こんにちは、YAMA-GO編集部のりょうです。関西を拠点に、北アルプスを中心にULスタイルで山を楽しんでいます。このブログ「YAMA-GO」では、実際に使ったギアのレビューや選び方、山のノウハウなんかを発信しています。
テント泊の夜、寒さで何度も目が覚めたり、隣のいびきで寝付けなかったりしませんか。重い荷物を背負って稜線まで来たのに、朝までうとうとするだけ。これはけっこうつらいですよね。
僕も紅葉の時期に穂高岳山荘のテント場に泊まった夜は、しっかり冷え込みました。この記事では、眠れない原因を4つに分けて、今夜からできる対策と買い足しの順番を整理します。
- 眠れない原因の4分類と、夜中に起きたサインからの見分け方
- 寒い夜は寝袋より先にマットを見直す理由と、お金をかけない底冷え対策
- 傾いた区画での寝る向き、耳栓・アイマスク・代用枕の使い方
- 高山病の見分け方と翌日の行動の調整、買い足すギアの優先順位
テント泊で眠れない原因は寒さ・寝床・音・高所と体調
テント泊で眠れない原因は、寒さ(底冷え)・寝床(硬さと傾き)・音と光・高所と体調の4つにほぼ分けられます。原因ごとに効く対策が違うので、まず自分がどれに当てはまるかを見分けるのが近道です。

テントで寝ると、どうして家みたいに眠れないの?
僕も最初は「慣れないからかな」で片付けていました。でも原因を分けてみると、手を打てる部分が多いみたいですよ。
へえ、そうなんだ!じゃあ一緒に分けてみよう。
山のテント場には、オートキャンプ場とは違う事情があります。稜線は夜に冷え込み、地面は岩が多くて傾いている。隣のテントとの距離も近めです。
さらに北アルプスの稜線テント場は、穂高岳山荘で標高約2,983mあります。この高さそのものが、眠りに影響するんですよね。
複数の原因が重なることも多いです。たとえば傾いたテントで体がマットからずり落ちると、床に直接触れて底冷えします。「寒い」と感じたときも、寝床の問題が隠れていないかを一緒に見ておくと安心です。
夜中に目が覚めたサインで原因を見分ける
原因を見分ける手がかりは、目が覚めたときの体の状態です。背中が冷えていたのか、体がテントの下側に寄っていたのか。思い出せる範囲で、下の表に当てはめてみてください。
| 原因 | 夜中に起きたときのサイン | 対策の方向 |
|---|---|---|
| 寒さ(底冷え) | 背中・腰・足先が冷えて起きる。明け方に目が覚める。体を丸めないと眠れない | マット→寝袋の温度表記→着込みと就寝前の行動の順に見直す |
| 寝床(硬さ・傾き・枕) | 寝返りのたびに起きる。朝、テントの下側に体が寄っている。首や肩が痛い | 整地と寝る向き、マットの厚さと空気量、枕 |
| 音と光 | 隣のいびきや話し声、早朝の撤収音、フライのばたつき、ライトの光で起きる | 耳栓・アイマスク、張る場所、張り綱の張り方 |
| 高所・体調 | 頭痛を伴う。呼吸が浅くなったり深くなったりして起きる。トイレで何度も起きる | 睡眠高度の管理、水分・食事・飲酒の調整 |
明け方に冷えて起きるのは、放射冷却で気温が下がる時間帯と重なるためです。一方、夜通し何度も目が覚めて頭まで痛いなら、寒さより高所の影響を先に疑います。
頭痛を伴う場合は安全に関わるので、ほかの原因より先に高山病の章を確認してください。それ以外は、表の上から順に見直すと整理しやすいかなと思います。
寒くて眠れない夜は寝袋より先にマットを疑う
寒くて眠れないとき、最初に見直したいのは寝袋ではなくマットです。寝袋の温度表記は、断熱性の高いマットの上で測った値だからです。マットが薄いと、寝袋の性能は表記どおりに出ません。

マットの断熱性能は「R値」で表されます。体から冷たい地面へ熱が逃げるのを、どれだけ妨げるかを示す数値です。マット自体が暖かいかどうかの数字ではありません。
寝袋の温度試験に使うマットは、R値に単純換算すると約4.8にあたります。試験法が違うので厳密には比べられませんが、かなり断熱の効いた床で測っているわけです。寝袋メーカーのSea to Summitも、R値が4より低いマットでは表示温度に届かない場合があると説明しています。
地面への伝導で失う熱は、空気へ逃げる熱より大きいとされます。背中側の断熱が足りないと、寝袋を厚くしても下から冷えてしまう。寝袋より先にマットを疑う理由はここにあります。
| 季節・用途 | 国内メディアの目安 | 米国メディアの目安 |
|---|---|---|
| 夏 | R値1〜2 | R値1〜3 |
| 春〜秋(3シーズン) | R値2〜4(初秋は3.5以上を推す例あり) | R値3〜5 |
| 冬 | R値4以上 | R値5以上 |
| 厳冬期 | R値6以上 | - |
メーカー公式の統一基準はなく、目安には販売店やメディアで幅があります。表の数字はあくまで一般的な目安として、泊まる場所の冷え込みと照らし合わせてください。
穂高岳山荘のテント場で寒くて小屋へ逃げた夜
僕は2021年10月6〜7日に、仲間と穂高岳山荘のテント場に泊まりました。1日目は上高地から岳沢、前穂高岳、奥穂高岳と歩き、テント場に着いたのは17時すぎ。寝袋はナンガ オーロラライト350DX、マットはニーモ ゾア(20R)でした。
夜はしっかり冷え込みましたが、穂高岳山荘はテント泊でも小屋の中を利用できます。小屋の中に入って寒さを凌げたのは、本当に助かりました。テントの中では、内側の生地に結露の水滴が付いていたのも覚えています。
防寒用に、桐灰の「マグマ」というカイロもテントに持ち込んでいました。ただしカイロは、公的機関が就寝時には使わないよう案内しています。寝るときの使い方は、このあとの底冷え対策で触れますね。
あとから数字を当てはめてみると、寒かった理由がよく分かります。気温は実測ではなく、松本の平年値から高度で換算した概算です。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| テント場の標高 | 約2,983m |
| 10月の日最低気温の概算 | 約-5〜-6℃(上旬はこれより高め、下旬は低め) |
| オーロラライト350DXの温度表記 | 快適5℃/下限0℃(販売店表記の突き合わせ) |
| ゾア(20R)のR値 | 2.7(厚さ2.5cm) |
10月の3,000m級の稜線は、寝袋の下限温度0℃を下回りうる気温です。しかもR値2.7のマットでは、試験条件より背中から熱が逃げやすい。寝袋の表記温度にさえ届かなかった可能性があります。
この夜の反省は「寝袋が薄かった」より「地面側の断熱が足りなかった」です。R値は足し算できるので、ゾアにZライト ソル(R値2)を重ねれば4.7相当になります。寝袋を買い替える前に、まずマットを重ねる手がありました。
もう一つの反省が到着時刻です。山荘は現在、15時までの到着を求めています。日が暮れる時間帯に稜線を歩くと冷えも疲れも重なるので、今思えばかなり遅い到着でした。
結露で寝袋が濡れると保温力が落ちる

寒さのもう一つの原因が結露です。結露の発生源は人の体で、テントメーカーのアライテントは「結露は必ず発生する」と説明しています。穂高岳山荘の夜に生地へ付いていた水滴も、まさにこれでした。
人は1日に2Lの水を摂ると、約0.7Lを皮膚や呼吸から出すとされます。その水蒸気が、放射冷却で冷えたテントの生地に触れて水滴や霜になる。寝袋が壁に触れると、その水分を吸ってしまうわけです。
ダウンも化繊も、繊維のあいだの空気で体温を保っています。水の熱伝導率は空気の約23倍あります。濡れると断熱が一気に落ちるのはこのためです。
連泊ほど寝袋に湿気がたまり、保温力は少しずつ下がっていきます。結露を寝袋に移さないために、次の点を意識してみてください。
- 静かで乾いた夜は、出入口やベンチレーターを開けて換気する
- 寝袋をテントの壁に当てない
- 朝は霜や水滴を振り落としてから片付ける
- 壁際で寝るなら、シュラフカバーで寝袋を守る
シュラフカバーを使うなら、透湿性のある素材が基本です。透湿性の低いカバーは、寝袋の中の湿気を閉じ込める方向に働くとされています。
お金をかけずに今夜からできる底冷え対策
マットを買い足す前に、手持ちの装備でできることはたくさんあります。お金のかからない順に並べると、最初は地面からの断熱を足すことです。
- ザックや空のスタッフバッグ、着ない衣類をマットの下(特に腰〜足)に敷く
- エアマットは夕方に空気を足し直す(冷えると中の空気が縮んで薄くなる)
- 汗で湿ったベースレイヤーや靴下を、乾いたものに着替える
- ダウンジャケット・ニット帽・ネックゲーターで頭と首を覆い、寝袋のフードを絞る
- 夕食をしっかり食べ、夜中用の行動食を手元に置く
- 寝る直前にトイレへ行く
- 小屋の土間や食堂が使えるなら、冷え切る前に体を温める
寝袋のドラフトチューブをジッパーに沿わせて、最後まで閉めるのも基本です。極地冒険家のエリック・ラーセンも、乾いた状態で寝ることや地面から断熱することを挙げています。どれも荷物が増えないので、次の山行からすぐ試せますよ。
寝る前にトイレを済ませておくのも基本です。夜中に尿意で目が覚めて、寒いテントの外へ出る回数を減らせます。
ナルゲンボトルに熱湯を入れて、寝袋を温めておく方法もあります。ただし熱湯入りボトルの表面は、44℃を大きく超えます。44℃でも3〜4時間触れ続けると、低温やけどになりうる温度です。
湯たんぽとカイロの注意
NITE(製品評価技術基盤機構)は、湯たんぽで寝具を温めたら寝る前に取り出すよう案内しています。使い捨てカイロは「就寝時には使わない」が公的な注意です。寝袋の中で熱がこもり、表示の最高温度を超える場合があります。(出典:NITE(製品評価技術基盤機構)『就寝時の“足元”暖房にご用心!』)
それでも震えが止まらない、手先が利かないときは、低体温症の初期の可能性があります。小屋に空きがあれば、小屋泊への切り替えを相談するのが最後の判断です。無理をせず、早めに山小屋のスタッフに声をかけてください。
テント場の傾斜と硬さは寝る向きと敷き物で整える
傾いた区画や岩の多い地面で眠れないときは、頭を斜面の上にして寝て、足元とマットの下に敷き物を足すのが基本です。地面は変えられないので、寝る向きと厚みで調整します。
稜線のテント場は岩が多く、地面が傾いていて張れる数が限られます。穂高岳山荘のテント場は約60張・先着順で、地面に書かれた番号から区画を選ぶ方式です。遅く着くほど、傾いた区画や岩の多い区画しか残らないのが現実ですよね。
平らな区画を取るためにも、安全のためにも、早めに着く行程を組むのがいちばんの対策です。そのうえで、残った区画で眠りやすくする工夫を見ていきます。
傾いた区画では頭を上にして滑りを止める
最も一般的なのは、斜面に沿って頭を上にして寝る方法です。頭を下にすると、一晩中頭に血が上る、鼻が詰まるという声が多いです。傾きが強いときは、足元側にザックや衣類を置いて体の滑りを止めます。

| 方法 | 具体的なやり方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 斜面に沿って頭を上にする | 足元側にザックや衣類を置いて体の滑りを止める | 頭を下にすると血が上る・鼻が詰まるという声が多い |
| 斜面と直角に寝る | 頭と足を水平にそろえ、下側のマットの縁に衣類を詰めて段差を埋める | マットから転がり落ちやすいと感じる人もいる |
| エアマットの空気を少し抜く | 体の重い部分が沈み、傾きを吸収する | 抜きすぎると底付きして底冷えする |
| マットの滑りを止める | 滑りにくい面を下にする、マット裏に滑り止めテープを貼る | 寝袋が滑るならマットスリーブやストラップで固定する方法もある |
| 整地 | 設営前に石や小枝を取り除く | 指定地外の整地や溝掘りは自然への影響が大きい |
直角に寝る場合は、出入口を斜面の上側に向けておくと安心です。テント内で落とした物が、出入口から転がり出にくくなります。
空気を抜く方法は便利ですが、寒い夜はほどほどにしてください。寝心地と暖かさはトレードオフになる、と覚えておくと迷いにくいかなと思います。
設営場所は、沢の底のような低い場所を避けるのが基本です。冷気がたまりやすく、霜もできやすいとメーカー各社が説明しています。
枕は衣類を詰めたスタッフバッグで代用できる
首や肩が痛くて起きるなら、枕を見直します。スタッフバッグに着替えやダウンを詰めれば、荷物を増やさずに枕が作れます。
ただ、寒い夜は防寒着を着て寝るぶん、枕の詰め物が減ります。代用枕がしぼんだり、寝返りでずれたりするのはこのためです。丸めたタオルや衣類だけだと、さらにずれやすくなります。
横向きで寝る人は、肩や腰が地面に当たって「硬くて眠れない」になりやすいです。この場合も、まずは肩と腰の位置に衣類を敷いて厚みを足してみてください。それでも合わなければ、最後の章で触れるエア枕や厚いマットを検討します。
隣のいびきや早朝の物音は耳栓とアイマスクで防ぐ
テント場の音と光には、フォーム耳栓とアイマスクの組み合わせがいちばん手軽です。どちらも小さく軽い小物で、荷物の負担がほとんどありません。
テントの布って、音はあまり防げないの?
ほとんど素通しみたいですよ。隣が近いテント場ほど、いびきも話し声も届きやすいですよね。
それじゃあ、どんな音が多いのか確かめてみよう。
山のテント場は区画が狭く、隣と張り綱が交差するほど近いことも多いです。テントの生地は音をほとんど遮りません。夕食後の話し声に加えて、早朝は出発準備や撤収の音が続きます。
| 音・光の発生源 | 時間帯 | テント場の事情 |
|---|---|---|
| 隣のいびき・寝息 | 夜通し | 混雑期の人気テント場ほど距離が近い |
| 話し声・食器の音 | 夕食後 | 小屋の消灯は20時30分〜21時。テント場に静粛時間を掲げない小屋も多い |
| 出発準備・撤収 | 3〜5時台 | 夜明け前から歩き始める人が多い |
| フライのばたつき・張り綱の振動 | 稜線の夜 | 強風地が多い。しっかり張ると音も揺れも減る |
| ヘッドライトの光 | 夜中・早朝 | 隣のライトが生地越しに入る |
耳栓の遮音性能はNRRという値で表され、使い捨てのフォーム耳栓では NRR 33dB が最高クラスです。ただし試験での値なので、実際に耳に入れたときの効果は小さくなります。米国労働安全衛生局の換算では、NRR 33 の実効の目安は約13dBです。
いびきの音量は研究で幅があり、平均で約58dBという報告もあります。実効で10〜15dB下がれば、いびきが気になりにくくなることは期待できます。ただし聞こえ方には個人差があり、完全に消えるわけではないので、過度な期待は禁物ですね。
フォーム耳栓は、指で細く丸めて耳に入れ、膨らむまで数十秒押さえます。正しく入っていないと、表示どおりの遮音値は出ません。使い捨てでは、モルデックスのカモプラグなど NRR 33 を表示する製品が定番です。
モルデックス カモプラグ
NRR 33を表示する使い捨てのフォーム耳栓。正しく丸めて装着するのがコツです
耳栓をする夜の注意
耳栓をすると、風雨の急変やテントの異常音、同行者の呼びかけに気付きにくくなります。悪天候が予想される夜や単独行では、片耳だけ・浅めに入れる人もいます。
光にはアイマスクが手軽です。厚生労働省の睡眠ガイド2023も「寝室はできるだけ暗く」を勧めています。テントは隣のヘッドライトや朝の光が生地越しに入るので、アイマスクで暗さを作ります。(出典:厚生労働省『健康づくりのための睡眠ガイド2023』)
夏の稜線は日の出が4時台で、テントの中も早く明るくなります。早く着けば、通路やトイレへの動線から離れた区画や、風が当たりにくい区画も選べます。自分が夜中にライトを使うときは、赤色灯や照度を落とすモードにすると周りに優しいですよ。
高所と体調で眠れない夜の見分け方と対処
標高の高いテント場で眠れないのは、多くの場合、高さそのものへの自然な反応です。眠れないだけなら高山病とは限らず、頭痛を伴うなら高山病を疑う、と分けて考えます。

ぼくは山で暮らしてるけど、人間は高いところだと眠りにくいの?
高さが関係するみたいですよ。ただ、眠れないことと高山病は、分けて考えたほうがよさそうです。
無理は禁物だもんね。見分け方を一緒に確かめよう。
米国疾病予防管理センター(CDC)は、睡眠障害を高所へ行く旅行者で最も多い訴えとしています。標高約2,700mを超えると、呼吸が深くなったり浅くなったりする「周期性呼吸」がほぼ誰にでも起こるそうです。夜中に息苦しさで目が覚めるのは、高い場所ではよくある現象なんですね。(出典:米国疾病予防管理センター(CDC)『High-Altitude Travel and Altitude Illness』)
高山病の国際的な採点基準は、2018年の改訂で睡眠障害を項目から外しました。高所での睡眠の乱れは、高山病と密接には結びつかないと判断されたためです。つまり、眠れないだけで高山病とは限りません。
頭痛を伴うなら高山病を疑って高度を下げる
頭痛に加えて、食欲不振・吐き気・めまい・だるさのどれかがあるなら、急性高山病(AMS)を疑います。症状は到着の2〜12時間後、最初の夜の間や翌朝に出やすいとされます。テント場への到着が遅いほど、夜中に症状が出やすいわけです。
疑わしいときは、それ以上登らないのが原則です。CDCによると、300m以上下ると速やかに改善するとされています。翌朝のピーク往復は取りやめて、下山を優先してください。
| テント場 | 標高 | CDCの初日睡眠高度のリスク区分 |
|---|---|---|
| 涸沢 | 約2,300m | 2,450m未満(リスク域の手前) |
| 穂高岳山荘 | 約2,983m | 2,750〜3,400m(中) |
| 槍ヶ岳山荘 | 約3,060m | 2,750〜3,400m(中) |
北アルプスの3,000m級のテント場は、低地から1日で上がると「中」の区分に入ります。予防の基本は、ゆっくり上がること。CDCは、1日で睡眠高度2,750m以上に上がるのを避けるよう勧めています。
前夜を上高地や涸沢など、中間の高さで過ごす行程にするとこの目安に沿えます。また、脱水は高山病の危険を高めるとされます。トイレを気にして水分を控えすぎないようにしましょう。
テント内の火器に注意
テント内で火器を使うと、一酸化炭素中毒の危険があります。頭痛や錯乱など、高山病とまぎらわしい症状が出るのも怖い点です。穂高岳山荘も、近隣の山域でテント内の火器による中毒事故があったとして注意を呼びかけています。
症状の出方は個人差が大きく、ここで挙げた区分も医学書の目安にすぎません。持病がある人や不安な人は、山行前に医師に相談しておくと安心です。
寝酒とカフェインは夜中のトイレを増やす
寝付けないからとお酒に頼るのは、テント泊では逆効果です。寝酒は寝付きを良くしても、少量で睡眠の後半を浅くします。利尿作用もあるので、夜中のトイレで起きる回数も増えます。
これは僕自身の失敗談です。初めての富士登山で、8合目の山小屋で寝る前にビールを飲みました。達成感で飲むビールは最高でしたが、寝ているときに少し高山病になってしんどくなったんです。
高所では、アルコールの呼吸を抑える作用が加わります。CDCも、高所に着いて48時間は飲酒を避け、眠るための飲酒はしないよう勧めています。山でのお酒は、下山してからの楽しみに取っておくのがよさそうです。
カフェインも夕方以降は控えたいところです。1日の総量が多いと、午前中に飲んだ分まで夜に響くことがあります。山小屋の喫茶でコーヒーを楽しむなら、昼までにしておくと安心かなと思います。
寒いと尿の量が増える「寒冷利尿」も、夜中のトイレの原因です。とはいえ夕方から水を控えると、脱水の一因になります。寝る直前にトイレへ行き、寝袋の中で冷えないようにするのが現実的な組み合わせです。
夜のテント場は足元が暗く、岩も多いので転びやすいです。ヘッドライトと防寒着を枕元に置いておけば、夜中のトイレも慌てずに済みます。食事は早めに済ませ、寝る前は軽く食べて温かい飲み物をとる、という分け方がおすすめです。
睡眠不足の翌日は行程を縮めて下りを慎重に
眠れなかった翌日は、朝の時点で行程を短くする判断をし、下りの岩場を慎重に歩くのが基本です。一晩の睡眠不足は、筋力より反応の速さに出やすいからです。
大学生アスリートの試験では、一晩眠らなくても瞬発的な筋力は落ちませんでした。一方で、反応時間ははっきり悪化しています。足は動くのに、とっさの一歩が遅れる状態を想像すると分かりやすいですよね。
別の研究では、17〜19時間起き続けると、一部のテストで血中アルコール濃度0.05%相当まで成績が落ちました。どちらも実験室での結果で、登山中の事故率を測ったものではありません。それでも、寝不足で岩場を下る怖さは想像しやすいかなと思います。
警察庁の令和7年の統計では、遭難の態様は転倒が19.2%、滑落が17.3%でした。疲労と転倒は、令和2年から約2倍に増えています。反応の遅れは、下りのガレ場や岩場での一歩の判断に関わってきます。(出典:警察庁『令和7年における山岳遭難の概況等』)
- エスケープルートや山小屋での延泊、ピークを省く選択肢を朝のうちに確認する
- 岩場や鎖場は、集中力が残っているうちに通過する
- こまめに休憩し、行動食を切らさない
- 頭痛・食欲不振・吐き気があれば、登らずに下る
厚生労働省の睡眠ガイドは、6時間以上の睡眠を勧めています。ただテント泊の夜は、19〜20時に横になって3〜4時台に起きる人も多いです。「眠れなかった」と感じても、目を閉じて体を温めていれば、ある程度の休息にはなると僕は考えています。
体調に不安が残る朝は、予定にこだわらず引き返す判断を優先してください。
手持ちで直らないときのマット・寝袋・枕の買い足し順
買い足しは、眠れない原因に合わせて選ぶのが基本です。寒さが原因なら寝袋より先に重ね用のマット、音や首の痛みが原因なら耳栓や枕を軽いもので足します。

| 原因 | 買う前に手持ちで試すこと | 買い足す候補 | 判断の目安 |
|---|---|---|---|
| 底冷え(背中・腰が冷える) | 衣類やザックをマットの下に敷く、エアマットの空気を夕方に足す | 重ね用のクローズドセルマット | 手持ちマットのR値が4未満で、氷点下近い夜に泊まるなら優先度が高い |
| 全身が寒い(マットを足しても寒い) | 着込む・帽子・フードを絞る・乾いた服で寝る | 温度帯の低い寝袋、シュラフカバー | 泊まる場所の最低気温の概算が、寝袋の下限を下回るか |
| 硬さ・寝返りで起きる | 下に衣類を敷く、横向きなら肩・腰の位置に厚みを足す | 厚手のエアマット・自動膨張式 | 横向き寝・体重が重い人ほど厚みの差が出やすい |
| 首・肩が痛い | スタッフバッグと衣類で代用枕 | エア枕(60〜80g台) | 代用枕がずれて起きる、寒い夜に詰める衣類がなくなる |
| 音・光 | 張る位置を動線や風上から離す | フォーム耳栓(NRR 33クラス)・アイマスク | 安全上の気付きにくさとのトレードオフ |
底冷えには、クローズドセルマットを1枚重ねるのが費用も小さく済みます。安くてパンクせず、断熱が安定しているのが長所です。かさばるのが弱点ですが、手持ちのエアマットや自動膨張式の下に敷けばR値を足せます。
定番のサーマレスト Zライト ソルは、レギュラーで410g・R値2です。ただし国内正規代理店のページでは廃番と表示されています。購入時は、流通在庫や後継品の有無を確認してください。
サーマレスト Zライト ソル
手持ちマットの下に重ねて断熱を足すクローズドセル。廃番表示のため在庫と後継品を確認してください
マットを足しても全身が寒いなら、寝袋の温度帯を見直します。目安は、泊まる場所の最低気温の概算が寝袋の下限を下回るかどうか。寒くて眠れなかった経験があるなら、下限ではなく快適温度を基準に選ぶと安心です。
快適温度は寒がりの人がリラックスして眠れる下限、下限温度は暑がりの人が丸まって眠れる下限と読み替えられています。メーカーで物差しが違う点にも注意が要ります。イスカの「最低使用温度」は独自の基準で、快適側は表示に5〜10℃を足した温度域とされます。
ナンガの「350DX」の数字はダウンの量(g)で、温度ではありません。商品名の数字だけで暖かさを比べないようにしましょう。
枕は、代用枕がずれて起きる人や、寒い夜に詰める衣類がなくなる人に向きます。専用のエア枕は60〜80g台が多く、シートゥサミットのエアロ ウルトラライト ピローは約60gです。空気を入れすぎると硬く頭が転がるので、少し抜いて使うのがコツです。
シートゥサミット エアロ ウルトラライト ピロー
レギュラーで約60gのエア枕。空気を少し抜いて使うと頭が安定しやすいです
よくある買い物の失敗
代表例は、寝袋だけ暖かいものに替えて、薄いマットのまま底冷えが続くパターンです。エアマットが寒い夜に縮んで底付きする、枕を膨らませすぎて頭が転がる、といった失敗もあります。
買わない選択肢もあります。寒い時期の高所は、テント泊にこだわらず小屋泊に切り替えるのも一つの判断です。前夜を低い標高で過ごす行程に変えれば、高所への慣れと睡眠の両方を確保しやすくなります。
装備の価格や仕様は変わるので、正確な情報は各メーカーの公式サイトをご確認ください。絶対にこれが正解という話ではなく、自分の眠れない原因に合うものから足すのがいいかなと思います。
テント泊で眠れないときのよくある質問
寒いとき、カイロを寝袋に入れて寝てもいいですか?
おすすめしません。NITE(製品評価技術基盤機構)は、使い捨てカイロを就寝時には使わないよう案内しています。寝具の中で熱がこもって表示の最高温度を超える場合があり、寝ていると熱さに気付きにくいためです。暖かさを足したいときは、着込む・マットを重ねるなど、熱源を使わない方法を優先してください。
テントの中でバーナーを使って暖まってもいいですか?
テント内での火器の使用は、一酸化炭素中毒の危険があるので避けてください。症状は頭痛や錯乱など高山病とまぎらわしく、気付くのが遅れがちです。穂高岳山荘も、近隣の山域での中毒事故を受けて注意を呼びかけています。体を温めたいときは、テント泊者が使える小屋の土間や食堂などを利用しましょう。
眠れないときに睡眠薬を飲んでもいいですか?
自己判断では使わないでください。CDCは、短時間型の睡眠導入薬は高所でも一般に安全とする一方、服用後少なくとも8時間は行動を始めないよう求めています。早朝に出発するテント泊の行程とは合わない場合もあります。使うかどうかは、必ず事前に医師に相談してください。
寒くて眠れないとき、当日に小屋泊へ切り替えられますか?
空きがあれば相談できる場合もありますが、保証はありません。たとえば穂高岳山荘は完全予約制で、予約開始は宿泊日の1か月前です。小屋泊なら客室に寝具があるので、寝袋は要りません。僕が2017年8月に穂高岳山荘に泊まったときは、布団と毛布2枚で比較的暖かく眠れました。冷え込みが心配な時期は、最初から小屋泊で計画するのも一つの方法です。
シュラフカバーを使うと暖かくなりますか?
モンベルは、結露から寝袋を守るとともに保温力を高めることもできると説明しています。ただし、何℃暖かくなるかはメーカーが数値で公表していません。主な役割は寝袋を結露の濡れから守ることなので、壁際で寝る人や連泊する人に向く道具です。透湿性の低いカバーは湿気を閉じ込めやすいので、防水透湿素材を選ぶのが基本です。
まとめ:テント泊で眠れない夜は原因を4つに分けて対策する
原因を分けると、やることがはっきりするね!
ですね。僕もまずは、マットを重ねるところから見直してみます。
テント泊で眠れない夜は、原因を4つに分けると対策が選びやすくなります。最後に要点を振り返ります。

- 寒さ・寝床・音と光・高所と体調のどれかを、夜中に起きたサインで見分ける
- 寒い夜は寝袋より先にマットを疑う。寝袋の温度表記は断熱性の高いマットが前提
- 衣類をマットの下に敷く、乾いた服で寝る、結露を寝袋に移さないなど、お金をかけない対策から試す
- 傾いた区画では頭を斜面の上に。代用枕はスタッフバッグに衣類を詰めて作る
- 音と光はフォーム耳栓とアイマスクで。耳栓は悪天候の夜の気付きにくさに注意
- 頭痛に吐き気・めまいなどを伴うなら高山病を疑い、それ以上登らず下山を優先する。寝酒とカフェインは控える
- 眠れなかった翌日は行程を縮め、下りの岩場を慎重に歩く
記事の数値はどれも一般的な目安で、山の天候や体調で大きく変わります。山小屋の営業情報や装備の仕様は、公式サイトで最新の情報をご確認ください。体調面の最終的な判断は、医師など専門家にご相談ください。
