こんにちは、YAMA-GO編集部のりょうです。関西を拠点に、北アルプスを中心にULスタイルで山を楽しんでいます。このブログ「YAMA-GO」では、実際に使ったギアのレビューや選び方、山のノウハウなんかを発信しています。
登山に持っていく水を何リットルにするかって、けっこう迷いますよね。2Lあれば安心と言われる一方で、下山してみたら半分近く余っていて、あの重さは何だったんだろうと思った経験がある方も多いんじゃないでしょうか。
この記事では、よく使われる計算式の中身をまず整理したうえで、僕が北アルプスの1泊2日を1.5Lで歩けたときの組み立て方を書きます。水の量は暗記する数字ではなく、その日のルートで補給できるかどうかから逆算するもの、というのが今のところの僕の答えです。
- 体重と行動時間から必要量を出す計算式と、その数字の読み方
- 日帰り・小屋泊・富士登山でそれぞれ何リットル担ぐかの目安
- 水場と山小屋の信頼度を見分けて、担ぐ量を1.5Lまで絞る手順
- 水とスポーツドリンクの使い分けと、脱水のサインが出たときの動き方
登山の水は何リットル?結論は1.5L

夏の日帰りから山小屋泊なら、同時にザックへ入れておく量は1.5Lを基準にするのが、僕がいまいちばん現実的だと思っている答えです。水場も小屋もないルートはもちろん別で、その場合は計算どおりの量に予備を足して全部担ぐことになります。
山に持っていく水って、やっぱり多いほど安心なんじゃないの?
そう思いますよね。ただ水は装備の中でいちばん重いので、多く持つほど歩くのがしんどくなるんですよ。
なるほど…。じゃあ、どこまで減らしていいのか一緒に見ていこうよ。
水は1Lで約1kgあります。2Lを1.5Lにするだけでザックが500g軽くなり、これはレインウェアの上下1着ぶんに相当する重さです。数字にすると小さく見えますが、登りが続く行程だと体感ははっきり変わります。
とはいえ、軽ければ正解というわけでもないですよね。減らした500mlのぶんを埋めてくれるのが、途中の水場や山小屋です。逆に言えば、補給できる場所の見当がついていないうちに量だけ減らすのは、いちばんやってはいけない組み方になります。
担ぐ量は「必要量」ではなく「必要量から途中で補給できる量を引いた残り」で決まります。
北アルプス1泊2日を1.5Lで歩けた
2018年の夏に、新穂高温泉から槍ヶ岳へ1泊2日で登ったことがあります。1日目は朝5時半に歩き出して、槍ヶ岳山荘に着いたのが14時40分。休憩を含めると、朝から夕方近くまで動きっぱなしの行程です。
このとき担いでいたのは1.5Lほどです。途中で給水できる前提なら1.5Lで足りたというのが、歩き終えたあとの正直な感想でした。2Lにしていたら、その重さのぶんだけ後半が苦しくなっていたと思います。
このルートは、補給できる場所が分かりやすかったのも大きかったです。歩き出して1時間ほどの穂高平小屋で水を汲めますし、その先の白出沢出合にも水を飲めるポイントがあります。中盤の槍平小屋を過ぎて1時間ほど進んだところが最終水場でした。
つまり僕がやっていたのは、水を我慢することではなく、水が置いてある場所をあらかじめ知っておくことでした。この順番が逆になると、ただの軽量化の失敗になってしまいます。
担ぐ量は必要量から補給分を引く
担ぐ量の決め方はシンプルで、その日に必要な量から途中で補給できる量を引き、最後に予備を足すだけです。このとき、全行程の合計ではなく、補給と補給のあいだで最も長い区間が担ぐべき量を決めると考えると、ぐっと組み立てやすくなりますよ。
| 手順 | やること |
|---|---|
| 1 | ルート上の水場・山小屋・テント場の水場をすべて書き出す |
| 2 | 営業中の小屋の売店、小屋の湧水、地図記載の水場の順に信頼度が下がると考えて評価する |
| 3 | 補給地点で区間を区切り、それぞれの行動時間で必要量を計算する |
| 4 | いちばん長い無補給区間に合わせて、担ぐ量を決める |
| 5 | 枯れていた場合に備えて、開けない予備を足す |
たとえば1泊2日でも、同時にザックに入っているのは1.5L前後で回せます。1日目は1.5Lで小屋まで歩き、小屋で満たして2日目も1.5L。2日分の3Lを最初から担ぐ必要はないわけです。
この引き算がうまくいくかどうかは、補給地点をどれだけ信じられるかにかかっています。その見分け方は、少し後の章でくわしく書きますね。
水分量の計算式は体重×時間×5ml
よく使われているのは二段構えの式です。まず脱水量(ml)=体重(kg)×行動時間(h)×5で体から失われる量を見積もり、そこに0.70〜0.80を掛けた量が、実際に飲んで補う目安になります。

体重60kgの人が6時間歩くなら、脱水量は1,800ml、飲む量の目安は1,260〜1,440mlです。ざっくり1.2〜1.4Lと覚えておくと、山の上で計算し直さずに済みます。
掛け算の0.7〜0.8は手加減ではありません。体の中で栄養素が分解されるときにできる水があるので、失った全量を飲まなくてよい、という考え方から来ています。日本山岳ガイド協会が使っている式で、メーカーの技術解説や登山アプリの解説記事もおおむね同じ式を採用しています。
体重と行動時間から目安を引くと、こんな数字になります(単位はml)。
| 体重\行動時間 | 4時間 | 6時間 | 8時間 | 10時間 |
|---|---|---|---|---|
| 50kg | 700〜800 | 1,050〜1,200 | 1,400〜1,600 | 1,750〜2,000 |
| 60kg | 840〜960 | 1,260〜1,440 | 1,680〜1,920 | 2,100〜2,400 |
| 70kg | 980〜1,120 | 1,470〜1,680 | 1,960〜2,240 | 2,450〜2,800 |
| 80kg | 1,120〜1,280 | 1,680〜1,920 | 2,240〜2,560 | 2,800〜3,200 |
この表を見るときの注意は二つあります。ひとつは、行動時間に休憩を含めること。コースタイムだけで計算すると休憩のぶんがまるごと抜け落ちて、少なめの答えが出てしまいます。
もうひとつは、係数の5が標準的な条件の値だということです。真夏の稜線のように日差しを遮るものがない場面では6〜8まで上げる目安が示されています。同じ60kg・6時間でも、係数7で計算すれば飲む量の目安は1,764〜2,016ml、係数8まで上げれば2,300ml近くまで増える計算です。夏に「計算どおり持ったのに足りなかった」となるのは、たいていここが原因ですね。
式が示すのは失われる量
この計算で出るのは、その日に体から失われる水の推定量です。ザックに入れて担ぐべき量とは別物なので、途中で補給できるなら担ぐ量は必要量より少なくて構いません。逆に補給が一切できないルートでは、この量に予備を足して全部担ぐことになります。
同じ式でも推奨は1.2〜2.5Lに開く
同じ式から出発しているのに、記事によって勧められる量が違うのを不思議に思ったことはありませんか。開きの原因は式ではなく、予備と調理をどこまで含めるかにあります。
| 立場 | 体重60kg・6時間での推奨 | 含んでいるもの |
|---|---|---|
| 研究者の目安 | 約1.2L(一般登山者向けは1〜1.5L) | 行動中に飲む量だけ |
| ガイド協会の式 | 1,260〜1,440ml | 行動中に飲む量だけ |
| メーカー解説 | 2,000〜2,500ml | 調理用・予備を含む |
同じ条件でも、最終的な推奨は1.2Lから2.5Lまで、およそ2倍の幅で開きます。数字だけを拾って比べても答えが出ないのは当然で、その数字が何を含んでいるのかを一緒に見るのが早道です。
登山の運動生理学を研究している方のインタビューでは、一般の登山者向けの目安として1〜1.5L程度という数字が示されています。よく見かける「日帰りなら2L」より、ずいぶん控えめですよね。この差が、そのまま担ぐ量の悩みになっているのだと思います。
なので僕は、式で出した数字はいったん受け取ったうえで、そこに何が含まれているかを確かめるようにしています。炊事をしないなら調理用は要りませんし、小屋に泊まるなら夜の分も担がなくていい。式より先に、その日の過ごし方を見るほうが実態に合います。
日帰り2リットルは多い?小屋泊と富士山
春秋で行動5〜6時間の日帰りなら1〜1.5L、真夏の稜線や8時間を超える行動なら2L以上。これが実際に出回っている目安です。2Lが多すぎるかどうかは、季節と行動時間、そして水場の有無で決まります。
| ケース | 同時に担ぐ量の目安 | 決め手になる条件 |
|---|---|---|
| 低山・冬・行動3〜4時間 | 0.5〜1L | 気温が低く発汗が少ない |
| 日帰り・春秋・行動5〜6時間 | 1〜1.5L | 水場があるかどうか |
| 日帰り・真夏・行動5〜6時間 | 1.5〜2L | 日射と稜線の有無 |
| 日帰り・行動8時間以上 | 2L以上+補給前提 | 水場のない長時間行動 |
| 山小屋泊の縦走(1日あたり) | 1.5L前後 | 小屋で補給できる前提 |
| テント泊(炊事あり) | 行動分+炊事分で2L前後 | テント場に水場があるか |
| 富士登山 | 1〜2L+小屋で買い足し | 水場が皆無・小屋の営業状況次第 |
こうして並べると、2Lという数字が出てくるのは真夏か長時間行動のときだと分かります。涼しい時期の半日行程で毎回2Lを担いでいるなら、それは少し多いかもしれません。
迷ったときは、自分の条件を左右に並べて数えてみるのが早いです。
| 2L以上を持ちたい条件 | 1〜1.5Lまで絞れる条件 |
|---|---|
| ルート上に水場も山小屋もない | 通年で安定した水場か、営業中の小屋がある |
| 真夏で日陰のない稜線や岩稜 | 樹林帯が主体、または春秋・低山 |
| 行動時間が8時間以上 | 行動時間が4〜5時間以内 |
| 汗をかきやすい自覚がある | 汗をかきにくい |
| 単独で、エスケープに時間がかかる | 登山口まで短時間で戻れる |
| 途中で湯を沸かす予定がある | 行動食だけで火を使わない |
左に多くあてはまるなら2L、右が多いなら1〜1.5L。条件が半々で迷うときは、多いほうへ寄せておくのが安全側です。
山小屋泊は、小屋そのものが給水ポイントになるぶん、1日あたりの携行量を日帰りより減らせるのが構造的な特徴です。1日目は1.5Lほどで小屋まで歩き、翌朝また満たして出発する。2日分をまとめて担ぐ場面は、実はそれほど多くありません。
ただし、小屋を当てにする組み方には落とし穴もあります。「小屋で買えるから500mlだけ」という組み方は、断水や在庫切れが起きたときにやり直しが効きません。売店の営業時間や、自分が宿泊者なのかテント泊なのかによっても条件は変わります。
富士登山は何リットル?水場は無い
富士山だけは条件がまったく違います。登山道の途中に湧水も井戸もなく、水の入手経路は持参か山小屋での購入の2つだけです。
理由は山のなりたちにあります。富士山は噴火で積み重なった溶岩層でできていて水を通しやすいため、降った雨や雪解け水が地表に留まらず地下へ浸透してしまうんですね。麓に大きな湧水群があるのは、その水がずっと離れた場所で湧き出しているからです。
富士登山オフィシャルサイトの装備リストは飲水1〜2Lを挙げたうえで、「無理に大量に持たず、山小屋で買い足すことで軽量化ができます」と案内しています。下山までに実際に飲む量は約2Lとされているので、まずはこの1〜2Lを基準に考えるのが安全です。(出典:富士登山オフィシャルサイト『富士登山の前に必ず知っておくこと』)
そのうえで山小屋の準備ガイドには、出発時は500mlを1〜2本にとどめて残りを登山中に買い足す、という軽くする組み方も示されています。ただしこれは使うルートの小屋が営業していて、営業時間内に通過できると確認できた場合の話です。
つまり富士山は、担ぐ量を意図的に減らして現地で調達する典型例ですね。水そのものより現金を持っていくほうが軽い、という考え方が公式側からも示されている、けっこう珍しい山です。
ただし山小屋の飲み物は、標高が上がるほど高くなります。8合目の山小屋が公式サイトで示している500mlの水の値段は、およそ500円から600円台。下の合目で買えるなら、早めに買っておくほうが安く済みます。
トイレもチップ制で1回200円か300円かかるので、小銭は多めに用意しておくと安心です。有料だから、行列するからと水分を控える人がいますが、これは脱水と高山病の両方を悪化させる方向に働きます。少量ずつこまめに、が公式側の推奨です。
僕は吉田ルートを2回登っていますが、8合目の山小屋で寝る前にビールを飲んだら、少し高山病っぽくなってしんどい思いをしました。アルコールは利尿作用で脱水を進めますし、高いところでは高山病のリスクも上がります。達成感で飲みたくなる気持ちはよく分かるんですが、山頂アタックが控えているならおすすめしません。
水場と小屋の補給計画で1.5Lに絞る

補給地点は、信頼できる順に3つへ分けて考えると整理しやすくなります。いちばん確実なのが営業中の小屋の売店、次が小屋の給水、いちばん不確かなのが地図に載っている天然の水場、という並びです。
| 種類 | 具体例 | 信頼度 | 費用 |
|---|---|---|---|
| 山小屋の水の販売 | 稜線の小屋の売店・フロント | 高い(営業期間内) | 有料 |
| 山小屋の給水 | 沢筋やカールの小屋の洗面所 | 高いが断水はあり得る | 宿泊者は無料が多い |
| 天然の水場 | 登山地図に記載された水場 | 季節・天候で変わる | 無料 |
気をつけたいのは、地図に載っていることが「出ている」ことの保証にはならない点です。水場は季節や天候で枯れますし、道からわずかに外れた場所にあって標識が朽ちていることもあります。遭難の記録にも、水場が枯れていた、あると思っていたが見つからなかった、という記述が残っています。
だから僕は、地図で見つけた水場はいったん候補として置いておくだけにして、当てにする前に直近の情報を一度はさむようにしています。ここを飛ばすと、軽くしたつもりが一番危ない組み方になってしまうんですよね。
| 手段 | 分かること | 情報の鮮度 |
|---|---|---|
| 登山アプリの活動日記・山行記録 | 水場が出ていたかどうかの実地報告 | 数日〜数週間前 |
| 山小屋の公式サイト・SNS | 断水・水不足・営業状況 | 当日〜数日前 |
| 山小屋や自治体への問い合わせ | 確定した情報 | 当日 |
失敗のパターンも、だいたい決まっています。小屋の営業期間を確認していない、到着が遅くて売店が閉まっている、少雨の年に例年出ている水場を前提にする。どれも計画の段階で一度調べておけば防げるものばかりです。
補給地点の信頼度を確かめないまま担ぐ量だけ減らすのが、いちばん事故に近い組み方です。
水場を積極的に使いたいなら、携帯浄水器という手もあります。中空糸膜タイプのなかでも軽い製品なら、本体とソフトボトルを合わせて60g前後のものがあり、水を500ml減らせるだけで重さの元が取れる計算です。同じ中空糸膜でも、容量の大きいものや重力式は100gを大きく超えるので、製品ごとの重量は買う前に確かめてください。ただし水場が枯れていれば無力なので、これを持ったから予備を削る、という使い方はしないでください。
逆に、補給地点が一切ないルートもあります。富士山のように地質的に水場がない山や、水場のない稜線を長くつなぐ縦走がそれで、この場合は必要量に予備を足した量を全部担ぐしかありません。ここで効いてくるのは担ぐ量を削る工夫ではなく、汗のかき方を抑えて必要量そのものを小さくする工夫のほうです。早朝の涼しい時間帯に標高を稼ぐ、ペースを落とす、日射を避ける。いずれも喉が渇いても飲まずに我慢する、という意味ではありません。
小屋の水事情は立地で決まる
山小屋の水が無料か有料かは、小屋の立地でほぼ決まります。稜線の小屋は天水頼りで基本は有料、沢筋やカールの小屋は湧水が使えて豊富、という構造です。
稜線には湧水が出ないので、稜線上の小屋は雨水や雪をためた天水で暮らしています。槍ヶ岳山荘は使う水のほとんどを天水に頼っていて、宿泊者は玄関ホールの洗面所の水を無料で使える一方、テント泊や通過する人はフロントで1リットル200円で購入する運用になっています。
燕山荘も宿泊者には水と湯を無料で出していますが、テント泊や通過するだけの人は有料です。さらに、水場からポンプアップできない時期は宿泊者もミネラルウォーターの購入に切り替わります。同じ小屋でも、時期と自分の立場で条件が変わるということですね。
僕が槍ヶ岳山荘に泊まったときも、宿泊者として山荘の水をもらえたので、翌朝はそこから満たして出発できました。前年に泊まった穂高岳山荘も、水は宿泊者なら自由に使える運用でした。泊まるのか通過するのかで、担ぐ量の計画はかなり変わります。
一方、沢筋やカールの小屋は湧水が豊富で、テント場にも水場があることが多いです。ただ、湧水だから安心とも言い切れません。涸沢では2023年9月に、天候の影響で深刻な水不足になり、宿泊・テント泊・立ち寄りのいずれにも水を提供できないという知らせが出て、手前の徳沢や横尾で汲んでから向かうよう案内されたことがあります。
水が豊富とされる小屋でも、少雨が続けば給水が止まることはあるわけです。あそこは水が豊富だから、と当日の情報を見ずに出発するのが、いちばん危ないと思っています。
水1Lは1kg、減らしても予備500mlは残す
水は装備のなかでいちばん重い消耗品です。1Lで約1kg、日帰りで2Lを担ぐと荷物の3割前後が水になります。だからこそ削りたくなるのですが、最後まで残しておきたいラインもあります。

| ザック総重量 | 水1Lのとき | 水1.5Lのとき | 水2Lのとき |
|---|---|---|---|
| 5kg | 20% | 30% | 40% |
| 6kg | 17% | 25% | 33% |
| 7kg | 14% | 21% | 29% |
日帰りのザックは5〜7kg前後という人が多いと言われます。水だけで荷物の三割というのは、なかなかの存在感ですよね。軽量化にお金をかけるより、水を500ml見直すほうが早い、という関係がここから見えてきます。
その500gは、レインウェアの上下1着ぶんに相当します。ザックの中身を眺めて何を削ろうかと悩む前に、水の量から見直すほうが手っ取り早い。UL寄りの装備を組んでいると、これは本当に実感します。
じゃあ、どんどん減らしちゃえばいいの?
そこが難しいところで、削っていいものと、削っちゃいけないものがあるんですよね。
担ぐ量を減らす工夫は、水そのものを減らすやり方だけではありません。1Lボトル1本ではなく500mlを2〜3本に分けると、ザックの左右のバランスが取れて残量も本数で分かりますし、1本落としても全損しません。
容器の選び方でも変わります。空になっても重さの変わらないハードボトルに対して、畳めるソフトボトルは1Lサイズで約24gしかありません。予備タンクは畳めるものにしておくと、下山時のザックがすっきりします。
出発前に飲んでおく、というのも地味に効きます。当日の出発前に300〜500ml飲んでおくと、脱水気味のまま歩き出さずに済むので、序盤に飲む量を抑えられます。ただし余った水分は尿として出ていくため、飲んだぶんだけ携行量を減らしてよい、という引き算にはなりません。登山口へ向かう途中で1本飲んでおく、くらいの手軽な話ですね。
飲む量そのものを減らす方向も忘れずに。早朝に出発して涼しい時間帯に標高を稼ぐ、1時間に標高300〜350m程度のペースに抑える、日射を避けて樹林帯を選ぶ。どれも地味ですが、真夏の稜線は係数が跳ね上がるので効き目は小さくありません。
減らしてはいけないライン
予備の500mlは削らない。単独行や携帯圏外など、エスケープに時間がかかるルートでは多めに持つ。炊事の分は行動用と別枠で数える。初心者を連れているときは、相手が計算どおり持ってきているとは限らないので自分側に余裕を置く。この4つは軽量化の対象から外しておくと安全です。
下山して500ml余ったなら、それは失敗ではなく想定内の予備です。逆に下山時にほとんど空になっていたら、そちらのほうが危険側に振れていた証拠なので、次回は増やすか補給地点を足すことを考えます。
ペットボトルかハイドレーションか

結論から言うと、ゆっくり歩く一般的な登山なら500mlのペットボトルを2〜3本に分ける運用でほぼ足ります。僕自身もこのやり方で、ハイドレーションは残量が見えないぶん、自分には合わないと感じています。

理由のひとつは、歩きながら取り出せるかどうかです。以前から使っているザックはサイドのポケットに横からも手が入る作りで、体が硬い僕でもザックを下ろさずにペットボトルを取り出せました。この取り出しやすさが、こまめに飲めるかどうかをほとんど決めてしまいます。
| タイプ | 容量の例 | 重量の目安 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| ペットボトル | 500ml / 1L | 500mlで容器が約20〜30g | 追加費用ゼロ。分散携行と残量管理 |
| ハードボトル | 0.5L / 1.0L | 0.5Lで約90〜100g | 水場で汲む、丈夫さ重視 |
| ソフトボトル | 1.0L / 2.0L | 1.0Lで約24g | 予備タンク。空になれば畳める |
| ハイドレーション | 1.5L / 2.0L | 1.5Lで約120g | 止まらずに飲みたい行程 |
| 保温ボトル | 500ml / 750ml | 数百g | 冬季や温かい飲み物が欲しいとき |
ハイドレーションの良さは、立ち止まらずに飲めることに尽きます。ザックを下ろす手間がないので、少量ずつこまめにという理想の飲み方が実行しやすい。重心が背中の中央に来て荷物のバランスが良くなるのも利点です。
弱点もはっきりしています。最大のものは残量が見えないことで、背中側にあるぶん、飲みすぎにも飲まなすぎにも気づきにくい。加えてリザーバーとチューブは乾きにくく、洗浄と乾燥を怠るとカビや悪臭の原因になります。
| 場面 | 向く選択 |
|---|---|
| トレイルランニングやスピードハイク | ハイドレーション |
| 日帰りやテント泊のゆったりした行程 | ペットボトルやハードボトル |
| 水場が少なく、残量管理を厳密にしたいルート | ペットボトルの分散携行 |
| 冬山 | ペットボトルか保温ボトル(チューブが凍るため) |
| 小屋や水場でこまめに補給する行程 | 口の広いハードボトルやソフトボトル |
どうしてもハイドレーションを使いたいなら、リザーバー1.5Lにサイドポケットの500mlペットボトルを足す併用がおすすめです。ペットボトルが予備と残量の目印を兼ねてくれるので、最大の弱点をそのまま埋められます。
よくある失敗は、1Lボトル1本だけで行って結局こまめに飲まなくなるパターンと、予備タンクにハードボトルを使って空でも重いままになるパターンです。スポーツドリンクをハイドレーションに入れて洗わずに放置するのは、雑菌が増えるので避けてください。
水とスポーツドリンク、どっちをどう飲む
行動中は水とスポーツドリンクを併用し、脱水の兆候が出てから経口補水液に切り替える。この段階分けが、登山ではいちばん扱いやすい組み合わせだと思います。

汗にはナトリウムやカリウムといった電解質が含まれています。真水だけを飲み続けると血液中の塩分濃度が下がり、体が「水は足りている」と誤って判断して、喉の渇きを感じなくなることがあります。自発的脱水と呼ばれる状態です。
さらに進むと、運動関連低ナトリウム血症、いわゆる水中毒に近い状態になります。初期に出やすいのは吐き気や頭痛、倦怠感、力が入らない感じで、進むと嘔吐や意識の混濁につながります。汗をかいたあとに水だけを補給して起きる手足のつりは熱けいれんと呼ばれ、こちらは熱中症の軽い症状に分類されています。ただし、つり自体は疲労や電解質不足でも起きるので、それだけで原因を決めつけないでください。たくさん飲めば安全、という単純な話ではないんですよね。
水をたくさん飲んでても、だめなことがあるんだ?
そうみたいですよ。汗で出ていくのは水だけじゃないので、塩分も一緒に戻してあげる必要があるんです。
持ち方としては、水とスポーツドリンクを別のボトルに分けておくのが扱いやすいです。塩分の摂りすぎや不足を調整しやすくなりますし、口の中をさっぱりさせたいときのために真水が残るのも助かります。
一気飲みより30分ごとに100〜200ml
飲み方の目安は30分から1時間に1回、100〜200mlずつです。喉が渇いたと感じた時点ですでに脱水は始まっているので、渇く前に少しずつ、というのが各所に共通する考え方になっています。
| 出典の系統 | タイミング | 1回あたりの量 |
|---|---|---|
| メーカーの技術解説 | 30分に1回 | 100〜200ml |
| 登山アプリ運営社 | 30分〜1時間ごとの小休憩 | 100〜200ml |
| 山岳雑誌のオンライン版 | 1時間に1回の休憩 | 500mlの3分の1〜半分(約170〜250ml) |
| 登山地図メディア(夏・高標高) | 15分に1回 | ― |
一気飲みが良くないのには、はっきりした理由があります。500mlの糖質飲料を飲んだとき、15分後にも200〜250ml程度が吸収されずに胃に残っていた、という実験値が国立スポーツ科学センターの資料に示されています。(出典:国立スポーツ科学センター(JISS)『暑熱環境下における水分補給』)
一度に流し込んでも、半分近くはしばらく胃の中にあるだけで、その間は体を助けてくれないわけです。胃が重くなって歩きにくくもなります。少量ずつのほうが、結局いちばん効率が良いということですね。
温度も効きます。5℃から15℃程度の飲み物は25℃以上のものより吸収が良いとされていて、深部体温を下げる効果も期待できます。前の晩に飲み物やゼリーを凍らせておくと保冷剤の代わりになり、溶けるにつれて冷たいまま飲めますよ。
水1Lに塩分1〜2g、経口補水液は兆候後
塩分の目安ははっきりしています。水1Lに対して食塩1〜2g、濃度でいうと0.1〜0.2%程度。環境省のマニュアルと国立スポーツ科学センターの資料が、そろって同じ値を示しています。(出典:環境省『熱中症環境保健マニュアル 2022』)
| 成分 | 推奨値 |
|---|---|
| 食塩 | 水1Lに1〜2g(0.1〜0.2%程度) |
| ナトリウム | 100mlあたり40〜80mg |
| 糖質 | 3〜8%(エネルギー補給を考えると4〜8%程度) |
| 温度 | 5〜15℃程度 |
ここで注意したいのが、スポーツドリンクを水で薄めて飲むやり方です。薄めたほうが吸収が良いという話をよく聞きますが、大量に汗をかく状況では電解質が足りなくなるので適さない、と公的な資料は明記しています。夏山では、そのまま飲むほうが理にかなっています。
経口補水液は位置づけが違います。ナトリウム濃度がスポーツドリンクの倍以上ある一方で糖分は控えめで、脱水が起きたあとの補正に使うものです。国の許可を受けた病者用食品にあたる製品もあり、消費者庁は日常的に飲んだり大量に飲んだりしないこと、必要かどうかを自分で判断せず医師や薬剤師、管理栄養士に相談することを案内しています。
熱中症に使えるかどうかも製品によって違うので、買うときにパッケージの表示を確かめておいてください。そのうえでザックに1本しのばせておく、くらいがちょうど良いと思います。意識がはっきりしない、自力で飲めないといった状態なら、飲ませることより下山と救助要請を優先してください。
塩分タブレットは1粒あたり食塩相当量100mg程度の製品が多く、真水1Lぶんの塩分をタブレットだけでまかなおうとすると10〜20粒必要になります。それは現実的ではないので、電解質入りの飲み物と組み合わせて使うのが基本ですね。
ちなみに、コーラのような味の濃い飲み物はかえって喉が渇くとして、富士登山の準備ガイドでは勧められていません。アルコールも利尿作用で脱水を進めるので、行動中はもちろん、翌日も歩く予定があるなら小屋での一杯はほどほどにしておくのが無難です。
脱水のサインと水が足りない時
脱水は、いきなり倒れる前にたいてい前触れが出ます。尿の色が濃い、回数が減る、口の中がねばつく、頭痛やだるさ。このあたりが、自分で気づける代表的なサインです。

| サイン | 内容 |
|---|---|
| 尿の色が濃い | 8段階の尿色スケールで4以上は脱水気味、7〜8は脱水状態の目安 |
| 尿の回数が減る | 数時間トイレに行っていない、量が少ない |
| 口の渇き・唾液の変化 | 唾液が減る、ねばつく、舌の表面が乾く |
| 頭痛・だるさ | 高山病と紛らわしいが、脱水でも起きる |
| 集中力の低下 | 判断が鈍り、転倒や道迷いにつながる |
| こむら返り・筋のけいれん | ふくらはぎや太ももで起きやすく、塩分不足のサインでもある |
数字で見ると、体重の2%を超えて脱水すると持久力が落ち始め、そこから1%増えるごとに直腸温が約0.3℃上がり、心拍数が1分あたり約10拍増えるとされています。体重60kgの人なら、1.2kgの減少が2%にあたります。
体温が上がって心拍も上がるということは、同じ道でも余計にしんどくなるということです。判断力も鈍るので、脱水は喉が渇く問題ではなく、転ぶ・道を間違える問題だと考えたほうが実態に近いと思います。
熱中症の目安も知っておくと役に立ちます。暑さ指数(WBGT)が28を超えると熱中症の発生が特に多くなり、31以上では運動は原則中止とされています。発生は7月下旬から8月上旬に集中し、激しい運動なら30分程度の活動でも起きています。(出典:日本スポーツ協会『熱中症予防運動指針』)
短時間だから大丈夫、は成り立たないということですね。急に暑くなった時期は体が暑さに慣れていないので、比較的低い気温でも起こります。梅雨明け直後の登山は、とくに慎重にいきたいところです。
では、行動中に水が足りなくなったらどうするか。先に決めておきたいのは、残りが予備の500mlだけになった時点で、その先へ進むのをやめて引き返すか、いちばん近い小屋を目指す、という線引きです。
そのうえで、日陰で休んで発汗を抑える、ペースを落とす、塩気の強い行動食を控える、といった手が打てます。頭痛やめまい、吐き気が出ているときは自己判断で歩き続けず、休んでも回復しないなら下山や救助要請を考えてください。
体調の異変を感じたときは無理をせず、症状が続くときは医療機関や専門家に相談してください。
飲み過ぎ側にも一応触れておくと、マラソンの分野では摂取ペースを1時間あたり700ml以下にすることが勧められています。登山で計算どおりに飲んでこれを超えることは稀ですが、がぶ飲みが安全につながるわけではない、という感覚は持っておくと良いと思います。
登山の水は何リットルかで迷ったときのよくある質問
冬の低山なら、水は何リットル持てばいいですか?
気温が低く発汗も少ないので、500mlのペットボトル2本、つまり1L程度が目安として示されています。ただし冬はハイドレーションのチューブに残った水が凍って飲めなくなるため、ボトルに切り替えるほうが確実です。温かい飲み物が欲しい場面では保温ボトルという選択肢もありますが、空でも重さが変わらないので容量は控えめにしておくと無駄がありません。行動時間が長くなる日は、春秋と同じ1.5Lまで見ておくと安心です。
テント泊のときは、水を何リットル用意すればいいですか?
行動用に加えて、夕食と朝食の炊事、洗い物、翌朝の行動用が必要になります。炊事をするなら行動分と合わせて2L前後が目安ですが、いちばんの分かれ目はテント場に水場があるかどうかです。水場のない稜線のテント場では、最後の水場か小屋からすべて担ぎ上げることになり、担ぐ量が一気に増えます。炊事の分を行動用に含めてしまうと、夕食を作った時点で翌朝の行動用が消えるので、必ず別枠で数えてくださいね。
山の水場の水は、そのまま飲んでも大丈夫ですか?
湧水の出口そのものであれば比較的リスクは低いとされますが、沢水や伏流水にはジアルジアやクリプトスポリジウムなどの寄生虫、大腸菌などの細菌のリスクがあります。とくに北海道ではエキノコックスのリスクがあるため、調達した水は煮沸かろ過をしてから飲むのが常識とされています。中空糸膜の携帯浄水器は0.1ミクロンの孔径で細菌をほぼ除去できますが、ウイルスは通してしまう点だけ覚えておいてください。
行動食で水分を補うことはできますか?
ある程度はできます。ゼリー飲料やみかん、パイナップルなどの果物、おにぎりやスープ類には水分が含まれていて、糖質や塩分も一緒に摂れるのが利点です。逆に塩昆布やスナック菓子のように塩気の強い行動食は喉が渇くので、水を減らす目的には向きません。あくまで補助と考えて、これで飲み水を大きく減らせるとは考えないほうが安全です。
自分に合う水の量は、どうやって確かめればいいですか?
いちばん確実なのは、登山の前と後に同じ条件で体重を測ることです。減った体重と行動中に飲んだ量を足すとその日のおおよその脱水量が分かり、それを体重×行動時間で割れば自分の係数が出ます。行動中の尿や呼吸から逃げる水分は含んでいない簡易的な推定なので、何回か測って平均を見るのがおすすめです。汗をかきやすい人は6〜8、かきにくい人は4台になることもあります。起床時の尿の色でも簡易チェックができ、8段階のスケールで4以上なら意識的に補給するのが望ましいとされています。
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水の量と一緒に決めておきたいのが、汗で抜けた塩分の戻し方と、脱水から熱中症に進ませないための予防です。
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まとめ:登山の水は1.5Lと補給計画で決める
水の量って、数字を覚える話じゃなかったんだね。
そうなんですよ。その日のルートで補給できるかどうかから逆算するほうが、結果的に軽くて安全になるんですよね。
計算式で出るのはその日に失われる量で、担ぐ量はそこから補給できる分を引いて予備を足したものです。夏の日帰りから小屋泊なら1.5Lを基準に置き、補給が読めないルートでは素直に増やす。この判断の順番だけでも持ち帰ってもらえたらうれしいです。

- 担ぐ量は必要量から補給できる量を引いて予備を足したもの。全行程ではなく最長の無補給区間で決める
- 計算式は脱水量=体重×行動時間×5ml、飲む量はその70〜80%。真夏の稜線は係数を6〜8に上げる
- 日帰りは春秋1〜1.5L・真夏1.5〜2L、小屋泊は1日あたり1.5L前後、富士山は公式案内の1〜2Lを基準に小屋で買い足し
- 補給地点の信頼度は、営業中の小屋の売店・小屋の給水・地図の水場の順に下がる。稜線の小屋は天水頼りで有料が基本
- 水1Lは約1kg。分散携行と出発前の補給で軽くできるが、予備500mlと炊事分は削らない
- 飲み方は30分〜1時間ごとに100〜200ml。水1Lに塩分1〜2gを併用し、経口補水液は兆候が出てから
ここで挙げた数字は、あくまで一般的な目安です。体質や気象条件で必要な量は変わりますし、山小屋の営業期間や水の価格、水場の状況も年ごとに変わります。計画の前には公式サイトや直近の現地情報を確認して、体調に不安があるときは無理をせず、必要なら専門家にご相談くださいね。
