こんにちは、YAMA-GO編集部のりょうです。関西を拠点に、北アルプスを中心にULスタイルで山を楽しんでいます。このブログ「YAMA-GO」では、実際に使ったギアのレビューや選び方、山のノウハウなんかを発信しています。
今回は、僕自身も最初に知りたかった登山靴の防水スプレーの選び方や使い方について、まとめてみます。
登山を始めたばかりの頃や、少し良い靴に買い替えたタイミングで、「せっかく買った靴を長持ちさせたいけれど、どう手入れすればいいんだろう」と悩む方は多いですよね。お店に行くとアメダスのような手軽なものから、ニクワックスやコロニルといった専門的なものまでズラリと並んでいて、どれが自分の靴に合うおすすめなのか迷ってしまうと思います。
特にゴアテックスなどの透湿素材が使われている靴だと、スプレーの成分を間違えると機能が台無しになってしまうこともあるので、慎重になりますよね。
また、いざ買ってみても、どのくらいの頻度で吹きかければいいのか、正しい使い方が分からずに、ただ適当にシューッとやっているだけになっていないでしょうか。実は、スプレーの吹きかけ方や事前の準備次第で、水弾きの持ちは変わってくるんです。
そこでこの記事では、僕がこれまでの山行で色々なスプレーを試行錯誤してきた経験をもとに、素材に合わせたスプレーの選び方から、撥水効果を長持ちさせるためのちょっとしたコツ、そして絶対に守るべき安全な使い方まで、分かりやすくお話ししていきます。
この記事を読めば、あなたの相棒である登山靴を、いつでもベストな状態に保てるようになります。なお、靴そのものを長く使う視点では、登山靴の寿命と買い替え目安もあわせて知っておくと、メンテナンスの判断がしやすくなります。
- 防水スプレーの成分による違いと自分の靴に合う最適な選び方
- ゴアテックスなどの透湿防水素材を長持ちさせるためのポイント
- 撥水効果を十分に引き出すための正しい下準備とスプレーの塗り方
- 絶対に知っておきたい使用時の安全ルールと適切なメンテナンス頻度
登山靴の防水スプレーの選び方とおすすめ
登山靴のメンテナンスにおいて、防水スプレー選びは最初の大きなハードルですよね。お店に並ぶたくさんのスプレーの中から、どれが自分の靴にとって一番「正解」なのか。僕も昔は「とりあえず水を弾けば何でもいいや」と適当に選んで失敗した経験があります。ここでは、スプレーの成分ごとの特徴や、代表的なおすすめブランドの仕組みについて、僕なりの実体験を交えながら整理してみたいと思います。
本題に入る前に、ひとつだけ用語の整理をさせてください。売り場には「防水スプレー」と「撥水スプレー」という2つの呼び名の商品が並んでいて、どっちを買えばいいの?と迷いますよね。言葉の定義としては、防水は「水を通さないこと」、撥水は「表面で水を弾くこと」を指します。
ただ、市販のスプレーに関していえば、防水スプレーも撥水スプレーも中身の役割はほぼ同じで、どちらも「生地の表面に撥水性を持たせる」ものです。スプレーで、ゴアテックスのような防水膜を後から作ることはできません。つまり呼び名がどちらでも、「靴の表面の水弾きを回復させるメンテナンス用品」と理解しておけばOKです。
スプレー選びは名前より中身
浸水そのものを防いでいるのは靴側の防水構造(ゴアテックスなどのメンブレン)で、スプレーはその性能を活かすための撥水ケアです。だから商品名が「防水」でも「撥水」でも、見るべきはこの後で解説する成分(フッ素系かシリコン系か)と対応素材の表示です。
スプレーの成分と対象素材の相性
防水スプレーと一口に言っても、実は中に入っている「水を弾くための成分」によって、得意なことや苦手なことが全く違います。これを理解せずに使ってしまうと、せっかくの高機能な靴の寿命を縮めてしまうことになりかねません。
大きく分けると、水を弾く主成分は「フッ素系(フッ素樹脂)」と「シリコン系(シリコーン樹脂)」の2つです。さらに剤型の違いとして、両方の長所を組み合わせたハイブリッドタイプや、石油系の溶剤ではなく水をベースにした「水性」タイプも増えてきました。
まず、従来は登山靴用としてスタンダードで、僕も普段から頼りにしてきたのが「フッ素系」のスプレーです。
近年はPFAS/PFCフリーの水性DWRも選択肢になっています。フッ素系の何がすごいかというと、生地の繊維一本一本にミクロのレベルで付着して、水を玉のようにコロコロと弾いてくれる点です。繊維の間の隙間を塞がないので、靴の中のムレ(水蒸気)を外に逃がす機能がそのまま生きるんです。
さらに、フッ素系は水だけでなく「油分」も弾いてくれるという特徴があります。山を歩いていると、皮脂や行動食の油分、油分を含んだ泥汚れなどが付くことが多いですが、これらを防いでくれるのは本当に助かります。ナイロンのメッシュ生地から革まで、幅広い素材に使える万能選手ですね。
一方で、「シリコン系」のスプレーはどうでしょうか。ホームセンターなどで安く売られているものは、このシリコン系が多いです。シリコン系は、生地の表面全体に薄い膜(フィルム)を張って水を防ぐ仕組みです。要するに、表面をコーティングするってことです。
水弾き自体は強力で、擦れにも強いんですが、最大のデメリットは「通気性・透湿性を低下させるおそれがある」ことです。透湿性のある登山靴にシリコン系を使ってしまうと、靴の中でかいた汗が逃げにくくなり、結果的に自分の汗で足が濡れやすくなることがあります。
僕も昔、安いからといってシリコンスプレーをトレッキングシューズに使い、足がふやけてひどい靴擦れを起こした苦い思い出があります。シリコン系は、傘やブルーシートなど、最初から通気性を必要としないものに使うのが正解かなと思います。
ポイント
フッ素系:繊維をコーティング。通気性を保ち、油汚れにも強い。従来の登山靴ケアの定番。 シリコン系:表面を膜で覆う。通気性・透湿性を低下させるおそれがあるため、透湿性のある靴には避けた方がよい。
「撥水スプレー」と「防水スプレー」で何が違うのか、靴の素材別にどの製品が使えるかは、次の記事で整理しています。
関連記事:登山靴の撥水スプレーの選び方|防水との違いとかけ方
ゴアテックスなど透湿防水素材への対応

防水仕様の登山靴には、ゴアテックス(GORE-TEX)に代表される「透湿防水素材」が使われているものが多いですよね。「外からの雨は防ぐけど、中の汗(水蒸気)は外に出す」という魔法のような素材です。
よく「ゴアテックスの靴に防水スプレーをしていいの?」と聞かれることがありますが、結論から言うと「透湿防水素材に対応したスプレーや、メーカー推奨の水性DWR回復剤でケアするのがおすすめ」です。
勘違いされがちなのですが、スプレーをする目的は「ゴアテックスそのものを防水する」ためではありません。ゴアテックスのフィルムは、靴の表地(ナイロンや革)と裏地の中間に挟まっています。もし表地の撥水性が落ちて雨水を吸い込んでしまうと、靴の表面に水の膜がベッタリと張り付いてしまいます。こうなると、せっかくのゴアテックスも水蒸気を外に逃がしにくくなり、靴の中が汗でムレやすくなってしまうんです。
つまり、表地の水弾きをキープして、ゴアテックスが呼吸できる「道」を確保してあげるためにスプレーが必要なんですね。
だからこそ、選ぶスプレーは「ゴアテックス対応」や「透湿素材対応」と書かれているもの、または靴メーカーが推奨する水性DWR回復剤を選んでください。GORE-TEXブランド公式のお手入れ案内でも、靴の表面が水を弾かなくなった場合はDWR加工を行い、水性のスプレータイプの撥水剤を使うこと、撥水ワックスやグリスは透湿性に影響する可能性があるため使用しないことが案内されています(出典:GORE-TEXブランド「フットウェアのお手入れ方法」)。ワックスやグリース系、膜を張るタイプのスプレーを使うと、ゴアテックスの呼吸を妨げることがあるので注意が必要です。
ゴアテックス靴にそもそもスプレーが要るのか、透湿を落とさない選び方と頻度は、ゴアテックス靴に絞った記事で詳しく解説しています。
関連記事:ゴアテックスの登山靴に防水スプレーは必要?蒸れない選び方
コロニルの強力な網目状ポリマー

さて、ここからは具体的なおすすめブランドについてお話しします。僕が個人的に「これはすごいな」と感動したのが、ドイツの老舗レザーケアブランドであるCollonil(コロニル)の「カーボンプロ」です。
これは従来のフッ素系スプレーからさらに進化した、次世代型のスプレーだと感じています。スプレーを吹きかけると、繊維の上にカーボン繊維に似た強靭な「網目状のポリマー保護膜」を作ってくれるんです。
要するに、細かい網戸で表面を覆うようなイメージですね。網目なので水滴のような大きな粒は強力に弾き返す一方で、靴の中の水蒸気のような極小の粒は、網目の隙間からしっかりと外へ逃がしてくれます。
実際に使ってみて驚いたのは、その「持続力」と「摩擦への強さ」です。岩場やヤブ漕ぎなどで靴が擦れても、この網目構造がなかなか壊れないので、長時間の過酷な山行でも水弾きが長く続きます。少し価格は張りますが、縦走などハードな登山をする方や、とにかく長持ちさせたいという方には、自信を持っておすすめできる一本かなと思います。
コロニル カーボンプロ 300ml
ニクワックスの優れた水性処方
もう一つ、熱狂的なファンが多いのがイギリスのブランド「NIKWAX(ニクワックス)」です。僕の周りのベテランハイカーでも、ニクワックス信者は結構多いんですよね。
ニクワックスの最大の特徴は、一般的なスプレー缶のようなガスや石油系の溶剤を使わず、「水」をベースにした処方で、弾力のある撥水ポリマー(エラストマー)を使っている点です(メーカーも water-based・非引火性と案内しています)。
水ベースなので、靴が少し濡れている状態でもそのまま塗り込むことができます。水と一緒に成分が繊維の奥深くまで浸透していき、乾く過程で繊維にしなやかに絡みついて定着するという仕組みです。ただ表面に乗っかっているだけじゃなく、繊維と一体化するような感覚なので、歩行で靴が曲がったり擦れたりしても、撥水成分が剥がれ落ちにくいんです。
なお、ニクワックスは用途ごとに製品が細かく分かれています。登山靴に使うなら、レインウェア用の「TX.ダイレクト」ではなく、フットウェア用のファブリック&レザープルーフ(革と化繊のコンビ素材向け)、ヌバック&スエードプルーフ(起毛レザー向け)、ウォータープルーフWAX革用(表革向け)から、靴の素材に合うものを選んでくださいね。
また、スプレー缶のように細かいミストを吸い込むリスクが低い(ポンプ式やスポンジで塗るタイプが多い)ため、扱いやすさの面では安心感があります。メーカーも水性・非引火性・PFASフリーであることを案内しています(効果や対応素材は製品表示をご確認ください)。特有の酸っぱい匂いが少しあるので好みは分かれるかもしれませんが、環境負荷が気になる方には有力な選択肢のひとつだと思います。
ニクワックス ファブリック&レザー スプレー EBE792
アメダスなど汎用スプレーの特徴
最後にご紹介するのが、日本の家庭で最もお馴染みであろうColumbus(コロンブス)の「アメダス」です。靴屋さんのレジ横などでよく見かけるアレですね。
「アメダスって登山靴にも使えるの?」と思うかもしれませんが、アメダスは登山靴にも使用可能とされる汎用スプレーです。ただし、ゴアテックスなどの透湿素材を使った登山靴では、靴メーカーのケア指示も確認してから使うのが安心です。
アメダスの魅力は、なんといってもその圧倒的な汎用性とコストパフォーマンスの高さです。大容量の缶が手頃な価格で手に入るので、登山靴だけでなく、普段履きのスニーカーや傘、カバンなど、家中のものに気兼ねなくシュッシュと使えるのが嬉しいですよね。
ただ、コロニルのカーボンプロやニクワックスのフットウェア用のような、より高機能をうたう製品と比べると、岩への擦れに対する耐久性や、過酷な泥汚れに対する防汚力という点では、やはり一歩譲るかなというのが僕の使用感です(同じ条件で比較試験をしたわけではないので、あくまで個人の感想として読んでくださいね)。なので、「日帰りのライトなハイキングがメイン」という方や、「とにかくこまめに安くメンテナンスしたい」という方にとっては、非常に優秀なスプレーだと思います。
メモ
ちなみに、革がメインで作られた重登山靴の場合は、単なる防水だけでなく「革への栄養補給(保革)」も必要になります。その場合は、トコ(TOKO)のシューズプルーフ&ケアなど、保革成分が含まれた専用のスプレーを選ぶと、革のひび割れを防ぎながら防水できて一石二鳥ですよ。
アメダス 防水スプレー 420ml
アメダスを登山靴に使うときの素材別の可否や、専用品との使い分けはこちらで詳しく解説しています。
関連記事:アメダス防水スプレーは登山靴に使える?効果と使い方
レザーとナイロンで変わるケア用品の使い分け
おすすめのスプレーを紹介してきましたが、もうひとつ大事なのが「自分の靴の素材に合っているか」です。登山靴のアッパーは大きく分けて、ナイロンなど化繊メインのもの(ゴアテックス入りを含む)、ヌバックやスエードといった起毛レザー、表面がツルッとした表革の3タイプがあります。素材ごとの基本の組み合わせを表にまとめてみました。
| アッパーの素材 | 基本のケア用品 | 注意したいこと |
|---|---|---|
| ナイロン・化繊メッシュ(ゴアテックス入り含む) | 透湿素材対応のフッ素系スプレー | 膜を張るシリコン系やワックスはムレの原因になりやすい |
| ヌバック・スエード(起毛レザー) | スプレータイプの保革・撥水剤 | ワックスや固形保革剤を塗り込むと起毛が寝て、質感が変わりやすい |
| 表革(スムースレザー) | 保革クリームやワックス+撥水ケア | 持続性は高いが、透湿素材入りの靴は対応表示を確認 |
悩ましいのが起毛レザーです。ワックスを塗り込むほうが持続性は高い(目安として、ローション<クリーム<ワックスの順に長持ちするとされます)一方で、あの起毛のマットな風合いは失われて、表面に光沢が出てきます。風合いを守りたいならスプレータイプ、質感が変わっても防水と耐久を優先するならワックスを少量ずつ、というのが定番の使い分けですね。
つま先やかかとだけレザーの複合素材の靴なら、基本は化繊向けの透湿対応スプレーでケアしつつ、レザー部分が乾いてきたと感じたら部分的に保革剤を足せば十分です。迷ったら、お使いの靴メーカーのお手入れ案内に従ってくださいね。
ケアしても撥水が戻らず、ソールもすり減ってきたなら買い替えのサインです。
関連記事:次の1足を選ぶなら登山靴ブランド比較もチェック
登山靴用防水スプレーの正しい使い方と頻度
どんなに高価で素晴らしい防水スプレーを手に入れても、使い方が間違っていれば効果を十分に発揮できません。僕も昔は、泥がついたままの靴に玄関でシューッと吹きかけて、「よし、これで完璧!」と思い込んでいました。でも、実はそれじゃダメだったんです。ここでは、撥水効果をしっかり引き出すためのアプローチと、絶対に守るべきルールについてお伝えします。
スプレー前の念入りな汚れ落とし

防水スプレーの効果を十分に発揮させるには、事前の汚れ落としがとても重要です。要するに、下地作りがめちゃくちゃ重要ってことです。
なぜかというと、生地に目に見えない土ぼこりや泥が付いたままスプレーをすると、靴の繊維ではなく「ホコリの粒」をコーティングしてしまうことになるからです。これではすぐに撥水効果が落ちてしまいますし、最悪の場合、スプレーの成分が汚れと混ざって強固なシミになってしまいます。
具体的な手順としては、まず最初に「靴紐とインソール(中敷き)を全部外す」ことから始めます。面倒くさいと思うかもしれませんが、靴紐の隙間や折り目(ベロの部分)には、一番砂や泥が溜まっているんです。ここを露出させずに手入れするのは不可能です。
次に、乾いた状態でシューブラシ(馬毛などの柔らかいものがおすすめ)を使って、表面の土ぼこりを徹底的に払い落とします。これだけでもかなり綺麗になります。
それでも落ちない泥汚れや、長時間履いて染み付いた油汚れがある場合は、濡らしたスポンジや専用のクリーナーを使って水洗いをします。繊維の奥の汚れまでしっかり浮き上がらせて洗い流すことで、フッ素樹脂が定着するための綺麗な「土台」が完成するわけです。洗浄手順をもう少し細かく確認したい方は、失敗しない登山靴の洗い方の記事も参考にしてみてください。
十字スプレー法で均等に塗布する

靴が綺麗になったら、いよいよスプレーの出番です。ここで意識してほしいのは、「適切な距離」と「均等な塗布」です。
スプレーのノズルを離す距離は製品ごとに指定が違うので、必ずラベルを確認してください。目安として、コロニルのカーボンプロは約20cm(30cm四方に4秒ほど)、ニクワックスのファブリック&レザープルーフは15cmと案内されています。近すぎると一箇所に液が集中してシミになりますし、遠すぎると空中に散ってしまって効果が薄れます。
そして、僕が実践しているおすすめの吹きかけ方が「十字スプレー法」です。
まず、靴のつま先からかかとに向かって、縦方向にスーッとスプレーを動かします。次に、同じ場所を横方向にスプレーを動かして重ねます。
ナイロンなどの化繊生地は縦と横に糸が織り込まれているので、違う角度から吹き付けると塗り残しが出にくいと感じています(ヌバックのように織物ではないアッパーでは、ムラなく行き渡らせる意識で十分です)。ただし二方向に重ねる分、量が増えすぎないように注意してください。あくまで製品表示の指定量・使用時間の範囲で、一箇所に液が溜まらないように常に手を止めずに動かし続けるのがコツですね。
塗布後は完全に乾燥させて定着させる

スプレーを吹きかけ終わったら、「よし、これで登れるぞ!」とすぐに出発してはいけません。ここからが我慢のしどころです。
スプレーした直後は、フッ素の成分が溶剤に溶けて表面に乗っているだけの状態です。ここから溶剤が揮発して、フッ素のポリマーが繊維にガッチリと結合する(定着する)までには時間がかかります。
乾燥時間は製品によって違い、たとえばコロンブスのアメダスは15分以上、ニクワックスのフットウェア用は時間を決めずに室温で自然乾燥、と案内されています。まずは製品表示の乾燥時間を必ず守り、そのうえで可能なら一晩ほど風通しの良い日陰でしっかり乾かすと安心です(ストーブなどでの急速乾燥は革のひび割れやソール剥がれの原因になるので避けてください)。溶剤が乾ききっていない状態で雨に濡れたり歩き出したりすると、せっかくの撥水層が流れ落ちてしまい、効果が出にくくなることがあります。
また、スプレーをする前の水洗いの後も同様です。靴が濡れたままフッ素系スプレーをすると、水が邪魔をして成分が定着しにくくなります。必ず「完全に乾いた靴」にスプレーをして、「スプレー後も完全に乾かす」。これが撥水効果を長持ちさせる大切な秘訣です。(※ニクワックスのフットウェア用のような水性タイプは、濡れたままの靴に塗るよう指定されていることもあるので、必ず製品の裏面の説明書を読んでくださいね。)
吸入事故を防ぐ屋外作業の絶対ルール

ここで、メンテナンスにおける最も重要で、命に関わる話をさせてください。
防水スプレー(特にガスを使ったエアゾールタイプ)を使う時は、いかなる理由があっても、絶対に「屋外の風通しの良い場所」で使用してください。
「玄関のドアを少し開けているから大丈夫だろう」「お風呂場の換気扇を回しているから平気だろう」というのは、本当に危険です。
なぜかというと、スプレーの微小なフッ素粒子を人間が吸い込んでしまうと、肺の奥深くにある「肺胞」まで到達してしまうからです。肺胞は酸素を取り込むために濡れた状態になっているんですが、そこに撥水成分が届くと、肺でのガス交換を妨げ、呼吸困難などを起こすおそれがあるんです。
こうなると重篤な呼吸困難や肺炎を引き起こすおそれがあります。過去にも、換気の悪い場所でスプレーをして救急搬送されたり、最悪の場合は命を落としたりする痛ましい事故が実際に起きています。消費者庁も、防水スプレーの細かい噴霧粒子が肺深くに到達し、肺でのガス交換に支障が生じることなどにより中毒事故が発生すると考えられるとして、風通しのよい屋外での使用や風向きへの注意を呼びかけています(出典:消費者庁「防水スプレーの吸込み事故に注意!」)。
注意
必ず完全に外に出る。風向きを確認し、自分が「風上」に立って、風下に向かってスプレーをする。スプレーの飛沫を絶対に吸い込まないようにする。
大切な道具を手入れして、安全に登山を楽しむための準備で事故を起こしてしまっては元も子もありません。このルールだけは、本当に厳守してくださいね。
定期的な薄塗りと適切な使用タイミング
最後に、「防水スプレーはいつ、どれくらいの頻度でやればいいの?」という疑問にお答えします。
「撥水が落ちてきたな」と感じてから、遅れを取り戻すように1本の缶を半分くらい大量に吹きかける人がいますが、実はこれはあまり意味がありません。繊維に定着できる成分の量には限界があるので、多すぎても流れ落ちるだけですし、シミや革が硬くなる原因にもなります。
正解は、「水を弾かなくなったタイミングや雨天山行前、洗浄後などに、製品指定量を守って薄く満遍なく塗布する」ことです。
僕が実践しているおすすめのタイミングは以下の2つです。
- 雨天山行前:
明日は雨の山に行くぞ、という前日の夜に、製品指定量を守ってサッと軽くスプレーしておきます。一晩乾かせば定着しますし、雨だけでなく、トレイルの泥汚れが繊維の奥に入るのを防ぐ「予防的バリア」として大活躍します。 - 洗浄後の仕上げ:
山から帰ってきて、泥をブラシで払い落として洗浄・乾燥した後、水を弾かなくなっている場合は撥水膜を補うように軽くスプレーします。これを適切なタイミングで行えば、靴を良いコンディションに保てますし、次の登山の準備もラクですよ。
梅雨時期の長期縦走など、雨に降られる可能性が高い時は、出発前に製品指定量を守って薄くスプレーし、しっかり乾かしておくと安心です。一度に大量使用したり、必要以上に何度も重ねたりするのは避けてください。
登山靴の防水スプレー運用と対策のまとめ
いかがだったでしょうか。今回は、登山靴の防水スプレーの選び方から、実践的な使い方、そして安全な運用方法までをお話ししてきました。
防水スプレーは、「雨に濡れないためだけのもの」ではなく、「水や汚れが表面に染み込むのを抑えて、アッパーの状態を保ちやすくする予防的なバリア」です(靴全体の寿命はソールの摩耗やミッドソールの劣化、保管状況にも左右されるので、スプレーだけで決まるわけではありません)。
自分の靴の素材(ゴアテックスなのか、革なのか)をしっかり把握し、それに合ったスプレー(透湿素材対応スプレー、コロニル、ニクワックスなど)を選ぶこと。そして、事前の汚れ落としをサボらず、屋外で安全に、適切な頻度でケアをしてあげること。これらを意識するだけで、靴の持ちは変わるはずです。
メモ
※この記事で紹介した成分の特性や使い方の目安は、あくまで僕の経験や一般的な知識に基づくものです。スプレーの成分表示や、お持ちの登山靴のメーカーが推奨するケア方法(公式サイトの案内など)は随時アップデートされる可能性があります。実際に使用する前には、必ず製品の裏面の注意書きや、公式サイトの最新情報をご確認くださいね。判断に迷った時は、アウトドアショップの店員さんなど専門家に相談するのもおすすめですよ。
お気に入りの相棒をしっかりメンテナンスして、安全で快適な山歩きを楽しんでいきましょう!YAMA-GO編集部のりょうでした。
100均のスプレーで代用できるか気になる方はこちらも参考になります。
関連記事:100均の防水スプレーは登山靴に使える?専用品との違い
スプレーを吹いても浸水する場合は、撥水切れ以外の原因も考えられます。
関連記事:スプレーで防水が戻らないときは?浸水の原因別の復活方法
