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テント泊装備の重量は平均何kg?内訳と削れる3kgの見つけ方

テント泊装備の総重量は水・食料込みで12〜15kgが平均という目安を示すイメージ

こんにちは、YAMA-GO編集部のりょうです。関西を拠点に、北アルプスを中心にULスタイルで山を楽しんでいます。このブログ「YAMA-GO」では、実際に使ったギアのレビューや選び方、山のノウハウなんかを発信しています。

テント泊の装備をひととおり揃えて、いざザックに詰めてみたら「これ、重すぎないか?」と不安になりますよね。比べる相手がいないと、自分の荷物が普通なのかどうかも分からないままです。

この記事では、テント泊装備の総重量が平均で何kgに落ち着くのかを先に示したうえで、内訳のどこが重いのか、どこから削れば効くのかを順番に整理します。読み終わるころには、自分のザックが重いのか軽いのかを自分で判断できるはずです。

  • 水・食料込みの総重量は12〜15kgが標準という目安
  • ザック・テント・寝袋・マットで全体の8割近くを占める内訳
  • ザックとテントの見直しで削減量の大半が決まる軽量化の順番
  • 1泊2日のザック容量と、装備一式を揃える費用の相場

テント泊装備の重量は平均12〜15kg

テント泊装備の総重量は、水・食料込みで12〜15kgが標準的なところです。軽量化を意識して組み直すと8〜10kgまで落ち、逆に不安であれこれ詰め込むと18〜20kgに届きます。まずはこのレンジを頭に置いてください。

テント泊装備の総重量が水・食料込みで標準12〜15kg、軽量化を意識した構成で8〜10kgになることを示す対比図。夏は10kg前後、冬は15kgが目安という季節差も添えている
ゴウ
ゴウ

12kgって、お米の袋くらい?それを背負って山を登るの?

そうなんですよ。初めてのテント泊だと、その重さにびっくりする人が多いみたいです。

りょう
りょう
ゴウ
ゴウ

うーん、平均って言われても、ぼくには重いのか軽いのか分からないなあ。

ですよね。だから内訳と、どこを削れるかまで一緒に見ていきましょう。

りょう
りょう

この数字が幅を持つのは、装備の中身より「何を含めて数えたか」で結果が変わるからです。同じ人の同じ装備でも、数え方の違いだけで3〜5kgは平気でずれます。

区分重量の目安どんな構成か
一般的なテント泊縦走(水・食料込み)10〜15kgアウトドアメーカーの解説が示す標準レンジ
登山情報メディアの目安12〜18kg(山小屋泊は8〜12kg)泊まり方による差
快適性を重視した構成約11kg現代のギアで組んだ実測の構成
軽量を意識した構成8〜10kg実測8.5kg・8.1kgの公開リスト
軽量化に振り切った上級者5〜7kg(水・食料抜き)軽量化特化の装備リスト
詰め込みすぎた初回20kg近く初心者の体験報告

季節でも前提が変わります。寝袋メーカーの解説では、夏のテント泊が10kg前後、冬は15kgが当たり前とされています。同じ人でも時期が変われば背負う重さは変わる、と考えておくと安心です。(出典:イスカ『テント泊のススメ』)

自分の装備を人と比べるときは、その数字が水と食料を含んでいるかを先に確認しましょう。

ベースウェイトの標準は7〜8kg

水・食料・燃料を抜いた重量をベースウェイトと呼びます。テント泊装備なら、この数字が7〜8kgに収まっていれば標準的です。行程や日数に左右されないので、人と比べるならこちらのほうが向いています。

用語何を数えるか
ベースウェイト水・食料・燃料など消費して減るものを除いた重量。着ている衣類とポケットの中身も含めない
パックウェイト水・食料・燃料を含む、歩き始めのザックの総重量
スキンアウト着ている衣類・靴まで含めた、持っているものすべての重量

メーカーの公式重量だけで組んでみると、この数字はきれいに再現できます。ザック・テント・寝袋・マット・調理具・ヘッドランプ・レインジャケットの9品で5,570g。このうちガス燃料の中身230gは消費して減るぶんなので、ベースウェイトとしては差し引いて5,340gです。ここに着替えやファーストエイド、モバイルバッテリー、ダウンパンツやトレッキングポールなどが1.7〜2.7kg乗ります。

合計するとベースウェイト7.0〜8.1kg。そこへ水2.0〜2.5kgと食料0.9〜2.0kg、それにガス燃料の中身を戻せば10.2〜12.8kg、さらに大きめのクッカーや厚手のマット、椅子やお酒を足すと12〜15kgに届きます。よく言われる平均値の中身は、この積み上げでほぼ説明がつくかなと思います。

一般的な整理では、標準構成で6〜7.5kg、軽量構成で4〜5kgという幅も示されています。製品の世代や季節で前後するので、ぴったりの正解を探すより幅で捉えておくのが実用的ですよ。

ウルトラライト寄りなら8〜10kg

軽量を意識して組み直したときの着地点は、水・食料込みで8〜10kgです。実測の公開リストでも8.5kgや8.1kgという数字が出ていて、極端な我慢をしなくても届く範囲だと分かります。

軽量化の世界には、ベースウェイトを基準にしたスタイルの区分があります。区分そのものを目指す必要はありませんが、自分が今どのあたりにいるかを知る物差しとしては便利です。

区分ベースウェイトの目安
トラディショナル17kg〜
ライトウェイト8〜9kg程度
ウルトラライト(UL)4〜5kg程度(国際的な基準は4.5kg以下)
サブウルトラライト2〜3kg程度

ただ、いきなり最下段を狙うのは危ないです。まず9kg以下を達成して、経験を積みながら段階的に下げていくのが安全側の順序だと、複数の解説が指摘しています。軽さは目的ではなく結果、という言い方が僕にはしっくりきます。

軽さは段階的に

1回目から数字を追いかけると、削ってはいけないものまで削りがちです。最初は「重いけれど安全な装備」で行って、どこがつらかったか・何を使わなかったかを覚えて帰るほうが、結果的に近道になりますよ。

体重の20%が背負える上限の目安

背負える重さの上限は、体重の20%前後が使いやすい目安です。体重60kgの人なら12kg前後、ということになります。ただしこの数値はソースによって割れていて、単一の正解はありません。

考え方目安補足
快適性を重視体重の10〜15%体重70kgなら7〜10.5kg。日帰り〜小屋泊のイメージ
標準的な上限体重の20%前後自分に合うラインの目安として使いやすい
上限の上限体重の20〜30%以下長期・重装備のときの許容範囲として言及される

ここで気づくのは、テント泊の標準がこの表のかなり上のほうに来てしまうことです。体重60kgの人が総重量15kgを背負えば、体重比は25%になります。テント泊がきついと言われるのは、根性の問題ではなく構造的な理由があるわけですね。

女性登山者の記録では「重い荷物が苦手なので合計10kg以内に収めたい」と、先に上限を決めてから装備を組む例もあります。数字を目標にするというより、自分が気持ちよく歩ける範囲を知っておく、という使い方が現実的かなと思います。

関連記事:登山の荷物の重さ目安は何kg?日帰り〜テント泊の実測で解説

関連記事:登山のペース配分|初心者がバテない歩き方を実測タイムで解説

装備リストで重いのはテント・寝袋・ザック

重さの大半を決めているのは、ザック・テント・寝袋・マットの4点です。公式の重量だけで標準的な構成を組むと9品で5,570gになりますが、そのうち4,506gをこの4点が占めます。小物をいくら見直しても総重量が動かないのは、これが理由です。

テント泊装備9品目の重量内訳グラフ。ザック1,930g・テント1,340g・マット681g・寝袋555gの上位4品目だけで総重量5,570gの8割を占め、残りのバーナーやヘッドランプなど小物は少量ずつであることを示している
品目製品重量
ザックモンベル アルパインパック501,930g
テントモンベル ステラリッジ テント1(レインフライ・ペグ・張り綱・スタッフバッグ込み)1,340g
寝袋モンベル シームレス ダウンハガー800 #3555g
マットモンベル U.L.コンフォートシステム アルパインパッド25 180681g
バーナーSOTO ウインドマスター SOD-31067g
燃料SOTO パワーガス250トリプルミックス SOD-725T385g
クッカーモンベル アルパインクッカー16266g
ヘッドランプペツル ティキナ92g
レインジャケットモンベル ストームクルーザー ジャケット(メンズ)254g
小計5,570g

こうして並べると、上の4行だけで9品5,570gの8割(4,506g)を占めていることが分かります。バーナーやヘッドランプをどれだけ吟味しても、動くのは数十グラムの世界です。重さの話は、まず大物から始めるのが効率的ですね。

ここに、実際のリストでよく登場する品目が乗ります。レインパンツ125〜230g、ダウンジャケット210〜215g、着替え一式で約300g、ファーストエイド200〜460g、モバイルバッテリー192〜343g。秋以降ならダウンパンツ210〜215g、さらにトレッキングポール152〜304g、テント場用サンダル120〜250g、タオルや手袋などの小物で200〜400gあたりが定番です。

これらを足すと1.7〜2.7kg。1つずつは軽いのに、まとめて乗ると「気づいたら重い」の正体になります。小物は削る対象というより、増えすぎていないかを点検する対象だと考えると扱いやすいです。

水・食料と着用衣類は数えない

装備を人と比べるときは、水・食料・燃料と、着ている衣類は数えないのが基本です。消費して減るものと、そもそもザックに入っていないものだからです。

とはいえ、実際に背負う重さには容赦なく効いてきます。水は1L=1kgなので、2〜2.5L持てば2.0〜2.5kgがそのまま上乗せされます。テント場に水場があるかどうかで、この2kg超が丸ごと動くわけです。

必要量の見積もりには、日本山岳ガイド協会が示す計算式が使えます。脱水量(ml)=体重(kg)×行動時間(h)×5、給水量はその70〜80%。体重60kgで6時間行動なら脱水量1,800ml、給水量1,260〜1,440mlで、調理や予備を含めた携行量は2,000〜2,500mlが目安になります。

数式を覚える必要はありません。体重60kg・6時間行動でだいたい2Lちょっと、暑い日や行動時間が長い日、水場のない行程ではさらに増える、という感覚で見積もってください。飲み方は一気飲みでなく、30分〜1時間ごとに100〜200mlずつがよいとされています。

食料は1泊2日で0.9〜2.0kgというのが実測の幅です。ある公開リストでは、お酒970gと夜の食材640gを含めて食料・行動食が2,018gになっていました。凝った食事とお酒を持つかどうかで1kg以上動く、と考えておくといいかなと思います。

水と食料を含めていない数字だけを見て「自分は重すぎる」と焦らないようにしましょう。

寝袋とマットは350〜680gの幅

寝る道具の重量は、寝袋が350〜800g、マットが170〜680gに収まります。よく使われるモデルに絞るとどちらも350〜680gあたりが中心で、同じ3シーズン向けでも倍近い差が出る場所です。

寝袋重量温度の目安
モンベル シームレス ダウンハガー800 #3555g(スタッフバッグ込み)快適4℃/使用可能-1℃
ナンガ オーロラテックス ライト380DX約760g(総重量)快適3℃/下限-3℃
シートゥーサミット スパークSP1350g軽量構成での採用例

表のダウンハガー800 #3の555g・快適4℃は、アウトレットで残る旧仕様の数値です。現行モデルは589g・快適5℃/使用可能0℃なので、買うときは公式の最新表記を確認してください。寝袋は同じ温度域でも、ダウンか化繊かで重さが変わります。化繊970gをダウン813gに置き換えて157g減った、という実例もあります。収納したときの容積も小さくなるので、ザックの容量を下げる効果まで付いてきます。

マット重量R値(断熱)
モンベル フォームパッド180420g(スタッフバッグ込み)1.5
モンベル U.L.コンフォートシステム エアパッド180514g(スタッフバッグ込み)1.4
モンベル アルパインパッド25 180681g(スタッフバッグ込み)3.2
ニーモ ゾア レギュラーマミー450g2.7
サーマレスト ネオエアーXライトNXT370g4.5

マットで見るべきはR値という断熱の指標です。1.4〜1.5は夏向け、2.7〜3.2で3シーズン、4.5以上なら氷点下も視野に入ります。軽さだけで選ぶと、地面から冷えて眠れないという失敗につながります。

実際「マットが薄いと本当に眠れません」という報告もあります。睡眠の質は翌日の行動にそのまま出るので、ここは軽量化の優先度を下げていい場所だと思っています。

同じシリーズでも長さを変えれば差が出ます。ニーモ ゾアならレギュラー450gに対してショートは295gで、155g軽くなります。足元をザックなどで代用できる人には、現実的な選択肢ですね。

マットの重量差は素材やタフさとのトレードオフになりやすく、パンクへの備えも含めて選ぶと安心です。
関連記事:登山のエアーマットのパンク修理|山での応急処置と帰宅後の本修理

軽量化の順番はザックとテントが先

削る順番はザック、次にテントです。この2つの置き換えだけで削減量の88%を占める試算になり、小物を1個ずつ削るのとは桁が違います。

軽量化の手順を示す図。まず持っている装備を量る、次に不要な物を削る、最後に軽い道具へ替えるという3ステップの流れと、買い替えはザックとテントを優先すると削減量の88%を占めるという優先順位を示している
ゴウ
ゴウ

えっ、ザックって背負う入れ物でしょ?中身じゃなくて入れ物から減らすの?

そこが意外ですよね。大型のザックは本体だけで2kg近いので、実は一番重い装備のひとつなんです。

りょう
りょう
ゴウ
ゴウ

なるほどねえ。じゃあ順番に見てみようよ。

軽量化の手順としては「量る→削る→替える」の3ステップがよく紹介されています。買い替えの前に、まず持っている道具の重さを実際に量るところから始めます。

  • 量る: 一つひとつの重さを実際に計測し、思い込みではなく数字で判断する
  • 削る: 必要でない道具を持たない。買い足す前に、持たない選択を先に検討する
  • 替える: 軽い道具に買い替える。費用対効果の高い大物から手を付ける

順番が大事なのは、量らないまま買い替えると効果の薄いところにお金を使ってしまうからです。キッチンスケールがあれば足りるので、まずは家にある装備を並べて量ってみてください。

優先順位トップ2で2.2kg削れる

公式の重量で標準構成と軽量構成を並べると、ザック・テント・マットの3点で約2.2kgが削れる計算になります。寝袋は安全に直結するので、ここでは据え置きにしています。

品目標準構成軽量構成削減量
ザックモンベル アルパインパック50: 1,930g山と道 THREE(Mesh M・40L): 657g−1,273g
テントモンベル ステラリッジ テント1: 1,340gヘリテイジ クロスオーバードーム(ソロ): 630g−710g
マットモンベル アルパインパッド25 180: 681gモンベル フォームパッド180: 420g−261g
寝袋モンベル シームレス ダウンハガー800 #3: 555g据え置き(安全装備のため優先度を下げる)0g
小計−2,244g

ただしこれは、同じ快適さのまま軽くなる置き換えではありません。ヘリテイジ クロスオーバードームは公式に「一般のテントとは使用目的が異なる装備」と説明されているシェルターで、軽さと小ささを優先するかわりに耐候性や居住性を割り切った道具です。快適さと安心を求めるなら軽量ドームテントを、とメーカー自身が案内しているので、この2.2kgは用途と性能の違いを受け入れた場合の試算だと考えてください。(出典:ヘリテイジ『クロスオーバードーム』製品ページ)

この試算の88%は、ザックとテントの2つだけで生まれています。

さらに消耗品側も見直せます。行程の途中でも補給できて、テント場にも水場があると確認できれば水を2.5Lから1.5Lに減らせて1,000g、燃料を1泊向けの小さい缶や固形燃料にすれば150〜280g。合わせると3.4〜3.5kgが削れて、13kgだった総重量は約9.5kgになります。

つまり「テント泊は12〜15kg」と「軽量構成なら8〜10kg」の間にあるのは、この程度の具体的な差でしかありません。特別な修行ではなく、大物の入れ替えと水の計画で届く距離だと考えると、少し気が楽になりませんか。

ブランドが示す置き換え例でも傾向は同じです。テントは1.5kg→0.4kgで1.1kg減、バックパックは2kg→0.6kgで1.4kg減。一方でレインウェアは200g前後しか減らず、費用対効果は低いと整理されています。

軽いザックには上限がある

UL系のザックには設計上の想定荷重があります。山と道 THREEは10kg程度まで、MINI2は8kg程度までのパックウェイトを想定と公式が明示しているので、軽いザックに重い荷物を詰めるのは設計外の使い方です。削減効果が大きいのはザックですが、置き換えるときは中身の量とセットで考えてください。

買い替えずに0円で減らす方法

お金をかけずに減らせる部分は、思っているより多く残っています。「替える」の前に「削る」を済ませるのが、軽量化の手順としても正しい順番です。

見直す場所具体的なやり方
着替え撥水性のあるアンダーウェアを使えば、予備はベースレイヤー・下着・ソックスだけで足りる
保温着ダウンジャケットとフリースの2枚を、1枚に統合できる場合がある
レインウェア防水透湿性があるので風対策も兼ねられる。防風着を別に持たない
調理器具1泊2日ならお湯を沸かすだけで多くの食事が成立する。固形燃料やアルコールストーブでも足りる
水テント場に水場があるかを事前に確認して担ぐ量を決める。1L=1kgでそのまま効く
食料フリーズドライやお湯を注ぐだけの米にすると、調理器具側も減らせる
事前の自宅テスト必要なお湯の量を家で確かめてから、持っていく燃料の量を決める

原則は「予備品や代用できる無駄なものは置いていく」です。実際、初めてのテント泊で不安のまま詰め込んで20kg近くになった、という報告は珍しくありません。

僕も最初はかなり適当に道具を選んでいたので、「念のため」が増える気持ちはよく分かります。だからこそ、1回目の山行で使わなかったものをメモして帰るのが、いちばん確実な軽量化になるかなと思います。

逆に、軽いのに無いと困るものもあります。濡れた衣類や靴を入れるビニール袋は使用頻度が高く、8〜10枚の携行が推奨されています。重量はごくわずかなので、ここは削る場所ではありません。

寝袋とレインウェアは削らない

軽量化には触ってはいけない領域があります。寝袋の温度域とレインウェアは、削ると安全の余白がそのまま薄くなる装備です。

削らないほうがいいもの理由
レインウェアの過度な軽量化濡れと冷えは低体温症のリスクにつながるとされる
寝袋の温度域安全装備の最後の砦。経験を積むまで手を付けない
マットの断熱(薄すぎるマット)眠れないと翌日の行動判断に影響する
冬季の調理システム温かい食事は体温の維持につながる
山での不便につながる削減登山の楽しみを奪う軽量化は本末転倒

シェルターの選び方にも同じ話があります。ツェルトやワンポール型は軽くて開放感がありますが、耐候性には不安があり、強風の夜に「飛ばされないよう押さえていて眠れない」事態も起こりえます。

削る対象は、安全の余白ではなく重複と余分です。ここを取り違えると、軽くはなったけれど楽しくない山行になってしまいます。迷うものは、その日の予報と、近くに逃げ込める小屋があるかどうかで判断すると考えやすいですよ。

なお、温度域や耐水圧といった数値は、同じ製品でも世代によって変わります。購入前にはメーカーの公式サイトで最新の仕様をご確認いただき、体調や持病に不安がある場合は専門家にご相談ください。

関連記事:シュラフカバーは必要?テント泊で要る人と省ける人の分かれ目

ザック容量は1泊2日で60L前後

初めてのテント泊なら、1泊2日でも60〜65Lを選ぶのが無難です。装備が多いからではなく、パッキングに慣れていないぶん荷物がかさばるからですね。(出典:モンベル『バックパックの選び方』)

登山スタイル別に必要なザック容量の目安を示す図。日帰り登山20〜25L、山小屋泊30〜40L、初めてのテント泊1泊2日は60〜65L、軽量化を済ませた人は30〜40Lまで小さくできるという段階を示し、容量選びには背面長を合わせることが大切だと添えている
条件容量の目安根拠・理由
日帰り登山20〜25Lメーカー公式の選び方ガイド
山小屋泊登山30〜40L同上
テント泊登山50L以上同上
初めてのテント泊(1泊2日)60〜65Lパッキングに慣れておらず荷物がかさばるため
装備を厳選できる中級者の1泊2日45〜55L軽量化が進めば1〜2泊はこの範囲に収まる
軽量化を済ませた人30〜40L荷物をコンパクトにまとめられる場合

ただし大きければ安心、でもありません。70Lクラスはザック本体だけで重くなりがちですし、空間があるとつい詰めてしまって総重量が増えます。容量は「入る量」ではなく「背負える量」で決めるほうが失敗しにくいです。

容量と積載重量の対応も知っておくと便利です。おおよそ30Lまでで8kg程度、50Lまでで10〜15kg程度が限界の目安とされています。UL系はさらに厳しく、山と道 THREEで10kg程度、MINI2で8kg程度という想定が公式に示されています。(出典:山と道『THREE』製品ページ)

そして容量より優先度が高いのが背面長です。第7頸椎から腰骨の最上部までを測って合わせるもので、ここが合っていないと荷重が肩に集中して腰で支えられません。モンベル アルパインパック50は49/53/57cmの3サイズ、ミレー サースフェー NX 40+5はM48cm・L51cmという具合に、同じモデルでもサイズが分かれています。

細かいところでは、サイドポケットに横から手が届くかどうかも効きます。僕は槍ヶ岳でミレー サースフェー30+5を使いましたが、体が固いと上からは手が届かず、横からアクセスできるだけで水を飲む回数が変わりました。

ウェストベルトのポケットに大きめのスマホが入るか、付属のザックカバーを付けたまま雨蓋を開けられるか。このあたりは実際に使うまで気づきにくい部分なので、店頭で触れるなら確認しておくと後悔が減ります。

店頭で実際に荷物を入れて背負い、背面長を合わせてもらうのが遠回りのようで確実です。

装備一式を揃える費用は約13万円

テント・寝袋・マット・ザックの幕営4点に調理と照明を足すと、公式価格の積み上げで約13万円です。幕営4点だけなら114,100円で、ここが最初の山になります。

テント泊装備一式の費用内訳を示す図。テント本体33,000円・レインフライ16,000円・寝袋23,600円・マット8,500円・ザック33,000円の幕営4点で114,100円、そこにバーナーやクッカーなどの小物を足して合計131,612円になることを示している
品目製品価格(税込)
テント本体モンベル ステラリッジ テント1 本体33,000円
レインフライ(別売)モンベル ステラリッジ テント1 レインフライ16,000円
寝袋モンベル シームレス ダウンハガー800 #3(アウトレット品)23,600円
マットモンベル U.L.コンフォートシステム アルパインパッド25 1808,500円
ザックモンベル アルパインパック5033,000円
幕営4点の小計114,100円
バーナーSOTO ウインドマスター SOD-3109,350円
燃料SOTO パワーガス250トリプルミックス SOD-725T792円
クッカーモンベル アルパインクッカー163,190円
ヘッドランプペツル ティキナ4,180円
合計131,612円

1点だけ注意があります。寝袋の23,600円は、モンベル公式オンラインストアのアウトレット価格(2026年8月時点・在庫限り)です。同じ名前の現行モデルは29,500円・総重量589g・快適温度5℃/使用可能温度0℃なので、そちらで組むなら幕営4点で120,000円、合計は137,512円になります。在庫が残っていればアウトレットで安く入る、という位置づけで見てください。

レインウェアを新しく買うなら、ここにさらに上乗せです。モンベル ストームクルーザー ジャケットはメンズ22,000円・ウィメンズ21,000円なので、一式で15万円前後を見ておくと現実的かなと思います。

個人の記録でも「幕営用品3点を一度に揃えるだけで10万円ほど」「総額はおおよそ10万円」という報告があり、公式価格の積み上げと大きくは違いません。金額としては小さくありませんが、一度揃えれば何年も使う道具ではあります。

価格の幅は、おもに軽さと素材から来ています。テントは33,000円+16,000円のステラリッジ1から、アライテント エアライズ1の53,900円、630gのヘリテイジ クロスオーバードームで53,350円。寝袋は現行のシームレス ダウンハガー800 #3が29,500円、ナンガ オーロラテックス ライト380DXが49,500円といったあたりが目安です。

「軽いほど高い」が原則ですが、例外もあります。モンベル フォームパッド180は5,300円・420g・R値1.5で、8,500円・681g・R値3.2のアルパインパッド25より安くて軽い。安いほうが落としているのは重さではなく、断熱と快適性のほうなんですね。

いきなり全部買わない、という選択肢もありますよ。レンタルなら、アライテント エアライズ1のセットが1泊2日5,500円・2泊3日6,000円といった料金で、テント・ポール・ペグ・フライシート・テントマットまで揃います。

買えば53,900円ですから、1泊2日のレンタル約10回分に相当します。通算10回くらいまでならレンタル代の合計が購入額を下回る計算なので、年に1〜2回のペースならしばらくはレンタルのほうが安く、しかも自分がどのくらいの重量を背負えるかを先に体で確かめられるのが大きいです。料金や在庫の条件は変わるので、申し込み前に各店の公式サイトで最新の情報をご確認ください。

僕が穂高で背負ったナンガとニーモ

穂高岳山荘のテント場で撮影したテント内側の生地の写真。結露した水滴が付き、裾の隙間から地面の砂利が見えている様子
2021年10月・穂高岳山荘のテント場で撮影。夜はテント内側がしっかり結露していた

僕がテント泊装備を担いだのは、2021年10月の穂高でした。上高地から岳沢を経て前穂高岳・奥穂高岳を越え、穂高岳山荘のテント場で1泊する行程です。寝る道具はナンガ オーロラライト350DXとニーモ ゾアという組み合わせでした。

ナンガ オーロラライト350DXのダウンシュラフとニーモ ゾアのスリーピングマットを並べ、それぞれの重量やスペックの特徴を注釈で示している

ナンガ オーロラライト350DXは総重量が約750gで、快適使用温度5℃・下限0℃のダウンシュラフでした。このモデルは廃番になり、現行の後継は総重量約760g・快適3℃/下限-3℃のオーロラテックス ライト380DXです。10月の稜線でこの温度域で足りたのは、テント場の条件に助けられた部分も大きいと思っています。

というのも、穂高岳山荘はテント泊でも土間や食堂を使わせてもらえたので、寒ければ暖を取れる場所があったからです。ただし公式の案内(2026年8月時点)では、テント泊で使えるのは喫茶・売店と土間・食堂などの指定された場所だけ。それも小屋泊のお客さんが優先で、ロビーや乾燥室は利用できません。だから「小屋があるぶん防寒を削れる」と考えるのは危ないです。テントの中で最低気温をしのげる装備を組んだうえで、それでも寒かったときの逃げ場として小屋がある、と考えるのが安全側だというのがここでの学びでした。

夜のテントの中では、内側の生地がしっかり結露していました。寒さ対策に持ち込んだのは屋外専用で10時間もつタイプの使い捨てカイロです。軽いのに効く装備は、削る対象ではなく足す対象だなと感じます。

楽しみにしていた日の出は、曇りで見られませんでした。カメラや三脚のように天候を前提にした装備は、こういう日は完全に空振りになります。重さを検討するときは「使う確率」も一緒に考えたほうがいいのかもしれませんね。

ナンガ オーロラテックス ライト380DX(ダウンシュラフ)

10月の穂高で使ったオーロラライト350DXの後継モデルです。350DXは廃番になり、現行の380DXは総重量約760g・快適3℃/下限-3℃。3シーズンのテント泊に合わせやすい温度域です。

ニーモ ゾア(スリーピングマット)

同じ山行で使ったマットです。現行のレギュラーマミーは450g・R値2.7で、3シーズンの断熱と軽さのバランスが取りやすい一枚です。

登り1889mで重量差が最も出た

この山行で重さをいちばん感じたのは初日でした。記録では山行8時間31分・登り1,889m、休憩を含めて合計10時間14分。距離は6.8kmしかないのに、ひたすら上へ向かう行程です。

正直に言うと、前穂高岳から奥穂高岳の区間は本当にしんどかったです。仲間と「あれが前穂か?」「今度こそ奥穂か?」と言い合いながら、何度も違うピークに騙されました。荷物が軽ければ、あの区間の消耗は少し違ったはずです。

全体の記録はGPSで12時間54分、距離14.9km、登り1,915m。ヤマレコの体力度は5で「1泊以上が適当」、歩くペースは0.8〜0.9と表示されていました。数字の上では速めですが、体感としては装備の重さがそのまま脚に来る山行でした。

ザックそのものの重さを意識したのは、それより前の槍ヶ岳のときです。使っていたミレー サースフェー30+5はカタログ値で1,490g。とりわけ重いモデルではありませんが、総重量の1割強を「入れ物」が占めていると知ると、見直す気になりました。

逆に、軽さの効果を実感したのはサブザックです。モンベル バーサライトパック15をキッチンスケールで量ったら105gで、卵2個より軽いくらい。この重さなら山頂アタック用にもう1つ持つ、という判断が成立します。

重量の話は、数字を追いかけるためのものではないと思っています。しんどい区間で余力が残るか、危ないところで足が上がるか。そこに効いてくるから、出発前に量って考える価値があるのかなと思います。

テント泊装備の重量に関するよくある質問

女性や体力に自信がない場合、何kgを目標にすればいいですか?

体重比で考えると分かりやすいです。快適性を重視するなら体重の10〜15%、上限の目安が20%前後なので、体重50kgの方なら10kg前後が一つのラインになります。実際に「重い荷物が苦手なので合計10kg以内に収めたい」と、先に上限を決めてから装備を組む方もいます。まずは水と食料を含めた総重量で10kgを目標にして、足りない分を大物の見直しで作るのがおすすめです。

水と食料はどれくらい見ておけばいいですか?

1泊2日なら水は2〜2.5L、食料と行動食で0.9〜2.0kgが目安です。水は1L=1kgなので、合わせて2.9〜4.5kgが乗る計算になります。テント場に水場があるかどうかで担ぐ量は大きく変わるので、事前に山小屋やテント場の公式情報で確認しておくと、そのまま1kg単位の軽量化になりますよ。

最初の1回だけならレンタルでもいいですか?

十分にありだと思います。アライテント エアライズ1のセットで1泊2日5,500円という料金設定があり、購入すると53,900円ですから約10回分に相当します。通算10回程度までならレンタル代の合計が購入額を下回るので、年に1〜2回のペースならしばらくはレンタルのほうが安く、何より自分がどのくらいの重さを背負えるかを先に体で確かめられるのが利点です。料金や内容は店によって違うので、公式サイトで条件をご確認ください。

2人用テントを分担すれば軽くなりますか?

1人あたりの重量は下がります。モンベル ステラリッジ テント2は総重量1.49kgなので、本体とポール、フライを2人で分ければ1人あたり750g前後。1人用の1.34kgを1人で背負うより軽くなります。ただし途中で別行動になるとテントが片方にしかない状態になるので、行動を分ける可能性がある山行では慎重に判断してください。

詰め込みすぎたとき、まず何から抜けばいいですか?

いちばん多い原因は衣類の持ちすぎです。着替えは予備のベースレイヤーと下着、ソックス程度に絞り、防寒着も1枚に統合できないか見直してみてください。次は調理器具で、1泊2日ならお湯を沸かせれば多くの食事が成立します。逆に、濡れた衣類を入れるビニール袋のように、軽いのに無いと困るものは減らさないほうがいいです。

関連記事:登山テントの結露対策|原因と稜線でできる濡らさない運用

テント泊装備の重量は12〜15kgが出発点

ゴウ
ゴウ

つまり、最初は重くて当たり前なんだね。

そうなんです。そこから大物を見直していけば、無理をしなくても3kgくらいは減らせますよ。

りょう
りょう

テント泊装備の重量は、水・食料込みで12〜15kgが出発点です。そこからザックとテントを中心に見直せば、8〜10kgの世界が見えてきます。

テント泊装備の重量に関する記事全体の要点をまとめた図解。総重量の標準は12〜15kg、重さの大半はザック・テント・寝袋・マットの4点、削る順番はザックとテントが先、水は1L減らせば1kg軽くなる、寝袋とレインウェアは削らない、初めての1泊2日はザック60〜65L・装備一式は約13万円という要点を1枚に俯瞰している
  • 総重量の標準は水・食料込みで12〜15kg、ベースウェイトなら7〜8kg
  • 重さの大半はザック・テント・寝袋・マットの4点で決まる
  • 削る順番はザックとテントが先。ここで削減量の88%が決まる
  • 水を1L減らせば1kg軽くなる。水場の有無は事前に確認する
  • 寝袋の温度域とレインウェアは削らない。安全の余白は残す
  • 初めての1泊2日はザック60〜65L、装備一式は約13万円が目安

ここで挙げた数値は、あくまで一般的な目安です。製品の重量や価格は改定されることがあるので、購入前にはメーカーの公式サイトで最新の情報をご確認ください。体調や持病に不安がある場合は、無理をせず専門家にご相談のうえで計画を立ててくださいね。

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