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下山で膝が痛い原因と対策|歩き方とポールで負担を減らす

下山で膝が痛い理由と、小股・静かな着地・ポールで負担を減らす対策

こんにちは、YAMA-GO編集部のりょうです。関西を拠点に、北アルプスを中心にULスタイルで山を楽しんでいます。このブログ「YAMA-GO」では、実際に使ったギアのレビューや選び方、山のノウハウなんかを発信しています。

登りは元気だったのに、下り始めた途端に膝がズキズキしてくる。あの感じ、つらいですよね。しかも下山は逃げ場がありません。自分の脚で降りるしかないのに、1歩ごとに痛みが増えていきます。

僕も初めての富士山で、下りの砂利道を3時間強ブレーキをかけ続けました。降りきったときには両足の指に5箇所の水ぶくれ。トレッキングポールを持って行かなかったことを、ずっと後悔していました。

この記事では1歩あたりの衝撃を減らす歩き方と、道具の効き目の実測値を整理します。自分のルートで何回着地するのかを出す手順まで、順番に見ていきましょう。

  • 登りは平気なのに下りだけ膝が痛くなる仕組み
  • 1歩あたりの衝撃を減らす歩幅と着地のしかた
  • ポールとサポーターの効き目の実測値と選び分け
  • 自分のルートの着地回数を出して対策を決める手順

下山の膝痛は小股・静かな着地・ポールで減る

下山の膝痛は、1歩あたりの落差と着地の衝撃を減らすことで軽くできます。歩幅を狭める、重心を落とし続けて静かに着く、ポールで荷重を分散する。この3つが土台です。

下山の膝痛対策を歩幅・着地・ポール・荷物・サポーターの5段階の優先順で並べた図
ゴウ
ゴウ

登りのほうがしんどいのに、痛くなるのは下りなんだね。なんで逆なの?

エネルギーを使うのは登りなんですけど、膝への衝撃は下りが本番みたいですよ。僕も下りでばかりやられています。

りょう
りょう

手を打つ順番も大事かなと思います。僕は効き目と手間を見て、次の順で考えています。

  • 歩幅を狭めて1歩の落差を下げる(費用ゼロ・今日からできる)
  • 重心を落とし続けて足裏全体で着地する(費用ゼロ・練習が要る)
  • トレッキングポールで両手に荷重を分散する(下りの実測で膝まわりの力が12〜25%減)
  • ザックの中身を減らす、同行者と荷物を分ける(費用ゼロ)
  • 膝サポーターで圧迫やぐらつきを抑える(症状を治す道具ではない)

痛くなってからの対処より、下りに入る前に決めておくことのほうが効きます。

決め手になるのは、そのルートの下りの総量、背負う重さ、下りに入る前にどれだけ脚を残せているか、日頃のトレーニング量です。どれも下山を始める前に確定しています。

裏を返すと、当日の下りでできることは限られています。だからこそ、行き先を選ぶ段階から膝の話は始まっているわけですね。

なお、膝が腫れている・熱を持っている・歩き始めから痛いという状態は別ものです。歩き方の工夫でしのぐ話ではないので、整形外科で診てもらってください。

登りは平気なのに下山で膝が痛む理由

下りでは脚の筋肉が引き伸ばされながら体重の3倍前後を受け止めます。登りとは筋肉の使い方も力のかかり方も違うので、登りが平気でも下りだけ痛むことが起こります。

登りと下りで太ももの筋肉の使われ方と膝への衝撃の違いを対比した図解

山と溪谷オンラインが2022年2月に実施した読者アンケート(483名)では、膝痛の悩みを抱えている人が88%でした。痛むタイミングは「下りで痛む」が約70%を占めています。

アンケートの回答者でみると、6割前後が下りで膝に来ている計算になります。あなたの脚が特別に弱いわけではありません。

同じアンケートでは、痛みが数時間で引く人が37%、1〜3日で引く人が41%。合わせて78%が3日以内に回復しています。多くは一過性ということですね。

だからこそ、一過性のダメージとそうでない痛みを見分ける線引きが要ります。その線は記事の後半で整理します。

伸びながら体重3倍を支えて筋肉が傷む

下りで脚の筋肉は、引き伸ばされながら力を出しています。伸張性収縮と呼ばれる使い方です。この使い方では筋の細胞が傷つき、筋力の低下や筋肉痛が起こります。

「下りで脚がガクガクする」は、その典型的な症状。膝そのものが壊れたのではなく、支える筋肉が先に音を上げている状態です。

下りの状況膝にかかる力の目安
階段(段差0.2m)を降りる体重の約3倍
0.5mの段差を飛び降り、衝撃を0.1秒で受け止める体重の約4倍

体重60kgの人なら、階段程度の段差で1歩あたり約180kgfです。公園で数回飛び降りるだけなら問題になりません。山では同じ衝撃を千回から数千回繰り返すので、蓄積して効いてきます。

面白いのは、日常の階段では多くの人が衝撃をほとんど受けていないことです。仕掛けは重心を一定の速度で落とし続けること。ステップごとに一旦停止すると、そこで衝撃が生まれます。

僕が初めての富士山で下山にかけたのは3時間強でした。8合目からずっと砂利の坂で、階段がなく自分の脚でブレーキをかけ続ける道。膝より先に足の指がやられて、両足で5箇所の水ぶくれができました。

登山の後半ほど膝が痛くなるのにも理由があります。整形外科専門医の解説では、下りの衝撃だけでなく、筋肉疲労で関節を支える機能が落ちることが挙げられています。

筋肉による関節のサポートは、長時間は続きません。「最後の1時間がいちばんつらい」は、気のせいではないわけです。

関連記事:登山の筋肉痛を防ぐ予防と回復法

膝の外側が痛いなら腸脛靭帯を疑う

痛む場所によって、疑われる組織が変わります。膝の皿の外側が痛むなら、まず腸脛靭帯が候補に挙がります。

痛む場所炎症を起こしている可能性がある組織
膝の皿の外側腸脛靭帯が大腿骨の一部と接する部分
膝の皿の真下膝蓋腱、またはその奥の膝蓋下脂肪体
膝の皿の上部大腿四頭筋腱が膝の皿と接する部分
膝の皿の内側下部鵞足(ハムストリングスと脛骨の付着部)

腸脛靭帯炎は、腸脛靭帯が大腿骨の外側上顆に擦れて起こる炎症です。公的病院のスポーツ外来の解説では、足が接地して体重がかかるときの膝外側の痛みが主症状とされています。

厄介なのは、膝が30度くらい曲がったあたりで摩擦が強くなる点です。下り坂では接地のときに膝の曲がりが浅くなるため、この角度を通りやすく、多発すると考えられています。

下りで外側だけ痛む人が多いのは、道具や根性の問題ではありません。角度の問題という説明が立つわけですね。

痛む場所からの推測は候補にすぎません。診断は医療機関でしか下せないので、自分の症状を病名に当てはめないでください。

登山ガイドやトレーナー側の整理では、登山者の膝痛のうち関節内部のトラブルは約2割。残りの約8割は関節の外側にある筋肉に由来するとされています。

疲れて硬くなった大腿四頭筋が、つながっている膝の皿の周囲に痛みを出すという説明です。関節が壊れたと思い込む前に、筋肉の疲労を疑う余地は大きいということですね。

重太郎新道の下りは片脚4000回の着地

自分のルートの下りが重いかどうかは、体力度では分かりません。見るべきは「累積下り標高差」のほうです。

「信州 山のグレーディング」が使うルート定数の式では、累積下り標高差の係数は0.6。累積登り標高差の係数10.0の、およそ1/17しかありません。

式が推定しているのは消費エネルギーなので、下りは確かに軽い。ただし膝と大腿四頭筋にとっては、下りこそ本番です。公式の体力度は、下りの膝の負担を表現していないわけですね。

そこで、公表されている累積下り標高差から着地回数を試算してみました。1歩で下る高さを15〜20cmと置いた概算です。

元にしたのは「信州 山のグレーディング一覧表」(長野県山岳総合センター作成・2026年4月更新版)の値です。1歩20cmという置き方は、国立登山研修所の資料が段を上がるときの足場の目安としている高さに合わせました。(出典:長野県『信州 山のグレーディング』)

ルート(起点)体力度累積下り標高差着地回数の試算
唐松岳(八方池山荘)30.95km約4,750〜6,300回
燕岳(中房温泉・合戦尾根)41.42km約7,100〜9,500回
前穂高岳(上高地・重太郎新道)41.62km約8,100〜10,800回
奥穂高岳(上高地・涸沢)72.08km約10,400〜13,900回
木曽駒→空木(千畳敷〜駒ヶ根高原)63.15km約15,750〜21,000回

同じ体力度4でも、燕岳の合戦尾根が1.42kmに対して重太郎新道は1.62kmです。左右交互に着地するので、8,100回なら片脚あたり約4,000回。体重60kgの人が約180kgfの着地を片脚4,000回繰り返す計算になります。

しかも重太郎新道は技術的難易度D。はしごと鎖が続き、1歩の落差が20cmで収まらない場面が増えます。同じ「体力度4」の枠に入っていても、膝が受ける衝撃の質は別ものです。

実際の登山道では1歩の落差が20cmを超える場面もあり、歩き方によっても歩数は変わるので、この試算はあくまで概算です。それでも桁を知っておくと、下りに向き合う気持ちが変わります。

自分のルートの着地回数の出し方

①山のグレーディング一覧表などで、行くルートの累積下り標高差を調べる。②標高差(m)÷0.2で、およその着地回数を出す。③その回数を「体重の3倍の力で受け止める」と考えて、ポール・歩幅・ザックの重さを決める。

僕は累積下り標高差が1kmを超えるあたりを、対策を切り替える線にしています。「気をつける」ではなく「道具と歩幅で1歩あたりの衝撃を減らす」に変えるイメージです。

下りだけが突出するルートもあります。木曽駒ヶ岳から空木岳への縦走は、累積登り1.36kmに対して累積下りが3.15km。ロープウェイで標高2,650mまで運んでもらい、標高860mの高原へ降りるためです。

「登りは楽だったのに下山で膝が終わった」が構造的に起きる形ですね。行き先を決める段階で下りの総量を見ておくと、当日の驚きが減ります。

膝の衝撃を減らす下りの歩き方

下りの歩き方では、1歩あたりの落差を下げるのが最優先です。受ける力は段差の大きさだけでなく、歩く速さや着地の姿勢にも左右されますが、落差が小さいほど1回ぶんの衝撃は下がりやすくなります。

膝に負担をかける下り方と負担を減らす下り方の姿勢を並べて比較したイラスト

歩幅を半分にすれば歩数は倍になります。下りの総量は変わりません。それでも1歩あたりが軽くなるほうが、膝には都合がいいわけです。

小股とフラット着地で落差を削る

国立登山研修所のセミナー資料が挙げる省エネ歩行の原則は、下りにもそのまま効きます。(出典:日本スポーツ振興センター国立登山研修所『安全登山オンラインセミナー』資料)

  • 足裏全体で着地する(フラットフッティング)
  • 歩幅は小さく
  • 後ろ足で蹴らない
  • 腕の振りは最小限

歩くピッチは1分間に60〜80歩程度が無理のない範囲とされています。段を降りるときは、一段が20cmくらいで済む足場を探すのがコツです。

大きな段差を1回で降りるより、小さな足場を2回踏むほうが1歩あたりは軽くなります。急いでいるときほど大きく降りたくなるんですけどね。

もうひとつ、後傾(へっぴり腰)を避けること。後ろに体重が残ると足が前に滑って尻餅をつきます。前傾なら足は後ろに滑るので、傾斜地では止まりやすい。

惰性で加速した前のめりの着地も避けたいところです。加速したぶんの衝撃は、膝を含む脚全体で受け止めることになります。ブレーキは脚ではなく歩幅でかける、と考えるといいかなと思います。

ジャンダルムの帰りに、天狗のコルから岳沢へ降りるルートを選んだことがあります。浮き石だらけの急なガレ場が延々と続き、何度も転けかけました。1歩ずつ足場を選び続けるしんどさは、岩場の恐怖とはまた別ものでした。

大きな段差は足首と股関節を縮めて下ろす

段差を降りるときは、膝だけで体重を受けないのが要点です。後ろ足の股関節・膝・足首の3つを同時に縮めて、体を下に移動させます。

登山ガイド側の解説では、大腿四頭筋の筋力強化だけでは膝痛は解決しないとされています。鍵になるのは足首と股関節の可動域。ここが動くほど、膝の担当分が減ります。

片足でしゃがんで降りるとき、前脛骨筋(すねの前の筋肉)を積極的に使うと膝関節への負荷を減らせる、という整理もあります。足首が固い人ほど、膝が肩代わりしがちです。

姿勢も効きます。猫背や巻き肩で前傾が強い人は重心が前に移り、後ろ足がうまく使えません。結果として膝に負担が集中します。

50cm以上の段差は、できれば避ける。やむを得ないときも飛び降りずに、重心を落としながら足首と膝を柔らかく使って着地します。

飛び降りは1歩で体重の約4倍。同じ道を数千歩降りることを考えると、割に合いません。

同じ歩幅で降り続けないことも挙げられています。段差を利用したり、階段が続くところで体の向きを変えたり。関節の曲げ伸ばしに変化をつけると、同じ場所への集中を避けられます。

ペースは会話ができるくらいが目安です。汗をあまりかかず、呼吸が整っている状態。下りは放っておくと速度が出るので、意識して落とす必要がありますよね。

ゴウ
ゴウ

小股で降りると時間がかかっちゃわない?日暮れが心配だなあ。

そこは計画の側で吸収するのが良さそうですよ。下りの時間を多めに見ておくほうが、膝を痛めて動けなくなるより安全かなと思います。

りょう
りょう

ポールと膝サポーターはどこまで効くか

トレッキングポールは、下りの実測で膝まわりの力が12〜25%減ったという報告があります。膝サポーターのほうは症状を治す道具ではなく、圧迫やぐらつきを抑える補助という位置づけです。

トレッキングポールありなしでの膝への負担の違いと膝サポーターの役割を示した図

道具の前にできる費用ゼロの4つ

①歩幅を狭める ②ザックの中身を減らす ③同行者と荷物を分ける ④累積下り標高差の小さい下山ルートに変える。着地で受け止めるのは体重と荷物の合計なので、担ぐ水の量を見直すだけでも脚の負担は変わります。必要な量は体重・行動時間・気温で変わるので、まず計算してから決めてください。僕は水場が確実な山なら1.5Lにとどめることが多いです。

道具はこの次です。買い足す前にできることが残っているうちは、そちらのほうが効きも早いですから。

ポールで膝の力は12〜25%減った

数字の出どころは、オーストリア・ザルツブルク大学の研究チームによる1999年の実験です。傾斜25度の下り斜面で、ポールあり・なしの歩行を比較しました。

被験者は男性8名。測ったのは地面反力、膝関節モーメント、脛骨大腿関節の圧縮力と剪断力です。そのピーク値と平均値で、12〜25%の減少が確認されました。(出典:Schwameder H ほか(Journal of Sports Sciences, 1999))

減った理由は2つ挙げられています。ポールに荷重を分散したこと。もうひとつは上体を前傾させる姿勢の変化で、膝にかかるてこの腕が短くなったことです。

8名・傾斜25度という条件付きの実測値です。「ポールで膝の負担が◯%減る」という一般化した数字が出回りますが、公表されている値はこの範囲にとどまります。

使い方にもコツがあります。長さは平地よりやや長めに。下りで平地のままだと前かがみになり、かえって膝が曲がってしまいます。

医師の解説では、体重を預けすぎず「4本の足で進むイメージ」でバランスを取る使い方が勧められています。全体重を預けると、崩したときにポールごと転びます。

僕は初めての富士山にポールを持って行かず、下りでずっと後悔しました。2021年10月に穂高でテント泊したときは、ポールを持って涸沢からパノラマコースを下っています。荷物の多いテント泊装備でも、両手を使えると1歩が置きやすくなります。

価格帯も見ておきましょう。2026年8月時点の公式価格(税込)です。

ブランド・製品価格主な仕様
モンベル アルパインポール8,000円アルミ・210g・使用105〜130cm
ブラックダイヤモンド トレイルバック13,900円アルミ・伸縮式
シナノ フォールダーUL14,300円カーボン・折りたたみ・約99〜104g・長さ固定
ブラックダイヤモンド トレイルビスタFLZ22,000円折りたたみ+長さ調節(95-110cm)
ブラックダイヤモンド ディスタンスカーボンZ29,400円カーボン折りたたみ・長さ固定

膝痛対策として選ぶなら、見る軸は本数・長さ調節・ロック方式・素材・収納長です。下りで荷重を両手に分けたいなら2本1組。行動中に長さを出せる調節式だと、下りで伸ばせます。

岩場や鎖場が混じるルートなら、畳んで仕舞える折りたたみ式が扱いやすい。長さ固定の軽量モデルは身長で選ぶ前提になるので、購入前に対応身長を確認してください。

ブラックダイヤモンド トレイルビスタFLZ

折りたたみと長さ調節を両立したモデル。下りで長さを出せて、鎖場では畳んで仕舞えます。価格や仕様は変わるので、正確な情報は公式サイトをご確認ください。

価格目安:22,000円(2026年8月時点・税込)

サポーターは目的と強さで選び分ける

膝サポーターは、サポートの強さと狙う部位で選び分けます。膝全体を軽く圧迫するタイプと、皿の下をピンポイントで押さえるバンドでは目的が違います。

代表的なザムスト(日本シグマックス)のラインアップで見てみましょう。2026年8月時点の公式価格(税込)です。

製品サポートレベル価格位置づけ
JKバンドソフト1,430円ヒザのお皿の下のトラブルに
EK-1ソフト3,025円全体の軽い圧迫・保護に
EK-3ソフト4,070円全体の圧迫・保護に
EK-5ミドル5,060円左右のグラつきの抑制に

選ぶときは装着方式(履くか巻くか)、厚みと通気、ズレにくさ、サイズも見ます。下りで数千回の屈伸を繰り返してもずり落ちないかは、けっこう大事な条件です。

効き目の位置づけも知っておきたいところ。『変形性膝関節症診療ガイドライン2023』では、膝装具と外側楔型足底板による装具療法は「弱く推奨」とされています。鎮痛と機能改善の効果は認められている、という水準です。(出典:日本整形外科学会『変形性膝関節症診療ガイドライン2023』)

同じガイドラインのサブグループ解析では、膝装具と外側楔型足底板に大きな効果が見られています。一方で靴と一本杖には、有意な効果が認められていません。副作用として皮膚の刺激感や不快感の報告があり、発生のリスク比は3.65。ただし外せば改善するとされています。

つまり、症状そのものを治す道具ではありません。痛みを抑えて動きを助ける補助、という理解が正確です。

腫れているときに強く締めるのは避けてください。炎症が強い状態では、締め付けが逆効果になり得ます。

よくある失敗もあります。サイズを合わせずに買ってずり落ちる。着けた安心感で歩幅が大きくなり、1歩あたりの衝撃が増える。どちらも本末転倒ですよね。

足の外側に体重が偏っている人は、サポーターより先に見るところがあります。登山靴の左右の靴底を並べて、外側の減り方を比べてみてください。

ザムスト EK-3

膝全体を圧迫するソフトサポート。まず軽い圧迫から試したい人向けです。痛みが続くときは道具で押し切ろうとせず、整形外科にご相談ください。

価格目安:4,070円(2026年8月時点・税込)

膝が痛くなった日の対処と再開の目安

下山中に痛みが出たら、その場でできるのは1歩あたりの負担を下げることだけです。歩幅、ポール、背負う重さ。この3つを歩きながら調整します。

  • 歩幅をさらに狭める。段差では横向きになり、小さな足場を選んで刻む
  • ポールを下り用に長くし、両手に荷重を分散する(体重は預けすぎない)
  • 背負う重さを減らす。同行者と分けられるものは分ける
  • 飛び降りない。大きな段差は重心を落としながら足首と膝を柔らかく使う
  • 下山後はアイシング。腫れや熱感が出ていないかを確認する
  • 痛みがその日のうちに引くかどうかを記録しておく

最後の記録が地味に効きます。数時間から3日以内に引く一過性なのか、歩き始めから痛い状態なのか。ここで扱いが変わるからです。

腫れや熱感が出たら整形外科へ

腫れ・熱感・水がたまる感じ・歩き始めからの痛み・休んでも引かない痛み。このどれかがあれば、整形外科で診てもらってください。

整形外科専門医の解説では、「少し休むと痛みが消える」なら大きな心配はないとされています。筋力不足で起こる「膝が笑う」状態が、これにあたります。

一方で「登山の途中からずっと痛い」「歩き始める前から痛い」は要注意。主な原因は使いすぎで、関節がぐらついて組織が削れ、炎症が起こるという説明です。

登山の回数が多い人やハードな登山をする人は、40代前半でも軟骨の傷みが生じることがあるとされています。過去の捻挫の影響が残る場合もあるそうです。

ここに挙げたのは一般的な目安で、個々の症状の診断ではありません。最終的な判断は医療機関にご相談ください。

整形外科では、問診と触診、関節の動きや腫れの確認、レントゲンやエコーでの確認が一般的です。治療は原因によりますが、まずは消炎鎮痛薬や湿布などの保存療法から入ります。ヒアルロン酸の関節内注射は、変形性膝関節症などと診断された場合に検討される治療になります。

認定スポーツ医の取材記事では、膝が腫れて痛みがある場合の受診が勧められています。あわせて、変形性膝関節症であっても重症度を知ってうまく付き合えば十分に登山はできる、という言葉も紹介されています。

受診は登山をやめる宣告ではありません。付き合い方を決めるための情報収集、くらいに考えてもいいのかなと思います。

いつから山に戻れるかの見きわめ

再開は日数ではなく状態で決めるのが基本です。痛みなく日常動作ができるか、柔軟性と筋力が戻っているか。この2つを見ます。

腸脛靭帯炎の保存療法では、2〜6週間の安静が置かれます。総説では、8週で復帰した完全治癒が44%、受傷から6か月での治癒率が91.7%と報告されています。

時間はかかるけれど、多くは戻れるということですね。焦って再開してまた痛めるほうが、結局は遠回りになります。

復帰の基準は「痛みが消え、腸脛靭帯の柔軟性が正常に戻ったとき」とされています。再発予防としては、股関節周囲と膝周囲の筋力を取り戻しておくことが挙げられています。

戻る順番は、累積下り標高差の小さいルートから。下りで痛みが出ないことを確かめてから、標高差を上げていきます。いきなり1kmを超える下りに戻さないほうが安全です。

「歩き始める前から痛い」「腫れている」「熱を持っている」「水がたまる感じがある」なら、自己判断で復帰しないでください。

大腿四頭筋は週2〜3回のスクワットで鍛える

次の下山に向けて、家でできる準備の中心はスクワットです。10回×3セットから始め、15回×5セットを週2〜3回できるところを目標にします。

下山に向けたスクワットのやり方と回数・頻度の目安をまとめた図

鹿屋体育大学の山本正嘉教授が挙げる、下山のダメージを減らす対策のひとつです。身体を降ろしていく局面で大腿四頭筋が伸張性収縮するので、下りと同じ様式の負荷がかかります。

段階量
初期10回 × 3セット
目標15回 × 5セット

足の幅は肩幅が一般的です。慣れてきたら広げたり狭めたりして、使う筋肉を変えていきます。頻度は週2〜3回。

スクワットと腹筋をそれぞれ15回×5セット、週2〜3回。これが苦にならずにできれば、一般的な登山に十分な筋力がついたと見なせるとされています。分かりやすい合格ラインですよね。

対策はほかにもあります。有酸素運動では、階段や坂道の下りに力を入れる。エレベーターの下りは自分の脚を使う、といった日常の工夫です。

いちばん効くのは軽登山の繰り返しだとされています。登山の頻度が高まるほど、筋肉痛の発生率は下がります。月1回程度より週1回程度を続けるほうが負荷に強い体をつくれる、という比較研究もあります。

方針は「軽い強度の運動を、高頻度で行う」。まとめて頑張るより、細く長くのほうが下りには効くわけです。

本番前の仕上げも紹介されています。1〜2週間前に、本番の半分くらいの負荷の登山を1回。これを1〜2か月の間に2〜3回できれば、繰り返し効果も加算されます。

僕は普段、軽い筋トレをする程度で体力自慢でもありません。槍ヶ岳に行ったときは運動不足がこたえて、槍平小屋から山荘まで標準4時間のところ4時間半かかりました。準備の量は、そのまま最終盤の脚に出ます。

体の偏りを見る方法もあります。登山靴の左右の靴底を並べて、外側の減り方を比べる。片方の外側だけ強く減っていれば、その足は小指側に体重が偏っています。

改善は、偏っている側の足で親指側に力を入れ、足裏全体に体重を乗せて脚が直立するように片足立ちする練習です。1日10〜20秒程度から始めます。

ゴウ
ゴウ

毎日じゃなくて週2〜3回でいいんだね。それならぼくにもできそう!

続けられる量がいちばん強いですからね。次の山の1〜2週間前に軽めの登山を1回入れておくと、さらに効くみたいですよ。

りょう
りょう

下山で膝が痛いときのよくある質問

トレッキングポールは1本と2本、どちらが膝には効きますか?

下りで荷重を分散する目的なら、2本1組のI型が向いています。両手に分けられるぶん、1本より分散できる量が増えるためです。1本のT型は体重をかけやすく手が疲れにくいので、腕の力に自信がない人や緩やかなコース向きとされています。どちらを選ぶ場合も、鎖場やはしごでは手を空ける必要があるので、畳んで仕舞える前提で選んでおくと安心ですよ。

「膝が笑う」のと膝の痛みは違うものですか?

「膝が笑う」は、下りで脚の筋肉が疲れて力が入らなくなる状態です。整形外科専門医の解説では、少し休むと痛みが消えるタイプなら大きな心配はないとされています。一方で歩き始める前から痛い、休んでも引かないという場合は使いすぎが疑われます。迷ったら、痛みが引くまでの時間を記録しておいてください。受診したときの説明もしやすくなります。

下山後にアイシングはしたほうがいいですか?

急性期は安静と冷却が原則とされているので、痛みが出た日は冷やして様子を見る形になります。そのうえで腫れや熱感が出ていないかを確認してください。冷やして落ち着くかどうかは、次の行動を決める大事な情報になります。腫れや熱が引かない場合は、次の山に行く前に整形外科へご相談ください。

登山靴やインソールを替えれば膝の痛みは防げますか?

靴だけで解決すると考えないほうが良さそうです。変形性膝関節症の診療ガイドラインでは、膝装具と外側楔型足底板に効果が見られたと報告されています。靴と一本杖のほうは、有意な効果が確認されていません。ただし足の形に合わせた対応はあります。回内足が強ければアーチサポート、O脚が強ければ外側楔状の踵補高が予防として挙げられています。自分に合うかどうかは専門家にご相談ください。

体重やザックの重さは膝の痛みに関係しますか?

関係します。着地で受け止めるのは体重と荷物の合計になるので、荷物が増えるほど脚が受け止める重さも増えます。減量については、変形性膝関節症のガイドラインに報告が紹介されています。運動療法に体重減少を加えた群は、運動だけの群より良い結果でした。10%以上減った群では、痛みが明らかに減ったとされています。すぐできるのはザックの中身の見直しで、給水できる山なら担ぐ水を減らすだけでも変わりますよ。

関連記事:登山のためのトレーニング|バテない体力づくりを実践から解説

まとめ:下山の膝痛は1歩の落差で決まる

ゴウ
ゴウ

下りに入る前にだいたい決まってる、っていうのが意外だったなあ。

そうなんですよね。ルートと荷物は出発前に、脚の残り具合は下りに入るまでの歩き方で決まりますから。当日は1歩を小さくすることに集中でいいかなと思います。

りょう
りょう

下山の膝痛は、1歩あたりの落差と衝撃の積み重ねで起こります。減らす順番は、歩幅、着地、ポール、荷物、サポーターの順です。

下山の膝痛が起こる仕組みと対策の優先順位、受診の目安をまとめて俯瞰した図
  • 下りでは脚の筋肉が伸ばされながら働き、階段程度の段差で体重の約3倍を受け止める
  • 膝の皿の外側が痛むなら腸脛靭帯が候補。腫れ・熱感・歩き始めからの痛みは整形外科へ
  • 累積下り標高差(m)÷0.2で、自分のルートの着地回数の目安が出る
  • 歩幅を狭め、足裏全体で着き、重心を落とし続ける。飛び降りない
  • ポールは傾斜25度の実測で膝まわりの力が12〜25%減。8名の小規模実験という条件付き
  • サポーターは症状を治す道具ではない。腫れているときに強く締めない
  • スクワットは10回×3セットから始め、15回×5セットを週2〜3回

価格や仕様は変わることがあるので、購入前に公式サイトをご確認ください。痛みが続くときや腫れがあるときは、無理をせず整形外科でご相談ください。

次の山では、下りに入る前にポールの長さを合わせて出しておく。それだけでも1歩の質は変わります。膝を守れれば、山はもっと長く楽しめますよね。

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