こんにちは、YAMA-GO編集部のりょうです。関西を拠点に、北アルプスを中心にULスタイルで山を楽しんでいます。このブログ「YAMA-GO」では、実際に使ったギアのレビューや選び方、山のノウハウなんかを発信しています。
富士登山の持ち物リストを見ていて、「ヘッドライトって本当にいるのかな」と手が止まっていませんか。日中に登って日中に下りるつもりなら、歩いている間は要らないように見えますよね。買っても一度きりかも、と思うと余計に迷うところです。
僕は2017年に吉田ルートの山小屋泊で富士山に登って、初日の夕方にはもうヘッドライトを点けていました。この記事では、いらないと言い切れる条件と、逆に無いと危ない場面を、公式の時刻表と自分の行程の両方から整理します。先に答えを言うと、使わずに済む計画はありますが、持たない計画はおすすめできません。
- 日中に往復し切る計画なら歩行中にヘッドライトを使う場面はない
- ご来光登山・小屋泊の夜と早朝・下山の遅れという3場面では必須になる
- スマホのライトや同行者との共有が代わりにならない理由
- レンタル・購入・100円ショップの費用差と、選ぶときの目安
富士山の日中往復だけならヘッドライトはいらない
明るい時間に往復し切る日帰りなら、歩いているあいだにヘッドライトを点ける場面はまずありません。ただ「使わない」と「持たない」は別の話です。使わずに済むのは、あくまで計画どおりに進んだ場合に限られます。

富士登山オフィシャルサイトの日帰りモデルプラン(吉田ルート)は、五合目を6:00に出発して12:55に山頂、13:30から下山を始めて17:00に五合目へ戻る組み立てです。このプランには「日帰り登山は14:00には下山開始」という注記が付いています。
いらないと言える3つの条件
①朝6時台には五合目を出発できる ②遅くとも14:00には下山を始められる ③下りの標準時間を足した到着予定が、その日の日の入りより十分に早い。この3つがそろって初めて、歩行中の照明を使わない計画になります。
見落としやすいのが日の入りの季節差です。国立天文台が公表している甲府(標高0m)の値では、2026年の日の入りは7月1日が19:06、8月31日が18:15で、開山期間の2か月でおよそ50分早まります。(出典:国立天文台暦計算室『甲府(山梨県)のこよみ 令和8年(2026)』)
同じ「14時に下山開始」でも、7月上旬と8月末では暗くなるまでの余裕がまるで違うということですね。吉田ルートの下りは休憩を含まない目安で約3時間35分なので、貯金はそれほど残りません。
なお、この記事で挙げる時刻や所要時間は、いちばん登られている吉田ルートの数字です。下りが約2時間40分の富士宮、登りだけで約8時間40分の御殿場と、ルートによって行程の長さはかなり変わります。自分が歩くルートの標準時間に置き換えて読んでくださいね。
2026年も公式は必須で深夜は小屋泊限定
計画のうえで使わないとしても、公式の装備リストではヘッドランプは「必須アイテム」の側に入っています。しかも「ヘッドランプ+予備電池」とセットの書き方で、出発前のチェック項目にも動作確認が名指しで挙がっています。(出典:富士登山オフィシャルサイト『富士登山の前に必ず知っておくこと』)
2026年シーズンは、そもそも夜に歩けるかどうかのルールが変わりました。入山料は山梨県側・静岡県側とも1人1回4,000円で、午後2時から翌午前3時までは山小屋の宿泊予約がある人しか入山できません。(出典:山梨県『令和8年度の富士登山について』)
つまり夕方から夜通し登る、いわゆる弾丸登山は制度として締め出された形です。逆に言えば、深夜に五合目から入山できるのは山小屋の宿泊予約がある人だけで、深夜に歩き出す計画は実質的に小屋泊の人にだけ残されている、という整理になります。
「持っていないと入山できないの?」という点で言うと、入山時に確認することがあると明示されているのは登山靴・上下セパレートの雨具・防寒着の3点で、ヘッドランプはそこに並んでいません。ただし山梨県側では、装備が十分でないと判断された登山者のゲート通過を富士山レンジャーが断る場合がある、と装備ガイドでは説明されています。
確認されないから要らない、という読み方は危ないです。規制の内容は年度ごとに変わるので、申し込みの前に必ず公式サイトで最新の情報を確かめてくださいね。
ヘッドライトが必要になる3場面

ヘッドライトが要るのは、ご来光登山・小屋泊の夜と早朝・下山の遅れの3つです。このどれかに引っかかる計画なら、持つか持たないかで迷う段階ではないですよね。
順番に、公式のモデルプランの時刻と、僕が2017年に吉田ルートを歩いたときの行程を並べて見ていきます。並べてみると、暗い時間の長さが思っていたより長いことが分かります。
ご来光登山は夜通し4時間歩く
山頂でご来光を見る型は、0:40に山小屋を出て4:40に山頂着という、4時間の夜間行動です(公式モデルプラン・吉田ルート)。同じプランが前提にする日の出は8月10日で4:49なので、空が白みはじめるまでの3時間以上は完全な暗闇のなかを歩くことになります。ここは光が無いと物理的に成立しません。
僕が泊まったのは八合目の白雲荘で、2時に起きて2時半に出発しました。山頂までは約1時間半、そこから30分ほど待って4時半ごろにご来光でした。少し雲がかかって丸くはなかったのですが、それでも十分に感動的でしたよ。
道幅は人が2人並べるくらいで、とにかく人が多くて進みません。公式の混雑予想でも、吉田ルートの夜間は八合目から頂上まで日中の約2倍の時間がかかるとされています。
渋滞しているあいだは、前後の人の光でなんとなく足元が見えてしまいます。ただ、列が切れた瞬間や、立ち止まって標識を確かめる瞬間には、自分の光が無いと何も分からなくなります。
寒さも一緒に来ます。僕が登ったときは八合目の時点でもう5度を下回っていて、下では暑いと感じていたのに上では本当に寒い、という落差でした。山頂で30分待つあいだは、風を通さないレインウェアだけが頼りでしたよ。
その暗くて寒い時間に、防寒着を出したりザックの中を探したりが重なります。頭に載せた光が両手を空けてくれるのは、歩いているあいだだけの話ではないんですよね。
公式も「夜間登山では、転倒や落石の危険があるため、必ずヘッドランプを使用しましょう」と明記しています。
小屋泊は初日の夕方から使った
小屋泊は、山頂ご来光を狙わなくても初日の夕方から使う可能性があります。僕の場合、1回目の点灯は山小屋に着く前でした。
五合目で高山病対策に1時間ほど体を慣らして、17時と早めの夕食をとってから登り始めました。五合目から七合目までが約1時間、七合目から八合目までが約2時間。岩場の段差が多くて一番つらかったこの区間で暗くなり、ヘッドライトを使いました。
「小屋に着いたら寝るだけ」と思っていると、この初日の夕方がすっぽり抜けてしまいますよね。到着が遅れるほど、点灯している時間は長くなります。
小屋でご来光を見て明るくなってから出発する型でも、公式モデルプランの起床は3:50です。夜明け前の身支度・トイレ・荷造りは、結局は暗いなかでやることになります。
山小屋の消灯は20時から21時前後が多く、消灯後にザックをいじらないのがマナーとされています。ヘッドランプやトイレ代の小銭は寝る前に枕元へ出しておく、点けるときは光を下に向ける。このあたりは各所の案内で共通していました。
下山が遅れると日没に追われる
3つ目は下山の遅れです。日帰りプランの五合目着17:00から日の入りまでは、8月末なら1時間強、7月初めでも2時間ほどしかありません。ここが削れると、そのまま暗さになって返ってきます。
僕の下山は6時ごろに山頂を発って9時過ぎに五合目着で、3時間強かかりました。八合目からはずっと砂利の坂で、階段が無いぶん自分の足でブレーキをかけ続けることになります。
足の親指と小指に負担がかかって、両足で5箇所も水ぶくれができました。トレッキングポールを持っていかなかったのを、この下りでずっと後悔していました。下山が遅れるのは体力よりも足のダメージが引き金になりやすい、というのが実感です。
公式の注意ページにも、自力で下山できなくなった時点でそれは遭難だ、と書かれています。静岡県側の開山期の遭難では、疲労によるものが2021年の2件(14%)から翌年には22件(44%)へ増えたというデータも紹介されています。
しかも吉田ルートの下山道八合目には須走ルートとの分岐があり、公式が「道間違いが最も多い地点です」と名指ししています。標識を読むという行為そのものが、暗ければ光なしには成立しません。(出典:富士登山オフィシャルサイト『道迷いに注意』)
公式が「ヘッドランプを持たない登山者が日没後に道を見失い、遭難するケースが増えています」と書いているのは、まさにこういう状況のことだと思います。
持たずに済ませる方法はあるか
スマホのライト、手持ちの懐中電灯、同行者との共有、現地での買い足し。どれも一度は考えますが、富士山の夜を前提にすると、どれも自分の1本の代わりにはなりません。

スマホにもライト付いてるよね?あれじゃだめなの?
僕も最初はそう思ってました。ただ、片手がふさがるっていうのが山だとけっこう効いてくるみたいですよ。
岩場だと手を使うもんね。何がどう違うのか、一緒に確かめてみたいな。
スマホや懐中電灯は片手がふさがる
アウトドアメーカーの選び方ガイドは、スマホのライトについて「常に片手で持つ必要があるので、登山道での歩行を考えると手がふさがって危険」という見解を出しています。
そのうえで、緊急の連絡手段としてバッテリーを温存しておきたい状況で照明に使うのは良い方法とはいえない、とも書かれています。ヘッドランプなら両手が空き、視線を向けた先がそのまま照らされます。
| 比べる点 | ヘッドランプ | スマホのライト |
|---|---|---|
| 手 | 両手が空く | 常に片手がふさがる |
| 照らす向き | 視線と一致し、向いた先が照らされる | 手を向けた方向だけ |
| 照射距離 | 登山用は最低30m・夜間行動は50m以上が目安 | 遠くを照らす設計ではない |
| 電源の役割 | 照明だけに使える | 連絡・地図アプリ・記録と奪い合う |
| 低温 | 乾電池式ならリチウム乾電池で−40℃まで対応できる | 内蔵電池が低温で落ちることがある |
| 防水 | IPX4〜IPX8の製品が一般的 | 端末の等級しだい。雨中は画面操作も難しい |
スマホのライトの明るさは公式スペックとして公表されていないことが多く、解説記事では10〜50ルーメン程度と説明されています。数値そのものは推定として見るべきですが、遠くを照らす設計ではないという点はどの記事にも共通しています。
電池の弱さも重なります。参考値として紹介されている実測では、25℃を100%としたとき0℃で86%、−10℃で80%まで容量が落ちるとされています。山頂は夏でも日の出前に0度近くまで下がるので、一番寒い時間に、一番落ちやすい電源へ照明も連絡もまとめて預けることになりますよね。
手持ちの懐中電灯はスマホより明るく遠くまで届く製品が多いですが、片手がふさがる点は同じです。吉田ルートは七合目から急な岩場が本格化するので、手が使えない状態は転倒対策として逆を向いてしまいます。
グループで1つ・現地調達は当てにできない
同行者が持っているから大丈夫、も成り立ちません。公式の装備リストは個人が携行する前提で、ツアー会社の案内にも「必ずひとりひとつ準備する」と書かれているものがあります。
公式の道迷い対策ページは、吉田ルート下山道八合目の分岐について「グループ登山の場合、必ずここで一度待ち合せをし、全員揃って正しい方向に進むこと」を強く推奨しています。裏を返せば、グループは分岐や休憩で離れることがあるという前提に立った注意喚起です。
夜の渋滞では隊列が伸びて、前後の人と離れる場面も出てきます。山小屋の消灯後に相手のライトを借りるのも、起こしてしまうので現実的ではないですよね。
では現地で買い足す手はどうか。吉田ルートの富士スバルライン五合目には「富士山みはらし」の1階に富士山五合目唯一のモンベルフレンドショップがあり、不足した装備を買える可能性はあります。
ただし夏期の営業時間は7:00〜18:00で、早朝の出発や夜の到着には間に合いません。品ぞろえや在庫が保証されるわけでもないので、ここも確実な出口とは言えません。
では山小屋はどうか。僕が八合目で泊まった小屋の売店には、ビール600円・カレーライス1,000円・酸素1,500円・水500円といった料金が黒板に並んでいました。当時撮った写真を見返しても、そこにヘッドライトや乾電池の行はありません。
飲み物も酸素も現地で買えるのに、照明だけは売り物として並んでいなかったわけです。山小屋でのヘッドランプ販売は公式にも確認できないので、「現地で買えばいい」を計画の前提にはできないと考えておくほうが安全です。
買うなら何ルーメンあれば十分か
先に答えを言うと、富士山なら100ルーメン前後で十分です。ただし条件がひとつあって、その明るさで50m先まで届くこと。明るさの数字と、光が届く距離(照射距離)はセットで見ます。

メーカーの選び方ガイドは、登山用に必要な照射距離を最低30m、夜間の行動があるシーンでは50m以上としています。山頂でご来光を見る計画は夜間行動そのものなので、後者で考えます。
その目安で製品を見ると、95ルーメンで55mを照らすものがある一方、35ルーメンでは11mしか届きません。同じ光の量でも、絞るか広げるかで届く距離が変わるからです。だから100ルーメン前後という答えは、照射距離とセットで初めて意味を持ちます。
100ルーメンって言われても、ぼくにはピンとこないなあ。
僕も最初は数字だけ眺めて選んでいました。カタログのどこを見れば決められるのか、順番に確かめてみましょう。
うん!電池のことも分かってないから、そこも知りたいな。
ルーメンより照射距離と電池で選ぶ
照射距離は「0.25ルクス(満月の明かりと同じくらいの照度)以上で照らせる距離」で表されます。ルーメンは光の量なので、同じルーメンでも角度を絞れば遠くへ届き、広げれば手元を広く照らせます。
だから「◯ルーメンあれば十分」という数字だけでは決まりません。実際の製品を並べると、その関係が見えてきますよ。
| 最大光量 | 最大照射距離 | メーカーの位置づけ |
|---|---|---|
| 35lm | 11m | 予備ライト向け |
| 60lm | 38m | 予備ライト向け |
| 95lm | 55m | 単3電池1本の入門クラス |
| 300lm | 60〜70m | 夜の行動を前提とした大光量モデル |
| 700lm | 125m | 夜の行動を前提とした大光量モデル |
表を縦に見ると、明るさの数字と届く距離が比例していないのが分かります。配光の設計しだいで、100ルーメン前後でも夜間行動の目安を満たす製品が実在するということですね。ワイドかスポットかで決め打ちせず、製品ごとの公称照射距離を確かめてください。逆に数字の小さいモデルは足元をぼんやり照らすだけで、岩場の先を確かめる用途には足りません。
もう一つ見ておきたいのが点灯時間です。夜間行動は0:40から4:40の4時間、ご来光待ちと下山の準備まで入れると5時間前後は光源が要る計算になります。混雑する日はさらに延びます。
注意したいのは、ANSI FL1という規格の点灯時間が「最大出力から明るさが10%以下になるまでの時間」を指すことです。公称値の後半はかなり暗い、と思っておいたほうが安全です。
電池式か充電式かでも迷いますよね。富士山の1本目としては、予備電池を持てる乾電池式が扱いやすいと感じます。公式の必須アイテムが「ヘッドランプ+予備電池」と書かれているのと相性が良いからです。
| 比べる点 | 乾電池式 | 充電式(USB) |
|---|---|---|
| 予備の持ち方 | 予備電池を入れ替えればその場で復活 | モバイルバッテリーから充電して補う |
| 低温 | リチウム乾電池なら−40℃〜60℃に対応(アルカリは5℃〜45℃) | 内蔵電池が低温で急に落ちることがある |
| 光量の落ち方 | 電池が減るにつれて徐々に暗くなる | 規定の時間は一定。残量が減ると控えめな明るさに切り替わる製品がある |
| 注意点 | 予備電池の本数と重さを見積もる | 充電中は使えない機種がある |
使う機器がリチウム乾電池に対応していれば、予備の1本をリチウム乾電池にしておくと山頂の一番寒い時間帯の保険になります(アルカリ指定の機種もあるので、対応の可否は取扱説明書で確かめてください)。すでにモバイルバッテリーを持ち歩く人なら充電式でも構いませんが、かじかんだ手で手早く電源を戻せるのは差し替えられるほうかなと思います。
防水はIPX4以上が目安で、IPX6なら雨や濃霧のなかでも使えるとされています。晴れて出発しても天気が変わる山なので、濡れる前提で選ぶのが無難です。
関連記事:充電式と電池式の選び方を山行別に見る
僕は95ルーメン1本に線引きした
僕自身がたどり着いたのは、単3電池1本・95ルーメン・照射距離55mというクラスでした。富士山の翌年、槍ヶ岳の山頂アタック用に買ったジェントスのCP-095Dというモデルです。
価格は1,300円ほどで、重さは電池込みで約65g。UL寄りの装備を組む僕でも、この重さなら削る対象にはなりません。軽さと安全性を天秤にかける場面ですらなかった、という感覚です。
点灯時間はHighで7.5時間、エコモードで20時間。夜間行動の4〜5時間に対して数字のうえでは余裕がありますが、さきほどのANSI FL1の話のとおり後半は暗くなっていくので、予備電池とセットで考えていました。赤色LEDも付いているので、山小屋で周りに気を遣う場面にも使えます。
手にしてみて効いたのは、スペック表に出てこないところでした。電池カバーが一回ひねるだけで開くので交換が楽で、点灯5秒後ならどのモードからでもボタン1回で消灯できます。
順送りで何度もボタンを押さないと消えない機種だと、渋滞で立ち止まるたび、山小屋に入るたびに小さなストレスになりますよね。寒くて指がかじかむ時間帯に使う道具なので、この2点は地味に大きいです。
ただし、このモデルは現在は廃番です。同じ考え方で選ぶなら、単3電池1本で120ルーメン・7.5時間クラスの製品が今のラインアップにもあるので、そのあたりが後継の目安になります。
後継を探すときは、製品ページに照射距離と防水等級(IPX◯)が書いてあるかを先に見てください。どちらの記載も無い製品は候補から外すくらいでちょうどいいです。数字を出せるのは、メーカーが測って公表しているということですから。
絶対にこれが正解という話ではありませんが、選ぶ順番だけは外さないでほしいなと思っています。あとは自分の計画に当てはめて、迷ったら明るい側に寄せておくと安心です。
関連記事:富士山のヘッドライトは何ルーメン必要?ご来光登山の明るさ目安
レンタルと購入と100均でいくら違う
費用は、単品レンタルが765〜1,628円、購入の入門クラスが1,650〜2,970円、100円ショップが110〜550円という並びです。単品レンタル1回(1,000円前後)と購入の入門クラスの差は、おおむね千円前後にとどまります。

富士山は入山料だけで1人1回4,000円かかります。1,000円前後の単品レンタルなら入山料の4分の1、購入の入門クラスでも4分の3ほどで、ここを削って夜の安全を賭ける意味は薄いかなと思います。
| 選択肢 | 1回あたりの費用 | 明るさ・照射距離の担保 | 手元に残るか |
|---|---|---|---|
| レンタル(単品) | 765〜1,628円 | 業者が150〜200ルーメン級を用意 | 残らない |
| レンタル(富士登山セット) | セット料金に込み | 同上 | 残らない |
| 100円ショップ | 110〜550円 | 照射距離の記載なし・ルーメンも一部のみ | 残る |
| 購入(入門クラス) | 1,650〜2,970円 | 35lm/11m〜300lm/60m | 残る |
| 購入(夜間行動向け) | 4,290〜7,150円 | 300lm/70m〜700lm/125m | 残る |
ひとつ補足させてください。表の「購入(入門クラス)」は、同じ価格帯のなかで中身がまったく違います。この表に挙げた範囲では、メインの1本として買える下限は2,970円クラスでした(2026年8月時点の編集部調べ)。他社まで広げれば、もう少し安く照射距離の目安を満たす製品もあります。
この帯の下のほう(35ルーメン・照射距離11m)は、メーカー自身が登山中の予備ライト向けと案内しているモデルです。一方の2,970円クラスは照射距離60mで、夜の行動を前提とした大光量モデルに分類されています。安いほうへ手を伸ばすと、さきほどの照射距離の目安を自分から外すことになります。
100均はスペック非公表で賭けになる
100円ショップのヘッドライトは、メインの1本として富士山の夜に耐えるかを、事前に確かめられないのが弱点です。安いから駄目という話ではなく、判断材料が公開されていない、という話になります。
公式のネットストアに載っているのは、110円のLEDヘッドライト(単4電池3本・連続点灯約9時間)や、330円のモーションセンサー付き(強60ルーメンで約10時間、弱30ルーメンで約24時間)、USB-C充電式のCOBタイプなどです。両手が空くという最低条件だけなら、たしかに数百円で満たせます。
問題はその先です。明るさが数値で書かれているのは一部の製品だけで、照射距離と防水等級はどの製品にも記載がありません。登山用の目安である30mや50mを満たすかどうかを、買う前に確かめる方法が無いということです。
実際に検証した個人のレビューでも、製品ごとに明るさの評価が割れていました。落としどころとして書かれていたのは「防水が無いのは心配だが、100円なら壊れても割り切れる。予備や子ども用としてなら選択肢になる」という位置づけです。
僕も予備の2本目としてなら否定しません。ただ、メインの1本をここに賭けると、当たりかどうかを暗い岩場で確かめることになります。それは順番が逆だなと感じます。
レンタルは1回1000円前後で借りられる
一生に一度の富士登山だけなら、レンタルは十分に現実的な出口です。単品なら1泊2日で1,000円前後、ほかの装備もまとめて借りるなら、セットに含まれていて追加費用はかかりません。
ある業者はメーカー指定なしのヘッドランプを税込900円(手ぶら割で765円)、別の業者はペツルのティキナが1,298円、ティカとブラックダイヤモンドのコズモが1,628円という価格でした。いずれも1泊2日と2泊3日が同じ料金です。
貸し出されているのは150〜200ルーメン級で、どれにも「ご来光目的の富士登山では必須アイテム」というコメントが添えられていました。貸す側から見ても、これは削る装備ではないという扱いなんだなと感じます。
注意点は段取りと延滞です。受取日と返却日がレンタル期間とは別に設定される方式の業者があり、延滞は1日550円という例もあります。出発直前に慌てないよう、日程は早めに確認しておいてください。
そしてこの先も山に登るつもりなら、送料や受け取りの手間まで含めた総額では買ったほうが早くなることが多いと思います。僕が2017年に参加したツアーのガイドも「レンタルでもいいから絶対つけろ」と言っていました。借りるか買うかは好みでいいけれど、持たない選択だけは無い、ということかなと思います。
富士山のヘッドライトについてよくある質問
ヘッドライトの光の色は何を選べばいいですか?
行動中は白色が基本です。陰影がはっきり見えるので、地形の起伏を確認しやすいとされています。山小屋やテント場では、目にやさしい電球色や低光量モードがあると周りに気を遣わずに済みます。赤色は目がくらみにくく、紙の地図を見るときや就寝中の配慮に向いています。
予備電池は本当に持っていく必要がありますか?
公式の必須アイテムが「ヘッドランプ+予備電池」とセットで書かれているので、持っていく前提で考えてください。乾電池式は電池が減るにつれて光量が落ちますし、公称の点灯時間は最大出力から10%まで落ちるまでの時間を指すことがあります。充電式の場合は、モバイルバッテリーが予備電池の役割を担ってくれます。
山頂でご来光を待っているあいだもヘッドライトは使いますか?
歩かない時間ですが、使う場面はあります。日の出の2時間ほど前から山頂付近は待つ人が増えますし、その時間帯が一日で最も寒く、防寒着を出したりザックの中を探したりが集中するからです。僕も山頂で30分ほど待ちましたが、歩いている時間より動かない時間のほうが寒かったです。手袋をしたまま操作できるかも見ておくといいですよ。
富士山以外の山でも同じヘッドライトを使い回せますか?
使い回せます。照射距離の目安(最低30m、夜間の行動があるなら50m以上)は登山に共通する考え方だからです。僕が歩いた上高地から涸沢へ向かう横尾の登山口にも、ヘッドランプ・雨具・地図の準備を促す看板が立っていました。富士山のために用意した1本が、そのまま次の山の装備になります。
開山期間の前後に登る場合はどう考えればいいですか?
登山シーズンは7月上旬から9月上旬までで、山小屋・トイレ・救護所が使えるのもこの期間だけです。閉山後は六合目より上の山小屋や公衆トイレが冬季閉鎖になり、登下山道の整備も行われません。気候条件も厳しく雪山装備が必要になる場合があるため、万全な準備をしない登山は禁止されています。この時期の計画は、装備一点ではなく行程全体をガイドなどの専門家に相談してから決めてください。
まとめ:富士山でいらないのは日中往復だけ
結局、いらないって言えるのは日中に往復するときだけなんだね。
そうなんですよ。しかも予定どおりに進んだ場合だけ、という条件付きですね。
この記事の答えをもう一度言うと、「使わずに済む計画はあるけれど、持たない計画はやめておきましょう」になります。歩くための道具に見えて、実際には予定が遅れたときの保険として効いてくれる装備です。

- 日中に往復し切る日帰りなら、歩行中に点ける場面はほぼない
- 山頂ご来光は0:40発・4:40着の4時間行動で、うち3時間以上は真っ暗ななかを歩く
- 小屋泊は初日の夕方と、消灯後・早朝の手元灯で使う
- スマホや懐中電灯は片手がふさがり、同行者との共有も分岐で離れれば成り立たない
- 選ぶ目安は100ルーメン前後・照射距離50m以上(最低でも30m)と予備電池
- 費用は単品レンタルが765〜1,628円、購入はメインの1本なら3,000円弱から
- 1,650円クラスはメーカーが予備ライト向けと案内、100円ショップ品は照射距離・防水が非公表なので予備どまり
ここに挙げた数値はあくまで一般的な目安で、規制も料金も年度ごとに変わります。最新の入山ルールや装備の条件は公式サイトで確認して、体調や経験に不安があれば無理をせず、ガイドなどの専門家に相談してから計画を決めてくださいね。
関連記事:日没に間に合わない時の対処と判断基準
