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トレッキングポールは杖代わりになる?SG基準の落とし穴と使える条件

こんにちは、YAMA-GO編集部のりょうです。関西を拠点に、北アルプスを中心にULスタイルで山を楽しんでいます。このブログ「YAMA-GO」では、実際に使ったギアのレビューや選び方、山のノウハウなんかを発信しています。

今回は、僕自身も最初に知りたかったトレッキングポールを杖の代わりに使えるのかという疑問について、まとめてみます。

山登りをしていると、ふとこのポールは普段の散歩や高齢の家族が使う杖の代わりになるのかなと考えること、ありますよね。モンベルなどのアウトドアブランドのポールはかっこいいし、折りたたみ式でコンパクトに持ち運べるので、日常使いできたらすごく便利に思えます。でも、安易に代用すると、思わぬデメリットや危険が潜んでいることもあるんです。この記事では、僕の山の経験やギア選びの失敗談も交えつつ、安全に使うためのポイントや注意点を分かりやすくお伝えします。

  • トレッキングポールと医療用杖の決定的な違い
  • 安全に代用できる条件と適したポールの形状
  • 街歩きや散歩で使う際の注意点とデメリット
  • 目的に合わせた正しい歩行サポートアイテムの選び方

トレッキングポールを杖の代わりに使う前の基礎知識

高齢者が杖を使っているシルエットに赤いバツ印が重なっている、代用の危険性を促すイラスト

まずは、山で使うポールと、街や病院で使う杖が根本的にどう違うのかを知っておく必要があります。見た目は似たような棒に見えても、作られた目的や得意なことが全然違うんですよね。

細かい違いはこの後の見出しで順に見ていきますが、まずは登山用トレッキングポールと歩行補助用の杖が、どこで設計思想を分けているのかを一覧にしておきます。

比較する点登山用トレッキングポール歩行補助用の杖(T字杖など)
想定している役割不整地でバランスを取り、前に進む推進力を補う真上から体重をかけて足腰の負担を減らす(免荷)
かかる力の向き前方や斜めに突く動的な力ほぼ垂直方向の静的な荷重
シャフトの設計軽く振れるよう肉薄に作られる(カーボンは限界を超えると前触れなく折れることがある)荷重に耐える強度を優先した作り
グリップI型が主流。T型や2-Wayグリップもある上から手のひらをかぶせるT字型・オフセット型
先端岩や土に食い込む金属の石突。街用の先ゴムは接地面が小さい接地面が広く溝の入った先ゴムで、濡れた床でも滑りにくい
主に使う場所土・岩・木の根などの不整地舗装路や屋内の平らな床
使う本数2本で使うのが基本片手に1本が基本

こうして並べると、「支える」という言葉が指しているものが両者で違うことが見えてきます。ポールは体を前に運ぶための道具で、杖は体重を預けるための道具、というのが根っこの差です。この違いが、次に説明する強度の話や、後半の先ゴムの話にそのままつながっていきます。

トレッキングポールと歩行用杖の構造的な違い

トレッキングポールは斜めの力、医療用杖は真上からの力に強いことを矢印で示すイラスト

一番の違いは、「どんな風に体重をかけることを想定しているか」です。

病院などで処方されるいわゆるT字杖などは、体重を真上からまっすぐかけて、足腰の負担を減らす(専門用語で「免荷(めんか)」と言います)ために作られています。つまり、垂直方向の荷重を受け止める前提の設計なんです。

ただし、T字杖のような棒状つえのSG基準も、対象を「つえ無しで自立歩行できる人がより安定して歩行できるよう補助的に使用する棒状のつえ」と定めています。杖であっても全体重を預けるための道具ではなく、体重をかけすぎるとかえって肩や手を痛めることがある、という点は押さえておいてください。

一方で、僕たちが山で使うトレッキングポールは、不安定な山道でバランスを取ったり、前に進む推進力を得たりするための「動的なギア」です。斜めから突いて使うことが多く、真上から全体重を預けるような使い方は想定されていません。軽く振れるよう(スウィングウェイトを軽くすると言います)極限まで肉薄化されているため、無理に体重をかけると折れたり曲がったりする危険があります。

【注意】カーボンの脆性破壊について

最近人気のカーボン製ポールは軽くて最高なんですが、横からの力や限界を超えた負荷がかかると「前触れなく一瞬でパキッと折れる」特性があります。体重を預けている最中に折れたら大怪我に繋がるので、同じ用途で比べるなら、曲がって粘ってくれるアルミ製の方が壊れ方は穏やかです。ただし、強度はシャフトの径や肉厚、ロック機構、傷や劣化の有無でも変わるので、材質だけで安全になるわけではありません。SG基準もトレッキング用ポールを材質ではなく標準型(A形)と軽量型(B形)で分けていて、軽量型には「軽量型:極めて大きな力が加わった場合には破断するおそれがある旨」の表示を求めています。

トレッキングポールが真ん中から真っ二つに折れているイラスト

高齢者のリハビリにおけるポールの活用法

「うちのおじいちゃん、足が弱ってきたからポールを使わせようかな」と思うこともありますよね。

ただ、リハビリ目的で使う場合は、身体の状態によって使えるかどうかが全く変わってきます。もし、脳卒中の後遺症で片側が動かしにくかったり、骨折の術後で「絶対に足に体重をかけないでください」とお医者さんから言われているような状態なら、トレッキングポールを杖の代わりに使うのは絶対にNGです。そういった場合は、多点杖や松葉杖といった専用の医療器具が必要です。

「何もなくても歩けるけど、ちょっとふらつくから支えが欲しい」という自立歩行が可能なアクティブシニアの方であれば、ポールを2本使って歩くことで姿勢が良くなり、転倒予防に繋がることがあります。

ポイント

※ここで紹介しているのはあくまで一般的な目安です。リハビリや治療目的で使用する場合は、必ず事前に医師や理学療法士などの専門家にご相談いただき、適切な指示を仰いでください。

散歩に最適なウォーキングポールの特徴

平地の散歩には、長さ調節や平らな先ゴムなど平地向けの仕様を持つウォーキング専用ポールが用途に合うという説明

もし、山登りではなく「平地の散歩で安全に使いたい」というのがメインの目的なら、山用のトレッキングポールを無理に流用するよりも、最初から散歩用に作られたウォーキングポールを選ぶほうが用途に合っています。

例えば、シナノさんなどから出ている高齢者向けの「あんしん2本杖」といった製品は、医療用の杖みたいな「いかにも介護」という見た目ではなく、スポーティなデザインが多いです。それでいて、身長に合わせた細かい長さ調節や、山用ポールの丸い先ゴムとは違う接地面の平らな先ゴムなど、平地を歩くための仕様で作られています。選ぶときは、ご自身の身長や身体の状態に合う範囲かどうかを製品の仕様と取扱説明書で確かめてくださいね。

SGマーク制度と代用する際のデメリット

用途外使用でSGマーク補償対象外になる可能性があることを示す注意喚起スライド

ここで知っておきたいのが、製品が定められた安全基準に適合していることを示す「SGマーク」についてです。

実は、歩行補助用の杖と登山用ポールでは、SGマークの安全基準が全く別物なんです。登山用ポールのパッケージや説明書を見ると「登山やトレッキング以外の用途(杖代わりなど)には使用しないでください」と書かれています。

知っておくべきデメリット

万が一、トレッキングポールを杖代わりに使っていてポールが折れ、怪我をしてしまった場合、「用途外の不適切な使用」とみなされて、SGマークの賠償制度で賠償されない、または減額されることがあります。製品安全協会も、賠償についての注意として「使う側に過失が認められる場合は、賠償ができない、或いは、減額されることがあります」と案内しています。この自己責任のリスクは、代用する前に絶対に知っておいてほしいポイントです。

トレッキングポールを杖の代わりに選ぶ際のポイント

軽い支えとして使うための3条件:T字型グリップ、アルミ製、平地用の太いゴム

ここからは、「自立歩行はできるけれど、散歩や旅行の軽い支えとして、自己責任でアウトドア用ポールを取り入れたい」という方向けに、少しでも安全に使うための選び方のコツをお話しします。

モデル選びの前に、長さの合わせ方を押さえておいてください。山で使う長さと、杖代わりに使う長さは別物です。登山では登りで短く下りで長くと場面ごとに変えますが、平地で体を支える目的なら、歩行用の杖の合わせ方に寄せる必要があります。

  • まっすぐ立った姿勢で、グリップの高さを大腿骨の大転子(太ももの付け根の外側にある骨の出っ張り)に合わせる
  • そのとき肘が20〜30度ほど軽く曲がっていれば、腕で支えを作りやすい高さになっている
  • 通販などで実際に合わせられないときは「身長÷2+2〜3cm」を最初の目安にして、届いてから微調整する
  • つま先の外側から15cmほど前の位置に突いて、数歩歩いても肘の角度と姿勢が崩れないかを確かめる

山の設定のまま街で使わない

登山用の長さ(グリップを握ったとき肘が90度になる設定など)のまま平地で突くと、グリップが高すぎて肩が上がり、体重を預けにくくなります。伸縮式のポールなら平地用の長さに合わせ直し、目盛りの数値を控えておくと、山と街で切り替えるのが楽になりますよ。

※ここで挙げた合わせ方は一般的な目安です。歩行に不安がある場合や、リハビリ・治療の一環として使う場合は、高さの最終的な調整を医師や理学療法士などの専門家に見てもらってください。

負担を減らすT型グリップとI型の違い

ポールの持ち手(グリップ)には、まっすぐな「I型」と、アルファベットのTの字になった「T型」があります。

杖の代わりとして少しでも体重を預けたいなら、基本は「T型」を選んでください。T型グリップは、上から手のひらをかぶせるように握れるので、手のひらの付け根(掌底)でしっかり体重を支えられます。結果的に腕全体が柱のようになって、手首や肘の負担を減らせるんです。

逆にI型は、上から体重をかけようとすると手首が不自然に曲がってしまい、手首や前腕に負担がかかりやすくなります。平地で体を支える用途にはあまり向きません。

関連記事:T型とI型の違いを登山・散策の用途別に解説

モンベルなどアウトドアブランド製品の魅力

僕も大好きなモンベル(mont-bell)をはじめ、アウトドアブランドから出ているポールは、やっぱりデザインが秀逸ですよね。スポーティで活動的なイメージがあるので、「医療用の杖を持つのはちょっと抵抗がある…」という方の心理的なハードルをグッと下げてくれます。

メモ

2-Wayグリップという選択肢
最近は、I型としてもT型としても握れる「2-Wayグリップ」を採用したハイブリッドモデルもあります。平地ではT型として上から握り、ちょっとした坂道ではI型として握って推進力を得る、といった使い分けができるので、汎用性を求めるならかなりアリな選択肢ですね。

携行に便利な折りたたみ式ポールの選び方

夏の車内やストーブの近くにポールを放置すると内部のゴムが劣化して歩行中に分解する危険を示すイラスト

電車やバスでの旅行、車での移動に持っていくなら、小さく収納できる折りたたみ式(中にゴム紐が通っているテンションコード式など)が便利ですよね。

ただ、ここで一つ注意点があります。折りたたみ式のポールは、内部のゴム(バンジーコード)の張力で形を保っています。このポールを、夏の暑い車内やストーブの前に長期間放置するのは絶対にやめてください。熱で中のゴムが劣化してしまい、歩いている最中に急に張力が抜けてポールがバラバラになる危険があります。車に常備しがちですが、保管環境には十分気をつけましょう。

平地歩行の安全を左右する先ゴムの重要性

山用のポールは、岩場や土にしっかり食い込むように先端が硬い金属(石突)になっています。街で使うときはカチャカチャ音を防ぐためにゴム製のキャップ(先ゴム)を被せますが、実はここが盲点なんです。

山用の先ゴムはあくまでアプローチ用なので、底の面積が小さく丸みを帯びています。これを雨に濡れたコンビニのタイル床や、ツルツルの大理石の上で突くと、摩擦が足りずにツルッと滑って転倒するリスクがあります。

医療用の杖の先ゴムは、接地面積が広く、車のタイヤのような溝がしっかり彫られていて滑りにくくなっています。平地メインで使うなら、先ゴムの安定性が歩行の安全を大きく左右するということを覚えておいてください。

ノルディックウォーキングとの目的の違い

最近公園などで、2本のポールをリズミカルに突いて歩いている方を見かけますよね。あれは「ノルディックウォーキング」や「ポールウォーキング」と呼ばれるものです。

これらも「杖代わり」として検索されがちですが、実はこの2つは別物で、目的も道具も違います。

ノルディックウォーキングは、ポールを体の後ろに突いて押し出しながら歩く「スポーツ・有酸素運動」です。そのため、後ろに強く押し出せるようストラップに手を固定するタイプのグリップだったり、後方に突いたときにしっかり接地するよう先ゴムが斜めにカットされていたりします。「歩くのを楽にしたい」というよりも、「運動効果を高めたい」人向けのアイテムですね。

一方のポールウォーキングは、ポールを体の前に突いて、両手と両足の4点で体を支えながら歩くスタイルです。姿勢の改善や転倒予防が目的で、ストラップに手を固定せず握るだけのグリップや、どの向きに突いても接地しやすい先ゴムが使われます。「ふらつきを減らしたい」「歩くのを楽にしたい」という、この記事のテーマに近いのはこちらのほうです。

トレッキングポールを杖の代わりにするまとめ

体重をかけないと歩けない場合は医療用の杖、少し支えが欲しい場合はウォーキング専用をおすすめするスライド

ここまで色々と解説してきましたが、最後に大事なことをまとめます。

トレッキングポールを杖の代わりとして使うことは、物理的にできないわけではありません。ただ、SG基準はトレッキング用ポールの取扱説明書に「高齢者の歩行補助や松葉杖などの医療用の用途に使用しないこと」を書くよう求めていて、メーカーが想定している使い方ではないという点は動きません。

自立して歩ける方が、すでに持っているT型グリップのアルミ製ポールを軽いふらつき防止やお守り代わりに使うとしても、それはメーカーの用途外・自己責任での使用になります。平地の散歩がメインで、これから買い足すのであれば、最初から歩行用に作られたウォーキングポールを選ぶのが本筋です。

しかし、足腰に痛みがあり、しっかりと体重を預ける(免荷する)必要がある場合は、強度の限界や滑りやすさなどの構造的リスクから、アウトドア用ポールを代用するのは大変危険です。ご自身の身体の状態や、どこで使うのか(山なのか、街なのか)をしっかり見極めて、安全第一で最適な相棒(ギア)を選んでくださいね。

医師と高齢者が相談している様子を描いた、専門家への相談を促すイラスト

最終的な判断に迷った時や、身体に不安がある時は、無理に自己判断せず、専門家や医療機関にご相談されることを強くおすすめします。自分に合った道具を見つけて、安全にアウトドアや街歩きを楽しみましょう!

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