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登山の行動食おすすめ|ゼリー頼みで失敗した実体験と選び方

ゼリー飲料に頼って疲れ果てた登山者と、ようかんやナッツなど固形の行動食に切り替えて元気に登る登山者を対比したビフォーアフターイラスト

こんにちは、YAMA-GO編集部のりょうです。関西を拠点に、北アルプスを中心にULスタイルで山を楽しんでいます。このブログ「YAMA-GO」では、実際に使ったギアのレビューや選び方、山のノウハウなんかを発信しています。

登山の行動食って、売り場に立つと種類が多すぎて正直けっこう迷いますよね。25品だ27選だと並べられても、結局そのうち何を何個ザックに入れればいいのかは分からないままだったりします。

僕自身、槍ヶ岳に登ったときにゼリー飲料とカロリーメイトを多めに持っていって、下山後のメモに「ゼリー系は重いので食べ物寄りに」と書き残したことがあります。この記事では、甘い×しょっぱい・即効×持続の4つの枠を1品ずつ埋める考え方で、4品まで絞った行動食の組み立て方をまとめます。

  • 甘い×しょっぱい・即効×持続の4つの枠を埋める行動食4品
  • ゼリー中心が「軽くしたつもりで一番重い」になる理由
  • 日帰り6時間で何を何本ずつ持つかの具体的な配分
  • 1時間おきに少量ずつ入れる補給の回し方と携行のコツ

登山の行動食おすすめ4品

行動食は品数を増やすより、甘い・しょっぱい/即効・持続の4つの枠を1品ずつ埋めるほうが迷いません。僕がその形で組むなら、スポーツようかん・素焼きミックスナッツ・塩タブレット・ドライフルーツの4品です。

スポーツようかん・素焼きミックスナッツ・塩タブレット・ドライフルーツの4品を並べ、それぞれが甘い系/しょっぱい系・即効性/持続性のどの枠を担うかを注釈した内容
ゴウ
ゴウ

ねえりょう、行動食っておすすめが山ほど紹介されてるけど、結局どれを持っていけばいいの?

僕も最初はかなり適当に選んでいました。でも枠で考えるようにしたら、だいぶ迷わなくなりましたよ。

りょう
りょう
ゴウ
ゴウ

枠?へえ、そうなんだ!どんな枠なの?

甘いかしょっぱいか、すぐ効くか長く持つか。その2つの軸ですね。一緒に見ていきましょう。

りょう
りょう

行動食は「甘い系/しょっぱい系」と「即効性/持続性」の2つの軸で整理できます。すぐ効くものだけを持つと血糖の上がり下がりが大きくなり、長く効くものだけだと効き始めが遅い、という関係ですね。

即効性が高い持続性が高い
甘い系ラムネ、ゼリー飲料、飴・グミようかん(パラチノース配合品)、バランス栄養食、チョコレート、ドライフルーツ
しょっぱい系塩タブレット、梅干し柿の種などの米菓、ナッツ、ジャーキー

この表に僕の4品を当てはめると、ようかんが甘い系の即効と持続の両方、ドライフルーツが甘い系の持続と味の切り替え、ナッツがしょっぱい系の持続、塩タブレットが塩分の枠という並びになります。ナッツは素焼きの無塩を選ぶので塩分そのものは入りませんが、甘い行動食が続くなかで味を変える役どころとして、しょっぱい系の枠に置いています。枠さえ埋まっていれば、品数は4つで足りるかなと思います。

商品基準量エネルギー食塩相当量カロリー密度
井村屋 スポーツようかん あずき40g(1本)116kcal0.13g2.9kcal/g
素焼きミックスナッツ100g652kcal0.0g6.5kcal/g
カバヤ 塩分チャージタブレッツ3.0g(1粒)11.3kcal0.119g約3.8kcal/g
ドライフルーツ(レーズン)100g約324kcalー約3.2kcal/g

僕は荷物を軽くするULよりの選び方をしますが、行動食に関しては「軽ければ正義」で押し切ると危ないと感じています。削るのは重さであって、補給の回数と枠の数ではないという線引きです。

行動食は品数ではなく「4つの枠が埋まっているか」で選ぶと、当日ザックの底で余りません。

ここから4品を1つずつ見ていきます。数値は2026年7月時点でメーカーの公式ページに載っていた表示をもとにしていますが、リニューアルや価格改定で変わることがあるので、買う前に公式サイトや販売ページをご確認ください。

スポーツようかんは即効と持続を兼ねる

スポーツようかんの強みは、すぐ効く糖質と長く持つ糖質を1本で同時に摂れることです。井村屋のスポーツようかん あずきは、即効性のマルトデキストリンと持続性のパラチノースを両方配合しています。

パラチノースはブドウ糖と果糖からできた二糖類で、エネルギー量は砂糖と同じ4kcal/gです。ただし小腸全体でゆっくり吸収されるため、消化吸収の速さは砂糖の約5分の1とされています。

食べてすぐ立ち上がる分と、あとからじわじわ効いてくる分が、スティック一本に同居しているということですね。どれかひとつだけ選べと言われたら、僕はこれを取ります。

公式ページの表示は1本40gで116kcal、食塩相当量0.13g。5本入が井村屋の公式通販で648円なので、1本あたり約130円という計算です。(出典:井村屋『スポーツようかん あずき』商品情報)

弱点もあります。重さあたりのエネルギーは2.9kcal/gで、次に出てくるナッツの半分以下。100kcalあたりの単価に直すと約112円で、今回の4品では割高な部類に入ります。

この価格差は「片手で押し出して食べられる」「高温でも溶けない」という携行性の対価だと考えると、納得しやすいかなと思います。甘さが強いので、続けて何本も食べると飽きてくるのも正直なところです。

塩分もほとんど入っていません。夏の塩分補給をこれ1つでまかなうのは無理があるので、あとに出てくる塩タブレットや米菓と組み合わせてください。

井村屋 スポーツようかん あずき(5本入)

即効性のマルトデキストリンと持続性のパラチノースを配合したスティック型。高温でも溶けず、片手で押し出して食べられます。

価格目安:648円(井村屋公式通販・2026年7月時点)

ミックスナッツは最も軽く腹持ちする

同じカロリーを最も軽く持てるのがナッツです。素焼きミックスナッツは100gで652kcal、重さあたり6.5kcal/gで、今回の4品では断然のトップでした。

1,000kcal分を揃えると、ナッツなら約154g。同じ量をようかんで持つと約345gになるので、差は倍以上ですね。ザックの重さで悩んだときに効いてくる比較軸です。

気温にも左右されません。夏でも溶けず冬でも凍らないので、季節をまたいで同じものを持てるのは地味に助かるところです。粉が出にくくて手も汚れにくく、ザックの中で割れる心配も少なめです。

ただしナッツには大きな弱点があります。100gあたりの糖質は13.3gしかなく、すぐ効くエネルギー補給としてはほとんど当てにできません。

脂質が多い分(100gあたり56.9g)、消化にも時間がかかります。食べた直後に体が重く感じることがあるのは、消化に血流が回るためだと言われています。胃腸が弱い方は量を控えめにしたほうが無難です。

よく噛む必要があるのも山では効いてきます。息が上がっている登りの途中では食べにくいので、休憩で腰を下ろしたときに回すのが現実的かなと思います。

塩味タイプは喉が渇いて水の消費が増えるので、水が限られる山行では無塩のほうが管理しやすいです。単独の主力にはせず、糖質源と組み合わせて使うのが前提の1品ですね。

素焼きミックスナッツ(無塩・無添加)

100gで652kcal・6.5kcal/gと、同じカロリーを最も軽く持てる1品。夏でも溶けず冬でも凍らないので、季節を選ばず使えます。

価格目安:1,166円/250g(通販専門店・2026年7月時点)

塩タブレットで汗の塩分を戻す

塩タブレットは、エネルギーではなく汗で失った塩分を戻すための枠です。カロリーは1粒11.3kcalしかないので、主要なエネルギー源としては数えません。

汗の塩分濃度はおおむね0.3%が目安とされ、単純計算で汗1Lあたり約3gの食塩相当量が失われます。夏山で3L汗をかけば、9g相当が出ていく計算になります。

数字だけ見るとけっこうな量ですよね。ただ、これを全部行動食で戻そうとするのは現実的ではありません。

カバヤの塩分チャージタブレッツは1粒の食塩相当量が0.119gなので、食塩3g分を戻すには約25粒。カリウムも15.7mg配合されていて、汗で抜けるミネラルを一緒に補える設計になっています。

つまり塩タブレットは、足りない分の一部を埋める道具だと考えたほうが実態に合います。厚生労働省が職場の熱中症予防で示している目安は、0.1〜0.2%の食塩を含む飲料、またはナトリウム40〜80mg/100mlのスポーツドリンクを20〜30分ごとにコップ1〜2杯程度(出典:厚生労働省『職場における熱中症防止のためのガイドライン』)。

なお経口補水液はスポーツドリンクよりナトリウムやカリウムが約3〜4倍多く、消費者庁も「脱水状態でない方が普段の水分補給として飲むものではありません」としているので、ふだんの補給は水やスポーツドリンク側と分担するのが基本ですね(出典:消費者庁『ご存じですか? 経口補水液の知識』)。

僕が槍ヶ岳から下りたあとにメモへ残したのも「塩タブレットは熱中症対策に必須」の一行でした。もちろん塩タブレットだけで熱中症を防げるわけではありませんし、必要な量は気温や発汗量、体質によって変わります。それでも、カロリーにはならないのに外せない枠が1つある、という感覚です。

1日の食塩摂取の目標量は成人男性7.5g未満・成人女性6.5g未満が目安です。高血圧や腎臓の持病がある方は、使う前に主治医など専門家にご相談ください。

カバヤ 塩分チャージタブレッツ

1粒で食塩相当量0.119g・カリウム15.7mgを補える個包装タイプ。ヒップベルトのポケットに入れておける軽さが利点です。

価格目安:オープン価格(公式ページに希望小売価格の記載なし)

関連記事:登山の熱中症対策|塩タブレットの使いどころ

ドライフルーツは甘さの飽きを防ぐ

4品目は、味を切り替えるための枠です。ドライフルーツは甘い菓子が続いて口が飽きたときのリフレッシュに効きます。

レーズンは100gで約324kcal、干し芋は100gで277〜303kcalが目安です。乾物なので夏でも溶けず、長く持ち歩いても味や食感が変わりにくいのも山向きですね。

栄養面ではカリウム・鉄・銅・食物繊維が比較的多く、干し芋のカリウムは100gあたり約980mg。甘いものなのにミネラルも一緒に摂れるのは、ようかんやナッツにはない持ち味です。

注意点は3つあります。まず加糖タイプ(砂糖漬け)は糖質量が跳ね上がるので、原材料表示で砂糖不使用かを確かめてください。

次に、レーズンはGI値が低めで吸収がゆるやかとされ、すぐ効かせたい場面には向きません。最後に食物繊維が多いので、体質によってはお腹がゆるくなることがあります。

干し芋は袋の中で貼り付きやすく、真夏はベタつくこともあります。一粒が小さいドライフルーツは手が汚れた状態だと袋から取り出しにくいので、あらかじめ小袋に取り分けておくと扱いやすくなりますよ。

ドライフルーツ(レーズン・干し芋など砂糖不使用タイプ)

夏でも溶けず、甘いものが続いて飽きたときの切り替えに。買うときは原材料表示で砂糖不使用かを確認してください。

ゼリー頼みでシャリバテした失敗

ゼリー飲料を主軸にして行動食を組むと、軽くしたつもりが一番重いという逆転が起きます。これは僕自身がやってしまった組み方です。

新穂高温泉から槍ヶ岳へ向かった日、ゼリー飲料中心の行動食で予定より時間がかかり山小屋の夕食受付に間に合わなかった経緯を時系列で示した内容

2018年の夏、新穂高温泉から槍ヶ岳へ1泊2日で登ったときのことです。エネルギー源としてゼリー飲料とカロリーメイトを多めに持っていきました。

初日は5時半に新穂高温泉を出て、槍ヶ岳山荘に着いたのが14時40分。標準コースタイム8時間30分のところ9時間ちょっとかかっていて、最後の槍平小屋から山荘までは標準4時間のところ4時間半でした。

しかも山荘の食事の受付は14時30分まで。10分間に合わず、注文できたのはおでんだけでした。途中の槍平小屋でもしっかり食べるつもりだったのに、提供されていたのはカップ麺だけだったんですよね。

つまりその日の行動を支えたのは、ほぼ持っていった行動食だけだったわけです。医師にシャリバテと診断されたわけではないので断定はしませんが、後半でペースが落ちて食事にも間に合わなかったあの組み方を、今の僕は選びません。

あの日の反省を一言で

山行のあとにメモへ残したのは「ゼリー系は重いので食べ物寄りに」「塩タブレットは熱中症対策に必須」の2行でした。ゼリーは効かないのではなく、主力に据えると背負う重さが跳ね上がるのが問題です。

ゼリーはようかんの3倍重い

数字で見ると差ははっきりしています。inゼリー エネルギーは180gで180kcal、重さあたり1.0kcal/gです。

1種類だけで1,000kcalを揃えた場合おおよその重量
素焼きミックスナッツ約154g
カロリーメイト ブロック約200g(10本)
亀田の柿の種約221g(小袋 約7.4個)
スポーツようかん あずき約345g(約8.6本)
inゼリー エネルギー約1,000g(約5.6袋)

ゼリーはようかんの約3倍、ナッツの約6倍の重さになります。中身の大半が水分なので、当然といえば当然ですね。

腹持ちもしません。固形物のような満足感が出ないぶん、次の空腹が早く来ます。空パウチはかさばる割に軽く、ザックの中で暴れやすいのも地味に気になるところです。

とはいえ、ゼリーが不要という話ではありません。疲れて食欲が落ちた場面でも喉を通りますし、噛まなくていいので息が上がっていても入れられます。

糖質と水分を同時に摂れるのも、固形にはない利点ですよね。だから僕は今も1〜2本は持っていきます。主力から補助へ、役割を移すだけです。

冬はゼリーが凍って食べられなくなります。低温期は固形に切り替えるか、体に近いポケットに入れて保温してください。

疲労での遭難は6年で1.5倍

エネルギー切れは「バテてしんどい」で終わる話ではありません。警察庁が公表している令和6年(2024年)の山岳遭難統計では、「疲労」を態様とする遭難者が343人・全体の10.2%を占めています。(出典:警察庁『令和6年における山岳遭難の概況等』)

態様遭難者数構成比
道迷い1,021人30.4%
転倒671人20.0%
滑落577人17.2%
疲労343人10.2%
病気256人7.6%
その他489人14.6%
合計3,357人100.0%

道迷い・転倒・滑落に次ぐ4番目の多さですね。しかも疲労は、上の3つと切り離して考えられるものではないと思っています。

糖質が足りなくなると、力が入らなくなるだけでなく集中力や判断力も落ちます。冷や汗や手足のふるえが出ることもあり、その状態で足の置き場を選び続けるのは、正直こわいです。

エネルギー切れそのものより、判断力と足元が乱れた結果としての転倒や道迷いのほうが問題になる、という整理ですね。

年疲労による遭難者数全体に占める構成比
令和元年219人7.5%
令和2年170人6.3%
令和3年204人6.6%
令和4年286人8.2%
令和5年324人9.1%
令和6年343人10.2%

令和元年の219人に対して令和6年は343人で、実数はおよそ1.57倍。全体の遭難者数は令和5年の3,568人から3,357人へ減っているのに、疲労は令和2年以降ずっと増え続けています。

北アルプスを抱える長野県でも、疲労は無視できない要因です。県内の令和6年統計では「疲労凍死傷」が50件・15.6%で、前年より8件増えました。

もっとも、長野県の「疲労凍死傷」は疲労と凍死・凍傷をまとめた件数ベースの区分なので、警察庁の「疲労」とそのまま並べられる数字ではありません。統計から言えるのは「疲労に分類された遭難が一定数あり、近年は増えている」ところまでです。それでも、行動時間が長い山ほど補給計画の重みは増すと僕は考えています。行動食を「おやつ」ではなく装備の一部として見る理由が、ここにあります。

ここに挙げた数字はあくまで統計上の目安です。体調や持病に不安があるときは、山行の前に医師など専門家にご相談ください。

甘い系としょっぱい系の比率と本数を決める

配分の目安は、カロリーで甘い系6割・しょっぱい系4割。日帰り6時間なら、ようかん3本・レーズン30g・ナッツ40g・塩タブレット3〜5粒あたりが僕の基準形です。

日帰り6時間を想定した行動食の内訳として、スポーツようかん3本・レーズン30g・素焼きミックスナッツ40g・塩タブレット3〜5粒で合計約750kcal・約200gになることを示した内容

根拠になるのは消費カロリーの概算です。体重60kgで6時間歩くと、簡易式(5×体重×行動時間)で1,800kcal。ただし全部を行動食で埋める必要はなく、用意するのは500〜1,000kcalというのが一般的な目安とされています。

残りは朝食や昼食、体脂肪からの供給でまかなう、という関係ですね。ここを勘違いすると、ザックが食料でいっぱいになってしまいます。

埋める枠品数量目安カロリー
甘い・即効+持続スポーツようかん あずき3本(120g)348kcal
甘い・持続+味変レーズン30g約97kcal
しょっぱい・持続素焼きミックスナッツ40g約261kcal
しょっぱい・塩分塩分チャージタブレッツ3〜5粒約34〜57kcal
合計4品約200g約740〜760kcal

合わせて約750kcal、重さは約200gです。行動食で用意する500〜1,000kcalのちょうど真ん中で、しかも4つの枠がすべて埋まっています。糖質量に直すと120g前後で、持久系の運動でよく言われる1時間あたり30〜60gという目安の下限側です。強度が高い日や行動が長引きそうな日は、ようかんを1本足して調整しています。

同じカロリーをゼリー飲料だけで作るとinゼリー エネルギー約4本・約750gになりますから、この差は歩いていて分かるレベルですよね。

比率そのものは厳密に守るものではありません。甘い系が主力、しょっぱい系が三分の一から四割という感覚だけ持っておいて、あとは当日の気温と自分の食欲で足し引きすれば十分かなと思います。

実際、よくある失敗のひとつが「チョコとグミだけで行って、途中で食欲がなくなり何も食べられなくなった」というパターンです。甘い系としょっぱい系を必ず両方持つのは、味の保険という意味でもあります。

もうひとつ外せないのが、平地で美味しく食べられるものだけを持つ、という原則です。疲れてくると、効率だけで選んだものには手が伸びなくなります。目新しいものを試すなら、まずは短時間の山で試してからにしてください。

無塩ナッツは糖質も塩分も足りない

無塩の素焼きナッツでは、糖質も塩分もほとんど埋まりません。軽くて腹持ちする代わりに、この2つは別の品で確保する必要があります。

持久系の運動では1時間あたり30〜60gの糖質補給が目安とされています。素焼きミックスナッツ100gの糖質は13.3gなので、下限の30gを埋めるには約226g食べる計算です。

そのカロリーは1,470kcalを超えてしまいます。ナッツで糖質をまかなうという発想自体に、そもそも無理があるんですよね。

塩分も同じです。無塩タイプの食塩相当量はゼロなので、汗で失った分をここから戻すことはできません。

商品1個あたりの食塩相当量食塩3g分を戻すのに必要な数
塩分チャージタブレッツ0.119g/粒約25粒
亀田の柿の種(小袋)0.38g/袋約8袋
カロリーメイト ブロック(4本)0.81g/箱約3.7箱
スポーツようかん あずき0.13g/本約23本
inゼリー エネルギー0.1g/袋約30袋
素焼きミックスナッツ(無塩)0.0g補給できない

この表を見ると、行動食だけで汗の塩分を全部埋めるのは無理があると分かります。塩タブレット25粒は食塩3g相当で、1日の目標量のかなりの割合を占めてしまいますし。(出典:厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2025年版)』)

だから僕は、塩分はスポーツドリンクと分担する前提で考えています。経口補水液はスポーツドリンクよりナトリウムやカリウムが多く、消費者庁も脱水状態でない人が普段の水分補給として飲むものではないとしているので、こちらは体調を崩しかけたとき用ですね。ナッツは腹持ち要員、糖質は別の品、塩分は飲み物と塩タブレットで、という役割分担です。

しょっぱい系の枠を米菓で埋めるなら、亀田の柿の種は小袋1つで食塩相当量0.38g、炭水化物20.9gと、塩分と糖質を同時に稼げます。割れて粉が出やすいのが弱点なので、ザックの底には入れないほうがいいです。

水だけを大量に飲むと血中のナトリウム濃度が下がり、めまいや頭痛につながることがあります。汗をかいた日は、水分と一緒に塩分も入れてください。

夏はチョコ以外で溶けない行動食を選ぶ

夏の行動食は、28℃を超える環境でも形が保てるかで絞ります。チョコレートはこの条件で脱落するので、ようかん・ラムネ・素焼きナッツ・ドライフルーツ・米菓へ切り替えるのが定番です。

夏の行動食としてチョコレートは高温で溶けやすい一方、ようかん・ラムネ菓子・素焼きナッツ・ドライフルーツは高温でも形が保てることを対比した内容
ゴウ
ゴウ

ねえりょう、夏の山ってふもとはもう暑いよね。ザックの中って何度くらいになってるの?

測ったことはないんですけど、樹林帯の登りは風が抜けないので、外気温よりぬるく感じますよね。チョコが溶ける温度はすぐ超えていそうです。

りょう
りょう
ゴウ
ゴウ

じゃあ夏は何を持てばいいの?

溶けない理由がはっきりしているものに寄せるのが早いです。順番に見ていきましょう。

りょう
りょう
選択肢溶けない理由・特徴
ようかん寒天で固めた和菓子で、高温でも溶けない
ラムネ菓子ブドウ糖主体の固形菓子。口の中でひんやりする清涼感がある
素焼きナッツ脂質が固形のまま保たれ、気温の影響を受けにくい
ドライフルーツ乾物なので溶けない。味や食感が変わりにくい
柿の種・おかき等の米菓米菓は溶けない。塩分補給も兼ねられる
ゼリー飲料溶ける心配はない。ただし重い

ようかんが夏に強いのは、寒天で固めた和菓子だからです。ラムネはブドウ糖が主体の固形菓子で、口の中でひんやりする清涼感があるのも夏向きですね。

「溶けないチョコ」として売られている製品もあります。糖衣コーティング品や、生地に混ぜて焼き上げた焼きチョコは高温に強い設計ですが、完全に溶けないわけではありません。

一度溶けて固まると形が崩れ、手も袋も汚れます。夏に持っていくなら、溶けたあとの後始末まで想像しておくと安心です。

夏は「カロリーが高いか」より先に「28℃を超えても形が残るか」で候補を絞ると失敗が減ります。溶けやすさは商品や配合、ザックの中の温度でも変わるので、メーカーの保存条件もあわせて確認してください。

ザックで潰れず手も汚れないかを見る

溶けにくさの次に見るのは、潰れないか・手が汚れないか・片手で食べられるかの3点です。山では、この3つが補給を続けられるかどうかを決めます。

条件具体的に見る点
溶けない28℃を超える環境でも形が保てるか
潰れないザックに押されて崩れないか。米菓・スナックは割れやすい
手が汚れない粉や油が手に付かないか。スティック型ようかんは押し出して食べられる
片手で食べられるストックを持ったまま、鎖場の前後で食べられるか
個包装5分の小休止で1つだけ取り出せるか
開けやすい手袋をしたまま、手が冷えた状態で開封できるか
咀嚼が要らない息が上がっているときに飲み込めるか
水が要らない水を節約したい場面で、パサつかず食べられるか

米菓は割れて粉になりやすく、ザックの底に入れると袋の中で砕けます。粉や油が手に付いた状態で他の道具を触ることになるのも、地味に嫌なところですよね。

その点でスティック型のようかんは優秀です。押し出して食べられるので手が汚れず、ザックの中で潰れても袋の形が崩れるだけで中身は散らばりません。

そしてもうひとつ大事なのが置き場所です。行動食をザックの奥底に入れると、まず食べません。取り出すのが面倒で先送りし、結局お腹が空いてから食べることになります。

収納場所特徴
ショルダーハーネスのポケット・後付けポーチ歩きながら片手で取れる。一口サイズのものを入れる
ヒップベルトのポケット小型のもの・塩タブレット向き
ザックの雨蓋(トップリッド)休憩時に取り出す量をまとめて入れる
サコッシュ・ウエストポーチザックにポケットがない場合の代替
ザック本体の上部予備・非常食など、行動中に出さないもの

僕が槍ヶ岳で使っていたミレーのサースフェー30+5は、雨蓋が2室に分かれていて、小さいほうに移動中の非常食や応急処置のものを入れられました。サイドのポケットに横からも手が届く作りで、ザックを降ろさずに水が飲めたのは本当に助かりました。

逆に言えば、ザックを降ろさないと出せない場所にあるものは、行動中にはほぼ食べません。ザックを選ぶときにヒップベルトやショルダーのポケットを見ておくと、行動食の運用がそのまま変わりますよ。

小分けにはジップロックが便利です。1日分ごとに分けておくと食べ過ぎや食べ残しの管理が楽になりますし、粉が出る米菓やナッツは二重にしておくと、袋が破れてもザックの中に散らばりません。

個包装の商品は袋がそのままゴミになります。ゴミ袋を1枚ショルダーポーチに入れておくと、行動中に手が止まらずに済みます。

食べる頻度は1時間おきに少量ずつ入れる

行動食は1時間〜1時間半ごとに100〜200kcalずつ入れるのが基本です。お腹が空いたら食べるのではなく、時間で入れます。

行動食は空腹を待たず、行動開始前・1〜1.5時間ごと・休憩時・下山後という4つのタイミングで100〜200kcalずつ補給する流れを示した内容

空腹感は、血糖値がすでに下がってから出るサインだからです。空いてから食べていると、いつも一歩遅れることになります。

タイミング内容
行動開始前歩き出す前にエネルギーを入れておく(登山口で軽く一口)
行動中1時間〜1時間半ごとに100〜200kcal程度をこまめに補給
休憩時休憩の開始直後に食べる。消化の時間を確保してから歩き出す
行動終了後下山後にも補給して回復に回す

体に蓄えられる糖質(グリコーゲン)の量は限られていて、中〜高強度の運動では90分〜2時間ほどで大きく減るとされています。「少なくとも2時間ごと」という言い方も見かけますが、これはもう遅い側の目安ですね。

100〜200kcalというのは、おにぎり1個、ゼリー1本、行動食ひとつかみくらいの量です。スポーツようかんなら1本強、ナッツなら軽くひと握りといったところでしょうか。

逆に、一度にたくさん食べないことも同じくらい大事です。大量に食べると消化に血流が回って体が重くなり、血糖値が急に上がったあと急に下がって、かえって行動が落ちます。

満腹の状態で登り返しにかかると気持ち悪くなりやすいのもあります。「1時間おきに少量」は、エネルギー切れと消化の負担を同時に避けるための形なんですよね。

ペースが掴めないときは

休憩ごとに必ず一口食べる、時計のタイマーを1時間で鳴らす、次の分岐や水場までと区切って食べる。このどれかを決めておくと、補給が習慣になります。

山小屋やロッジの食事を当てにしすぎないのも、僕の失敗から言えることです。上高地から涸沢へ向かった日、徳沢に7時すぎに着いたのですが、ロッジの食事提供は7時半からでまだ食べられませんでした。

結局そのときは、持っていったおにぎりで済ませています。営業時間や提供メニューは自分ではどうにもできないので、行動中の補給は自分のザックの中で完結させておくほうが確実です。

行動食は「お腹が空いたら」ではなく「時間で」。休憩の開始直後に食べると、消化の時間を確保してから歩き出せます。

日帰りは量で小屋泊はカロリー密度で選ぶ

日帰りは必要な量を用意できているかが勝負で、小屋泊や縦走はカロリー密度と種類の数で決まります。日数が増えるほど、同じカロリーを何グラムで持てるかの差が効いてくるからです。

日帰り登山は行動食の量を、小屋泊や縦走はカロリー密度と種類の数を重視して選ぶという考え方の違いを対比した内容
山行行動食で用意するカロリーの目安
半日程度(3〜4時間)300〜500kcal
日帰り1日(6〜8時間)500〜1,000kcal
長期縦走(1日あたり)行動食1,200kcal + 食事1,800kcal = 合計3,000kcal を目標にする例がある

消費カロリーの概算と比べると、行動食で埋めるのは消費の3〜5割程度という関係になりますね。残りは朝食・昼食・体脂肪からの供給でまかなう前提です。

項目日帰り小屋泊・縦走
補給の総量1日分(500〜1,000kcal)日数分。2日で倍、3日で3倍に増える
重量の効き方多少重くても許容できる日数分が累積するので、カロリー密度の差が大きく響く
味の飽き1日なら同じものでも食べ切れる同じ味が続くと2日目以降に手が伸びなくなる
塩分昼食で補える行動時間が長く発汗量も増える。意識的に組み込む
予備少なくてよい停滞・遅れに備えて1食分以上を別枠で持つ

小屋泊は小屋の夕食と朝食で1日2食が確保できるので、行動食は「行動中に必要な分と予備」に絞れます。テント泊縦走はすべて自前なので総重量が跳ね上がり、密度の高いナッツやバランス栄養食の比率を上げる判断が効いてきます。

量と密度に加えて、意外と効くのが種類の数です。日帰りなら2〜3種類、小屋泊1泊なら3〜4種類、縦走2泊以上なら4〜5種類が目安になります。

1日なら同じ味でも食べ切れますが、2日目になると同じものには手が伸びなくなります。味の系統を分けておくと、後半でも普通に食べられるんですよね。

かといって増やしすぎると「今日どれをどれだけ食べるか」が決まらなくなり、結局同じものばかり食べてザックの底に残ります。日ごとに小分けして「今日の分」を決めて持つのが、続く形かなと思います。

僕が歩いた中でいちばん長かったのは、ジャンダルムへ行った日の11時間22分(休憩込み)でした。槍ヶ岳の初日も9時間ちょっとです。

このくらいの行動時間になると、行動食が足りるかどうかは体感ではなく、出発前に計算で決めておかないと危ないなと感じています。

停滞や下山の遅れに備えて、行動食とは別枠で1食分以上の非常食を持ってください。行動食を非常食で兼ねると、いざというときに残っていません。

まとめ買いとコンビニと手作りどれが安いか

100kcalあたりの単価で並べると、バランス栄養食が約60円、ナッツが約71円、えいようかんが約82円、スポーツようかんが約112円でした。安さだけならバランス栄養食とナッツが有利です。

カロリーメイト・素焼きミックスナッツ・えいようかん・スポーツようかんの4品を、100kcalあたりの単価(約60円〜約112円)で比較した内容
商品単価の計算元100kcalあたり
カロリーメイト ブロック238円 ÷ 400kcal約60円
素焼きミックスナッツ466円(100g)÷ 652kcal約71円
えいようかん140円 ÷ 171kcal約82円
スポーツようかん あずき130円 ÷ 116kcal約112円

ただ、この数字だけで決めないほうがいいと思っています。スティック型のようかんが割高なのは、片手で押し出して食べられて夏でも溶けないという携行性の対価が、価格に乗っているからです。

パサついて水がないと食べにくいバランス栄養食と、息が上がっていても押し出せるようかんを、単価だけで比べるのは無理がありますよね。

手段内容向き不向き
コンビニ・スーパーおにぎり、菓子パン、飴、グミ、せんべい入手が容易。ただし水分を含むおにぎり・パンは重く、夏は傷みやすい
手作り(トレイルミックス等)ナッツ・ドライフルーツ・柿の種を自分で配合コストと味の自由度が高い。手間がかかる
昼食に寄せる山頂での食事量を増やし、行動食は最小限にする補給間隔が空くのでリスクが上がる。短時間の低山向き
専用のスポーツ補給食エナジージェル、アミノ酸系ゼリー吸収は速いが単価が高く、重量あたりのカロリーは低い

手作りのトレイルミックスは、ミックスナッツと柿の種にドライフルーツかチョコを混ぜるだけです。甘い系としょっぱい系、脂質と糖質を1袋で同時に持てるのが利点で、ナッツを大袋で買えば単価もかなり下がります。

弱点は個包装がないことです。行動中に1回分を取り出しにくいので、あらかじめ小袋へ取り分ける手間がかかります。手作りのバーは市販品より日持ちしないので、夏場は特に気をつけたいところです。

コンビニで都度買えば1回あたりの費用は上がりますが、買いすぎや食べ残しの失敗は起きにくいです。通販でまとめ買いすれば単価は下がる代わりに、口に合わなかったときのロスが大きくなります。

だから僕は、初めて試すものは少量で買って、定番化してからまとめ買いに移すのが無駄が少ないと思っています。買い置きのしやすさで言えば、ようかん・ナッツ・塩タブレットのような常温保存品が有利ですね。

ゼリー飲料・塩タブレット・柿の種・ラムネは公式ページに価格の記載がなく、店によって実売価格が大きく動きます。購入前に公式サイトや販売ページでご確認ください。

登山の行動食おすすめについてよくある質問

行動食と非常食は分けて持つべきですか?

分けたほうが安心です。行動食は歩きながら消費する前提なので、停滞や下山の遅れに備えるなら1食分以上の非常食を別枠で持ってください。井村屋のえいようかんは公式通販の表示で賞味期限が4年9か月以上5年6か月未満と長く、非常食を兼ねて買い置きしやすい部類ですよ。

冬の登山でも同じ行動食でいいですか?

ゼリー飲料だけは入れ替えを考えてください。冬は凍ってカチカチになり、食べられないただの重りになります。固形に切り替えるか、体に近いポケットに入れて温める工夫が要ります。手袋をしたまま開けられるか、という視点も冬は効いてきますね。

行動中にバテてしまったら、どうすればいいですか?

エネルギー切れは一度落ちると、糖質を入れても回復までに時間がかかるとされています。まずは安全な場所で休み、すぐ効く糖質(ラムネやゼリー)を入れて様子を見てください。判断力も落ちている状態なので、無理に先へ進まず引き返す選択も持っておきたいところです。症状が強いときや持病がある場合は、医師など専門家にご相談ください。

たんぱく質やアミノ酸も持っていったほうがいいですか?

1〜2日程度の登山なら、最優先は炭水化物(糖質)でたんぱく質は補助、という整理が一般的です。長時間になると糖質が尽きたあとにアミノ酸が使われて筋肉の分解につながるので、長期の縦走では行動食と就寝前に分けて摂ると良いとされています。吸収の速さは、肉や魚のたんぱく質で3〜4時間、分解済みのアミノ酸で約30分が目安です。

行動食と一緒に、水はどれくらい持てばいいですか?

概算式は「体重(kg)×行動時間(h)×5」で、体重60kg・6時間なら1,800mlです。ここに0.7〜0.8を掛けて携行量を決める考え方もあります。僕は槍ヶ岳のとき、途中で給水できる前提で1.5Lにしましたが、2Lは重くて疲れる原因だなと感じました。気温30℃を超える日は1時間で700ml〜1L近く失うこともあるので、余裕を見てくださいね。

まとめ:登山の行動食は4つの枠で選ぶ

ゴウ
ゴウ

行動食って、たくさん覚えるより枠で考えるほうが楽なんだね。

そうなんですよね。枠さえ埋まっていれば4品で足ります。あとは行動時間で量を足し引きするだけですよ。

りょう
りょう

最後に、この記事の要点をまとめておきます。

行動食選びの要点として、4つの枠を埋める組み合わせ・ゼリー中心の重さの落とし穴・日帰りの基準形・補給の頻度・夏の選び方・行動時間別の考え方をまとめて俯瞰した内容
  • 甘い×しょっぱい・即効×持続の4つの枠を、ようかん・ナッツ・塩タブレット・ドライフルーツで1品ずつ埋める
  • ゼリー中心は「軽くしたつもりで一番重い」。1,000kcal分でようかんの約3倍・ナッツの約6倍になる
  • 日帰り6時間なら、ようかん3本・レーズン30g・ナッツ40g・塩タブレット3〜5粒で約750kcal・約200gが基準形
  • 無塩ナッツは100gで糖質13.3g・食塩相当量ゼロ。糖質と塩分は別の品と飲み物で確保する
  • 夏は28℃を超えても形が残るかで絞り、ザックのすぐ取れる場所に入れる
  • 補給は1時間〜1時間半ごとに100〜200kcal。空腹を待たず時間で入れる
  • 日帰りは量、小屋泊・縦走はカロリー密度と種類の数(3〜5種類)で組み替える

ここに挙げた数値は、2026年7月時点でメーカーの公式ページなどに載っていた表示や、公的な統計をもとにした目安です。リニューアルや価格改定で変わることがあるので、購入前には公式サイトや販売ページをご確認ください。

絶対にこれが正解という話ではありませんし、体調や持病によって適した補給の形は変わります。不安があるときは医師など専門家にご相談のうえ、無理のない計画で山を楽しんでくださいね。

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