウェアを洗濯して長持ちさせるコツでも詳しく触れています。
そこで頼りになるのが、グランジャーズ(Grangers)やニクワックス(NIKWAX)といったメーカーから出ている専用クリーナーです。例えばグランジャーズの「ギアクリーナー」などは、立体的なザックやシューズを洗うのに特化していて、生地の撥水機能を壊すことなく、表面の汚れだけを上手く浮かせて落としてくれます。
専用クリーナーの素晴らしいところは、すすいだ後に成分が生地に残りにくいという点です。後から撥水スプレーをかける時も、余計な成分が残っていない方が撥水剤がしっかり定着するんですよね。少し値段は張りますが、命を預ける大切なギアの寿命を延ばせると思えば、決して高い投資ではないと思います。僕も勝負用のザックを洗う時は、必ず専用クリーナーを使っています。
日常使いには中性洗剤エマールが便利
「専用クリーナーが良いのは分かったけど、毎回それだとお金がかかるし……」というのも本音ですよね。日帰りハイキングで使っている比較的リーズナブルなデイパックや、UL(ウルトラライト)系のペラペラなナイロンザックを日常的に洗いたい場合は、家庭用の「おしゃれ着用の中性洗剤」がすごく便利です。低山用のザックをこれから選ぶ段階なら、低山の登山向けザック選び方とおすすめモデル徹底解説もあわせて読むと、洗いやすさや普段使いとのバランスも考えやすくなります。
代表的なものだと、花王の「エマール」などですね。おしゃれ着用洗剤は、ウールやシルクみたいなデリケートな服を洗うために作られているので、液性が中性で、洗浄成分(界面活性剤)の働きがとてもマイルドなんです。だから、ザックのナイロン生地や内側のポリウレタンコーティングに対するダメージをかなり抑えつつ、日常的な土埃や軽い汗汚れをスッキリ落としてくれます。
ただし、注意点もあります。中性洗剤はあくまで「優しく汚れを落とす」ものなので、専用クリーナーのように撥水性を維持・回復するような魔法の力はありません。そのため、洗い終わって乾かした後に、水弾きが悪くなっていると感じたら、別途アウトドア用の撥水スプレーをかけてメンテナンスしてあげる必要があります。
僕の場合、普段使いのザックはエマールでパパッと洗い、乾いた後にフッ素フリーの撥水スプレーを吹く、というサイクルで回しています。

頑固な泥汚れにはウタマロ石鹸を活用
雨上がりのぬかるんだトレイルを歩いた後や、休憩中に地面にドカッとザックを置いた時、ザックの底(ボトム)が泥だらけになること、ありますよね。実はこの泥汚れ、普通の洗濯洗剤やおしゃれ着洗いではなかなか落ちない強敵なんです。
なぜかというと、皮脂や食べこぼしの汚れが水や油に溶けるのに対して、泥汚れは「不溶性の鉱物粒子(細かい砂や石の粒)」だからです。繊維の細かい隙間に物理的に入り込んでいるため、洗剤の化学反応だけではどうにもなりません。要するに、溶かして落とすのではなく「掻き出して落とす」必要があるってことです。
こんな時に大活躍するのが、部分洗い用のウタマロ石鹸です。
この物理的なブラッシングによって、繊維の奥の泥を掻き出し、石鹸成分がそれを包み込んで浮かせてくれるんです。ただし、ここで絶対にやってはいけないのが「親の仇のように力いっぱいゴシゴシこすること」です。強くこすりすぎると、表面の生地が毛羽立ったり、摩擦で内側の防水コーティングが破れたりしてしまいます。あくまで「表面の汚れを優しくなでて剥がす」くらいの力加減で十分です。
ウタマロ石鹸は弱アルカリ性なので、泥汚れだけでなく、ショルダーハーネスに染み付いた頑固な皮脂汚れにも効きます。ただし、蛍光増白剤が配合されているため、濃色ザックや色柄のあるザックでは色落ち・変色の可能性があります。必ず目立たない箇所で試してから、全体を浸け置き洗いする前の「前処理」として、部分的にウタマロで落としておくのがプロの(?)ハイカーの常套手段ですね。
悪臭対策にはオスバンSで殺菌する
夏の縦走終わりなど、ザックの背面パッドやショルダーハーネスから「雑巾の生乾きのような」「お酢のように酸っぱい」強烈な悪臭がした経験はありませんか?あれ、本当に萎えますよね。車の中や電車の中で周りの目が気になって仕方がないレベルになります。
この臭いの正体は、汗そのものではありません。汗に含まれる皮脂やタンパク質をエサにして増えた雑菌が発する臭いが原因になることがあるんです。厄介なことに、分厚いスポンジの奥深くに潜り込んだ雑菌は、表面を中性洗剤で洗ったくらいでは十分に減らせないことがあります。だから、洗って干した直後は「臭いが消えた!」と思っても、次に山に行って少し汗をかいて湿気を持つと、残っていた雑菌が再び活性化して、あの悪臭が蘇ってくることがあるんです。
この無限ループを断ち切るための最終兵器が、薬局で買える「オスバンS(逆性石鹸)」です。
使い方は、洗面器やタライに水を張り、オスバンSを規定の倍率(キャップを使って200〜500倍程度に希釈)で溶かします。ただし、ザックへの浸け置きはメーカー非推奨の可能性もあるため、素材や洗濯表示を確認し、目立たない箇所で試したうえで、臭いが気になるパーツ(外せるならパッドのみ、外せないならザックごと)は短時間の処理にとどめてください。これで臭いが軽減することがあります。
発生したカビには消毒用エタノール
テント泊で雨に降られ、下山してクタクタのままザックを車のトランクや湿気の多いクローゼットに数日放置……。これ、登山者なら一度はやってしまう失敗ですが、ザックにとっては最悪の環境です。数日後に出してみたら、表面や内側に白い斑点(カビ)がびっしり……なんてことになりかねません。
カビは「温度」「高湿度」「栄養分(汗や皮脂、泥)」の3つが揃うと一瞬で繁殖します。ここでパニックになって、お風呂場のカビキラー(次亜塩素酸ナトリウム系)などの強力な塩素系漂白剤を使いたくなる気持ちは痛いほど分かりますが、絶対にやめてください!
塩素系漂白剤を使うと、ナイロンの色が真っ白に色抜けするだけでなく、内側のポリウレタンコーティングなどの生地・パーツを劣化させる恐れが高く、ザックを大きく傷めてしまう可能性があります。
ザックに生えてしまったカビを安全に処理するなら、「消毒用エタノール(アルコール濃度70〜80%)」を使うのが正解です。アルコール濃度の目安としては、厚生労働省も物に付着したウイルス対策で70%以上95%以下のエタノールによる拭き取りに触れています(出典:厚生労働省「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」)。
処理した後は、ドライヤーの冷風(温風はNG!)などを当てて、すぐにアルコールを飛ばして乾燥させてください。これでカビの進行を抑えられることがあります。ただ、一度色素が沈着してしまった黒カビの跡などは完全には消えないことが多く、素材内部の菌糸まで完全に除去できるとは限りません。再発防止には乾燥と保管環境の改善が必要なので、やはり「使ったらすぐに干す」という予防が一番大切ですね。
登山用ザックを洗剤で洗う正しい手順
使うべき洗剤や、特殊な汚れに対するピンポイントな対処法がわかったところで、次はいよいよ全体の洗浄工程に入ります。ここでも、「どうやって洗うか」がザックの寿命を大きく左右します。間違った洗い方をすると、せっかくの愛着あるギアが一度の洗濯でボロボロになってしまうことも。
僕自身、UL系の繊細なザックを使うようになってからは、特にこの「洗い方」には神経を使うようになりました。生地に無駄なダメージを与えずに、本来のパフォーマンスを取り戻すための正しい手順を順番に解説していきますね。
洗濯機は原則不可で手洗いがおすすめ
まず最初にお伝えしておきたいのが、登山用ザックは基本的に洗濯機で洗ってはいけないということです。特に、コインランドリーにあるような大型のドラム式洗濯機に放り込むのは、ザックの破壊行為と言っても過言ではありません。
なぜ洗濯機がNGなのか。理由はいくつかあります。
一つ目は、強力な水流や回転による「物理的な摩擦」です。洗濯槽の中でザックがもみくちゃにされると、プラスチック製のバックルが割れたり、長いストラップが他の衣類や洗濯槽の隙間に絡まって生地が引き裂かれたりする危険性が非常に高いです。
二つ目は、内側の防水コーティングへのダメージです。洗濯機の強力な叩き洗いは、コーティングを広範囲にわたって剥離させてしまいます。
ただし、例外もあります。ペラペラのアタックザックや軽量なデイパックなどで、製品の洗濯表示タグに明確に「洗濯機可」と書かれている場合に限り、家庭用洗濯機を使うことができます。その場合でも、必ず以下のルールは守ってください。
基本的には、どんなザックであってもお風呂場の浴槽や大きなタライを使った「手洗い」が最も安全で確実な方法だと個人的には思います。手間はかかりますが、ギアの状態を確認しながら洗えるのが最大のメリットですね。
洗う前にパーツを外し内部を掃除する

手洗いを始める前に、絶対にやっておくべき重要な下準備があります。この工程をサボると、後で後悔することになりますよ。
まずは、ザックから外せるパーツはすべて取り外すこと。アルミ製や樹脂製の背面フレーム、ウエストベルトの分厚いパッド、チェストストラップ、取り外し可能な雨蓋など、分離できるものは全部外します。
フレームを入れたまま洗うと、生地がピンと張った状態になり、そこに摩擦が加わることで簡単に生地が破れてしまいます。また、パーツの接合部に洗剤の成分や汚れが残りやすくなるのを防ぐ意味もあります。
次に、ザック内部の完全な清掃です。
すべてのポケットやコンパートメントのジッパーを全開にして、ザックを逆さまにしてバサバサと振ってください。山に行くと、気がつかないうちに底の方に小石や砂、松葉、行動食のクッキーの欠片などが溜まっているものです。
押し洗いで生地へのダメージを抑える

準備ができたら、いよいよ浴槽での手洗いです。
浴槽にぬるま湯(お湯が熱すぎるとコーティングが傷むので30度前後が目安)を張り、そこにエマールなどの中性洗剤、または専用クリーナーを規定量溶かして洗浄液を作ります。そこにザック本体と、取り外したパーツを沈めます。
ここで守るべき鉄則は、「絶対にもみ洗い・こすり洗いをしない」ということです。
汚れを落とそうと生地同士をゴシゴシと強く擦り合わせると、表面のDWR(撥水加工)が物理的に削り取られてしまいますし、裏面のPUコーティングに細かいひび割れ(マイクロクラック)が入る原因になります。
要するに、「物理的な力で汚れを削り落とす」のではなく、「水の流れを利用して汚れを外に追い出す」イメージですね。
具体的には、両手でザック全体を優しく下に向かって押し込み、手を離して浮かせる、という「押し洗い」を繰り返します。背面パッドなどのスポンジ部分は、水をたっぷり吸わせたあとに、両手で挟んでゆっくりと水を押し出すようにします。この「水圧の変動」によって、繊維の奥の汚れが洗浄液の中に溶け出していきます。お湯がだんだん茶色く濁っていくのを見ると、ちょっと感動しますよ(笑)。
クッション材の水分をしっかり抜く

押し洗いが終わったら、汚れたお湯を捨てて綺麗な水に入れ替え、泡が出なくなるまで何度もすすぎを行います。すすぎ残しがあると洗剤の成分が生地に残り、撥水性を著しく低下させてしまうので、「もういいかな」と思ってからさらに1〜2回はすすぐくらいが丁度いいです。
さて、ここからが意外と苦労するポイントです。それが「水分の除去(脱水)」です。
先ほど「洗濯機の脱水機能は絶対に使ってはいけない」とお伝えしました。なぜかというと、ザックの生地は水を通さないように作られていますよね。防水生地の中に水が溜まった状態で洗濯槽が高速回転すると、逃げ場を失った水が遠心力によってものすごい圧力(静水圧)を生み出します。その結果、水風船が割れるように生地が引き裂かれたり、縫い目の止水テープが破裂したりするんです。最悪の場合、洗濯機自体が異常振動を起こして壊れるという大惨事になります。だから、脱水機は厳禁なんです。
じゃあどうやって水を切るかというと、物理的に吸い出すしかありません。
クッション材の中に水が残っていると、乾くまでにものすごく時間がかかり、その間にバクテリアが繁殖して「生乾き臭」の原因になってしまいます。ここでどれだけタオルドライを頑張れるかが、仕上がりの快適さを決めると言っても過言ではありません。
加水分解を防ぐ風通しの良い日陰干し
しっかり水分を吸い取ったら、最後の仕上げである「乾燥」です。
ここで絶対にやってはいけないのが、「早く乾かしたいから直射日光に当てる」ことと「乾燥機に放り込む」ことです。
ナイロンやポリエステルといった合成繊維は、太陽光に含まれる紫外線(UV)に非常に弱く、直射日光に当て続けると急激に色褪せたり、生地の強度が落ちて破れやすくなったりします。また、熱すぎる温度はパーツを変形させたり、シームテープ(縫い目の防水テープ)の接着剤を溶かしてしまいます。
乾燥させるための絶対条件は、「直射日光を避けた、風通しの良い日陰に干す」ことです。
ザックのすべてのジッパーを開け放ち、ポケットの中まで空気が通る状態にして、屋外の日陰や、換気扇を回した状態のお風呂場などに吊るします。クッションの奥まで完全に水分が抜けるには、季節にもよりますが数日はかかると考えてください。焦らずじっくり自然乾燥させるのがコツです。
登山のザックに最適な洗剤とケアまとめ

長くなってしまいましたが、いかがだったでしょうか。
今回は、登山のザックを洗う際の洗剤の選び方から、生地を長持ちさせるための具体的な手順までを詳しくお話ししました。
「登山 ザック 洗剤」と検索してこの記事にたどり着いてくれた方は、きっとご自身のギアをとても大切にされている方だと思います。ザックの洗濯は、確かに手間と時間がかかります。僕自身も、お風呂場で腰をかがめながら大きなザックを押し洗いしている時は、「めんどくさいなぁ」と思うことがあります(笑)。
でも、汚れや皮脂を放置して加水分解を早めてしまうより、適材適所で洗剤を使い分け、丁寧にケアをしてあげることで、ザックは驚くほど長持ちします。何より、綺麗になってシャキッとしたザックを背負うと、次の山行へのモチベーションがぐんと上がりますよね。
高いアルパイン用ザックならグランジャーズなどの専用クリーナーを、日常使いならエマールを。泥にはウタマロ、臭いにはオスバンS。この使い分けを覚えておくだけで、メンテナンスの質は劇的に変わるはずです。
お気に入りのザックをしっかりケアして、これからも安全で楽しい山歩きを続けていきましょう!YAMA-GO編集部のりょうでした。それでは、また山でお会いしましょう!