こんにちは、YAMA-GO編集部のりょうです。関西を拠点に、北アルプスを中心にULスタイルで山を楽しんでいます。このブログ「YAMA-GO」では、実際に使ったギアのレビューや選び方、山のノウハウなんかを発信しています。
トレッキングポールを買ったものの、「長さはこれで合ってる?」「どこに突けばいいの?」と迷いながら歩いていませんか。なんとなく突いているだけだと、楽になった実感も持ちにくいですよね。
僕は初めての富士登山でポールを持たずに下山し、砂利の坂で足に水ぶくれを5か所作りました。その反省もあって、この記事では登りと下りで変える長さと突く位置を整理します。とくに力を入れたのは、下りで膝を守る使い方です。
- 登り・下り・平地・トラバースで変える長さの目安
- 突く位置とタイミング、握力に頼らないストラップの使い方
- 下りで膝の負担を減らす歩幅とポールの突き方
- 1本と2本の違いと、岩場・鎖場でポールをしまう判断
僕が富士山の下山で後悔した初心者の歩き方
結論から言うと、僕の失敗はポールを持たず、長い砂利の下りを足だけでブレーキをかけながら歩いたことでした。下りこそ、ポールで支点を増やして歩幅を小さくするべき場面だったと思います。

2017年7月、初めての富士登山で吉田ルートを歩きました。下山は朝6時ごろに歩き始めて、歩き終えたのは9時過ぎ。ご来光の感動のあとに待っていたのは、思っていた以上に長い下りでした。
8合目から先はずっと砂利の坂で、階段がありません。一歩ごとに自分の足でブレーキをかけ続ける、そんな3時間強でした。
その結果、足の親指と小指に負担がかかり、両足で5か所の水ぶくれができました。トレッキングポールを持っていかなかったことを、かなり後悔しています。
当時のメモにも「下はとにかくしんどいので、可能であればトレッキングポールがあった方が良いかも」と書き残しています。富士登山の装備の失敗談でも、ポールを持たずに下山がつらくなる例はよく挙がるようです。
ただ、水ぶくれは登山靴の慣らし不足や靴下も原因になります。ポールさえあれば防げた、とまでは言い切れません。それでも、足だけで受け止めていた負担を、ポールに少し分けることはできたはず。
その後、2021年10月に穂高岳山荘でテント泊した山行では、僕もポールを持って歩いています。ポールは持っているだけでなく、場面ごとに長さと突く位置を変えてこそ効く道具。いろいろ調べ直した今は、そう考えています。
トレッキングポールの使い方は長さと突く位置で決まる
トレッキングポールの効果は、場面に合わせた長さの切り替えと、突く位置で大きく変わります。登りは短く、下りは長く。突くのは踏み出す足と反対側の体の横で、体重は預けずにバランスの補助として使います。

迷ったら「登りは短く・下りは長く・体の横に突く・体重は預けない」の4つを覚えておけば、まずは十分かなと思います。
登り・下り・平地で変える長さの目安
基準になるのは平地の長さです。シナノはI型グリップを握って立ち、肘がほぼ直角になる長さを目安にしています。モンベルも、握ったときに肘が90度になる長さとしています。
計算で出すなら、シナノの目安は身長×0.68。身長170cmなら約115cmです。この平地の長さを基準に、登りと下りで伸び縮みさせます。
| 場面 | 長さの目安 | ねらい |
|---|---|---|
| 平地・緩斜面 | 肘が約90度(I型は身長×0.68) | 基準。まずここを決める |
| 登り | 平地より約5cm短く | 前に突きやすく、体を押し上げやすい |
| 下り | 平地より5〜10cm長く | 膝への負担を減らす |
| トラバース | 山側を短く、谷側を長く | 左右の地面の高さの差をならす |
| T型グリップ | 身長×0.5+2〜3cm(モンベルは身長の約半分) | グリップに手を置き、自然に肘が伸びる長さ |
シナノは、基準から±5〜10cmの範囲で調整するよう案内しています。いきなり大きく変えず、5cmずつ試すくらいがちょうどいいかも。
段差が続く短い区間なら、I型のグリップ下の部分(アンダーグリップ)に握り替える手もあります。シナノによると、長さを変えずに約5cm分の調整ができます。
ここで挙げた数値は、あくまで一般的な目安です。体格やポールの形で合う長さは変わるので、取扱説明書やメーカー公式サイトの案内もあわせて確認してください。購入時の長さ選び(身長別のサイズの決め方)は、別の記事で詳しく整理しています。
突く位置は踏み出す足と反対側の横
突く位置は、踏み出した足と反対側のポールを、足と並ぶくらいの位置に突くのが基本です。右足を出したら左のポール、左足なら右のポール。普段歩くときの腕振りと同じ組み合わせですね。
シナノは平地・緩斜面について、重心は真下、目線は前、歩幅はやや狭くとしています。そのうえで、反対側のポールを足と並行からやや前に突くのがポイント。別の公式解説には「反対側のかかとの延長線上」という表現もあります。
逆に避けたいのは、体から遠くに突くことです。登りで足から遠くに突いたり、下りで前に遠く突きすぎたりすると、重心がずれてかえって不安定になります。
平地では、足の動きに合わせて自然に突けば十分です。下りでは、足が着く直前にポールを突き、先に支点を作ってから足を下ろします。このタイミングは、下りの章で詳しく見ていきます。
体重は預けず支点を増やす補助に使う
ポールは体重を乗せて楽をする道具ではなく、支点を増やしてバランスを取るための補助です。ここを勘違いすると、転びかけた瞬間にポールへ全体重を預けることになりかねません。
シナノは、ポールにかかる荷重の目安を次のように示しています。
| 場面 | ポールにかかる荷重の目安 |
|---|---|
| 平地の歩行 | 約5kgf |
| 大きな段差の登り下り | 約23kgf |
| 転倒しかけたときの危険回避 | 約48kgf |
普段の歩行では軽い力しかかからない想定の道具に、転びかけた瞬間には何倍もの力がかかるわけです。シナノは、トレッキングポールはバランス保持の道具で、危険回避用には作られていないとしています。(出典:シナノ『トレッキングポールの超基本』)
LEKIの取扱説明書にも、歩行補助が目的なので体重を預けすぎないよう注意書きがあります。医師の取材記事では、下りは「4本の足で進むようなイメージ」でバランスを取る使い方が勧められていました。
脚が主役で、ポールは前足のように軽く添えるだけ。この感覚を持っておくと、使い方がぶれにくいかなと思います。
握力で握ると疲れる|ストラップの正しい通し方
ストラップは下から手を通し、ストラップごとグリップを握るのが基本です。手首をストラップに預けられるので、握力をほとんど使わずに済みます。

グリップをぎゅっと握りしめて歩くと、手や前腕がすぐ疲れてしまいますよね。ストラップは落下防止のひもというより、手首で力を伝えるためのパーツと考えると分かりやすいです。
- ストラップで輪を作り、手を下からくぐらせる
- ストラップの根元ごとグリップを握る(手首がストラップに乗る形)
- 手とストラップの間に隙間ができないよう、ストラップの長さを合わせる
- 歩きながら、握りしめなくてもポールを押せるか確かめる
シナノは、手とストラップの間に隙間がないように長さを合わせるとしています。ストラップが緩いと、結局グリップを強く握ることになるので、歩き出す前にここを合わせておくのが近道です。
T型グリップの場合、モンベルの案内ではストラップの下側から手を通します。親指と人差し指で短いほうの柄をつまみ、残りの指を長いほうの柄に回す持ち方です。
急な下りだけは、握り方を変えます。モンベルは、手のひらをグリップのトップに当て、頭全体を覆うようにつかむと安定するとしています。
転倒時の手首に注意
ストラップに手を通したまま転ぶと、手が抜けずに手首をひねる、受け身が取りにくいといった指摘が解説記事や体験談に見られます。メーカー公式の明記は確認できませんでしたが、手を使う岩場ではストラップから手を抜くか、ポールをしまうほうが安心です。
登りはポールを短くして足の近くに突く
登りでは、ポールを平地より約5cm短くし、足から離しすぎない位置に突いて体を押し上げるのが基本です。腕は大きく振らず、脇を締めて小さく使います。

モンベルは、登りで短くすると前に突き出しやすくなり、体を押し上げる推進力が得られるとしています。シナノも、推進力を得る意識で、足から遠く離して突かないよう案内しています。
腕を大きく振りすぎると、そのぶん余計なエネルギーを使うという指摘もあります。山と溪谷オンラインで解説している登山ガイドの野中径隆さんも、同じ考えです。腕を大きく動かすと姿勢を崩すとして、脇を締めるよう勧めています。
急斜面では、アンダーグリップへの持ち替えも便利です。長さを変えずに約5cm短く使えるので、段差が続く短い区間ならこれで十分かも。
では、登りでポールを使うとどのくらい楽になるのか。研究を見ると、効いているのは主に「きつさの感じ方」です。
| 研究 | 条件 | ポールありの結果 |
|---|---|---|
| Knight & Caldwell(2000年) | 体重の30%のザックで1時間登る | きつさの感じ方(RPE)は11.6→10.8に下がったが、心拍数は107→113.5拍/分に上がった |
| Howatson ら(2011年) | 37名が実際の山を往復 | 登りのきつさの感じ方がポール群で有意に低かった |
| Giovanelli ら(2019年) | 山岳ランナー14名が急斜面を登る | 25.4〜35.5度の急斜面で、エネルギーコストがわずかに低下(約2〜3%) |
つまり、楽に感じても、心肺の負担そのものはほとんど減っていないということです。腕を使うぶん、心拍はむしろ上がることもあります。ポールで足取りが軽く感じても、ペースは上げすぎないのが安全かなと思います。
下りで膝を守るトレッキングポールの使い方
下りでは、ポールを平地より5〜10cm長くし、足が着く直前に反対側のポールを体の近くに突くのが基本です。歩幅を小さくして、体重は預けずに支点として使うと、膝の負担を減らしやすくなります。

下りって、登りより息が上がらないから楽そうに見えるけどなあ。
息は楽でも、脚はずっとブレーキ役なんですよね。富士山の下りで、僕はそれを痛感しました。
膝がつらくなる理由、一緒に確かめてみたいな。
ですね。仕組みから順番に見ていきましょう。
なぜ下りはポールで膝がラクになるのか
理由は大きく2つあります。荷重がポールに分散されることと、姿勢が変わって膝にかかる「てこ」が短くなることです。
オーストリアの研究(Schwameder ら、1999年)では、8名が傾斜25度の下り斜面を歩いて比較しました。ポールを使うと、膝関節のモーメントや、関節の圧縮力・剪断力のピークが12〜25%下がっています。(出典:Schwameder et al. (1999) J Sports Sci)
減った理由として挙げられているのは、ポールへの荷重の分散と、上体の前傾による膝のモーメントアーム(てこの腕)の短縮です。全体重を預けたから楽になった、という話とは少し違うんですよね。
経験のあるハイカー15名が、荷物の重さを変えて下った研究もあります(Bohne & Abendroth-Smith、2007年)。足首・膝・股関節への負荷はいずれも減り、荷物が重くても軽くても同じ傾向だったそうです。
翌日以降のダメージにも差が出ています。英国のスノードン山を37名が実際に往復した研究があります(Howatson ら、2011年)。ポール群は下山後の筋力の落ち込みが小さく、24時間後・48時間後の筋肉痛も有意に軽かったそうです。(出典:Howatson et al. (2011) Med Sci Sports Exerc)
一方で、下りでポールを使うとエネルギー消費はむしろ増えた、という研究もあります(Perrey & Fabre、2008年)。楽になるのは心肺ではなく、脚と膝の負担の話だと理解しておくのが正確です。
紹介した研究は、どれも少人数で傾斜や荷物などの条件付きの結果です。「ポールで膝の負担が◯%減る」と一般化できる数字ではない点は、頭に入れておいてください。
富士山の砂利の下りは歩幅を小さく近くに突く
富士山のような長い砂利の下りでは、歩幅を小さくして、ポールを体の近くに突くのがいちばん効く使い方だと思います。ブレーキを足だけで受け止めず、一歩ごとに支点を分けるイメージです。
シナノは、踏み出した足が地面に着く直前に、反対側のポールを突くとしています。靴裏全体を着ける意識で歩幅を小さくすると、突く位置も体に近くなります。重心の移動が小さくなり、負荷が減るそうです。
足裏全体で着地する歩き方は、フラットフッティングと呼ばれます。国立登山研修所のセミナー資料でも、歩幅は小さく、後ろ足で蹴らず、腕の振りは最小限に、が省エネ歩行の原則とされていました。
- ポールは平地より5〜10cm長くしておく
- 足が着く直前に、反対側のポールを体の近くに突く
- 靴裏全体で着地し、歩幅を小さく刻む
- へっぴり腰にならない(後ろに傾くと足が前に滑り、尻もちをつきやすい)
- 一歩ごとに止まらず、重心を一定の速さで落とし続ける
最後の「止まらない」は意外かもしれません。段差ごとにいったん止まると、そのたびに着地の衝撃が生まれるとされています。階段を降りるときに衝撃をあまり感じないのは、重心を同じ速さで落とし続けているからだそうです。
あのときポールがあって歩幅を刻めていたら、指先に負担が集中する歩き方は変えられたのかな、と思います。これから富士山に登る人には、下りこそポールを出して使うことをおすすめしたいです。
持っていない人は、レンタルで試すのもありです。富士登山向けのレンタルでは、基本の6点セットにストックが入っていることが多く、単品でも1,000円〜が目安です。料金やセット内容はショップで変わるので、申し込み前に確認してください。
前に突くか後ろ足の踵か|メーカーとガイドで違う
下りでどこに突くかは、じつは意見が分かれています。メーカーは「前に突く」、登山ガイドの中には「後ろ足の踵付近に突く」を勧める人もいます。
| 前に突く | 後ろ足の踵付近に突く | |
|---|---|---|
| 勧めている人 | モンベル・シナノ(メーカー公式) | 登山ガイド 野中径隆さん(山と溪谷オンライン、2019年10月) |
| 突く位置 | 踏み出す足の着地直前に、反対側のポールを足と並ぶ位置へ | 支持脚(後ろ足)の踵付近 |
| 長さ・持ち方 | 平地より5〜10cm長く。I型はグリップの頭を手のひらで覆う | 肘がほぼ伸びる程度に短め。グリップを握らず上から押さえる。T字グリップ向き |
| ねらい | 先に支点を作ってから足を下ろし、下半身の負荷を分散 | 胸を張った姿勢を保ち、支持脚の上に重心を集めて着地の衝撃を小さくする |
野中さんは、前に突くと前かがみになり、重心が着地する足の側にずれると説明しています。支持脚で体重を支えにくくなり、着地の衝撃がかえって大きくなるという考え方です。初心者や体幹の筋力が弱い人の安全を重視した方法、という位置づけでした。
一見正反対ですが、前に遠く突きすぎない・体重を預けない・歩幅を小さく、の3点はどちらにも共通しています。シナノも、歩幅を小さくすると突く位置が体に近くなり、負荷が減るとしています。
どちらが正解というより、道具と体に合わせて選ぶものかなと思います。I型を2本で使うならメーカーの方法、T字グリップなら踵付近に突く方法が合わせやすい組み合わせです。
まずは共通の3点を守ること。そのうえで前のめりになりやすいと感じたら、突く位置を少し手前に寄せて試す、くらいで十分だと思います。
トラバースは山側を短く谷側を長くする
斜面を横切るトラバースでは、山側のポールを短く、谷側のポールを長くするのが基本です。左右で足もとの高さが違うので、ポールの長さも左右で変えて体をまっすぐ保ちます。

じつはこの方法、メーカー公式ページには明記が見当たりません。ただ、複数の登山解説で共通して紹介されている方法です。
いちいち長さを変えられないときは、握る位置で代用できます。山側はアンダーグリップ、谷側はグリップの上部を持てば、長さを変えずに左右差をつけられます。
短いトラバースなら握り替え、長く続くなら長さを変える。こう使い分けると、手間が少なくて済むかもしれません。長さを変えるときは、足場の安定した平らな場所で止まって行うのが安全です。
片側が切れ落ちたトラバースや足場の狭い道は、ポールを使わずにしまう場面です(シナノの案内)。谷側のポールに頼って踏み出すのは避けてください。
1本と2本はどっち?山道なら2本が安定する理由
起伏のある山道なら、2本使いのほうが左右に支点ができて安定します。1本は片手が空く身軽さが魅力ですが、平坦なハイキング向きと考えておくと分かりやすいです。
| 1本(シングル) | 2本(ダブル) | |
|---|---|---|
| 向く場面 | 平坦なハイキング、緩やかなコース | 起伏のある山道、長い縦走 |
| よいところ | 片手が空いて、岩や木をつかめる。軽い | 左右に支点があり安定する。登りでリズムを作りやすい |
| 注意点 | 左右のバランスが取りにくく、脚や腰の負担が大きくなりやすい | 両手がふさがる。荷物が1本ぶん増える |
| グリップ | T型が基本 | I型が基本 |
シナノは、2本(ダブル)を起伏のある地形やロングトレイル向きとし、「バランスが取りやすく、リズムよく歩ける」と説明しています。1本(ステッキ)は、写真を撮りながらゆっくり歩く平坦なハイキングに向くそうです。
モンベルは、I型グリップは2本1組、T型は1本で使うものとしています。T型は、初めて使う人や腕の力に自信のない人、緩やかなコースに向くという位置づけです。
片手が空くなら、1本のほうが便利そうに見えるけどなあ。
そこ、迷いますよね。下りで両側に支点があるかどうかが、けっこう大きな差になるみたいですよ。
2本で歩くときの腕と脚の組み合わせは、右足が前なら左手のポールが前、という対角のリズムです。八ヶ岳の登山ガイドの解説では、2本を平行に保ち、V字や逆V字にしないことも挙げられています。
段差の高さで、このリズムが自然に変わるという研究もあります(山梨大学ほかの共同研究、2026年)。約20cmの段差では対角のまま、約40cmの高い岩段では右手と右足がそろう歩き方に切り替わったそうです。疲れたあとでも、低い段差では対角に戻ることが確認されています。高い段差で手足がそろっても、無理に直さなくてよさそうですね。
UL志向の僕としては、1本のほうが軽くて魅力的に見える気持ちも分かります。ただ、下りで左右に支点がある安心感を考えると、山道なら2本をおすすめしたいです。
岩場・鎖場の手前でしまう|UL派のザック外付け
岩場や鎖場、片側が切れ落ちた場所では、手前の安全な場所でポールをしまい、両手を空けるのが原則です。しまったポールは、引っかかりにくい形でザックに固定します。
岩場でも、ポールがあったほうが心強い気がするんだけど…。
手でつかまる場所だと、両手がふさがって逆に危ないみたいなんです。メーカーも使わない場面を挙げていますよ。
雨で岩が濡れてる日は、なおさら手を空けておきたいね。
シナノは、岩場・岩稜帯・狭い稜線・片側が切れ落ちた箇所では使わず、ザックにしまうとしています。モンベルも、両手を使う場所ではポールから手を離し、可能ならバックパックに収納するよう案内しています。
2018年8月に登った槍ヶ岳の穂先は、三点支持でゆっくり登る岩場でした。梯子は、風に流されないようしっかり掴む必要があります。2019年7月に歩いたジャンダルムでも、馬の背やロバの耳は三点支持が欠かせない場所でした。こういう場所で手にポールを持っていたら、と想像するとぞっとします。
2021年10月に涸沢から屏風のコルへ抜けるパノラマコースを歩いたときは、「ストック使用禁」と書かれた手書きの看板も見かけました。ルートによっては、ポールの使用そのものが禁止されている区間もあるということです。
しまう場所とタイミング
鎖場やはしごの手前の、足場が安定した平らな場所でしまいます。岩場の途中で立ち止まって長さを変えたり縮めたりするのは危険、というのがLEKIの取扱説明書の考え方です。
もうひとつ、ポールがあるから大丈夫と過信しないことも大切です。登山のリスク解説では、ポールに頼るほど自力でふんばる歩き方から遠ざかる懸念が指摘されています。
2024年9月には、南アルプス・茶臼岳の登山道で、下山中の75歳の男性が滑落して亡くなる事故もありました。ポールが原因とはされていません。ただ、滑落の危険が低そうな普通の登山道でも事故は起こる、という教訓が挙げられています。
しまったポールの固定方法は、ザックの作りによって変わります。代表的なのは次の4つです。
| 方式 | やり方 | ポイント |
|---|---|---|
| 専用のポールアタッチメント | 最短に縮め、石突側を下のループに差し、グリップ側を上で留める(オスプレーの例) | 背負ったまま着脱しやすい |
| ピッケルループ+上部のストラップ | 石突側をループに通して1〜2回ひねって締め、グリップ側を上で留める | ひねらずに引っかけるだけだと抜け落ちやすい |
| サイドポケット+コンプレッション | 縮めたポールをサイドポケットに差し、上側をストラップで締める | ループが無いザックでも使いやすい |
| 本体に収納 | 折りたたみ式を収納袋に入れて中へ | 収納長が40cm前後のモデル向き |
外付けで気をつけたいのは、先ゴム・すれ違い・向きの3つです。まず先ゴム。外付け中に外れて登山道に落ちると、自然に還らずゴミになってしまいます。
次にすれ違い。登山メディアの実地検証では、すれ違う相手側にポールを付けていると、相手の目の高さをかすめる位置に来ることが示されていました。
最後に向き。オスプレーの取扱説明書や登山用品店の解説は、石突を下にする向きで説明しています。石突を上にして差す方法もありますが、その場合は先端が後ろの人に向くので、先ゴムを付けておくのが前提です。
UL志向の目線でいうと、外付けそのものも最小限にしたいところ。ドイターの公式も、外付けは風の影響・濡れ・引っかかりの原因になるとして、無しかごくわずかにとどめるよう勧めています。
シナノも、自分のザックに収納しやすいポールを選ぶことをポイントに挙げています。軽さだけでなく、しまいやすさもポール選びの基準に入れておくといいですよ。
伸ばしすぎ注意|長さ調整とロックの間違い
長さを変えるときは、STOP表示を超えて伸ばさないことと、使う前にロックが効いているか確かめることが大切です。下りで長くしたポールが荷重で縮むと、バランスを崩す原因になります。
シナノは、シャフトからSTOPやDANGERの表示が見える状態での使用は、破損やけがの危険があるとしています。LEKIの取扱説明書も、「STOP MAX」の表示が隠れるところまでしか伸ばさないよう求めています。
下りで長く伸ばすときは、とくに注意が必要です。もともと最大長に近い長さで使っていると、伸ばした拍子に表示を超えてしまうことがあります。
よくある間違いを、表にまとめました。
| 間違い | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| STOP表示が見えるまで伸ばす | 破損・けがの危険 | 表示が隠れる範囲で使う |
| 中段と下段の長さがばらばら | 破損の原因になる | 中段・下段は同じ長さにそろえる(LEKI) |
| 岩場の途中で長さを変える | バランスを崩しやすい | 平坦な場所で調整する(LEKI) |
| ロックを確かめずに歩き出す | 突いた瞬間に縮むおそれ | 固定後に軸方向へ押し、縮まないか確認する(シナノ) |
| シャフトに潤滑油を差す | 滑って固定できなくなる | 油は使わない(各社共通) |
ロックが緩んで縮むときは、方式ごとに調整します。シナノのレバーロックは、レバーを完全に開けた状態でダイヤルを締める方向に1/4〜1/2回転。ブラックダイヤモンドのFlickLockも、調整ねじを約1/4〜1/2回転締めるのが目安です。
ただし、締めすぎは禁物です。LEKIのレバー式は、きつく締めすぎるとレバーが閉じなくなり、力で閉じると破損するとされています。回転式も、力任せに締めると内部パーツを傷めるおそれがあります。
調整の手順や適合パーツは、モデルごとに違います。正確な方法は、お使いのポールの取扱説明書やメーカー公式サイトで確認してください。直らないときは無理をせず、販売店やメーカーの修理窓口に相談するのが安心です。
使ったあとは、伸縮式ならシャフトを抜いて水分を拭き取り、乾かしてから保管します。折りたたみ式は完全には分解できないものが多いので、乾いた布で拭いて十分に乾燥させてから保管します。内部に水分が残ると錆びて、伸び縮みしにくくなる原因になるそうです。
トレッキングポールの使い方でよくある質問
トレッキングポールの先ゴムは付けたまま使うべき?
雪のない時期の登山道では、付けて使うのが基本です。環境省は国立公園の利用マナーとして、登山道の浸食を防ぐため保護キャップを付けるよう呼びかけています。一方でシナノは、濡れた岩やザレ場など先ゴムが滑る場面では外し、積雪期は石突を使うよう勧めています。電車やバスでの移動中は、先ゴムを付けておきましょう。外れた先ゴムを登山道に落とさないよう、ときどき確認するのもおすすめです。(出典:環境省『国立公園の利用マナー』)
ポールを使うと、かえって疲れるのはなぜ?
使い方のどこかがずれている可能性があります。よくあるのは、登りと下りで長さが同じまま、足から遠くに突いている、ストラップを使わず握力で握り続けている、腕を大きく振っている、体重を預けている、といったパターンです。また、登りでは腕を使うぶん、心拍が上がることもあります。長さの切り替えとストラップの通し方を見直すだけでも、疲れ方は変わるかなと思います。
下りで膝が痛いとき、ポールだけで対策になりますか?
ポールは膝の負担を減らす補助にはなりますが、それだけで痛みが治るわけではありません。歩幅を小さくする歩き方や、太ももの筋力づくりも組み合わせたいところです。鹿屋体育大学の山本正嘉教授は、スクワットを10回×3セットから始め、15回×5セットを目標に週2〜3回行う方法を挙げています。痛みが続くときは自己判断せず、整形外科など専門家にご相談ください。
ポールに頼ると、脚力が落ちたり歩き方が下手になったりしませんか?
そうした懸念を指摘する声はあります。ポールに頼りすぎると、自分の脚でふんばる歩き方から遠ざかる、という指摘です。大事なのは、体重を預けずにバランスの補助として使うこと。脚力づくりは、軽い登山を高い頻度で続けるのが効果的とされています。ポールは膝を守る道具、脚力は自分で育てるもの、と分けて考えるといいかもしれません。
アルミとカーボンのポールで、使い方に違いはありますか?
基本の使い方は同じです。違いが出るのは、強い力がかかったときの壊れ方。モンベルの分類では、アルミ合金は強い力で折れずに曲がり、カーボンは軽くて高剛性な一方、強い力で折れる可能性があります。転びかけてポールに体重を預けると大きな荷重がかかるので、どちらの素材でも体重は預けない使い方を心がけてください。
トレッキングポールの使い方まとめ|登りは短く下りは長く
長さを変えて、体の横に突く。それだけで下りがだいぶ変わりそうだね。
ですね。岩場の手前でしまう判断も、忘れずにいきたいです。
トレッキングポールは、持っているだけでは力を発揮しきれません。長さを場面で切り替え、突く位置を意識するだけで、とくに下りの膝の負担は変わってきます。

- 平地は肘が約90度。登りは約5cm短く、下りは5〜10cm長く
- 踏み出す足と反対側のポールを、体の横〜やや前に突く
- ストラップは下から通し、握力ではなく手首で支える
- 下りは歩幅を小さく、足が着く直前にポールを突いて支点を増やす
- トラバースは山側を短く、谷側を長く
- 山道なら2本が安定。岩場・鎖場の手前でしまって両手を空ける
- STOP表示を超えて伸ばさず、使う前にロックを確かめる
僕自身、富士山の下りでポールを持たなかったことは今も後悔しています。ここで紹介した数値はあくまで一般的な目安なので、お使いのポールの取扱説明書やメーカー公式サイトもあわせて確認してください。膝に不安がある人は、専門家に相談したうえで山を楽しんでくださいね。
