こんにちは、YAMA-GO編集部のりょうです。関西を拠点に、北アルプスを中心にULスタイルで山を楽しんでいます。このブログ「YAMA-GO」では、実際に使ったギアのレビューや選び方、山のノウハウなんかを発信しています。
冬に山へ行くとなると、まず「寒そうだから厚着でいこう」と考えますよね。僕も最初はそうでした。ところが歩き出して10分もすれば汗だくで、休憩のたびに震える。この失敗を何度もやっています。
この記事では、冬の低山から残雪の山まで、僕がどの区間で何を着て何を脱いだかを軸に、行動中は薄く歩き、止まるための保温着を別に持つという組み立て方を具体的にまとめます。手持ちの服でどこまで代用できるかも整理しました。
- 冬の低山で実際に使える3層の組み合わせと、山頂の気温の見積もり方
- 汗冷えを防ぐために脱ぐ・着るタイミングの具体的な判断
- 低山と雪山で装備が変わる境界と、レインウェアで足りなくなる線
- ユニクロやワークマンで代用できる層と、代用しにくい層
冬登山の服装は行動中こそ薄く
冬登山の服装で最初に決めたいのは、厚さではなく行動中と停滞中で別の服を使うという前提です。歩いている間は薄く、止まったら上から保温着を羽織る。この二本立てにするだけで、冬の失敗の大半は避けられます。

冬でも、体重60kgの人が6時間行動すると発汗量は約1,800mlになるという数字があります。ペットボトル3〜4本分と考えると、寒い季節でも体はしっかり汗をかいているのが分かりますよね。
その汗が生地に残ったまま足を止めると、体温はどんどん奪われます。水は空気の約25倍の速さで熱を伝えるので、濡れた服のまま風に当たるのは、薄着でいるよりずっと不利になります。
厚着で登り始めて汗をかくのが、冬の服装でいちばん多い失敗です
だから登り始めは少し肌寒いくらいがちょうどいいと言われます。歩き出して10分ほどで体が温まってちょうどよくなる感覚は、冬に限らず毎回そうだなと感じるところです。
寒い日に山へ行くのに、薄着で歩き出すのって勇気がいるね?
僕も最初は不安でしたよ。でも僕の場合は登り始めの寒さが10分ほどで気にならなくなるので、寒さの本番は止まったとき。そこに備えて別で1枚持っておく、という考え方なんです。
槍ヶ岳で防寒着が足りず凍えた話
夏の話になりますが、僕がいちばん寒さで参ったのは2018年8月末の槍ヶ岳です。新穂高温泉を5時半に出て、槍ヶ岳山荘に着いたのが14時40分。標準の8時間半に対して9時間ちょっとかかりました。
問題は2日目でした。天気予報は曇のち雨のち雷雨。小雨のタイミングを見て7時に穂先へ向かい、往復およそ50分で戻ったものの、山頂は強風と雨で記念撮影しかできませんでした。
そこから下山まで6時間45分、終日雨です。フリースかインナーダウンが1枚あればと何度も思い、結局は友人のジャケットを借りて凌ぎました。夏でも山頂は5℃くらいまで下がります。
この失敗で分かったのは、保温着は「寒い季節だから持つ」ものではなく止まる時間と濡れる可能性で決めるものだということ。冬はその条件が最初から揃っているので、迷う理由がありません。
このとき着ていたのは化繊の上下に、インナーとして約1,200円のスポーツタイツという構成でした。行動中の服としては悪くなかったのに、止まったときの1枚が抜けていた。足りなかったのは厚さではなく役割です。
12月の冬登山のレイヤリング例
12月の低山なら、中厚手のベース+薄手の行動着+防風防水のシェル、これに停滞用の保温着を別で1枚が基本形です。厚い1枚で暖かさを完結させず、薄い層を足し引きして調整します。

服を決める前に、その日の山頂がだいたい何℃になるかを見積もっておくと迷いません。標高が100m上がると気温は約0.6℃下がります。風のほうは「風速1m/sごとに体感温度が約1℃下がる」という簡易的な目安がよく使われますが、計算式によって出る数字はかなり変わるので、大づかみの見積もりと考えてください。
たとえば平地が10℃でも、標高1,000mの山頂なら約4℃。そこに風速10m/sが吹けば、この目安では体感が氷点下まで落ちる計算になります。実際の数値は式によって変わりますが、要は風が吹く場所は別の山だと思っておくということですよね。
麓の気温も参考になります。高尾山の麓に近い八王子の平年値では、12月の日最低気温の平均が0.8℃、1月は-1.8℃。低山でも朝は氷点下から始まる前提で考えておくと安心です。(出典:気象庁『八王子(東京都)平年値(年・月ごとの値)』)
| 想定する場面 | 上半身 | 下半身 | 別で持つ保温着 |
|---|---|---|---|
| 雪のない低山の日帰り(山頂0〜10℃) | 汗抜き用の薄いメッシュ+中厚手ベース+薄手フリース+レインウェア兼用シェル | 中厚手のパンツ(寒がりは薄手タイツを追加) | 化繊かダウンの保温着1枚 |
| 稜線や風の強い低山(山頂が氷点下) | 汗抜き用の薄いメッシュ+中厚手〜厚手ベース+フリース+防風シェル | 冬用パンツ+タイツ | 化繊インサレーションかダウンジャケット |
| 積雪期・森林限界より上 | 汗抜き用の薄いメッシュ+厚手ベース+行動着+ハードシェル | 冬用の防風防水パンツ+ベースタイツ | 厚めの保温着(泊まりならダウンパンツも) |
ハードシェル自体に保温力はほとんどありません。暖かさは中の層で作ります
表の3行目は、同じ「冬の服装」でも別カテゴリだと考えてください。どこからが雪山なのかの線引きは、後の章であらためて整理します。
低山日帰りの3層はメリノか化繊か
肌に触れる1枚は、汗が多い人は化繊、停滞が長い山行はメリノウールと分けて考えると選びやすいです。どちらが上ということはなく、乾く速さを取るか、濡れても保温が残る性質を取るかの違いですね。
| メリノウール | 化繊(ポリエステル) | |
|---|---|---|
| 乾く速さ | 遅い | 速い |
| 濡れたときの保温 | 残る | 落ちる |
| 匂い | つきにくい | つきやすい |
| 耐久性 | 穴が空きやすい | 強い |
| 向く人 | 停滞が多い・汗が少なめ・複数日行動 | 汗が多い・運動強度が高い・コスト重視 |
厚さは目付(1m²あたりのグラム数)で見ます。150前後が薄手、200前後が中厚手、250〜260が厚手。運動量の高い冬の行動着なら、200前後の中厚手が基準になります。
大事なのは、厚ければ暖かいわけではないという点です。厚手の1枚で暖かさを完結させると、汗をかいた瞬間に調整の余地が無くなります。薄い層を重ねるほうが冬は扱いやすいです。
予算の感覚もつかんでおきましょう。以下はメーカー公式サイトで確認した2026年8月時点の税込価格で、あくまで目安です。
| 層 | 価格の目安 | 重さ・仕様の例 |
|---|---|---|
| メリノの中厚手ベースレイヤー | 8,360〜9,570円 | 134〜195g |
| ウールと化繊の混紡ベース(低価格帯) | 2,500円前後 | ポリエステル70%・ウール30% |
| 行動用の薄手フリース | 8,400円前後 | 333g |
| 停滞用の軽量ダウン | 19,500円前後 | 190g・800フィルパワー |
| 防水シェル | 22,000円前後 | 254g・耐水圧20,000mm以上 |
| 雪山用ハードシェル | 3万円前後〜6万円以上 | 軽量素材から高耐久素材まで |
メリノ主体の製品とウール混紡の低価格品では、価格差が3〜4倍あります。ただ、樹林帯が中心の低山では価格帯を上げても体感差は小さいという声もあるので、最初の1枚は無理をしなくていいかなと思います。
買い足すなら優先度が高いのは、肌に触れる層と停滞用の保温着です。この2つは他のもので代用しにくく、外したときの影響が大きい。逆にフリースは手持ちのもので足りることが多いです。
下半身と手足は重ね着で調整する
ボトムスは行動中に脱ぎ着しづらいので、1本に暖かさを求めず、薄手のタイツを足して調整するのが現実的です。分厚い生地は蒸れて、結局は汗冷えの原因になります。
僕が槍ヶ岳で穿いていたのも、化繊のパンツにスポーツタイツを重ねる形でした。岩肌でのすり傷を防げますし、脚が疲れにくい感覚もあります。冬なら保温の1枚としても効いてくれますよ。
冬用パンツに求めたいのは、防風性・撥水(または防水)・透湿性・ストレッチ性の4つです。内側にタイツを重ねる前提なので、伸びる生地だと窮屈になりにくいです。
手袋は、雪の無い低山であれば防水は必須ではありません。保温と防風、それにスマートフォンを操作できるかどうかを優先していいと思います。雪山ではインナーとオーバーの2枚重ねが基本です。
頭と首は、放熱の調整弁として使いやすい場所です。ニット帽とネックゲイターの組み合わせが基本で、氷点下+強風ではバラクラバのほうが暖かい。暑くなったらゲイターを下げて通気するだけでも熱が抜けます。
靴下は厚くすれば暖かい、とは限りません。厚手を重ね履きして靴の中で足が圧迫されると、血流が落ちて逆に冷えます。凍傷のリスクにもつながるので、厚さより圧迫しないことを優先してください。
補助として使い捨てカイロもあります。メーカー公表値では貼るタイプで最高63℃・平均53℃・持続14時間ほど。低温やけどの心配があるので肌に直接貼らず、行動中は暑くなりすぎない範囲で使うのが無難です。
関連記事:冬の登山靴下は厚手でいい?靴のフィットと保温で決める厚さの選び方
11月と1〜2月の低山は12月から何を変えるか
12月の基本形を軸に、11月は保温を一段薄く、1〜2月は一段厚くずらすのが分かりやすいです。服の構成は同じで、厚みと小物で調整します。
高尾山の麓に近い八王子の平年値(1991〜2020年)で、月ごとの差を見てみます。
| 月 | 日平均気温 | 日最低気温 |
|---|---|---|
| 11月 | 11.1℃ | 6.4℃ |
| 12月 | 5.9℃ | 0.8℃ |
| 1月 | 3.4℃ | -1.8℃ |
| 2月 | 4.5℃ | -0.9℃ |
秋から冬への切り替わりは、11月から12月にかけてです。この1か月で日最低気温は5℃以上下がります。「秋冬の服装」で迷う時期は、ちょうどこの境目にあたります。
11月の低山なら、ベースは薄手〜中厚手で足ります。薄手フリースとレインウェア兼用のシェルに、停滞用の保温着を1枚。手袋とニット帽は軽いもので十分です。
1〜2月は、麓でも朝の平年値が氷点下です。山頂はそこからさらに標高差のぶん下がります。ベースは中厚手を基準に、寒がりなら厚手へ。手袋・ニット帽・ネックゲイターは必携にします。
保温着も、12月より余裕のある厚みを選びたい時期です。止まった瞬間から冷える条件がそろうので、休憩のたびに羽織る前提で取り出しやすい位置に入れておきます。
降雪のあとは、雪の無い低山という前提が崩れます。積雪や凍結があれば、上の表の2行目以降の装備に寄せてください
汗冷えを防ぐ脱ぎ着のタイミング

脱ぎ着の原則はシンプルで、汗をかく前に脱ぎ、寒くなる前に着る。この順番が逆になった瞬間に、冬の服装は破綻します。
速乾素材なら濡れても大丈夫、と思いがちですよね。でもメーカー(ファイントラック)の試験例では、完全に濡れた速乾生地が乾くまで約70分、綿では約210分かかっています。生地や気象条件で変わる数字ではありますが、その間ずっと熱を奪われ続けると考えると、乾かす力は保険で、濡らさない運用が本命だと分かります。(出典:ファイントラック公式『ドライレイヤー|WHY なぜ登山で着るのか』)
冬でもそんなに汗をかくんだね。雨のほうが濡れそうだと思ってたよ。
そこが落とし穴なんですよね。冬は雨や雪だけでなく、行動中の汗で内側からも濡れるんです。だから換気と脱ぎ着で先手を打つ感じですね。
濡れと風と停滞が重なると何が起きるか。2009年7月に北海道のトムラウシ山で起きた事故では、ツアー登山のガイドと参加者あわせて8名が低体温症で亡くなっています。夏の事故ですが、冬の低山にも重なる話です。
この事故の分析では、前日の雨で濡れた下着を着替えたかどうかが分かれ目のひとつだったと指摘されています。濡れたものを着たまま行動を続けない、という一点はしっかり覚えて帰ってほしいところです。
脱ぐのは登り坂の前、着るのは休憩前
判断は感覚ではなく場面で決めておくと迷いません。登り坂に入る前に1枚脱ぎ、動きを止めたら先に保温着を着る。この2つを守るだけでも汗冷えはかなり減ります。
| 場面 | やること |
|---|---|
| 登山口を出発する直前 | アウターと保温着を脱いでザックへ。薄い状態で歩き出す |
| 登り坂に入る前 | 汗をかく前に1枚脱ぐ |
| 汗ばんできたら | 前を開ける・脇の通気を開ける・ネックゲイターを下げて排熱する |
| 樹林帯から稜線に出る前 | 風に当たる前に防風シェルを着る |
| 休憩に入った瞬間 | 寒くなる前に保温着を羽織る |
| 休憩を終えて歩き出す前 | 保温着を脱ぐ |
| 下山を始めるとき | 登りより発熱が減るので1枚足すか考える |
脱ぐ前にできることも多いです。前のジッパー、脇の通気、袖まくり、手袋を外す、帽子を脱ぐ。まず換気で微調整して、それでも足りなければ脱ぐ、の順番だと手間が減ります。
もう一段こだわるなら、ドライレイヤーという薄いメッシュを肌に直接着る方法があります。撥水加工された生地の穴から汗が上のベースレイヤーへ吸い上げられ、肌の面に汗が残りにくくなる仕組みです。
注意点は2つ。上に吸水速乾のベースレイヤーを重ねて初めて機能することと、肌に密着するサイズを選ぶことです。緩いと汗が肌に残って意味が薄れますし、柔軟剤で撥水が落ちると性能も下がります。
それでも濡れてしまったときのために、肌に触れるもの(ベースレイヤーと靴下)は予備を1着ずつ持つのが定番です。日帰りでも、汗をかいた自覚があるなら長い休憩の前に着替えると冷えを断てます。
富士山8合目で長袖に替えた実録
実際の着脱の流れとして、2017年7月の富士山(吉田ルート)が分かりやすいので出しておきます。5合目で体を慣らしてから夕方に出発し、8合目の山小屋に泊まって、夜中に山頂へ向かう行程でした。
5合目から7合目まではTシャツにウィンドブレーカーのパンツだけ。登り始めは暑いくらいで、上着は着ていません。7合目から8合目に入ると汗と気温で寒くなり、ウィンドブレーカーの上を1枚足しました。
そして8合目で、半袖から長袖に着替えています。ここでも気温は5℃以下。下では暑いと感じていたのに上では本当に寒い、という落差が体で分かった場面でした。
山頂ではさらに、汗を吸った長袖を着替えてから防寒着とレインウェアを重ねました。ご来光待ちで30分ほど動かずにいると、濡れた服のままではとても耐えられないんですよね。
このとき唯一「持っていて良かった」と断言できたのがレインウェアでした。雨には降られなかったのに、風を通さない1枚として山頂待ちで必須だった。冬の低山でも、この使い方はそのまま当てはまります。
反省もあります。長袖にヒートテックを選んでいたので、休憩のたびに湿った生地が冷える感覚がありました。カイロも持たずに行ったので、待ち時間が長い山行では保険を1つ持つべきだったと思います。
関連記事:登山の汗冷え対策|服装の選び方と脱ぎ着で濡らさない運用
低山と雪山で冬の服装が変わる境界

服装が変わる境界は、季節ではありません。積雪の有無と量、森林限界を超えるか、標高と滞在時間、風。この4つの組み合わせで決まると考えると整理しやすいです。

本州中部では森林限界がおおむね2,500m前後にあり、この山域なら標高2,000m以内の山は樹林帯を歩く時間が長く、体感温度が比較的安定していることが多いです。ただし森林限界の高さは山域で大きく変わり、北海道の大雪山や日高山脈では1,000〜1,500m付近まで下がります。標高そのものではなく「その山で森林限界を超えるか」で見て、超えるなら高い防風性と雪への対策を備えたアウターを用意してください。
| 項目 | 雪の無い(少ない)低山日帰り | 積雪期・森林限界より上 |
|---|---|---|
| ベースレイヤー | 中厚手1枚 | 厚手、または汗抜き用メッシュ+厚手 |
| 行動用の中間着 | 薄手フリースかアクティブインサレーション | 同じ考え方(厚みは増やしすぎない) |
| アウター | レインウェア兼用のシェルで可 | ハードシェル(上下) |
| 保温着 | 化繊かダウン1枚 | 厚めのダウン。停滞前提で余裕をもたせる |
| 手 | 保温+防風の1枚(防水は必須でない) | インナー+オーバーの2枚重ね、予備も |
| 頭・顔 | ニット帽+ネックゲイター | バラクラバ、ゴーグル |
| 足元 | 3シーズン靴+チェーンスパイク | 冬靴+アイゼン、ゲイター |
同じ12月でも、麓の低山と高所では前提が二桁違います。八王子は日最低気温の平均が0.8℃、富士山の同じ月は-18.3℃で平均風速は15m/sを超える。装備の連続体ではなく別カテゴリとして扱うほうが安全です。
レインウェアで足りなくなる線はどこか
雪の無い低山なら、3シーズンのレインウェアを冬のアウターに流用できる場面が多いです。足りなくなるのは、積雪が本格化してアイゼンやハードシェルが前提になる山や、森林限界を超えて強風にさらされる稜線あたりから、と考えると分かりやすいと思います。凍結でチェーンスパイクを履く程度の低山なら、まだレインウェアで対応できることが多いです。
| 種類 | 防水 | 防風 | 使いどころ |
|---|---|---|---|
| レインウェア | 防水 | あり | 3シーズン+雪の無い冬の低山 |
| ソフトシェル | 撥水のみ | 高い | 行動中の防風着。雨具の代わりにはならない |
| ハードシェル | 防水 | 高い | 積雪期・雪山。生地が厚く雪山向けの作り |
よくある勘違いがソフトシェルです。防風性が高くて行動着としては快適ですが、撥水どまりなのでどんなに高性能でもレインウェアの代わりにはなりません。本降りや湿った雪では浸水します。
僕が長く使っていたのはコロンビアのグラスバレーという上下セットのレインスーツで、約15,000円でした。防水20,000mm・透湿10,000という値で、初めての富士山では山頂の防風着としてしっかり役目を果たしてくれました。
ひとつ注意があって、身長166cm・体重55kgでSサイズを選んだところ、厚く着込む時期は少し窮屈でした。冬に流用する前提なら、中に重ねるぶんのサイズ余裕を見ておくと安心ですよ。
積雪期の山ではアウターはハードシェルが基本になります。生地が厚く、フードがヘルメットに対応するなど作りが違う。ただし保温力はほとんど無いので、暖かさは中の層で作る点は低山と同じです。
服装と一緒に判断したいのが滑り止めです。凍結路面や踏み固められた雪ならチェーンスパイク、本格的な雪山や急斜面なら12本爪。標高や山の名前ではなく、その日の積雪状況と勾配で選ぶのが基本と言われます。
高尾山の遭難131人が示す低山の冬
「低山だから軽装で大丈夫」は、数字で見ると崩れます。令和6年の遭難者数は、標高599mの高尾山が131人で、富士山の83人より多いというのが実際のところです。
高尾山の131人は過去5年平均の86人から52%増、富士山も51人から62%増えています。人が多く入る山ほど数が出るのは当然ではありますが、標高の低さが安全を保証しないのは確かですよね。
警察庁の統計を見ると、態様別では道迷いが30.4%、転倒が20.0%、滑落が17.2%、疲労が10.2%と続きます。ここで注意したいのが、統計に「低体温症」という区分が無いことです。(出典:警察庁『令和6年における山岳遭難の概況等』)
低体温症に至った事案は、病気や疲労、悪天候などに分散して計上されているとみられます。統計からは件数を切り出せないので、項目名だけを見て「冬の寒さは大した要因ではない」とは読めません。服装の失敗は、動けなくなったあとの生死に効いてきます。
冬の低山でもうひとつ効くのが、日の入りの早さです。東京では12月上旬の日の入りが16時28分ごろ。行程が押せば、いちばん冷える時間に暗い道を歩くことになります。(出典:国立天文台暦計算室『日の出入り@東京(2026年12月)』)
だからこそ、保温着とヘッドライトはセットで考えたい装備です。冬は低温でバッテリーの減りが早く、連絡手段にも関わります。実際、遭難のうち27.2%は現場から携帯電話等で救助を要請しておらず、圏外やバッテリー切れもこの中に含まれます。
単独で歩く人は、もう一段の余裕を見ておきたいところです。単独登山の遭難者のうち死者・行方不明者は13.7%で、2人以上の5.9%より高い。装備を借りることも、判断を補ってもらうこともできませんから。
関連記事:冬用登山靴の選び方|冬靴が必要になる条件から逆算する
冬登山の服装はユニクロで足りるか
結論から言うと、肌に近い層はブランドより、まず素材で選びます。行動中に肌へ触れる層に綿とレーヨンを持ち込まない。このルールさえ守れば、手持ちの服でまかなえる部分はけっこう多いです。外側のアウターだけは、素材に加えてフードや裁断といった作りも見る必要があります。

ヒートテックってすごく暖かいのに、山ではだめなの?
だめというより、得意な場面が違うんですよね。あれは動かない日常の防寒に振り切った作りなので、汗をかき続ける行動着とは前提が別なんです。
ヒートテックは、レーヨンが汗の水蒸気を吸って発熱し、細いアクリル糸が空気の層を作って熱を保つ仕組みです。発熱のきっかけが吸湿なので、大量に汗をかく行動中は水分を抱えたまま乾きにくいという弱点があります。
組成を見ると分かりやすいです。超極暖のメンズはポリエステル35%・アクリル34%・レーヨン23%・ポリウレタン8%。「コットン」を冠するラインは綿の比率が高く、行動着としてはさらに不利になります。
僕自身、初めての富士山では長袖にヒートテックを使っていました。歩いている間はいいのですが、止まると湿ってひんやりする。あの感覚が汗冷えの入口なんだなと、後から腑に落ちた失敗です。
では全部だめかというと、そんなことはありません。ポリエステル主体の速乾ラインはベースレイヤーの代用として挙げられることが多いですし、フリースは素材がポリエステルなので行動着としてそのまま使えます。
ウルトラライトダウンも、中わたはダウン90%・フェザー10%。行動着ではなく停滞用の保温着として持つなら十分に選択肢です。富士山の山頂では、実際にこれを着ている人をたくさん見かけました。
ワークマンで代えられる層と限界
ワークマンは肌に近い層と行動着では代用しやすく、防水アウターと停滞用の保温着では登山用と差が出やすい、という整理になります。値段で選ぶというより、層ごとに向き不向きを見る感じですね。
たとえばウールと化繊の混紡ベースレイヤーは2,500円前後で手に入ります。ポリエステル70%・ウール30%といった組成のモデルが選べます。ただし素材表示は判断材料のひとつで、同じ表示でも生地の厚みや構造、フィットで着心地は変わりますし、同等の機能を保証するものでもありません。想定する季節と用途に合うかは、各製品の仕様で確認してください。
| 用途 | 代用のしやすさ | 見るポイント |
|---|---|---|
| ベースレイヤー | しやすい | 素材表示(ポリエステルやウール混) |
| 行動用の中間着 | しやすい | 通気性と軽さ |
| 停滞用の保温着 | 条件つき | 中綿量・収納サイズ・重さ |
| 防水アウター | しにくい | 重さ・動きやすさ・フードの作り |
| グローブ | 用途次第 | 雪が無ければ防水は必須でない |
防水アウターは、作業やバイク向けの設計だと重く、フードの作りや動きやすさが登山用と異なります。耐水圧10,000mm・透湿20,000クラスの製品もありますが、行動中の蒸れは実際に着て確かめたいところです。
街着の丈やシルエットも見落としがちです。腕を上げると裾が上がる、ザックのベルトと干渉する。歩き続けるとこの小さなストレスが効いてくるので、家で動作確認だけはしてから山に持ち込みたいですね。
ワークマンのダウン・中綿・フリース・防寒パンツを登山のどの層に当てられるかは、次の記事で商品ごとに判定しています。
関連記事:ワークマンの防寒着は登山で使える?冬の低山での選び方
停滞用の保温着はダウンか化繊か
まず「ダウンは行動中に着ていいのか」に答えると、よほどの極寒でない限り、行動中は着ないのが基本です。理由は2つで、オーバーヒートして汗をかくことと、その汗でダウン自体が濡れて保温力を落とすことですね。

冬の低体温のリスクは、寒さそのものより「汗で濡れた状態で止まること」から来ます。行動中に暖かい中綿を着るのは、そのリスクを自分から作りに行くようなものなんです。
そのうえで、ダウンか化繊かの選び分けです。軽さと収納性ならダウン、濡れへの強さなら化繊。行動中も羽織る可能性があるなら化繊、荷物を軽くしたいならダウン、という判断でだいたい合います。
| 種類 | 行動中 | 停滞時 | 濡れへの強さ | 主な弱点 |
|---|---|---|---|---|
| ダウン | 不向き | 最適 | 弱い | 濡れると保温力が落ちる・価格が高い |
| 化繊インサレーション | 寒い日は可 | 適する | 強い | 同じ保温力ならダウンより重く嵩張る |
| アクティブインサレーション | 最適 | 物足りない | 強い | 停滞用の保温着としては薄い |
| フリース | 適する | 中程度 | 濡れても保温が残る | 防風性が無い・嵩張る |
紛らわしいのがアクティブインサレーションです。名前は中綿ウェアですが、通気を優先した行動着寄りの設計。停滞用として買うと「思ったより暖かくない」となりがちなので、役割を取り違えないようにしたいところです。
選ぶときの数値としては、フィルパワーが目安になります。羽毛のかさ高を示す指標で、数値が大きいほど少ない量でかさを稼げます。アウトドア用なら700フィルパワーが品質の一つの目安とされますが、メーカーも説明しているとおりフィルパワーは軽量コンパクト性の指標で、暖かさそのものを表す数値ではありません。実際の暖かさは羽毛の封入量や作りで決まります。
運用面もひとつ。保温着はザックの一番上か外付けのポケットに入れておかないと、寒い場所で取り出すのが億劫になって、着ないまま冷えます。取り出しやすさも保温性能のうちかなと思います。
涸沢で濡らさず守ったダウン上下
上下で素材を変えた実例として、2021年5月の連休に涸沢ヒュッテへ泊まったときの装備を紹介します。残雪期なので雪山寄りの装備で、上高地を早朝に出て涸沢に着いたのが13時ころでした。
このとき持って行った停滞用の保温着が、ナンガのダウンジャケットと、パタゴニアのダウンパンツです。ダウンパンツと呼んでいますが、選んだのは中綿が化繊のタイプでした。
行動中は一度も着ていません。日中は暑くも寒くもなく快適に歩けたので、保温着はザックの中で乾いたまま夜まで温存できました。夜の涸沢は冷え込み、小屋に入ってから上下とも活躍しました。
上をダウン、下を化繊にしたのは、結果的に良かったと思っています。足元は雪に触れる時間が長く、座れば濡れた面に接する。濡れやすい側を化繊にする組み合わせは、残雪期や冬のテント泊でも応用が効きます。
足元はチェーンスパイクで通しました。ピッケルや12本爪までは要らないと判断した一方で、緩んだ雪に足を取られて進みにくく、雪面の状態しだいでは判断が変わるとも感じています。あくまでその日のコンディション次第ですね。
つまりダウンか化繊かは優劣ではなく、置き場所の話です。濡れる可能性が高い側に化繊を、軽さが効く側にダウンを。この日は停滞用の1枚として、どちらも行動中には着ませんでした。行動中も着続けるつもりなら、化繊の中綿か、通気を優先したアクティブインサレーションのような行動向けの中綿が候補になります。
冬登山の服装のよくある質問
冬の低山に一人で行くとき、服装で特に気をつけることは?
停滞用の保温着を必ず別に持ち、すぐ取り出せる位置に入れておくことです。単独登山の遭難者は死者・行方不明者の割合が13.7%と、2人以上の5.9%より高い数字が出ています。装備を借りることも判断を補ってもらうこともできないぶん、保温着に加えてツェルトや予備バッテリーまで含めて余裕を持たせてください。無理をせず引き返す判断も、いちばん確実な防寒だと思います。
手袋は防水じゃないとだめですか?
雪の無い低山であれば、防水は必須ではありません。保温性と防風性、それにスマートフォンを操作できるかどうかを優先していいと思います。ただし雪山では話が別で、素手での作業が凍傷につながるため、インナーグローブとオーバーグローブの2枚重ねに予備を足すのが基本です。濡らしたときに交換できる1組があると安心ですよ。
靴下は厚いほど暖かいですか?
厚さと暖かさは比例しません。厚手のメリノウールは空気の層を作るので保温には有利ですが、重ね履きして靴の中で足が圧迫されると血流が落ち、かえって冷えます。靴紐やアイゼンの締めすぎも同じことが起きます。厚くするより、圧迫しない状態を保つほうが優先だと考えてください。
12月の日帰りは何時までに下山するのが目安ですか?
東京では12月上旬の日の入りが16時28分ごろで、1年でいちばん早い時期です。ここから逆算して、暗くなる前に登山口へ戻れる計画にしておくと安心です。とはいえ行程は押すものなので、ヘッドライトと予備の電池、それに保温着はセットで持ってください。冬は低温でバッテリーの減りが早い点にも注意です。
冬用のアウターは新しく買うしかないですか?
雪の無い低山であれば、手持ちの3シーズン用レインウェアを冬のアウターに流用できる場面が多いです。中に重ね着するぶん、サイズに余裕があるかだけ確認してみてください。雪山用のハードシェルや冬靴のように使用頻度が低くて高価な装備は、レンタルという選択肢もあります。仕様や価格は変わるので、購入前に公式サイトで最新の情報を確認してくださいね。
冬登山の服装は薄く歩き止まる前に着る

結局、冬の服って何をいちばん覚えて帰ればいいのかな?
「行動中は薄く、止まる前に着る」ですね。あとは停滞用の1枚を別に持つこと。ここさえ押さえれば、あとはその日の山と天気で足し引きすればいいと思いますよ。
冬の服装は、厚さを競うものではなく役割を分ける作業です。歩く服と止まる服を分け、汗をかく前と寒くなる前に手を動かす。僕の失敗も、だいたいこの順番を守れなかったときに起きています。
- 行動中は薄く。登り坂に入る前に1枚脱ぐ
- 動きを止めたら、寒くなる前に保温着を羽織る
- 行動中に肌へ触れる層に綿とレーヨンを持ち込まない
- 停滞用の保温着は必ず別に持ち、取り出しやすい位置へ
- 雪の無い低山はレインウェアを流用でき、積雪期はハードシェルへ切り替える
- 気温は標高と風で決まる。麓の予報だけで判断しない
ここで挙げた数値や組み合わせは、あくまで一般的な目安です。同じ気温でも寒さの感じ方は人それぞれですし、山の状況は日によって変わります。製品の仕様や価格は公式サイトで最新の情報を確認してください。
体調や持病に不安があるときは無理をせず、必要に応じて専門家にご相談のうえで計画を立ててください。装備が整っていても、天気が崩れそうなら引き返す。その判断がいちばん効く防寒だと思っています。
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