こんにちは、YAMA-GO編集部のりょうです。関西を拠点に、北アルプスを中心にULスタイルで山を楽しんでいます。このブログ「YAMA-GO」では、実際に使ったギアのレビューや選び方、山のノウハウなんかを発信しています。
テント場でマットに寝転んだら、背中がじわじわ地面に近づいていく。夜中にそれに気づくと、かなり焦りますよね。穴はどこなのか、今夜どうやって寝ればいいのか、頭の中がいっぱいになるはずです。
ネットで調べると「石鹸水で泡を探し、接着剤を塗って重しを載せる」手順がよく出てきます。ただ、これは水も時間もある家やキャンプ場向けの方法。山のテント場では、そのままでは使えません。
この記事では、登山のエアーマットのパンク修理を「山でその夜をしのぐ応急処置」と「帰宅後の本修理」に分けて整理しました。穴の探し方から剥離の見分け方、メーカー修理の判断まで順番に見ていきます。10月の穂高岳山荘のテント場で、僕が感じた地面からの冷えの話も交えますね。
なお、修理の手順はサーマレストやニーモなどメーカー公式の案内をもとに、山の条件に当てはめて整理したものです。
- 水も石鹸もない山中で穴を見つけ、貼ってすぐ使える方法で塞ぐ手順
- 修理できない夜にザックや衣類で背中の断熱を確保する方法
- 帰宅後のリペアキットとシームグリップの使い方と乾燥時間
- 剥離の見分け方と、自分で直すかメーカー修理かの判断基準
登山のエアーマット修理は山と帰宅後で分ける

登山でエアーマットがパンクしたら、山と家で目的を分けるのがおすすめです。山では「その夜をもたせる応急処置」、家では「接着剤とパッチで直す本修理」と考えます。山では石鹸水も、重しも、接着剤を乾かす時間も確保できません。朝まで背中の断熱を守れれば十分と割り切り、本修理は帰宅後にやり直します。
穴があいたら、リペアキットで貼ればすぐ直るんじゃないの?
家ならそれでいいんですけど、山だと水も時間も足りないんですよね。何が違うのか、一緒に確かめてみましょう。
| 山(テント場) | 帰宅後(自宅) | |
|---|---|---|
| 目的 | 朝まで背中の断熱を守る | 空気漏れを恒久的に止める |
| 穴の探し方 | 耳と唇で空気の流れを感じ、唾の泡で確かめる | 浴槽に沈める・石鹸水で泡を確認する |
| 塞ぎ方 | 貼ってすぐ使えるパッチ・補修テープ | 脱脂してから接着剤+パッチ |
| 乾燥・確認 | 待てない。就寝前に空気を足して様子を見る | 規定時間乾かし、重しを載せて一晩確認 |
| 直らないとき | ザック・ロープ・衣類で断熱を確保 | 剥離ならメーカー相談か買い替え |
キャンプ流の石鹸水と重しが山で使えない理由
キャンプ向けの修理記事でよく見るのは、石鹸水で泡を探し、接着剤を塗って重しを載せる流れです。手順としては正しいものの、山のテント場ではほぼ実行できません。つまずくのは、水・濡れ・気温・時間の4点です。
| キャンプ記事の標準手順 | 山(テント場)での制約 | 山で代わりに使える手段 |
|---|---|---|
| 浴槽や水に沈めて泡を探す | 水は貴重で、マットを沈める量は確保できない | 耳と唇(頬)で漏れる空気を感じる/唾を塗って泡を見る |
| 石鹸水をスプレーして泡を探す | 石鹸もスプレーも無い。テント内を濡らすと寝袋や衣類が湿る | 唾や飲み水を指先で少量塗る程度にとどめる |
| 接着剤を塗って重しを載せ、数時間〜24時間乾かす | その夜に使う必要がある。秋の稜線の夜は接着剤の施工温度を大きく下回る | 貼ってすぐ使えるパッチ・補修テープで塞ぐ |
| 一晩重しを載せて漏れを確認する | 確認する時間そのものが無い | 就寝前に空気を足して様子を見る/ダメなら断熱の確保に切り替える |
とくに見落としがちなのが気温です。液体接着剤のシームグリップWPは、施工温度の下限を約16℃としています。秋の稜線の夜はこれを大きく下回るので、塗っても朝までに固まる見込みは薄いんですよね。
テント内を濡らすリスクも見逃せません。石鹸水をスプレーすれば、寝袋や衣類まで湿ってしまいます。濡れは体の熱を奪うので、穴探しのために寒さを招いては本末転倒です。
だから山では「直す」より「朝までもたせる」に目的を切り替えます。道具も、乾燥待ちのいらないパッチやテープを選ぶのが前提です。
10月の穂高で知ったマットが潰れる怖さ
僕がマットの大切さを実感したのは、2021年10月に穂高岳山荘のテント場で泊まったときです。仲間との1泊2日の山行で、マットはニーモのゾア 20R(自動膨張式)を使いました。
穂高岳山荘のテント場は、岩稜の上の狭い区画に番号付きでテントを張る場所です。公式にも「風の強い場所」と注意書きがあります。テント内で撮った写真を見返すと、裾の隙間から地面の砂利がのぞき、生地の内側には結露の水滴が並んでいました。
夜は、地面からじわじわと冷えが上がってきます。10月の稜線では、地面からの冷えがそのまま眠りの質と翌日の動きに響くと、身をもって感じました。テントの中には、桐灰の「マグマ」というカイロも持ち込んでいたほどです。
翌朝は5時過ぎに山荘を出て、パノラマコース経由で夕方に上高地まで下る長い一日でした。寝不足のままこの行程を歩くと思うと、ぞっとします。もしあの夜にマットの空気が抜けていたら…と考えると、今でも少し怖くなりますね。
気温の目安も出しておきます。気象庁の松本(標高約610m)の10月の日最低気温は、平年値で9.2℃。穂高岳山荘付近は標高差から約14℃低い計算で、単純に引き算すると氷点下になります。あくまで概算ですが、マットが潰れたときの冷えの厳しさは想像できるかなと思います。(出典:気象庁『過去の気象データ検索 松本 平年値』)
ちなみに、ゾア 20Rの公式仕様は厚さ2.5cm・R値2.7です。中にフォームが入っているので、空気が抜けても生地だけのエアーマットよりは断熱が残ります。それでも薄いマットなので、潰れれば地面の冷たさはかなり伝わってくるはずです。
マットは寝心地より断熱
マットの一番の役割は、地面へ体温が逃げるのを防ぐ断熱です。性能はR値(熱抵抗)で示され、数字が大きいほど冷えを通しにくくなります。マットが使えない夜は、寝心地より先に体温が問題になります。
地面からの冷えはマットで、上からの冷えはシュラフで防ぎます。寝袋側の選び方は次の記事で解説しています。
関連記事:登山シュラフのダウンと化繊の違い
水も石鹸もない山中での穴の見つけ方
山で空気漏れに気づいたら、バルブ→冷えによる目減り→耳と唇で漏れ探し→唾の泡で確定の順に進めるのが近道です。いきなり穴を探し始めると、存在しない穴を夜中に探し続けることになりかねません。まずは「本当に穴なのか」を確かめるところから始めましょう。

インフレーターマットの空気漏れはバルブと冷えも疑う
インフレーターマットやエアーマットの空気漏れの原因は、ひとつではありません。地面の鋭いものによる穴のほか、空気の入れすぎ、熱、経年劣化、そしてバルブの不具合も原因になります。
空気が抜けたと感じたら、まずバルブを見ます。締め忘れやキャップの浮き、継ぎ目のズレだけだった、というケースは少なくないようです。サーマレストはバルブの交換キットを出しており、バルブ自体が壊れる可能性もあります。
次に、「漏れ」か「冷え」かを切り分けます。夜中に冷え込むと中の空気が縮み、マットは柔らかくなります。張りが弱くなった程度なら、穴ではなく温度の低下が原因のことが多いんですよね。
目減りの大きさは計算で見当がつきます。35℃の呼気が5℃まで冷えると、理論上は約1割縮む計算です。口で入れた温かい空気ほど、冷えたときの目減りは大きくなります。
見分け方はシンプルです。空気を足して、しばらく様子を見てください。短時間で再び潰れて背中が地面に着くなら、穴を疑います。
穴だった場合、一晩もつ期待はしない方がよさそうです。国民生活センターの家庭用エアーベッドのテストでは、約1mmの穴でもポンプ停止後19〜35分で、ベッドの端から転落するおそれのある圧(1.5kPa)まで下がりました。小さな穴でも、朝まで放っておけるものではありません。(出典:国民生活センター「エアーベッドの空気漏れに注意」)
インフレーターマット(自動膨張式)は、寒いと膨らむのも遅くなります。サーマレストは、凍えるような寒さのときは口で空気を入れないよう案内しています。呼気の水分がマットの中で凍るおそれがあるためで、ポンプサックで補うのが推奨です。
設営したら早めに膨らませて外気になじませ、就寝直前に空気を少し足すと、冷えによる目減りを減らせます。
耳と唇で漏れを探し唾の泡で確かめる
水も石鹸もない山で頼りになるのは、自分の耳と唇です。まずマットを硬めに膨らませ、折り曲げたり体重をかけたりして内圧を上げます。ニーモも公式に、曲げて内圧を上げる方法を案内しています。
次に、耳を表面に沿わせて上下左右にゆっくり動かします。ニーモ米国本社が案内している「聞く方法」で、音より先に空気の流れを肌で感じることもあるそうです。唇や頬は手の甲より空気の流れに敏感なので、顔を近づけて探すのがコツ。
探す順番は、地面に接していた底面から。角や縁、バルブ周りも重点的に見ていきます。表だけで見つからなければ、裏返して同じように探してください。
怪しい場所が見つかったら、唾を少し塗って確かめます。穴があれば、表面張力で小さな泡ができます。飲み水を指先で塗っても構いませんが、テント内や寝袋を濡らさない量にとどめましょう。
穴を見つけたら、すぐに印を付けます。目を離すと、どこだったか分からなくなりやすいからです。油性ペンが無ければ、テープの切れ端を貼って目印にする手もあります。
テント場で空気漏れを一晩しのぐ応急処置
テント場での応急処置は、貼ってすぐ使えるパッチかテープで塞ぎ、朝まで空気がもてば合格です。それでも直らない夜は修理をあきらめ、背中の断熱確保に切り替えます。低体温症を避けることが、パンク修理より優先です。

夜中にマットがぺしゃんこになったら、寒くて眠れないよね…。
そうなんです。だから塞ぐ手順と、ダメだったときの逃げ道をセットで覚えておきたいんですよね。
貼ってすぐ使えるパッチとテープで塞ぐ
塞ぐ前に、穴の周りの汚れと水分をしっかり拭き取ります。純正キットのアルコールワイパーがあれば、それで脱脂してください。サーマレストの親会社カスケードデザインズは、表面の清掃不足をパッチ失敗の最多原因に挙げています。
- 穴の周りを拭き、アルコールワイパーで脱脂して乾かす
- マットの空気を抜く
- パッチやテープを穴より十分大きく切り、角を丸める
- 空気が残らないよう、指で強く押さえて貼る
- 空気を入れ直し、就寝前にもう一度張りを確かめる
パッチの大きさについて、サーマレストは裂け目より約2.5cm以上大きくとしています。穴ぎりぎりの大きさで貼ると、端から空気が抜けやすくなります。角を丸めておくのも、端からめくれるのを防ぐためです。
| 山に持っていく修理用品 | 税込価格(2026年9月・公式) | 山での使いやすさ | 注意点 |
|---|---|---|---|
| マット付属のリペアパッチ(ニーモ等) | 付属 | テアエイド型なら貼ってすぐ使える | 接着剤が要る場合もあるので中身を出発前に確認 |
| インスタント フィールドリペアキット(サーマレスト) | 2,200円 | アルコールワイパー・グルードット・透明パッチの一式 | フィールドでの応急修理用。サーマレスト各モデル対応 |
| テネシアス リペアテープ/ミニパッチ | 各1,430円 | 切って貼るだけですぐ使える | 接着力が最大になるのは24時間後 |
| ダクトテープ・汎用テープ | - | すぐ貼れる | 密閉しきれないことが多い。最後の手段 |
サーマレストのフィールドキットは、決まった量の接着剤が付いたグルードット方式です。周りまで接着剤を行き渡らせれば、約2.5cm程度の裂けまで塞げると親会社は説明しています。通販では1,980円前後の店もありますが、正規代理店の表示価格は2,200円です。
キットを持っていても、使い方を知らないと山で手間取ります。サーマレストも、出発前に使い方を覚えておくよう勧めています。暗いテントの中で説明書を読むのは大変なので、家で一度中身を広げておきたいですね。
サーマレスト インスタント フィールドリペアキット
アルコールワイパー・グルードット・透明パッチがそろった、フィールドでの応急修理用キット
価格目安:税込2,200円(正規代理店・2026年9月時点)
ニーモのマットには、スタッフサックの小さなポケットにリペアキットが付いています。ニーモ米国本社によると、キット内のテアエイドパッチは強く押さえれば乾燥待ちなしで使えるそうです。国内品の付属内容と同じとは限らないので、自分のマットの付属品は出発前に確かめておきましょう。
汎用品なら、ギアエイドのテネシアス リペアテープが使いやすい選択肢です。切って貼るだけで使え、接着力は24時間後に最大になります。ダウンやレインウェア、テントの補修にも流用できるので、ULで荷物を絞りたい人にも向いています。
メーカーの案内では、軽量のスリーピングパッドならテープだけの応急修理も可能です。一方で、高い空気圧がかかるエアーベッドには接着剤との併用を勧めています。
テネシアス リペアテープ
切って貼るだけですぐ使える補修テープ。マット以外のウェアやテントの補修にも流用できる
価格目安:税込1,430円(国内代理店・2026年9月時点)
ダクトテープで代用する手もありますが、サーマレスト本社は「きちんと密閉できないことが多い」としています。持っているなら使ってもいいものの、一晩もてば十分の最後の手段と割り切りましょう。
直らない夜はザックとロープで背中を断熱
テープで塞いでも空気が抜けるなら、修理はそこで打ち切ります。夜中に修理を続けるより、背中の下に断熱の層を作る方が体を守れます。マットの役割は、地面に体温を奪われないための断熱だからです。
国立登山研修所のテキストは、体温を守る4箇条として「食べる・隔離・保温・加温」を挙げています。マットが担うのは、このうち地面の冷えから体を離す「隔離」の部分。マットが使えなくなったら、手持ちの装備で隔離を作り直すと考えます。
- 空にしたザックを、背中から腰の下に敷く
- ザイルやロープ類を巻いて平らに並べ、地面との間に層を作る
- 着ない衣類・レインウェア・空のスタッフサック・食料袋を背中の下に集める
- エマージェンシーシート(アルミ蒸着シート)を寝袋の下に敷く
- 潰れたマットもそのまま敷いておく(自動膨張式ならフォームの分だけ断熱が残る)
同時に、熱を作る・逃がさない手も打ちます。寝袋の中で着られる防寒着はすべて着て、行動食を口にしてください。耐熱ボトルにお湯を入れれば湯たんぽ代わりになり、体幹を温められます。僕も10月の穂高のテント泊では、カイロを持ち込んでいました。
濡れにも気をつけます。水は空気よりはるかに熱を伝えやすいので、穴探しで使った唾や水で寝袋を湿らせないようにしましょう。
テント場が山小屋のそばなら、小屋を頼る手もあります。僕が泊まった穂高岳山荘は、テント泊でも小屋の中を利用でき、寒さをしのげました。眠れないほど冷えるなら、無理をせず小屋のスタッフに相談してください。
震えが止まったら危険
震えは体が熱を作ろうとしているサインで、今なら助かるタイミングとされます。暖まらないまま震えが止まるのは、重症化のサインです。温めるなら腕や足ではなく体幹を。異変を感じたら周りに助けを求め、無理に行動しないでください。
帰宅後の本修理 リペアキットの正しい使い方
帰宅後は、浴槽で穴を確定→アルコールで脱脂→接着剤とパッチで貼る→乾燥→重しを載せて一晩確認の順で直します。山で貼ったテープは、その夜をもたせるためのもの。一度はがすか上から覆う形で、接着剤を使った修理をやり直してください。

家なら、山で使えなかった手段がすべて使えます。水に沈める、石鹸水をかける、重しを載せて長く乾かす。修理用品は、メーカー純正のリペアキットか、汎用の接着剤とパッチの組み合わせが基本です。
浴槽で穴を確定し脱脂してパッチを貼る
- 膨らませて浴槽に沈め、曲げて内圧を上げながら泡の出る場所を探す(表裏とも)
- 見つけた穴に油性ペンで印を付ける
- マットを完全に乾かし、空気を抜いて平らに置く
- 穴の周りを消毒用アルコールで拭き、もう一度乾かす
- 接着剤を穴の周り2.5cm以上に薄く塗る(ニーモの手順)
- 角を丸く切ったパッチを貼り、スプーンなどで強く密着させる
- 規定の時間乾かしてから膨らませ、重い荷物を載せて一晩置く
穴探しは浴槽が確実です。マットを曲げて内圧を上げると、小さな穴からも泡が出てきます。浴槽に入らない大きさなら、石鹸水をスプレーして泡を探しましょう。
一番大事なのは脱脂です。汗や皮脂、日焼け止めが残っていると接着剤が効きません。貼ってすぐはがれる失敗の多くは、表面の清掃不足が原因とされています。
パッチは、穴ぎりぎりではなく十分大きく切ります。サーマレストは裂け目より約2.5cm以上大きく、ニーモは穴の周り2.5cm以上に接着剤を塗る手順です。角を丸めておくと、端からめくれにくくなります。(出典:ニーモ・イクイップメント・ジャパン「マットに穴が開いた時の修理方法」)
サーマレストのパーマネント ホームリペアキットは、自宅での恒久修理用のセットです。アルコールワイパー、透明パッチ、リペアパッチ4枚、接着剤、木製アプリケーターが入っています。正規代理店の価格は3,080円です。
注意したいのは乾燥時間で、接着剤が乾くまで24時間かかります。山行の直前に慌てないよう、帰宅したら早めに作業しておきたいところです。
サーマレスト パーマネント ホームリペアキット
接着剤・リペアパッチ・アルコールワイパーなどがそろった、自宅での恒久修理用キット
価格目安:税込3,080円(正規代理店・2026年9月時点)
乾いたら膨らませて、ザックなど重い荷物を載せて一晩置きます。朝になっても張りが保たれていれば修理完了です。正規代理店の修理でも、空気を入れて約60kgの重りを載せ、一晩置いて確認していると販売店の取材記事が伝えています。
継ぎ目(溶着部)やバルブの根元、角の折れ線からの漏れは、平らな面の穴よりパッチが密着しにくい場所です。何度貼っても止まらないなら、無理をせずメーカーに相談する方が安心かなと思います。
シームグリップの乾燥時間と寒さの落とし穴
液体接着剤のシームグリップWPを使う場合、乾燥時間は8〜12時間が目安で、施工温度の下限は約16℃です。寒い部屋で作業すると、この時間では固まりきらないおそれがあります。
メーカーのギアエイドが示す施工条件は、約16〜38℃かつ湿度40%以上。空気中の水分で固まる湿気硬化型なので、乾燥した寒い場所ほど硬化が遅れます。国内代理店のスター商事は、完全に乾くまで約8時間とし、風通しの良い場所で乾かすよう案内しています。
冬場に暖房のない部屋やベランダで作業すると、この条件を下回りやすいんですよね。修理は暖かい室内で行い、乾かす間もなるべく温度を保ちましょう。接着剤を扱うときは窓を開けるなど換気を心がけ、製品の注意書きにも目を通してください。
塗り方は、穴の周りをアルコールで清掃し、損傷より約1.3cm外まで薄く広げます。そのまま8〜12時間硬化させてから膨らませてください。
早く使いたいときは、塗って20〜30分置き、粘りが出たところにテネシアスのパッチを重ねて強く押さえます。これならすぐに使えると、ギアエイドは説明しています。(出典:GEAR AID「Tips for Using Seam Grip WP」)
| 修理方法 | 乾燥・待ち時間の目安 | 案内元 |
|---|---|---|
| ニーモ付属パッチ+接着剤 | 最低2時間(できれば24時間) | ニーモ日本公式 |
| サーマレスト ホームリペアキット | 24時間 | モチヅキ公式 |
| シームグリップWP(単体) | 8〜12時間(約16℃以上・湿度40%以上) | ギアエイド公式 |
| シームグリップWP+硬化促進剤 | 約2時間 | ギアエイド公式 |
| シームグリップWPを20〜30分置いてテネシアスを重ねる | すぐ使用可 | ギアエイド公式 |
| テネシアス リペアテープ単体 | すぐ使用可(接着力の最大は24時間後) | スター商事 |
表の時間は、あくまでメーカーが示す目安です。気温や湿度で前後するので、修理がうまくいったかは膨らませての一晩テストで確かめると安心です。
開封後の保管にもコツがあります。湿気で固まる性質のため、使い残しは冷凍庫など乾燥した場所での保管が推奨されています。次にマットが破れたとき、チューブの中で固まっていた…とならないようにしたいですね。
ギアエイド シームグリップWP
摩耗や温度変化に強い恒久修理向けの液体接着剤。シルナイロンには使えない点に注意
価格目安:税込1,980円(28g・2026年9月時点)
表面のこぶは剥離 デラミネーションは直せない
マットの表面にこぶのような膨らみができたら、穴ではなく剥離(デラミネーション)を疑います。剥離は内部の接着が壊れた状態なので、外からパッチを貼っても直せません。自分でいじる前に、メーカーへの相談か買い替えを考えます。

表面がぽこっと膨らんでるのは、空気がよく入ってる証拠じゃないの?
そう見えますよね。でも実は、中が壊れているサインみたいですよ。穴との違いを見ていきましょう。
剥離は、マットの内部構造を保っている接着剤が劣化し、はがれる現象です。自動膨張式では生地がフォームから浮き、エアー式では内部の隔壁(バッフル)が外れます。どちらも、表面にこぶができるのが症状です。
| 観点 | 穴(パンク) | 剥離(デラミネーション) |
|---|---|---|
| 見た目 | 表面は平らなまま、空気だけが抜けていく | 表面にこぶ(膨らみ)ができる |
| 泡テスト | 水・石鹸水で一点から泡が出る | 外皮に穴が無ければ泡は出ず、空気が抜けないことも多い |
| 進行 | 漏れは穴の場所に限られ、表面の形は変わらない | 膨らませるたびに広がり、使うほど悪化する |
| 寝心地 | 空気が抜けると底付きする | 空気は保っていても、こぶが腰や背中に当たって寝にくい |
| 自分で直せるか | 直せる(パッチ・接着剤) | 外から貼るパッチでは直らない |
| 対応 | 自力修理、または有償修理 | メーカーに保証の可否を相談。対象外なら買い替え |
やっかいなのは、使うほど悪化する点です。膨らませるたびにこぶの端に内部を裂く力がかかり、広がっていくことがあります。国内の専門レビューサイトには、一度起きると「時限爆弾」のように広がるという指摘もあります。
原因として、サーマレストの親会社は泥・皮脂・虫よけ・日焼け止め・汗の染み込みを挙げています。直接肌で寝たり、汗をかいたまま寝たりする使い方ほどリスクは上がります。予防には、布やスポンジと石鹸水で定期的に洗うのが勧められています。
僕が穂高で使ったゾアのような自動膨張式は、フォームと生地を貼り合わせた構造です。空気が抜けても断熱が残る長所の裏で、剥離が起きうる作りでもあります。山行前にこぶを見つけたら、そのマット1枚だけで高所のテント泊に出るのは避けたいですね。
剥離は製造上の欠陥として保証の対象になる可能性があります。自分で補修する前に、購入証明を用意してメーカーや販売店に相談してください。
自分で直すかメーカー修理かの判断と費用
場所が分かる小さな穴なら自分で直し、剥離・見つからない漏れ・バルブ不良はメーカーに相談するのが基本です。穴あきは通常使用の損耗として保証の対象外なので、メーカーに出すと有償になります。国内の修理料金は公開されておらず、申込み時の見積もりで決まります。

| 状況 | おすすめの対応 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 小さな穴が1〜数か所で、場所が分かる | 自分で修理 | 穴あきは保証対象外。メーカーに出すと有償 |
| 穴が見つからない・何度直しても漏れる | メーカーに相談 | 製造上の欠陥の可能性も含めて確認してもらう |
| 表面にこぶ(剥離)がある | メーカーに相談/買い替え | 自力修理は不可。保証になるかは購入時期と購入証明しだい |
| バルブの不良 | 交換キットかメーカー相談 | サーマレストはバルブ交換キットあり |
| 並行輸入品・中古・譲渡品 | 有償修理を相談 | サーマレストは並行輸入品を保証対象外、ニーモは通常価格で受付 |
サーマレストの国内正規代理店モチヅキは、購入から5年間の保証を設けています。対象は、第一購入者が正規販売店で買った製品の製造上の欠陥です。製造から2年以上たったマットは、類似製品への交換になる場合があります。
申請は、購入証明と製品・不具合箇所の写真を添えて公式のお問い合わせフォームから行います。保証の対象外でも、修理できるものは有償で受け付けています。正規品には修理費用の割引(35%〜)と送料無料の優遇があるので、レシートや注文履歴は捨てずに保管しておきましょう。
ニーモの日本法人は、公式オンラインショップ以外で買った製品の修理を直接は受け付けていません。ショップリストに載っている最寄りの正規販売店を通して依頼する流れで、公式サイトのサポートチャットでも相談できます。正規品は購入履歴の提示で特別価格、並行輸入品や譲渡品は通常価格での修理です。
時間の余裕も判断材料です。ニーモの修理期間は約3〜4週間で、年末年始や連休はさらに1〜2週間延びます。山行直前に出すと間に合わないおそれがあるので、シーズン前の点検と早めの依頼が安心ですね。
費用の目安が知りたいところですが、国内の2社とも円建ての料金表は公開していません。参考までに、米国のサーマレスト本社は穴あき修理を1回20米ドル(10か所まで)で受けています。国内の料金とは別物なので、正確な金額は申込み時の見積もりで確認してください。
もうひとつ気をつけたいのが、自分で修理した場合の保証への影響です。サーマレスト国内の保証ページには、この点の明示がありません。剥離など保証になりうる不具合は、自分でいじる前に相談する方が無難かなと思います。
修理費用が本体価格に近い、または生地の剥離で自分では直せない場合は、買い替えの検討にも進みやすくなります。
関連記事:登山用スリーピングマットの選び方!R値と3タイプ徹底比較
パンク予防は整地とグラウンドシートから

エアーマットのパンクは、地面の小石や枝がフロア越しに刺さるのが代表的な原因です。設営前の整地とグラウンドシート、空気を入れすぎないことを押さえるだけで、リスクはかなり減らせます。テント場での行動順に見ていきましょう。
- 整地:テントを張る前に、フロアの下になる場所の小石・枝・尖った岩片を取り除く
- グラウンドシート(フットプリント)をテントの下に敷き、フロアとマットを守る
- エアーマットの下に、クローズドセルマットや薄い銀マットを重ねる
- 空気はパンパンにせず、適度な弾力で止める
- 昼間に膨らませたまま、日なたやテント内に放置しない
- 撤収時はスタッフサックに入れ、アイゼン・ペグ・ナイフ類と直接触れないようにする
整地は、穂高岳山荘のような岩のテント場ほど効果が大きくなります。僕が泊まったときも、テントの裾から砂利がのぞくような地面でした。サーマレストも、地面が荒い場所ではグラウンドシートかクローズドセルマットを下に敷くよう勧めています。
空気の入れすぎにも注意が必要です。パンパンの状態で体重がかかると、継ぎ目に無理な力がかかります。サーマレストは、2psiを超える高圧ポンプでの加圧を禁止しています。国民生活センターも、家庭用エアーベッドで入れすぎを避けるよう呼びかけています。
膨らませたまま直射日光や高温の車内に置くと、中の空気が膨張します。休憩中に座布団代わりに岩の上で使うのも、刺さりと摩耗の原因。マットはテントの中で寝るときだけ使う、と決めておくと安心です。
テント内の下敷きには、クローズドセルマットが刺さり対策と断熱の上乗せを兼ねてくれます。定番のサーマレスト Zライト ソル(Rサイズ)は410g・R値2で、R値は重ねると足し算できます。ただし国内公式ページには今期廃番の表示があり、流通在庫の確認が必要です。
ULで軽くしたい人には重さとのトレードオフになります。それでも、エアーマットが使えなくなっても断熱が残る保険として、検討する価値はあるかなと思います。
山行前には、マットを膨らませて一晩置き、空気が保たれるか確認しておきます。サーマレストも、購入後にまず行うよう勧めている方法です。あわせて、表面にこぶが無いかも見ておきましょう。
帰宅後は、汚れや皮脂を水と石鹸で拭き洗いし、バルブを開けて陰干しします。保管は、自動膨張式なら広げてバルブを開けた状態、エアー式ならバルブを開けて緩く巻いた状態が基本。圧縮したまま長く保管すると、フォームが戻らなくなるので注意してください。
登山のエアーマットのパンク修理でよくある質問
サーマレストのリペアキットは、ニーモなど他社のマットにも使えますか?
正規代理店の案内では、サーマレストのリペアキットの対応はネオエアーやトレイルプロなど自社の各モデルです。他社マットへの適合は明記されていないため、まずはマットに付属するリペアパッチを使うのが確実です。付属品が無い場合は、ナイロンやポリエステルに使えるテネシアスのような汎用テープが選択肢になります。
寒い日にマットを口で膨らませても大丈夫ですか?
凍えるような寒さのときは、口で入れるのは避けた方がよさそうです。サーマレストは、呼気の水分がマット内部で凍るおそれがあるとして、寒冷時は口で空気を入れないよう案内しています。内部の湿気はカビの原因にもなるので、ポンプサックの併用がおすすめです。
並行輸入品や人から譲ってもらったマットも修理してもらえますか?
サーマレストの国内保証は、第一購入者が正規販売店で買った製品が対象で、並行輸入品は保証の対象外です。ただし対象外でも、修理できるものは有償で対応すると案内されています。ニーモは並行輸入品や譲渡品も通常価格で修理を受け付けており、依頼は正規販売店を通して行います。条件は変わることがあるので、最新の情報は各社の公式サイトで確認してください。
パンクが心配なら、エアーマットとインフレーターマットのどちらを選べばいいですか?
空気が抜けたときの断熱を重視するなら、フォームが入ったインフレーターマット(自動膨張式)に安心感があります。空気が抜けても、断熱がゼロにはならないためです。パンクそのものを避けたいならクローズドセルマット単体もありますが、かさばり断熱も低めです。エアーマットに薄いクローズドセルを重ねる組み合わせも、現実的な選択肢かなと思います。
シームグリップはどんな素材のマットにも使えますか?
シームグリップWPは、シルナイロン(シリコン含浸ナイロン)には接着できないとされています。使う前に、マットの生地の素材を取扱説明書やメーカーの公式サイトで確認してください。ナイロンやポリエステルなどの生地なら、テネシアスのような補修テープも使えます。迷ったときは、メーカーや販売店に相談するのが確実です。
まとめ:登山のエアーマットのパンク修理は山と家で分ける
山では直すことより、朝まで体を冷やさないことが大事なんだね。
そうなんです。きちんと直すのは家に帰ってからで大丈夫なので、山では体を守るのを最優先にしたいですね。
登山のエアーマットのパンク修理は、山と家で目的を分けると迷いません。山では朝まで背中の断熱を守り、家で接着剤とパッチを使って恒久的に直します。

- 山で空気が抜けたら、まずバルブと冷えによる目減りを疑う
- 穴は耳と唇で空気の流れを探し、唾の泡で確かめて印を付ける
- 応急処置は貼ってすぐ使えるパッチやテープで。ダクトテープは最後の手段
- 直らない夜は、ザック・ロープ・衣類で背中の断熱を確保する
- 帰宅後は浴槽で穴を確定し、脱脂してから接着剤とパッチで本修理
- シームグリップWPの乾燥は8〜12時間、施工は約16℃以上が目安
- 表面のこぶは剥離。自分で直さずメーカーに相談する
- 予防は整地・グラウンドシート・空気を入れすぎないこと
修理用品の価格や保証の条件は変わることがあります。正確な情報は、各メーカーや正規代理店の公式サイトをご確認ください。寒さで体に異変を感じたときは無理をせず、周りや山小屋に助けを求め、必要に応じて医療の専門家に相談してください。
テント泊の夜にマットが潰れても、手順を知っていれば落ち着いて動けます。出発前にリペア用品の中身を一度確かめて、安心して山の夜を楽しんでくださいね。
